GOのIPO|主要株主2社との利益相反管理と優先株式の整理【Ⅰの部から読む上場準備】

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

2026年6月16日、タクシーアプリ『GO』を運営するGO株式会社(証券コード581A)が東証グロース市場に上場しました。同社は1977年に日本交通グループのシステム受託開発会社として設立され、2020年にディー・エヌ・エー(DeNA)のタクシーアプリ関連事業と統合したという経緯を持つ会社です。上場申請時点では日本交通ホールディングスとDeNAがそれぞれ議決権の25.7%を保有する「その他の関係会社」であり、NTTドコモ、トヨタ自動車、KDDIなどの事業会社が株主に名を連ねています。売上高300億円を超える規模でのグロース市場上場であり、上場準備会社にとって学べる論点が多いケースです。

結論からいえば、GOのⅠの部から学べるのは、①親会社のない「主要株主2社の均衡保有」のもとで利益相反を管理する特別委員会の設計、②監査等委員会設置会社への移行と社外取締役が過半数を占める少人数の取締役会、③A〜D種の優先株式を取得・消却して普通株式に一本化し、株式分割で上場に備えた資本政策の整理、④有償・業績条件付き・フルバリュー型を組み合わせたストック・オプションの設計、⑤決済代金を預かるプラットフォームならではの収益認識(代理人としての純額表示)と、黒字化局面での繰延税金資産の見積りの5点です。本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)の記載をもとに、これらの論点を上場準備の実務の目線で整理します。

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GOはどのような会社で、どの市場に上場したのか

まず、会社と上場の概要を確認します。GOは、タクシーアプリ『GO』を中心に、タクシーの配車・決済・広告・車載端末などのサービスを提供している会社です。ミッションに「移動で人を幸せに。」、ビジョンに「日本を動かす、社会インフラへ。」を掲げています。

設立は1977年8月17日です。日本交通㈱のシステム受託開発子会社「株式会社日交計算センター」として設立され、その後、日交データサービス、JapanTaxi、Mobility Technologiesと商号を変え、2023年4月に現在のGO株式会社となりました。決算期は5月末で、Ⅰの部の最近事業年度は第49期(2025年5月期)です。

グループは、当社、連結子会社3社(㈱IRIS、愛のタクシーチケット㈱、㈱MOMO A)、持分法適用関連会社2社(GOドライブ㈱、GOジョブ㈱)の計6社で構成されています。親会社はなく、日本交通ホールディングス㈱と㈱ディー・エヌ・エーが「その他の関係会社」に該当します。

項目 内容
会社名 GO株式会社(英訳名 GO Inc.)
証券コード・市場 581A・東証グロース市場
上場日 2026年6月16日
本店所在地 東京都港区麻布台(麻布台ヒルズ森JPタワー)
代表者 代表取締役会長 川鍋 一朗、代表取締役社長 中島 宏(2名代表)
設立 1977年8月17日(株式会社日交計算センターとして設立)
決算期 5月31日(最近事業年度は第49期=2025年5月期)
事業 GO事業(報告セグメント)及びその他(インキュベーション事業)
従業員数 連結602名(臨時86.1名・外数、2026年3月31日現在)、単体558名・平均年齢38.5歳
監査法人 EY新日本有限責任監査法人
機関設計 監査等委員会設置会社(2023年8月に監査役設置会社から移行)

従業員は連結で602名です。単体の内訳は、GO事業170名、その他56名、全社(共通)332名で、全社(共通)にはアプリ等を開発するエンジニア部門と管理部門が含まれると記載されています。労働組合はありません。また、女性管理職比率14.9%、男性の育児休業取得率66.7%、男女の賃金差異(全労働者)63.1%といった人的資本関連の指標も開示されています。

上場前の株主数は21名(2026年3月31日現在)と少数で、金融機関、金融商品取引業者、事業会社などの法人株主で構成されています。個人株主は名簿上0名で、取締役の所有株式数も役員一覧ではすべて「-」とされており、経営陣の持分はストック・オプション(新株予約権)の形で保有されています。この点は後の資本政策の章で詳しく見ていきます。

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GOは何で稼いでいるのか(事業内容と収益モデル)

GOの事業は、報告セグメントである「GO事業」と、報告セグメントに含まれない「その他」に分かれています。GO事業はさらに「アプリ配車」と「タクシー関連サービス」の2つに区分されています。2025年5月期の売上構成比は、アプリ配車が43.2%、タクシー関連サービスが43.5%、その他が13.3%です。

アプリ配車には、タクシーアプリ『GO』のほか、上位車両を配車する『GO PREMIUM』、法人向けの『GO BUSINESS』が含まれます。Ⅰの部によれば、『GO』を利用可能なタクシー台数は約85,000台(2025年12月時点)、累計ダウンロード数は3,500万(2026年2月時点)、『GO BUSINESS』の契約は15,000件超(2026年3月時点)とされています。

タクシー関連サービスには、乗車料金の決済(『GO Pay』等)、連結子会社㈱IRISのタクシーメディア『TOKYO PRIME』による広告、乗務員端末・決済端末・広告端末などの車載端末、タクシーチケット(電子チケットと、子会社の愛のタクシーチケット㈱による紙のチケット)が含まれます。Ⅰの部では、タクシー関連サービスを安定したキャッシュ・フローの源泉と位置づけています。

「その他」はインキュベーション事業と位置づけられ、EVタクシーの車両・充電・エネルギーマネジメントといったGX関連、『GO Charge』、相乗りの『GOエコノミー』、自動運転タクシーの実証、軽貨物の利用運送(㈱MOMO A)などが含まれます。

GOの事業モデルユーザー(乗客)個人・法人タクシーアプリ『GO』GO事業(配車・決済)タクシー事業者パートナー事業者㈱IRIS(51%子会社)タクシー広告「TOKYO PRIME」フリークアウト・HDIRIS株49%・販売代理店売上の区分(2025年5月期の売上構成比)アプリ配車 43.2%ユーザー利用料・事業者手数料タクシー関連サービス 43.5%決済手数料・広告料・端末利用料その他 13.3%GX・相乗り・自動運転・物流配車依頼配車車内広告広告販売

図1 GOの事業モデルと売上区分(2025年5月期の売上構成比。Ⅰの部「事業の内容」をもとに筆者作成)

主要な販売先として、㈱フリークアウト(同一企業集団の集約)が記載されています。2025年5月期の販売実績は4,946百万円(売上高の15.7%)です。同社グループのフリークアウト・ホールディングスは㈱IRISの株式の49%を保有し、広告サービスの販売代理店として広告サービス売上の大部分を構成していると記載されています。つまり、合弁パートナーが同時に主要な販売先でもあるという構造です。

中長期の成長戦略として、アプリ配車については「実車数」と「1実車当たり平均売上高」の双方を伸ばすことが掲げられています。KPIとして開示されているのは、実車数(2025年5月期 9,631万実車、前年比25%増)、1実車当たり平均売上高(2025年5月期141円超、第50期第3四半期累計163円)、平均MAU(2025年5月期271万人、第50期第3四半期累計312万人)の3つです。なお、これらのKPIは社内データに基づくもので、第三者の検証・監査を受けていない旨が事業等のリスクに明記されています。

上場準備会社にとってのポイント:KPIは「定義」と「算定根拠」をセットで用意する

グロース市場では、事業計画及び成長可能性に関する事項の開示が求められ、KPIを用いて成長ストーリーを説明することが一般的です。GOのように「アプリ配車売上÷実車数」といった定義を明示し、そのKPIが第三者の検証を受けていないことをリスクとして開示しておくと、投資家にとっても審査上も理解しやすくなります。

実務では、KPIの定義、集計元のシステム、集計手順、承認者を文書化し、毎期同じ方法で算定できる状態にしておくことが大切です。引受審査や取引所審査では、KPIの数値がどのデータから、どのような手順で集計されているかを確認されることがあります。成長可能性の説明の考え方は、グロース市場の「高い成長可能性」とはでも解説しています。

GOはどのような道のりを経て上場したのか(沿革)

GOの沿革は、日本交通グループの社内システム会社として始まり、タクシーアプリ事業の統合を経て独立したプラットフォーム企業へと変わっていく流れとして読むことができます。

前身の㈱日交計算センターは、日本自動車㈱(現在の日本交通㈱)の子会社として1977年8月に設立されました。1992年1月に㈱日交データサービスへ商号を変更し、2011年1月には日本初のタクシーアプリとされる『日本交通タクシー配車』の提供を開始しています。同年12月には『全国タクシー』を全国10エリアで提供開始しました。

2015年8月にJapanTaxi㈱へ商号を変更し、同年10月の日本交通グループの再編で日本交通ホールディングス㈱の完全子会社となりました。2016年6月には㈱フリークアウトとの合弁で㈱IRISを設立し、タクシー広告事業を始めています。

大きな転機は2020年4月です。DeNAのタクシーアプリ関連事業(『MOV』、『DRIVE CHART』など)と事業統合し、㈱Mobility Technologiesに商号を変更しました。同年9月にはタクシーアプリ『GO』の提供を全国11エリアで開始しています。その後、2021年10月に『GO BUSINESS』、2023年2月に『GOチケット』の提供を開始し、2022年6月には愛のタクシーチケット㈱を子会社化しました。

2023年4月にGO株式会社へ商号を変更し、同年8月には監査役設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しています。2024年12月にはWaymo社・日本交通㈱と自動運転に関する戦略的パートナーシップを締結しました。2025年には、7月に㈱MOMO Aを連結子会社化し、8月にスマートドライビング事業(GOドライブ㈱)、9月に採用支援事業(GOジョブ㈱)をそれぞれ新設分割で分社化して持分法適用会社としています。そして2026年1月から2月にかけて優先株式の整理と株式分割を行い、同年6月の上場に至りました。

沿革と上場までの主な出来事1977年8月日交計算センター設立2011年1月日本初のタクシーアプリ2015年8月JapanTaxi㈱に商号変更2020年4月・9月DeNA事業と統合『GO』提供開始2023年4月・8月GO㈱に商号変更監査等委員会設置会社へ2025年7〜9月MOMO Aを子会社化2事業を分社化2026年1〜2月優先株式の整理株式分割(1:100)2026年6月16日東証グロース市場に上場

図2 GOの沿革(Ⅰの部「沿革」をもとに筆者作成)

上場準備会社にとってのポイント:組織再編の経緯は「なぜその形になったか」を説明できるようにする

GOのように、グループ再編、他社事業との統合、子会社の取得、事業の分社化といった組織再編を何度も経て上場する会社では、審査で「現在の資本関係・事業の範囲がなぜこの形になっているのか」を一貫したストーリーで説明することが求められます。特に、上場直前期に事業を切り出して持分法適用会社にした場合は、切り出した事業の業績や、切り出し後も残る取引関係・債務保証などを整理しておく必要があります。

沿革は、Ⅰの部の中でも審査担当者が最初に目を通す部分の一つです。商号変更、本店移転、機関設計の変更、主要な提携やM&Aの時期を正確に整理し、登記簿や契約書と突き合わせて記載するようにしましょう。

業績はどのように推移してきたのか

次に、業績の推移を見ていきます。GOは連結財務諸表を作成していますが、Ⅰの部の「主要な経営指標等の推移」に記載されている連結の数値は第48期(2024年5月期)と第49期(2025年5月期)の2期分です。そのため、5期分の推移は提出会社(単体)の数値で確認します。

項目(単体) 第45期
2021/5
第46期
2022/5
第47期
2023/5
第48期
2024/5
第49期
2025/5
売上高 5,085 8,405 14,460 21,679 29,043
経常利益 △12,303 △10,929 △8,351 △2,674 1,073
当期純利益 △13,724 △11,122 △8,697 △2,973 1,536
純資産 17,895 14,330 15,632 13,322 15,068
総資産 25,134 27,806 37,322 42,858 51,976
自己資本比率(%) 71.2 51.5 41.9 31.1 28.6
従業員数(人) 330 358 430 537 584

(単位:百万円。Ⅰの部「主要な経営指標等の推移(提出会社)」から作成。第45期〜第47期は会社計算規則に基づく数値で、監査対象外と記載されています。)

単体の売上高と経常利益の推移売上高(百万円)経常利益(百万円)08,00016,00024,00032,00021/522/523/524/525/55,0858,40514,46021,67929,043△12,303△10,929△8,351△2,6741,07321/522/523/524/525/5

図3 単体の売上高と経常利益の推移(第45期〜第49期、百万円。Ⅰの部「主要な経営指標等の推移」から作成)

単体の売上高は、第45期の5,085百万円から第49期の29,043百万円へと大きく伸びています。一方で、利益面では第45期から第48期まで経常損失が続き、第49期に経常利益1,073百万円と黒字に転換しました。Ⅰの部では、第45期から第48期の損失について、顧客基盤拡大のためのマーケティング施策(広告宣伝費の増加)によるものと説明されています。

連結では、第49期(2025年5月期)の売上高が31,434百万円(前期比31.2%増)、営業利益が2,728百万円、経常利益が2,632百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が2,000百万円となりました。売上原価率は55.6%から48.4%へ、販管費率は52.4%から43.0%へとそれぞれ低下しており、売上の伸びに対して費用の伸びが抑えられたことで黒字化したことが読み取れます。

売上原価率と販管費率の変化(連結)015304560売上原価率販管費率55.6%48.4%52.4%43.0%2024年5月期2025年5月期

図4 連結の売上原価率・販管費率(%)。Ⅰの部の記載をもとに筆者作成

項目(連結) 第48期
2024/5
第49期
2025/5
第50期中間
2025/6〜11
第50期3Q累計
2025/6〜2026/2
売上高 23,955 31,434 19,239 30,095
営業利益 △1,910 2,728 3,341 5,491
経常利益 △1,985 2,632 3,369 5,481
親会社株主に帰属する当期(中間・四半期)純利益 △3,307 2,000 3,942 5,825
営業キャッシュ・フロー △1,121 5,041 3,669 6,412
純資産 14,980 17,548 22,277 24,486
総資産 46,740 57,073 62,769 65,315

(単位:百万円。第48期の営業利益はセグメント情報の連結営業利益。第50期中間・第3四半期累計はEY新日本有限責任監査法人の期中レビューの対象です。)

直近の第50期では、第3四半期累計(2025年6月〜2026年2月)で売上高30,095百万円、営業利益5,491百万円(営業利益率18.2%)となっています。中間期には、GOドライブ㈱・GOジョブ㈱を持分法適用会社としたことに伴う持分変動利益825百万円を特別利益に計上しています。第3四半期末には利益剰余金が334百万円とプラスに転じました。

セグメント別に見ると、GO事業の利益で全社費用を賄う構造

セグメント情報を見ると、2025年5月期のGO事業のセグメント利益は8,494百万円、その他は13百万円で、これに全社費用(調整額)△5,779百万円を加えた結果、連結営業利益が2,728百万円となっています。第50期第3四半期累計では、GO事業の利益10,954百万円に対し、その他は△580百万円、全社費用は△4,882百万円です。

セグメント利益から連結営業利益へ2025年5月期第50期第3四半期累計GO事業8,494その他+13全社費用-5,779営業利益2,728GO事業10,954その他-580全社費用-4,882営業利益5,491

図5 セグメント利益と全社費用(調整額)から見た連結営業利益(百万円。Ⅰの部「セグメント情報」から作成)

また、GOは調整後EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額+株式報酬費用+自動運転費用)も開示しており、2025年5月期は3,382百万円、第50期第3四半期累計は6,694百万円と記載されています。会社独自の調整後指標を開示する場合は、このように計算式を明示することが前提になります。

上場準備会社にとってのポイント:赤字期間の「理由」と黒字化の「再現性」を説明する

グロース市場は赤字でも上場できる市場ですが、審査では、赤字の理由が計画的な先行投資によるものか、黒字化に向けた道筋に合理性があるかが確認されます。GOの場合、損失の理由を広告宣伝費の増加と明記し、原価率・販管費率の改善とKPI(実車数・単価)の伸びで黒字化を説明しています。

自社で同じような説明をする際は、広告宣伝費などの先行投資を止めたときに売上がどう変化するか、単価や継続率がどう推移しているかを、月次のデータで示せるようにしておくと説得力が増します。継続性・収益性の審査の考え方は、IPO審査の「企業の継続性及び収益性」もあわせてご覧ください。

資本政策と株主構成はどうなっているのか

GOの資本政策は、上場準備会社にとって特に学びの多い部分です。親会社のない「主要株主2社の均衡保有」、事業会社中心の株主構成、優先株式の整理、多様なストック・オプションという4つの特徴があります。

日本交通ホールディングスとDeNAが25.7%ずつを保有

Ⅰの部によれば、日本交通ホールディングス㈱と㈱ディー・エヌ・エーは、それぞれ当社の議決権の25.7%を保有する「その他の関係会社」です。どちらも単独では過半数を持たないため、GOには金融商品取引法上の親会社等はありません。日本交通ホールディングスについては、上場後も株式を継続保有する意向であることが事業等のリスクに記載されています。

第四部「株主の状況」では、潜在株式を含む総数86,286,400株に対する割合で大株主が開示されています。上位は、日本交通ホールディングスとDeNAが各20,000,000株(各23.2%)、NTTドコモが14,198,400株(16.5%)、トヨタ自動車が5,000,000株(5.8%)、ゴールドマン・サックス系のグローバルグロースホールディングスツー合同会社が4,935,200株(5.7%)、あいおいニッセイ同和損害保険が4,798,500株(5.6%)です。代表取締役社長の中島宏氏(2,256,000株、2.6%)と代表取締役会長の川鍋一朗氏(1,866,200株、2.2%)は、いずれも全量が新株予約権による潜在株式です。

大株主上位10名の持株比率日本交通ホールディングス23.2%ディー・エヌ・エー23.2%NTTドコモ16.5%トヨタ自動車5.8%グローバルグロースHDツー5.7%あいおいニッセイ同和損保5.6%中島 宏(社長)2.6%川鍋 一朗(会長)2.2%SMBC信託銀行2.0%KDDI1.7%その他の関係会社(各議決権25.7%)事業会社・金融機関投資会社代表取締役(全て新株予約権)

図6 大株主上位10名(潜在株式を含む総数86,286,400株に対する割合。Ⅰの部 第四部「株主の状況」から作成)

このほか、KDDI、東京センチュリー、電通グループ、アイシン、デンソー、豊田通商、Kakao Mobilityといった事業会社や、帝都自動車交通、大和自動車交通、岡山交通、東京無線協同組合などのタクシー事業者が株主・新株予約権者として記載されています。ベンチャーキャピタル中心の株主構成とは異なり、事業上の提携関係にある事業会社が株主の大半を占めている点が特徴です。

上場準備会社にとってのポイント:主要株主との関係は「独立性」の観点で整理する

親会社がない場合でも、大株主である事業会社との間に取引関係や役員の兼務があると、審査では「その株主から独立して事業を運営できるか」「少数株主の利益が害されないか」が確認されます。GOの場合、日本交通グループのタクシー事業者とのアプリ配車等の取引、DeNAへのシステム運用・保守・開発の委託やクラウドサービスの利用などがⅠの部に記載されており、後述する特別委員会でこうした利益相反のリスクを監視する体制が示されています。

主要株主2社との関係と利益相反の監視日本交通ホールディングス議決権25.7%ディー・エヌ・エー議決権25.7%GO株式会社親会社なし特別委員会利益相反を監視日本交通グループのタクシー事業者ディー・エヌ・エーシステム運用・保守・開発出資出資監視アプリ配車等の取引委託・クラウド利用

図7 主要株主との資本・取引関係と特別委員会の位置づけ(Ⅰの部の記載をもとに筆者作成)

親会社等がある場合の考え方は、親会社がある状態で上場できるのかやIPO審査の「親会社等からの独立性」で詳しく解説しています。

優先株式の発行と減資を繰り返してきた資本金の推移

GOはこれまで、A種・B種・C種・D種の優先株式を発行して資金を調達してきました。Ⅰの部の「発行済株式総数、資本金等の推移」を見ると、優先株式の発行で資本金が増えた後、その都度減資を行って資本金を100百万円に戻していることがわかります。

年月日 内容 資本金残高
2021年5月31日 減資(資本金・資本準備金をその他資本剰余金へ) 100,000千円
2021年6月30日 C種優先株式 47,985株の第三者割当(発行価格157,500円) 3,878,818千円
2022年5月31日 減資 100,000千円
2023年5月19日 D種優先株式 60,468株の第三者割当(発行価格165,375円) 5,099,947千円
2023年5月30日 減資 100,000千円
2023年11月〜12月 D種優先株式 計4,010株の第三者割当(発行価格165,375円) 431,576千円
2024年5月30日 減資 100,000千円
2026年1月21日 優先株式の取得の対価として普通株式376,796株を交付 100,000千円
2026年1月22日 優先株式を全株消却 100,000千円
2026年2月20日 株式分割(1:100)、発行済株式総数77,679,600株 100,000千円

(Ⅰの部「発行済株式総数、資本金等の推移」から作成。株数・発行価格は株式分割前のもの。)

減資の目的について、Ⅰの部では「財務体質の健全化を図るとともに、今後の資本政策の柔軟性及び機動性を確保」するためと記載されています。また、2024年5月期には資本剰余金による欠損填補(7,671百万円)が行われています。

一般論として、資本金の額は会社法上の分配可能額だけでなく、法人税や地方税(中小法人向けの特例や外形標準課税など)の取扱いにも影響します。資本金・資本剰余金を動かす際には、会計・税務の両面から影響を確認しておくことが大切です。

上場直前に優先株式を普通株式へ一本化

上場に向けた株式の整理は、2026年1月から2月にかけて短期間で行われています。2026年1月21日、A〜D種優先株主による取得請求権の行使を受けて、当社は全ての優先株式を自己株式として取得し、その対価として優先株式1株につき普通株式1株(合計376,796株)を交付しました。翌1月22日の取締役会で、取得した優先株式を全て消却することを決議しています。

さらに、1月30日の臨時株主総会で種類株式に関する定款の定めを廃止するとともに単元株制度(100株)を採用し、2月20日を効力発生日として1株を100株に分割しました。株式分割の目的は、流動性の向上と投資家層の拡大と記載されています。この結果、発行済株式総数は普通株式77,679,600株となり、自己株式は保有していない状態になりました。

上場に向けた株式の整理の流れ2021年6月〜2023年12月C種・D種優先株式を第三者割当で発行2021年5月〜2024年5月減資を行い、資本金を100百万円に2026年1月21日取得請求権の行使を受け、優先株式1株につき普通株式1株を交付2026年1月22日・30日優先株式を消却、定款の種類株式の定めを廃止2026年2月20日株式分割(1:100)、発行済株式総数77,679,600株2026年6月16日東証グロース市場に上場

図8 優先株式の発行から上場までの資本政策の流れ(Ⅰの部「発行済株式総数、資本金等の推移」等から作成)

第四部の「特別利害関係者等の株式等の移動状況」には、この優先株式から普通株式への転換が株主ごとに記載されています。たとえばNTTドコモはB種1,500,000株とC種12,698,400株(分割後換算)の優先株式に対して普通株式14,198,400株の交付を受けています。また、2023年7月にはゴールドマン・サックス・グループの各エンティティ間で、株主間契約に基づく出資持分の調整としてD種優先株式の移動(1株当たり1,653.8円、分割後換算)が行われており、価格はDCF法及び類似会社比準方式で算出した価格を総合勘案して決定したと記載されています。

上場準備会社にとってのポイント:種類株式の整理は「手続の順番」が重要

優先株式などの種類株式を発行している会社は、上場前に普通株式へ転換するのが一般的です。転換の方法には、取得条項や取得請求権を使って会社が種類株式を取得し、対価として普通株式を交付する方法などがあり、その後、自己株式となった種類株式を消却し、定款から種類株式の定めを削除するという流れになります。株式分割や単元株制度の導入もこのタイミングでまとめて行われることが多く、GOの事例はその典型的な手順を示しています。

手続には、取締役会・株主総会・種類株主総会の決議、登記、株主への通知などが必要で、投資契約や株主間契約の定め(みなし清算条項、拒否権など)の終了もあわせて整理する必要があります。詳しくは種類株式は上場前に普通株式へ戻すのかをご覧ください。

また、株主が21名の法人株主のみという状態から上場する場合、流通株式の要件をどう満たすかも重要な論点です。グロース市場の上場審査では、株主数150人以上、流通株式数1,000単位以上、流通株式時価総額5億円以上、流通株式比率25%以上といった形式要件があり、大株主や役員等が保有する株式は流通株式から除かれます。計算方法は流通株式比率の計算式と調べ方で解説しています。

ストック・オプションは「目的別」に多様な設計

GOのⅠの部で目を引くのが、ストック・オプション(新株予約権)の種類の多さです。第3回から第15回まで(第7回の2を含む)、無償・有償、通常型・業績条件付き・フルバリュー型、役員・従業員向けと取引先向けなど、目的に応じてさまざまな設計の新株予約権が発行されています。主なものを整理すると次のとおりです(株数・行使価額は株式分割後)。

回 付与対象(当初) 目的株式数
(2026/4末)
行使価額 主な特徴
第3回 取締役2名・社外協力者3名 2,200,000株 218円 有償新株予約権。在職条件なし。行使価額を下回る価格での発行・取引等があった場合に行使できなくなる条件付き
第4回 取締役2名・従業員272名 1,934,800株 218円 上場や在職を行使条件とする通常型
第7回・第7回の2 取締役・従業員 776,300株/155,000株 617円 上場日(又はロックアップ期間末日の翌日)から1/3ずつ段階的に行使可能
第9回 取締役2名 644,600株 極めて低い行使価額 フルバリュー型。上場後2年間の代表取締役在任で40%行使可能、以後四半期ごとに5%ずつ加算
第11回 取締役2名・従業員68名 282,700株 極めて低い行使価額 第9回と同様のフルバリュー型(在職条件)
第13回 取締役2名 1,295,600株 740円 有償新株予約権。連結売上高・連結EBITDA・株価の条件と代表取締役在任を行使条件とする
第14回 取締役2名・従業員76名 795,300株 740円 有償新株予約権。第13回と同様の業績・株価条件
第15回 取引先1社(東京無線協同組合) 100,000株 740円 取引先向けの新株予約権

(Ⅰの部「新株予約権等の状況」「第三者割当等の概況」から作成。第5回・第6回・第12回など一部の回は省略しています。)

役員報酬の方針では、代表取締役について「一般的な有償ストック・オプション」「株価・業績条件(売上、EBITDA)付きの有償ストック・オプション」「フルバリュー型ストック・オプション」を組み合わせると明記されています。つまり、新株予約権の多様さは、役員報酬の設計方針と結びついているということです。

第13回の業績・株価条件付き新株予約権は、モンテカルロ・シミュレーションで評価されており(ボラティリティ64.30%、予想残存期間10年など)、条件の設計と評価方法が具体的に開示されています。一方で、2024年9月に決議された第8回(取締役2名、3,239,100株)と第10回(取締役・従業員70名、867,600株)は、権利放棄によって全量が失効しています。

その結果、新株予約権による潜在株式は8,606,800株で、発行済株式総数77,679,600株の11.08%に相当します。Ⅰの部ではこの希薄化を事業等のリスクとして開示しており、顕在化の可能性を「高」としています。ストック・オプションの費用は、2025年5月期に販管費として188百万円、第50期第3四半期累計で242百万円が計上されています。

新株予約権による潜在株式の規模発行済株式総数77,679,600株潜在株式潜在株式 8,606,800株(発行済株式総数の11.08%)潜在株式を含む総数 86,286,400株(大株主の持株比率の分母)

図9 発行済株式総数と新株予約権による潜在株式(Ⅰの部「事業等のリスク」「株主の状況」から作成)

上場準備会社にとってのポイント:ストック・オプションは「会計・税務・確約」をセットで設計する

ストック・オプションの設計では、誰に何を期待するのかという報酬上の目的に加え、会計処理、税務、上場時のルールを一体で検討する必要があります。たとえば、有償新株予約権であっても、従業員等に権利確定条件を付けて付与する場合には、企業会計基準委員会の実務対応報告第36号に基づき、ストック・オプションに準じた費用計上が必要になります。未公開企業では、公正な評価単価の代わりに本源的価値で測定することが認められていますが、その前提となる株価の算定方法も審査で確認されます。

また、上場前の一定期間内に役員・従業員へ報酬として付与した新株予約権や、取引先などへ第三者割当で発行した株式・新株予約権には、取引所の規則に基づく継続所有等の確約が求められます。GOでも、役員・従業員向けの新株予約権について上場日の前日又は行使日までの所有等の確約、取引先向けの第15回について上場日以後6か月(割当日以後1年)を経過する日までの所有の確約が記載されています。

さらに、発行価格・行使価額の決め方も重要です。GOでは、2023年11月〜12月のD種優先株式の第三者割当(1株当たり1,653.8円、分割後換算)や新株予約権の発行価額・行使価額について、DCF法及び類似会社比準方式で算出した価格を総合勘案して決定したと記載されています。税制適格ストック・オプションの要件や株価算定の考え方は、税制適格ストックオプション、未上場株式の株価算定はどの方法を使うか、確約については上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)で解説しています。

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コーポレート・ガバナンスはどう設計されているのか

続いて、ガバナンス体制を見ていきます。GOは2023年8月25日に監査役設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しています。Ⅰの部では、取締役会の高度な意思決定と監督機能の強化を図るために監査等委員会設置会社を選択し、あわせて任意の指名・報酬委員会を設置したと説明されています。基本的な考え方として掲げているのは、「迅速な意思決定と業務執行への徹底的な監督の両立」です。

取締役5名のうち3名が独立社外の監査等委員

取締役は5名(男性4名・女性1名)で、代表取締役会長の川鍋一朗氏、代表取締役社長の中島宏氏の2名と、監査等委員である社外取締役3名で構成されています。社外取締役が過半数を占める、少人数の取締役会です。

監査等委員3名の顔ぶれは、常勤監査等委員の桑原清幸氏(公認会計士。監査法人勤務、大学院教授、上場会社の常勤監査役などを経験)、雨宮美季氏(弁護士)、寺田航平氏(寺田倉庫㈱代表取締役社長)です。会計、法務、経営の専門性をそれぞれ備えた構成になっています。社外役員の独立性については、独自の基準は定めておらず、東京証券取引所の独立役員の基準を参考にしていると記載されています。なお、寺田氏は第3回新株予約権を60個保有しており、それ以外の利害関係はないとされています。

取締役会は代表取締役会長が議長を務め、原則月1回開催されています。最近事業年度は12回開催(書面決議を除く)され、出席状況は寺田氏が11回、他の4名が12回全てに出席しています。主な検討事項として、中期経営計画、内部統制システムの運用状況、事業構造の最適化、提携案件が挙げられています。

GOの機関設計株主総会会計監査人(EY新日本)取締役会(5名)社内2名・社外3名原則月1回監査等委員会(3名)全員社外・常勤1名指名・報酬委員会(任意)委員長:社外取締役特別委員会主要株主との利益相反を監視代表取締役会長・社長内部統制監査室(2名)代表取締役直轄業務執行会議(GO15)週1回リスク・コンプライアンス委員会内部統制委員会選任選任選定・監督答申直轄議長連携報告・連携

図10 GOのコーポレート・ガバナンス体制(Ⅰの部「コーポレート・ガバナンスの概要」をもとに筆者作成)

指名・報酬委員会と、主要株主との利益相反を監視する特別委員会

任意の指名・報酬委員会は、会長、社長、社外取締役3名の5名で構成され、委員長は社外取締役の寺田航平氏です。年1回の開催が基本とされていますが、最近事業年度は6回開催され、取締役の選任、株式報酬制度の設計、個人別の報酬額の妥当性などが審議されています。

GOのガバナンスで特徴的なのが「特別委員会」です。主要株主との利益相反リスクの監視・監督を目的として設置され、代表取締役社長と独立社外取締役2名(委員長 桑原清幸氏、雨宮美季氏)で構成されています。利益相反取引の承認や関連当事者取引の報告のあり方などを年1回程度審議し、日常的な取引に含まれる利益相反の要素も継続的にモニタリングすると記載されています。

このほか、業務執行の意思決定機関として、社長を議長とし会長・社長・執行役員10名などで構成される業務執行会議「GO15」が週1回開催されています。副部長以上の社員と常勤監査等委員が陪席し、職務権限表に従って重要な業務執行を決議する仕組みです。さらに、人事委員会(月1回)、リスク・コンプライアンス委員会(四半期1回)、内部統制委員会が設置されています。

会議体 構成 開催頻度・役割
取締役会 取締役5名(うち社外3名)、議長は代表取締役会長 原則月1回。最近事業年度12回
監査等委員会 社外取締役3名(常勤1名)、委員長は桑原清幸氏 毎月定期開催。最近事業年度12回
指名・報酬委員会(任意) 会長・社長・社外取締役3名、委員長は寺田航平氏 年1回が基本。最近事業年度6回
特別委員会 社長・独立社外取締役2名、委員長は桑原清幸氏 年1回程度。主要株主との利益相反の監視
業務執行会議(GO15) 会長・社長・執行役員10名ほか 週1回。重要な業務執行を決議
リスク・コンプライアンス委員会 委員長は社長、法務・総務本部長、内部統制監査室長ほか 四半期1回
内部統制委員会 委員長は社長、副委員長は経営戦略本部長 内部統制実施計画の策定・有効性評価

役員報酬は固定報酬と株式報酬の組み合わせ

役員報酬の方針は2024年9月27日の取締役会で決議されています。報酬は、固定の基本報酬(月例)と非金銭報酬(株式報酬)で構成され、業績連動の金銭報酬はありません。代表取締役については株式報酬の割合を高く設定しています。

個人別の報酬額は、取締役会の決議により代表取締役会長と代表取締役社長に委任され、指名・報酬委員会への諮問結果を踏まえて両者の合意で決定する仕組みです。監査等委員である取締役の報酬は、株主総会で決議された範囲内で監査等委員会が決定します。報酬限度額は、取締役(監査等委員を除く)が年額150百万円以内、監査等委員が年額30百万円以内です。最近事業年度の報酬総額は、取締役(監査等委員及び社外取締役を除く)が83百万円(固定報酬のみ)、監査等委員である取締役が21百万円とされています。

個人別報酬の決定の流れ取締役会決議会長・社長に委任指名・報酬委員会へ諮問諮問結果を踏まえる会長・社長の合意で決定監査等委員である取締役の報酬:株主総会決議の範囲内で監査等委員会が決定

図11 取締役(監査等委員を除く)の個人別報酬の決定手続(Ⅰの部の記載をもとに筆者作成)

代表取締役会長の兼務と主要株主との取引

代表取締役会長の川鍋一朗氏は、日本交通㈱の取締役、日本交通ホールディングス㈱の代表取締役を兼務しているほか、東京ハイヤー・タクシー協会や全国ハイヤー・タクシー連合会の会長も務めています。Ⅰの部では、日本交通グループが当社最大の提携先であり、首都圏・大阪で同グループのタクシー事業者とアプリ配車等の取引があることが事業等のリスクに記載されています。

関連当事者との取引の注記については、2024年5月期・2025年5月期とも「重要性が乏しいため、記載を省略」とされています。そのうえで、主要株主との利益相反を管理する仕組みとして、前述の特別委員会が設けられているという整理です。

上場準備会社にとってのポイント:大株主と取引がある場合は「取引条件の妥当性」を説明できる仕組みを

上場審査では、役員や大株主などの関連当事者との取引について、取引の必要性と取引条件の妥当性が確認されます。開示上は重要性の基準によって注記が不要となる取引でも、審査の場では取引の内容や承認手続を説明できることが求められます。

GOのように、主要株主が事業上の提携先でもある場合には、①取引の一覧化、②取引条件を第三者取引と比較する方法の確立、③独立社外取締役を中心とした承認・モニタリングの仕組み、④取締役会への定期報告という流れを整えておくとよいでしょう。特別委員会のような独立した会議体を置く方法は、その一つの選択肢です。関連当事者取引の考え方はIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)、機関設計の選び方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?で解説しています。

また、監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役は3名以上で、その過半数を社外取締役とする必要があります(会社法331条6項)。常勤の監査等委員の選定は法律上の義務ではありませんが、GOのように常勤者を置いて重要会議への出席や往査を担ってもらう会社が多く見られます。社外取締役の人数の考え方は社外取締役は何人必要かをご覧ください。

内部監査・内部統制の体制はどうなっているのか

次に、内部監査と内部統制の体制を確認します。GOの内部監査は、代表取締役直轄の「内部統制監査室」が担当しています。人員は室長の沢谷孝行氏(責任者)と担当者1名の計2名です。

Ⅰの部によれば、同室は内部監査に加えて内部統制の整備・運用支援も兼務し、効率的な体制を構築していると記載されています。内部監査の計画は代表取締役の承認を受けて実施し、監査結果は代表取締役、監査等委員会、取締役会へ報告され、指摘事項のフォローアップも行われています。また、室長はリスク・コンプライアンス委員会と内部統制委員会の委員も務めています。

内部監査と三様監査の連携監査等委員会3名(常勤1名)内部統制監査室室長+担当者の2名会計監査人EY新日本代表取締役監査計画の承認・報告先兼務:内部統制の整備・運用支援子会社往査、取締役会への報告、フォローアップ結果報告・情報共有意見交換監査実施状況の共有報告

図12 内部統制監査室を中心とした監査の連携体制(Ⅰの部「監査の状況」をもとに筆者作成)

三様監査の連携と監査等委員会の活動

監査等委員会は、常勤1名と非常勤2名の社外取締役3名で構成され、毎月定期的に開催されています。最近事業年度は12回開催され、3名とも全回出席しています。常勤監査等委員は、取締役会その他の重要な会議への出席、稟議書などの重要書類の閲覧、当社及びグループ会社への往査を行っていると記載されています。

内部統制監査室は、常勤監査等委員及び会計監査人と定期的かつ適時に監査の実施状況を共有し、意見交換を行っています。いわゆる三様監査の連携が、監査等委員会・内部監査・会計監査人の三者で図られている体制です。

内部統制委員会とJ-SOXへの準備

財務報告に係る内部統制については、社長を委員長、経営戦略本部長(CFO)の森亮介氏を副委員長とする内部統制委員会が設置され、「内部統制実施計画書」の原案策定、推進、有効性の評価を担っています。内部統制システムの基本方針では、社長直轄の内部統制評価チームが業務プロセスのリスク評価を継続的に実施すると記載されています。

リスク管理については、「リスク管理・コンプライアンス規程」に基づき、毎年全社のリスクを洗い出し、毎月、影響度と発生頻度を評価する仕組みが整えられています。リスクインシデントの報告フローも定められており、リスク・コンプライアンス委員会の下にリスク分科会とコンプライアンス事務局(ガバナンス・コンプライアンス室)が置かれています。内部通報制度も整備され、通報者に対する不利益な取扱いの禁止が定められています。

子会社の管理については、関係会社管理規程に基づき、当社の人員を子会社の取締役として派遣するとともに、内部統制監査室が子会社への往査を行う体制です。このほか、ISMS(ISO/IEC 27001)の認証を2019年9月に取得していることも記載されています。

上場準備会社にとってのポイント:内部監査の兼務は「自己監査の回避」を設計に組み込む

上場準備会社では、内部監査の担当者が内部統制の整備や規程づくりを兼ねることは珍しくありません。人材が限られる中で、内部統制の仕組みを理解している人が内部監査を担うことには、効率面の利点があります。

ただし一般論として、自分が整備・運用に関与した業務を自分で監査すると、客観的な評価ができなくなるおそれがあります(自己監査)。兼務する場合は、①整備支援に関与した領域の監査を別の担当者や外部の専門家に任せる、②監査計画の段階で関与した領域を明確にする、③監査等委員会が監査の独立性をモニタリングする、といった工夫をあわせて設計しておくと、審査でも説明しやすくなります。

内部監査の人数は、会社の規模、拠点数、子会社の数、業務の複雑さによって変わります。少人数の場合は、リスクの高い領域に絞った監査計画と、外部専門家の活用を組み合わせるのが現実的です。詳しくは内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)、内部監査の人数と体制、監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査)もあわせてご覧ください。

会計・開示ではどのような論点があるのか

ここからは、会計と開示の論点を見ていきます。GOのⅠの部には、プラットフォーム事業ならではの収益認識、黒字化局面での繰延税金資産、事業の切り出しに伴う会計処理など、上場準備会社にとって参考になる記載が多く含まれています。

収益認識:アプリ配車収入とタクシー関連サービス収入の区分

GO事業の主な収益は「アプリ配車収入」と「タクシー関連サービス収入」です。アプリ配車収入は、さらに次の2つに分けて収益を認識すると記載されています。

1つ目は、ユーザーに対するGOアプリ内の各種機能の利用料で、その機能を利用した配車が完了した時点で収益を認識します。2つ目は、GOアプリを通じた配車に応じてタクシー事業者に発生する手数料で、タクシー事業者との契約に基づき、契約に定めるサービス提供期間にわたり、配車実績に基づいて算定した額で収益を認識します。

タクシー関連サービス収入には、乗車料金・迎車料金等をタクシー事業者に代わって収受することに対する決済手数料、タクシー内の広告料、車載端末の利用料などが含まれ、決済額、広告の出稿期間、車載端末の利用期間及び台数等の実績に基づいて、サービス提供期間にわたり収益を認識するとされています。

そして重要なのが、代理人に該当すると判断したものは、他の当事者への支払額を控除した純額で収益を認識していることです。乗車料金そのものはタクシー事業者の売上であり、GOは決済を代行して手数料を受け取る立場であるため、売上高には手数料部分のみが計上されることになります。

決済代金の両建てで貸借対照表が大きくなる構造

決済を代行するビジネスでは、売上高に比べて貸借対照表の規模が大きくなることがあります。GOの2025年5月期末の連結貸借対照表には、決済会社に対する未収入金20,599百万円と、タクシー事業者に対する未払金29,886百万円が計上されています。MD&Aでも、GO Pay決済等に係る未収入金の増加(4,445百万円)と、パートナータクシー事業者への未払金の増加(6,350百万円)が説明されています。

決済代行の資金の流れと貸借対照表ユーザー(乗客)決済会社GOタクシー事業者2025年5月期末の連結貸借対照表では両建て、売上高は純額売上高手数料部分のみ未収入金(決済会社)20,599百万円未払金(タクシー事業者)29,886百万円乗車料金入金支払

図13 乗車料金の決済代行と2025年5月期末の連結貸借対照表の科目(Ⅰの部の記載をもとに筆者作成)

対処すべき課題には、決済代金をタクシー事業者に支払うための手許流動性の確保が挙げられており、2026年3月末時点で三菱UFJ銀行をアレンジャーとするシンジケート方式のコミットメントライン契約を締結していると記載されています。決済の流れが資金繰りに直結するビジネスモデルであることがわかります。

上場準備会社にとってのポイント:本人か代理人かの判断は根拠を文書化する

収益認識会計基準(企業会計基準第29号)では、顧客に財又はサービスを提供する前にそれを支配しているかどうかで、本人(総額表示)か代理人(純額表示)かを判断します。プラットフォーム事業やマーケットプレイス、決済代行などでは、この判断によって売上高の金額が大きく変わるため、審査でも監査でも重点的に確認されます。

実務では、契約書の条項(サービス提供の責任、在庫リスク、価格決定権など)を整理し、判断の根拠をメモとして残しておくことが重要です。また、決済代金のように一時的に預かる資金がある場合は、資金の流れと勘定科目の対応関係を明確にし、残高の照合手続を内部統制として整備しておく必要があります。詳しくは上場審査で問われる収益認識をご覧ください。

黒字化に伴う繰延税金資産の計上

重要な会計上の見積りとして、2025年5月期には繰延税金資産の回収可能性が挙げられています(連結1,234百万円、単体1,136百万円)。主要な仮定は、実車数及び実車当たり単価です。

2024年5月期には、税務上の繰越欠損金15,897百万円の全額に評価性引当額を計上していましたが、2025年5月期は黒字化に伴う見直しにより、繰越欠損金15,592百万円のうち760百万円を回収可能として繰延税金資産を計上しました。その結果、法人税等調整額が△1,144百万円となり、連結の税効果会計適用後の法人税等の負担率は△27.3%となっています。事業等のリスクには、当事業年度末の税務上の繰越欠損金が44,060百万円であることも記載されています。

黒字化に伴う繰延税金資産の計上2024年5月期欠損金の全額に評価性引当額2025年5月期黒字化に伴い見直し欠損金15,592百万円のうち760百万円を回収可能と判断法人税等調整額△1,144百万円負担率△27.3%主要な仮定:実車数及び実車当たり単価

図14 税務上の繰越欠損金に対する評価性引当額の見直し(Ⅰの部「税効果会計関係」等から作成)

繰延税金資産の回収可能性は、企業会計基準適用指針第26号に基づき、過去の課税所得の実績や将来の見込みから会社を分類し、その分類に応じて計上額を判断します。長く赤字が続いた会社が黒字化する局面では、どのタイミングで、どの程度の繰延税金資産を計上するかが大きな論点になり、将来の事業計画との整合性が問われます。

減損と事業の切り出し:スマートドライビング事業の例

もう一つの重要な会計上の見積りは、2024年5月期の固定資産の減損です。AIドライブレコーダー『DRIVE CHART』を中心とするスマートドライビング事業について、端末の供給不足などによる収益実現時期の遅れから、賃貸借処理しているリース契約に係る減損損失を計上しています(2024年5月期287百万円、2025年5月期635百万円)。減損損失は「リース資産減損勘定」として負債に計上されています。

その後、同事業は2025年8月1日に新設分割でGOドライブ㈱へ切り出され、ゼンリン、東京センチュリー、あいおいニッセイ同和損害保険を割当先とする第三者割当増資によって、当社の持分が39.99%の持分法適用会社となりました。この持分の変動に伴い、持分変動利益が計上されています(GOジョブ㈱の分社化に伴うものと合わせて、第50期中間期の特別利益825百万円)。

スマートドライビング事業の切り出し減損損失24/5期 287百万円25/5期 635百万円2025年8月1日新設分割でGOドライブ㈱へ第三者割当増資ゼンリンほか2社が引受け持分39.99%の持分法適用会社に持分変動利益を計上

図15 減損の計上から持分法適用会社化までの流れ(Ⅰの部の記載をもとに筆者作成)

このほか、プラットフォーム特有の引当金として、ユーザーへの未使用クーポン残高に利用実績率等を乗じて計上するクーポン引当金と、乗務員へ付与するポイントに係るポイント引当金が計上されています。棚卸資産の評価方法は、新基幹システムの導入を契機に2025年5月期から総平均法から移動平均法に変更されています。

監査法人と監査報酬

会計監査人はEY新日本有限責任監査法人で、継続監査期間は3年です。業務執行社員は2名、監査業務の補助者は公認会計士12名、その他21名と記載されています。監査等委員会は、独立性・専門性、監査法人の規模、監査体制、監査計画・費用の合理性などを総合的に評価して選定したとしています。

区分 2024年5月期 2025年5月期
提出会社 監査証明業務に基づく報酬 54百万円 67百万円
提出会社 非監査業務に基づく報酬 - -
連結子会社 - -

(Ⅰの部「監査の状況」から作成。)

連結財務諸表は第48期・第49期の2期分が上場規程に基づく監査の対象となっており、第50期の中間連結財務諸表と第3四半期の財務諸表は期中レビューの対象です。監査法人の選定時期については監査法人はいつまでに決めるかで解説しています。

事業等のリスクと、審査で問われやすい点は何か

GOの「事業等のリスク」では、各項目について「顕在化の可能性」「顕在化の時期」「影響度」が示されています。主なものを整理すると、次のようになります。

顕在化の可能性が「高」とされているのは、市場における競合企業との関係(ライドシェアの規制緩和など)と、ストック・オプションの行使による株式の希薄化です。競合に関しては、2025年4月に公正取引委員会がタクシー配車アプリ市場の実態調査結果を公表したことに触れ、恣意的な取扱いを行わないなど独占禁止法を遵守する方針が記載されています。

影響度が「大」とされているのは、ユーザー及びタクシー事業者との関係(ヘビーユーザーや大手タクシー事業者への依存)、法的規制全般、補助金・助成金です。法的規制については、旅行業法や電気通信事業法などに基づく許可等を得てサービスを提供していること、GOは「配車」を行う立場であり運送の主体ではないため道路運送法は直接適用されないことが説明されています。補助金については、一部の事業が補助金の交付を前提に遂行されており、返還のリスクがあることが記載されています。

事業等のリスクで重く示された項目顕在化の可能性「高」影響度「大」市場における競合企業との関係(ライドシェアの規制緩和など)ストック・オプションの行使による株式の希薄化ユーザー及びタクシー事業者との関係(依存)法的規制全般補助金・助成金

図16 「顕在化の可能性」が高、「影響度」が大とされた主なリスク(Ⅰの部「事業等のリスク」から作成)

このほか、タクシー供給の逼迫(乗務員の人手不足)や主要都市圏への集中といった事業モデルのリスク、日本交通グループ・DeNA・フリークアウト・ホールディングス・クラウド事業者など主要な提携先や外部業者に関するリスク、特定人物(代表取締役会長・社長)への依存、システムの安定性、個人情報保護、税務上の繰越欠損金、無形固定資産等の減損などが挙げられています。

GOのⅠの部から学べること① 主要株主との利益相反管理2社均衡保有のもとで特別委員会を設置② 社外過半数の取締役会監査等委員会設置会社へ移行(2023年8月)③ 種類株式の一括整理取得・消却・定款変更・株式分割を短期間で④ 目的別のストック・オプション有償・業績条件付き・フルバリュー型⑤ 収益認識は代理人として純額決済代金は未収入金・未払金で両建て⑥ 見積りとKPIの整合繰延税金資産・減損の仮定に実車数等

図17 GOのケースから上場準備会社が学べる主な論点(筆者作成)

上場準備会社にとってのポイント:審査で問われやすい論点を先回りして整理する

GOのⅠの部の記載から、同じような特徴を持つ会社が審査で確認されやすい点を一般論として整理すると、次のようになります。

第一に、主要株主との関係です。大株主が提携先・取引先でもある場合、取引条件の妥当性、役員の兼務による利益相反の管理、主要株主の今後の保有方針などが確認されます。第二に、規制との関係です。どの法令の適用を受け、どの法令の適用を受けないのかを、許認可の一覧と根拠を添えて説明できるようにしておく必要があります。許認可の確認の考え方はIPOで許認可はどこまで見られるかで解説しています。

第三に、特定の取引先への依存です。GOでは、フリークアウト・グループへの販売が売上高の15〜20%程度を占めると記載されています。主要な取引先については、取引の継続性、契約条件、依存度を下げる方策などを整理しておきます。第四に、補助金を前提とする事業です。交付条件や返還条件を契約ごとに管理し、会計処理と開示の方針を明確にしておくことが求められます。

GOのケースから上場準備会社が学べること

ここまでの内容を踏まえて、GOのⅠの部から上場準備会社が学べる実務上の示唆を7つに整理します。

1.親会社がなくても、主要株主との利益相反管理の仕組みを示す
GOは主要株主2社が25.7%ずつを保有する構造のもとで、独立社外取締役を中心とした特別委員会を設置し、利益相反取引の承認や関連当事者取引の報告を審議する体制を示しています。大株主と取引がある会社では、こうした独立した監視の仕組みが審査上の説明材料になります。

2.監査等委員会設置会社への移行で、社外過半数の取締役会をつくる
上場の数年前に監査等委員会設置会社へ移行し、社内2名・社外3名の取締役会を構成しています。会計・法務・経営の専門性を分担した社外取締役の構成も参考になります。

3.任意の委員会で報酬決定の客観性を補う
個人別報酬の決定を代表取締役に委任する場合でも、社外取締役が委員長を務める指名・報酬委員会への諮問を経る手続にすることで、決定過程の客観性を補っています。

4.種類株式の整理は、取得・消却・定款変更・株式分割を一連の手続として計画する
2026年1月から2月の短期間で、取得請求権の行使による普通株式への転換、優先株式の消却、定款変更、単元株制度の採用、株式分割を完了させています。手続の順番と必要な決議を早めに整理しておくことが重要です。

5.ストック・オプションは報酬方針と一体で設計し、評価方法まで開示できるようにする
有償型、業績・株価条件付き、フルバリュー型、段階行使型など目的に応じた設計を行い、報酬方針にその組み合わせを明記しています。会計上の評価方法や継続所有の確約まで含めて設計することが大切です。

6.プラットフォーム事業は、本人・代理人の判断と資金の流れを明確にする
代理人として純額で収益を認識する一方、決済代金は未収入金・未払金として両建てで計上されます。収益認識の根拠と、預かり資金の管理・照合の仕組みを整えておく必要があります。

7.黒字化の局面では、繰延税金資産と減損の見積りを事業計画と整合させる
繰延税金資産の回収可能性の主要な仮定に実車数と単価というKPIを用いており、減損の判定にも事業ごとのKPIを使っています。事業計画、KPI、会計上の見積りの前提を一貫させることが、監査と審査の双方で重要になります。

自社で確認したいチェックリスト

  • 大株主・提携先との取引を一覧化し、取引条件の妥当性と承認手続を説明できるか
  • 機関設計(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社など)の選択理由を説明できるか
  • 種類株式の普通株式への転換、消却、定款変更、株式分割の手順と時期を計画しているか
  • ストック・オプションの目的・行使条件・会計処理・継続所有の確約を一体で整理しているか
  • 収益認識(本人・代理人、一時点・期間)の判断根拠を文書化しているか
  • 内部監査の体制について、兼務がある場合の自己監査の回避策を決めているか

よくある質問

Q1. 親会社がなく、大株主が2社で並んでいる場合、審査で何を見られますか。

一般論として、特定の株主から事業上・人事上の影響を受けずに経営判断できるか、大株主との取引条件が適正か、少数株主の利益が害されないかが確認されます。GOでは、主要株主との利益相反を監視する特別委員会を設置していることがⅠの部に記載されています。取引の一覧化と、独立社外役員による承認の仕組みを整えておくことが基本です。

Q2. 優先株式は、上場前にいつまでに普通株式へ転換すればよいですか。

上場申請の時期や主幹事証券・取引所との協議によって異なりますが、上場時には普通株式のみとなるよう、申請前後のスケジュールに組み込んで計画するのが一般的です。GOでは、2026年1月に取得・消却と定款変更を行い、2月に株式分割を行っています。株主の同意や投資契約の終了手続もあわせて準備しておきましょう。

Q3. フルバリュー型のストック・オプションとはどのようなものですか。

行使価額を極めて低く設定し、株価の上昇分だけでなく株式の価値そのものを報酬として付与する設計です。GOの第9回・第11回新株予約権がこれにあたり、第9回では上場後2年間の代表取締役在任で40%を行使でき、以後四半期ごとに5%ずつ行使可能な割合が増える条件が付されています。税務上の取扱いや会計上の費用計上額が通常型と異なるため、専門家と事前に検討することが必要です。

Q4. 内部監査が2名でも上場できますか。

会社の規模や業務の複雑さによりますが、人数だけで可否が決まるわけではありません。リスクに応じた監査計画、指摘事項のフォローアップ、監査等委員会・会計監査人との連携が機能していることが重要です。兼務がある場合は、自己監査を避ける方法をあらかじめ決めておくと説明しやすくなります。

最初の一歩は、株主・取引・役員の関係を一枚の図にすることから

GOのように大株主が事業上の提携先でもある会社や、優先株式・ストック・オプションを多く発行している会社では、まず、株主ごとの持分(潜在株式を含む)、取引の有無と金額、役員の兼務関係を一枚の図に整理することから始めるのがおすすめです。どこに利益相反や説明の弱い部分があるかを早めに把握できれば、機関設計や資本政策の見直しを無理のないスケジュールで進められます。現状の課題を洗い出す方法としては、ショートレビューの活用も有効です。

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GOの機関設計・内部監査・会計・資本政策の25論点を、自社の状況と並べて点検できます。申請期の期末日を入れると上場までの逆算表も作れます。

まとめ

GO株式会社は、日本交通グループのシステム会社として始まり、DeNAのタクシーアプリ事業との統合を経て、タクシーアプリ『GO』を中心とするプラットフォーム企業として成長し、2026年6月に東証グロース市場に上場しました。Ⅰの部からは、主要株主2社の均衡保有のもとでの特別委員会による利益相反管理、監査等委員会設置会社への移行と社外過半数の取締役会、優先株式の取得・消却と株式分割による資本構成の整理、報酬方針と結びついた多様なストック・オプション、代理人としての純額表示や繰延税金資産の見積りといった会計上の論点など、上場準備の実務に直結する具体例を読み取ることができます。

特に、大株主との関係をガバナンスの仕組みで説明する書き方と、複雑な資本構成を上場直前に短期間で整理した手順は、事業会社からの出資を受けている上場準備会社にとって参考になります。自社の状況に置き換えて、早い段階から論点を整理しておきましょう。Ⅰの部の位置づけについてはⅠの部とⅡの部は何が違うかもご覧ください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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