内部統制報告制度の評価は連結ベースで行うことが原則です。親会社だけでなく、連結の対象となる子会社も含めて、企業集団全体の仕組みが評価の対象になります。
ただし、すべての子会社を同じ深さで評価するわけではありません。評価範囲の決定という段階で、どの会社を含めるかを重要性の観点から判断します。
この記事では、対象ごとの扱いの違い、上場子会社や関連会社の特別な扱い、在外子会社の3つの制約、連結の範囲が変わったときの見直しを整理します。
- 連結の範囲と評価の扱いを対象ごとに整理
- 上場している子会社の評価結果を利用するときの確認点
- 持分法適用関連会社にどこまで求められるか
- 在外子会社で生じる言語・会計基準・距離の制約と手当て
- 期中に取得した会社を評価範囲から除外する場合の説明
- 連結の範囲や組織再編があった年度の見直し
図 子会社を評価範囲に含めるかの判定
📌 結論 連結ベースが原則
内部統制報告制度の評価は、連結ベースで行うことが原則とされています。親会社だけを見ればよいのではなく、連結の対象となる子会社も含めて、企業集団全体の財務報告の信頼性を確保する仕組みが評価の対象になります。
ただし、すべての子会社を同じ深さで評価するわけではありません。評価範囲の決定という段階で、どの会社を対象に含めるかを重要性の観点から判断します。子会社の数が多い会社では、この判断が作業量を大きく左右します。
支配していない会社に同じ手続を求められないという前提から考える
🧭 特別な扱いになる会社
子会社自身が上場していて、独自に内部統制報告制度の対象になっている場合があります。この場合、その子会社が行った評価の結果を利用できる余地があります。同じ会社について親子で二重に評価する必要はないという考え方です。
ただし、利用にあたっては範囲と時期を確認します。子会社の評価が親会社の連結の観点から十分な範囲をカバーしているか、決算期が異なる場合に時期のずれをどう扱うかといった論点が出ます。利用できる前提で計画を立てて、後から追加の作業が必要になることを避けるため、早めに確認しておきます。
持分法適用関連会社については、支配していないため、子会社と同じ手続を求めることが実際には難しくなります。影響力の程度に応じて、どこまで確かめられるかを検討することになります。相手が上場会社であれば、その会社の開示を利用するという方法もあります。
連結の範囲が変わった年度は、範囲の見直しを必ず行う
📊 在外子会社の扱い
在外子会社も評価の対象に含まれます。ここで生じるのが、言語、会計基準、距離という3つの制約です。文書も証憑も現地語で作られており、会計基準も現地のものが使われ、往査の頻度も上げられません。
言語と距離の制約は、事前準備の量で埋めるしかない
言語については、すべてを翻訳することは現実的ではないため、評価に必要な部分に絞ります。統制の内容を記した文書と、評価の結論を書く調書は日本語または英語でそろえ、証憑は現地語のまま添付して要点だけを注記するという形が実務的です。
会計基準については、現地の基準で作られた財務諸表を連結の基準に組み替える過程が重要になります。この調整の作業自体が財務報告に直結するため、決算・財務報告プロセスの一部として評価の対象に含めるかを検討します。
連結の一覧づくりから在外子会社の手当てまで、負荷の小さい形をご提案します。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🗂 新しく取得した会社
期中に株式を取得して子会社になった会社の扱いは、取得の時期によって変わります。期末に近い時期に取得した場合、評価に必要な期間が確保できないことがあります。
この場合、評価の範囲から除外し、その旨と理由を報告書に記載するという扱いが検討されます。ただし、除外すればよいというものではなく、なぜ評価できなかったのかが説明できる必要があります。取得から期末までの期間、統制の状況を把握するために行ったことを記録しておきます。
翌年度は当然に評価の対象になるため、取得した年度のうちに文書化を始めておくことが望ましいところです。取得の直後は現地の体制も落ち着いていないため、早く着手するほど後が楽になります。
⚖️ 連結の範囲が変わったとき
連結の範囲は毎期変わります。新しく子会社にした会社、売却した会社、清算した会社があれば、評価の範囲も見直す必要があります。前年度の範囲をそのまま使うと、対象にすべき会社が漏れます。
実務としては、年度の計画を立てる段階で、連結の範囲の一覧を経理から受け取り、前年度と突き合わせます。増減があれば、その会社の重要性を判断して範囲に含めるかを決めます。
また、組織再編によって会社の形が変わった場合も注意が必要です。合併により事業が別の会社に移った、会社分割で新しい会社ができたといった場合、業務プロセスも移動します。前年度に評価した業務プロセスが別の会社に属することになるため、文書と評価の対象を組み替えます。この作業は見落とされやすく、期末になって気づくと対応が間に合いません。
❓ よくある質問
A. 連結ベースが原則ですが、すべてを同じ深さで評価するわけではありません。評価範囲の決定という段階で重要性の観点から対象を選びます。
A. その子会社が行った評価の結果を利用できる余地があります。ただし範囲が十分か、決算期のずれをどう扱うかを早めに確認しておきます。
A. 支配していないため子会社と同じ手続を求めることは難しくなります。影響力の程度に応じてどこまで確かめられるかを検討します。
A. すべての翻訳は現実的ではありません。統制の内容を記した文書と調書はそろえ、証憑は現地語のまま添付して要点を注記する形が実務的です。
A. 現地の基準から連結の基準に組み替える過程が財務報告に直結するため、決算・財務報告プロセスの一部として評価の対象に含めるかを検討します。
A. 評価に必要な期間が確保できない場合、範囲から除外してその旨と理由を報告書に記載する扱いが検討されます。なぜ評価できなかったかの説明が必要です。
A. 翌年度は当然に対象になるため、その年度のうちに文書化を始めておきます。取得直後は体制が落ち着いていないため、早く着手するほど後が楽になります。
A. 業務プロセスが別の会社に移動します。前年度に評価したプロセスの帰属が変わるため、文書と評価の対象を組み替える必要があります。
📄 まとめ
評価は連結ベースが原則ですが、すべての子会社を同じ深さで評価するわけではありません。重要性の観点で対象を選びます。
上場している子会社の評価結果は利用できる余地があります。範囲と時期のずれを早めに確認しておきます。
在外子会社では言語、会計基準、距離という3つの制約があります。翻訳は評価に必要な部分に絞ります。
期末近くに取得した会社を範囲から除外する場合も、なぜ評価できなかったかの説明が必要です。
連結の範囲や組織再編があった年度は、評価範囲の見直しを必ず行います。期末に気づくと対応が間に合いません。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
- 内部統制報告制度とは
- 4つの目的と6つの基本的要素
- 参照する基準と府令
- 内部統制基準の改訂
- 連結ベースの評価(この記事)
- 評価のスケジュール
評価範囲の決定
文書化
評価の実施
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し