収益認識のライセンス|使用権とアクセス権の区分

ソフトウェア、商標、特許、フランチャイズのブランドなど、知的財産の使用を他社に許諾する取引では、収益をいつ認識するかが問題になります。契約時に一括して認識するのか、契約期間にわたって認識するのかで、各期の売上高が大きく変わります。

この記事では、ライセンスの供与を使用権とアクセス権に区分する考え方と、売上高に基づくロイヤルティの例外的な取扱いを整理します。

この記事でわかること

  • ライセンスを使用権とアクセス権に区分する考え方
  • アクセス権に該当するための3つの要件
  • フランチャイズの加盟金をどう処理するか
  • 売上高または使用量に基づくロイヤルティの例外
ライセンスの収益をいつ認識するか知的財産のライセンスを供与したライセンスが他の財やサービスと区分できないか一体の履行義務として処理するはいいいえ売上高または使用量に応じたロイヤルティか売上や使用が生じたときに認識はいいいえ企業の活動により知的財産の価値が変わることを前提とする契約アクセス権として期間にわたり認識はいいいえ使用権として供与した一時点で認識する

図 使用権かアクセス権かの判定

📌 使用権かアクセス権か

ライセンスの供与は、顧客が何を得るかによって2つに分かれます。ライセンス期間にわたって存在する企業の知的財産にアクセスする権利であればアクセス権、供与された時点で存在する知的財産を使用する権利であれば使用権です。

ライセンスの2つの類型類型顧客が得るもの収益認識の時期アクセス権ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利一定の期間にわたり認識する使用権ライセンスが供与された時点で存在する知的財産を使用する権利供与した一時点で認識する

企業がライセンス期間中も知的財産に影響を与え続けるかどうかが分かれ目です。

違いは、企業がライセンス期間中もその知的財産に影響を与え続けるかどうかです。ブランドの価値を高める活動を続けている、ソフトウェアの機能を追加し続けているといった場合はアクセス権になります。完成した作品を渡してそれきりであれば使用権です。

📌 アクセス権の3つの要件

アクセス権に該当するには、3つの要件をすべて満たす必要があります。

アクセス権に該当する3つの要件企業が知的財産に著しく影響を与える活動を行うことが、契約により定められているか、顧客により合理的に期待されているその活動により、顧客が直接的に影響を受けるその活動により、顧客に財またはサービスが移転しない3つすべてを満たせばアクセス権となり、期間にわたって収益を認識する1つでも満たさなければ使用権となり、一時点で収益を認識する

ブランドの価値を維持する活動を継続しているかが、実務での判断のポイントです。

1つ目は、企業が知的財産に著しく影響を与える活動を行うことが、契約で定められているか、顧客から合理的に期待されていることです。契約書に明記されていなくても、これまでの慣行から顧客が期待していれば該当します。2つ目は、その活動により顧客が直接的に影響を受けること。3つ目は、その活動自体が財またはサービスの移転にあたらないことです。

実務での判定例ライセンスの内容類型理由フランチャイズのブランド使用許諾アクセス権本部が継続的に販売促進や品質管理を行う完成したソフトウェアの永久使用許使用権供与後に企業が影響を与える活動をしない更新が続くソフトウェアの利用許諾アクセス権機能追加により顧客が直接影響を受ける映画やアニメの放映権使用権になることが多い完成した作品を供与するのみ技術特許の実施許諾契約により異なる改良技術の提供が含まれるかで変わる

契約書に改良や更新の提供が定められているかを確認します。

3つ目の要件は、活動が別個の履行義務になっていないかを確かめるものです。たとえばソフトウェアの保守サービスとして別途対価を受け取っているなら、それは独立した履行義務であり、ライセンスの類型判定とは切り離して考えます。

📊 記載例

フランチャイズ契約における加盟金とロイヤルティの処理です。

設例 フランチャイズ契約の収益認識

前提 加盟金3,000千円を契約時に受け取り、5年間の契約期間にわたってブランドの使用を許諾する。あわせて売上高の5パーセントをロイヤルティとして毎月受け取る。本部は継続的に販売促進活動と店舗指導を行う。

収益認識の方法(単位:千円)
収益の種類 類型の判定 収益認識の方法 初年度の収益
加盟金3,000 アクセス権 5年間にわたり均等に認識 600
ロイヤルティ 売上高に基づく 売上が発生した各月に認識 実績に応じる
開業前の研修(別個の場合) 履行義務2 研修の完了時に認識 配分額

本部が継続的に販売促進や品質管理を行うため、ブランドの使用許諾はアクセス権と判定しています。

加盟金を契約時に一括して収益にすることはできず、契約期間にわたって配分します。

会社名と数値は架空です。加盟金の一括計上は、上場審査で必ず確認される論点です。

売上高または使用量に基づくロイヤルティについては、例外的な取扱いがあります。後述のとおり、その売上が発生した時点で収益を認識します。

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📌 売上高に基づくロイヤルティの例外

知的財産のライセンスに関連して、顧客の売上高または使用量に基づくロイヤルティを受け取る場合には、例外的な取扱いがあります。この場合、変動対価の見積りは行わず、顧客が売上を計上した時点、または履行義務が充足された時点のいずれか遅いほうで収益を認識します。

この例外があるため、ロイヤルティについては将来の売上を見積って先に収益を計上する必要がありません。実務では、顧客から報告される売上高の実績にもとづいて毎月または四半期ごとに認識することになります。報告が遅れる場合は、合理的な見積りで計上し、実績との差額を後で調整します。

📌 加盟金の一括計上に注意

フランチャイズの加盟金を、契約時に一括して収益に計上している会社は少なくありません。しかし本部が継続的に販売促進や店舗指導を行っているのであれば、ブランドの使用許諾はアクセス権であり、加盟金は契約期間にわたって配分することになります。

この論点は、上場準備の過程で必ず確認されます。加盟金を一括計上していた会社が期間配分に変更すると、初年度の売上高が大きく減り、契約負債が積み上がります。加盟店の獲得ペースが速い会社ほど影響が大きくなるため、早い段階での確認が必要です。

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❓ よくある質問

Q. ソフトウェアの販売はすべて一時点の認識になりますか。

A. なりません。バージョンアップや機能追加を継続的に提供するのであれば、アクセス権として期間にわたって認識します。買い切り型で更新の提供がなければ使用権です。

Q. ロイヤルティは見積って先に計上する必要がありますか。

A. 売上高または使用量に基づくロイヤルティには例外的な取扱いがあり、顧客の売上が発生した時点で認識します。将来分を見積る必要はありません。

Q. 加盟金を一括計上していた場合、遡って修正しますか。

A. 適用初年度に会計方針の変更として処理します。遡及適用するか、累積的影響額を期首の利益剰余金で調整するかは、選択した経過措置によります。

📄 まとめ

ライセンスの供与は、企業が期間中も知的財産に影響を与え続けるかどうかで、アクセス権と使用権に分かれます。アクセス権なら期間にわたって、使用権なら一時点で収益を認識します。

フランチャイズの加盟金は、本部が継続的な支援を行っている限りアクセス権として期間配分することになります。一括計上している場合は、上場準備の早い段階で見直しが必要です。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

📚 参考(公的な一次情報)

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