決算・財務報告プロセスは、総勘定元帳の数値から財務諸表を作り開示までを行う一連の過程です。重要度が高い領域ですが、評価は他の業務プロセスと同じようには進みません。
最大の違いは実施の回数です。年に1回または四半期ごとにしか行われないため、確かめられる件数が限られ、1件ごとの評価が重くなります。
この記事では、2つの捉え方、評価の時期、統制の特定、職務の分離が難しい場合の対応を整理します。
- 決算・財務報告プロセスの2つの捉え方と評価の位置づけ
- 決算プロセスの5つの特殊性と評価への影響
- 前年度の決算を使って評価を進める方法
- 決算プロセスで統制として特定されるもの
- 記録が残らない統制をどう扱うか
- 職務の分離が働きにくい場合の代替の統制
図 決算・財務報告プロセスの評価の進め方
📌 結論 回数の少なさが評価を難しくする
決算・財務報告プロセスは、総勘定元帳の数値から財務諸表を作り、開示までを行う一連の過程です。制度の対象としては重要度が高い領域ですが、評価は他の業務プロセスと同じようには進みません。
最大の違いは、実施の回数です。売上や購買の統制は年に何千件と行われるため、サンプルを抽出して確かめられます。決算の統制は年に1回または四半期ごとにしか行われないため、確かめられる件数が限られます。1件ごとの評価が重くなるということです。
回数が少ないため、1件ごとの評価が重くなる
🧭 2つの捉え方
決算・財務報告プロセスは、2つの捉え方に分かれます。1つは全社レベルのものとして、全社的な内部統制に準じて評価するもの。もう1つは、重要な事業拠点の業務プロセスとして評価するものです。
2つの捉え方があり、どちらで扱うかで評価の方法が変わる
総勘定元帳から財務諸表を作る過程、連結の手続、開示の作成といった、会社全体に関わる部分は全社レベルとして扱われます。この部分は、拠点を限定せずに評価の対象になります。
一方、引当金の見積りや資産の評価、税金費用の計算といった個別の論点は、業務プロセスとして扱われることがあります。どちらで扱うかによって評価の方法が変わるため、最初に整理しておきます。
📊 いつ評価するか
決算プロセスの評価で難しいのが、時期です。評価の基準日は期末日ですが、期末の決算作業が終わるのは期末日の後になります。基準日時点で有効かを判断するのに、その作業がまだ行われていないという状態が生じます。
前年度の実績で評価しておき、当年度で変更点を確かめる
実務では、前年度の決算の記録を使って整備状況と運用状況を確かめておき、当年度の決算では変更がないかを確認するという進め方が使われます。前年度の期末決算、当年度の四半期決算を対象にして評価を進め、当年度の期末決算で最終的な確認を行うという形です。
この方法をとる場合、前年度から当年度にかけて手続が変わっていないことを確かめる必要があります。会計基準の適用、システムの入れ替え、担当者の交代があれば、前年度の評価をそのまま使うことはできません。
工程の洗い出しから評価の時期の設計まで、間に合う形をご提案します。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🗂 何を統制として特定するか
決算プロセスの統制は、他の業務プロセスに比べて見つけにくいところがあります。伝票ごとの承認という形ではなく、チェックリストの確認、上位者による査閲、前期との比較分析といった形をとるためです。
実務でよく統制として特定されるのは、決算のスケジュール表と進捗の確認、勘定科目ごとの残高の確認と証憑との突合、前期比較や予算比較による異常の検出、上位者による財務諸表の査閲、開示のチェックリストによる確認といったものです。
これらの統制は、記録が残らないことが多いという課題があります。上位者が数値を見て確認したという事実が、どこにも残らないという状態です。評価の前提として、確認したことが分かる記録を残す運用に変えておく必要があります。日付と確認者を書いた欄をチェックリストに設けるだけでも足ります。
⚖️ 職務の分離が難しい
決算プロセスでは、少人数の経理担当者が作業を担うため、職務の分離が働きにくくなります。仕訳を作る人と承認する人が同じ、集計する人と確認する人が同じという状態が生じます。
この場合の対応としては、上位者による事後の確認を統制として位置づけることが考えられます。担当者が作った資料を、経理責任者や財務担当役員が確認するという形です。ただし、確認の内容が形式的であれば統制として機能しません。何を確かめたのかが分かる形にしておきます。
また、決算の重要な判断については、複数の人が関与する仕組みを作ります。引当金の見積り、減損の判定といった論点は、経理だけで決めるのではなく、事業部門の情報を踏まえ、経営会議や取締役会で確認するという流れにすれば、判断の妥当性が担保されます。この流れ自体が統制として説明できます。
❓ よくある質問
A. 実施の回数が年に1回または四半期ごとしかないためです。サンプルを抽出して確かめる方法が使えず、1件ごとの評価が重くなります。
A. 総勘定元帳から財務諸表を作る過程や連結の手続は全社レベル、引当金の見積りや税金費用の計算などは業務プロセスとして扱われることがあります。
A. 前年度の決算の記録で整備と運用を確かめておき、当年度の決算では変更がないかを確認するという進め方が使われます。
A. 手続が変わっていないことが条件です。会計基準の適用、システムの入れ替え、担当者の交代があればそのままは使えません。
A. 決算スケジュールの進捗確認、残高と証憑の突合、前期比較による異常の検出、上位者による財務諸表の査閲、開示のチェックリストなどです。
A. 日付と確認者を書いた欄をチェックリストに設けるだけでも足ります。記録がなければ統制が行われたことを示せません。
A. 上位者による事後の確認を統制として位置づけます。ただし形式的な確認では機能しないため、何を確かめたのかが分かる形にします。
A. 経理だけで決めず、事業部門の情報を踏まえて経営会議や取締役会で確認する流れにします。この流れ自体が統制として説明できます。
📄 まとめ
決算プロセスは実施の回数が少ないため、1件ごとの評価が重くなります。サンプル抽出の考え方は使えません。
全社レベルとして扱う部分と業務プロセスとして扱う部分があります。どちらかで評価の方法が変わるため最初に整理します。
前年度の決算で評価しておき、当年度で変更点を確かめるという進め方が現実的です。手続が変わっていないことが条件になります。
統制はチェックリストや査閲という形をとります。確認したことが分かる記録を残す運用が前提になります。
職務の分離が難しい場合は、上位者の事後確認と、重要な判断への複数人の関与で補います。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
評価範囲の決定
- 評価範囲の決め方
- 全社的な内部統制の評価
- 重要な事業拠点の選定
- 勘定科目と業務プロセスの識別
- 決算・財務報告プロセスの評価(この記事)
- 評価範囲外から不備が出たとき
文書化
評価の実施
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し