業務記述書は、業務の流れを文章で順に書いた文書です。評価する人、監査する人、翌年度の担当者が読み手になります。
最も多い失敗が、あるべき姿を書いてしまうことです。規程どおりの手順や理想を書くと、評価の段階で実際の運用とのずれが必ず出ます。
この記事では、書く範囲、7つの注意点、具体的な書き方、作業を減らす工夫、現場への確認の依頼方法を整理します。
- 業務記述書を作る5段階と、ウォークスルーを挟む理由
- 取引の発生から終了までを途切れさせない書き方
- リスクと統制だけを抜き出してはいけない理由
- 避けたい書き方と望ましい書き方の対比
- 複数拠点や既存資料を使って作業を減らす工夫
- 現場に確認を依頼するときに伝える3つの観点
図 業務記述書に書くべき事項の確認
📌 結論 現状をそのまま書く
業務記述書は、業務の流れを文章で順に書いた文書です。作る目的は、その業務がどう行われているかを、読んだ人が理解できるようにすることにあります。評価する人、監査する人、そして翌年度の担当者が読み手になります。
最も多い失敗が、あるべき姿を書いてしまうことです。規程に定められた手順や、こうあるべきという理想を書くと、評価の段階で実際の運用とのずれが必ず出ます。書くのは現状であり、規程と違うのであれば、その違いこそが記録されるべき事実です。
ヒアリングだけで書かず、必ず1件を追ってから文章にする
🧭 どこまでの範囲を書くか
取引の発生から終了までを、途切れさせずに書きます。受注から始めて売上計上で終わるのであれば、その間の工程がすべてつながっている必要があります。途中が抜けていると、そこにリスクがあるかどうかが判断できません。
また、リスクと統制だけを抜き出して書くという作り方は避けます。統制がない工程にも意味があり、業務の全体像が分かってはじめて、どこにリスクがあるかを検討できるためです。統制の一覧はリスクコントロールマトリクスで整理するので、業務記述書は流れの記録に徹します。
あるべき姿を書いてしまうと、評価の段階で必ずずれが出る
📊 書き方の具体
文章の書き方は、誰が、いつ、何を使って、何に対して、何を行い、その結果何が残るかが読み取れれば足ります。抽象的な表現を使わないことがすべてです。
誰が何をいつ何に対して行い、何が残るかが読み取れれば足りる
担当者が確認するという書き方では、誰が何を確認したのかが分かりません。経理課の担当者が、注文書の金額と請求書の金額を照合する、と書けば、確かめるべきことがはっきりします。
時期についても、適宜という言葉は使いません。毎月第3営業日まで、出荷の翌営業日まで、といった形で書きます。これがないと、統制が適時に行われているかを評価できません。
結果として何が残るかも書きます。承認印が押される、システム上に承認の記録が残る、チェックリストに日付と氏名が記入されるといった形です。この記述が、評価のときに何を証憑として集めるかの手がかりになります。
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🗂 作業を減らす工夫
複数の拠点で同じ業務が行われている場合、それぞれに業務記述書を作る必要はありません。共通の流れを1つ書き、拠点ごとに異なる部分だけを追記するという形にすれば、作成も更新も軽くなります。
また、社内にすでにある資料を活用します。業務マニュアル、システムの操作手順書、経理規程といった資料には、業務の流れが記述されている部分があります。ゼロから書くより、これらを出発点にしたほうが早く、現場の説明とも整合しやすくなります。
ただし、既存の資料をそのまま使うことには注意が必要です。マニュアルはあるべき姿を書いていることが多く、実際の運用と違う可能性があります。ウォークスルーで1件を追い、資料の内容が実態と合っているかを確かめてから使います。
⚖️ 現場に確認してもらう
書き上げたら、ヒアリングをした現場の担当者に読んでもらいます。事実誤認があれば、この段階で見つかります。評価が始まってから違うと言われると、文書と評価の両方をやり直すことになります。
確認を依頼するときは、読んでほしい観点を伝えます。工程の順序が合っているか、抜けている作業がないか、担当と時期が正しいかという3点に絞れば、現場の負担も小さくて済みます。全体を精読してもらう必要はありません。
確認を受けた記録も残します。誰にいつ確認してもらい、どこを直したかを書いておくと、後から文書の信頼性を説明できます。監査法人が会社の文書を利用する際にも、現場の確認を経ていることは判断の材料になります。
❓ よくある質問
A. 書くのは現状です。規程と違うのであれば、その違いこそが記録されるべき事実であり、あるべき姿を書くと評価の段階でずれが出ます。
A. 足りません。統制がない工程にも意味があり、全体像が分かってはじめてどこにリスクがあるかを検討できます。
A. 1件を追うウォークスルーを挟みます。説明と実際の流れが違うことがあり、文章にする前に確かめておく必要があります。
A. 抽象的な表現を避けます。担当者が確認するではなく、経理課の担当者が注文書と請求書の金額を照合する、という水準で書きます。
A. 適宜という言葉は使いません。毎月第3営業日まで、出荷の翌営業日までといった形で書かないと、適時に行われているかを評価できません。
A. 共通の流れを1つ書き、拠点ごとに異なる部分だけを追記する形にすれば、作成も更新も軽くなります。
A. 出発点として有効です。ただしマニュアルはあるべき姿を書いていることが多いため、ウォークスルーで実態と合っているかを確かめてから使います。
A. 工程の順序、抜けている作業、担当と時期の3点に絞って読んでもらいます。全体を精読してもらう必要はありません。
📄 まとめ
業務記述書は現状をそのまま書きます。あるべき姿を書くと、評価の段階で必ずずれが出ます。
取引の発生から終了までを途切れさせず、統制のない工程も含めて全体像を記録します。
書き方は、誰がいつ何を使って何に対して何を行い、何が残るかが読み取れれば足ります。抽象的な表現を避けます。
複数拠点の共通部分は1つ書いて参照で済ませ、既存の社内資料も出発点として使います。
書き上げたら現場に確認してもらい、確認の記録を残します。文書の信頼性の説明になります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
評価範囲の決定
文書化
- 業務記述書の作り方(この記事)
- フローチャートの作り方
- 財務報告リスクの識別
- コントロールの記載
評価の実施
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し