製品保証は、履行義務になる場合とならない場合があります。引き渡した製品が仕様どおりであることを保証するにとどまるなら履行義務ではなく、引当金として処理します。一方、仕様の保証を超えるサービスを提供するなら、それは別個の履行義務です。
この記事では、2つの保証の区分と、判定の考え方を整理します。機器やソフトウェアを販売している会社では、標準保証と延長保証の両方を扱っていることが多く、処理を分ける必要があります。
- 保証型の保証とサービス型の保証の違い
- 履行義務になるかどうかを判定する順序
- サービス型かを判断する3つの要素
- 2つの保証が混在する場合の会計処理
図 保証型か保守型かの判定
📌 保証には2種類ある
収益認識基準では、製品保証を2つに分けて考えます。1つは、引き渡した財またはサービスが合意された仕様に従っているという保証です。これは製品が約束どおりのものであることを担保するにすぎず、追加のサービスを提供するものではありません。この場合は履行義務として扱わず、引当金として処理します。
無償か有償かではなく、仕様の保証を超えるかどうかで区分します。
もう1つは、仕様の保証を超えるサービスを提供する保証です。定期点検を含む、消耗品を無償で交換する、長期にわたって修理に応じるといった内容がこれにあたります。この場合は別個の履行義務として、取引価格を配分します。
📌 判定の順序
最初に確認するのは、顧客が保証を単独で購入できるかどうかです。単独で購入できるオプションがあれば、それはサービス型の保証であり、別個の履行義務になります。有償の延長保証を販売しているのであれば、判断は明確です。
単独で購入できるかどうかが、最初の分かれ道になります。
単独で購入できない場合は、その保証が仕様の保証にとどまるかどうかを判断します。ここで見るのが3つの要素です。
3つを総合して判断します。期間の長さだけで決まるわけではありません。
法律で要求されている保証であれば、仕様の保証にとどまる可能性が高くなります。一方、保証期間が3年や5年と長い場合、その全期間が仕様の保証だと説明するのは難しくなります。実施する作業の内容も重要で、単に不具合を直すだけなら仕様の保証ですが、定期点検が含まれていればサービスの提供です。
📊 記載例
標準保証1年と、有償の延長保証2年を提供する場合の処理です。
前提 機器の販売価格1,000千円に標準保証1年が含まれる。別途、2年間の延長保証を150千円で販売しており、顧客は単独で購入できる。ある顧客が機器と延長保証を合わせて1,150千円で購入した。
| 内容 | 区分 | 会計処理 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 機器の引渡し | 履行義務1 | 引渡し時に収益認識 | 1,000 |
| 標準保証1年 | 保証型 | 製品保証引当金を計上 | 見積額を費用計上 |
| 延長保証2年 | 履行義務2 | 2年間にわたり収益認識 | 150 |
標準保証は仕様の保証にとどまるため履行義務にはならず、将来の修理費用の見積額を製品保証引当金として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 1,150 | 売上高 | 1,000 |
| 契約負債 | 150 | ||
| 製品保証引当金繰入額 | 20 | 製品保証引当金 | 20 |
会社名と数値は架空です。同じ保証という言葉でも、2つの異なる会計処理が並ぶ点が要点です。
延長保証の150千円は、2年間にわたって毎月均等に契約負債から売上高へ振り替えます。標準保証の20千円は、過去の修理実績にもとづく見積りです。
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📌 引当金の見積り
保証型と判断した場合は、製品保証引当金を計上します。見積りの基礎になるのは、過去の修理実績です。売上高に対する修理費用の比率を求め、当期の売上高に乗じて算定する方法が一般的です。
上場準備会社では、この実績データが揃っていないことがあります。製品ごとの修理費用を集計していない、保証期間内の修理と有償修理を区別していないといった状況です。実績がなければ見積りの根拠を示せないため、データの取得から始める必要があります。
📌 ソフトウェアの保守との違い
ソフトウェアの場合、不具合の修正と機能の追加が同じ保守契約に含まれていることがあります。不具合の修正は仕様の保証にとどまりますが、機能追加やバージョンアップの提供はサービスです。契約の中でどちらが主なのかを見て、履行義務になるかを判断します。
実務では、保守契約の内容を一覧にして、それぞれの作業が仕様の保証にとどまるかを整理する方法が有効です。整理の結果、契約全体を1つのサービス型の履行義務とする会社が多くなっています。
保証内容の整理から、履行義務になるかの判定、引当金の見積りの設計までをお受けします。収益認識基準の適用支援と上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
❓ よくある質問
A. なりません。無償であっても、仕様の保証を超えるサービスを含むなら履行義務になります。無償か有償かではなく、内容で判断します。
A. 年数の基準はありません。期間の長さは判断要素の1つにすぎず、法定の保証かどうか、実施する作業の内容とあわせて総合的に判断します。
A. 同業他社の水準や、製造工程の不良率などから合理的に見積る方法もありますが、根拠の説明が難しくなります。まずは修理費用を製品ごと、保証内か保証外かで集計する仕組みを作ることをおすすめします。
📄 まとめ
製品保証は、仕様の保証にとどまるものと、それを超えるサービスを提供するものに分かれます。前者は引当金、後者は履行義務として取引価格を配分します。
判定の出発点は、顧客が単独で購入できるかどうかです。有償の延長保証を販売しているなら履行義務になります。それ以外は、法定の保証か、期間の長さ、作業の内容の3つを総合して判断してください。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
全体像と適用の準備
ステップ1 契約の識別
ステップ2 履行義務の識別
ステップ3 取引価格の算定
ステップ4 取引価格の配分
ステップ5 収益の認識
表示と開示と実務