一定の期間にわたり収益を認識する場合、その期間内でいくらを計上するかは進捗度によって決まります。進捗度の測定方法には、アウトプット法とインプット法があり、どちらを選ぶかで各期の収益が変わります。
この記事では、2つの測定方法の違いと、実務でよく使われる原価にもとづく方法の注意点を整理します。受託開発や工事の契約がある会社では、原価管理の仕組みと直結する論点です。
- アウトプット法とインプット法の違いと使い分け
- 原価にもとづく進捗度で除くべき原価
- 請求額にもとづく簡便的な方法を使える場面
- 見積総原価が変わったときの処理
図 進捗度の測定方法の選び方
📌 2つの測定方法
進捗度の測定方法は、大きく2つに分かれます。成果を基準にするアウトプット法と、投入量を基準にするインプット法です。
どちらを選ぶかは、進捗をより忠実に描写できるかで決めます。
アウトプット法は、顧客にとっての価値がどれだけ移転したかを直接測る方法です。引き渡した単位数や、達成したマイルストーンで測ります。客観性が高い一方で、仕掛りの状態が反映されないため、期末時点で作業が進んでいても成果として現れていなければ進捗度がゼロになることがあります。
インプット法は、投入した資源の割合で測る方法です。発生原価、労働時間、機械の稼働時間などを使います。日々の作業が進捗として反映されるため、人的サービスが中心の契約に向いています。ただし、投入したものが必ずしも進捗を表さない点に注意が必要です。
請求額基準は簡便ですが、請求のタイミングが実態と合っている場合に限られます。
📌 原価から除くべきもの
インプット法で発生原価を使う場合、進捗度に寄与しない原価は除きます。含めたままにすると、実際より進んでいるように見えてしまうためです。
現場に運び込んだだけの材料や、手戻りによる無駄なコストは進捗を表しません。
典型的なのが、まだ使用していない材料や部品の原価です。現場に搬入しただけで組み込んでいなければ、作業は進んでいません。この場合、その原価を進捗度の計算から除くか、原価と同額の収益を認識して利益を乗せない方法をとります。
手戻りや非効率によって生じた原価も、進捗を表しません。仕様の誤解でやり直した作業のコストは、投入した割に成果が出ていないためです。ただし、実務上これを区別して集計するのは容易ではなく、重要性を踏まえて判断することになります。
📊 記載例
原価にもとづくインプット法で進捗度を測定した例です。
前提 受託開発の契約金額は12,000千円、見積総原価は9,000千円。当期末までに発生した原価は3,900千円だが、このうち600千円は未使用の購入部品の原価であり、進捗に寄与していないと判断した。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 発生原価の総額 | 3,900 |
| 進捗度から除く未使用部品 | △600 |
| 調整後の発生原価 | 3,300 |
| 見積総原価(未使用部品を除く) | 8,400 |
| 進捗度 | 39.3パーセント |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 契約金額 | 12,000 |
| 進捗度 | 39.3パーセント |
| 当期の収益 | 4,716 |
| 当期の原価 | 3,900 |
| 当期の利益 | 816 |
未使用の部品については、その原価と同額の収益を認識する方法もあります。この場合、部品の分は利益を上乗せせずに収益と原価を同額で計上します。
会社名と数値は架空です。原価をそのまま進捗度に使うと、実態より進んで見える場合があります。
見積総原価が変わったときは、その時点から進捗度を計算し直します。過去に計上した収益をさかのぼって修正するのではなく、当期以降で調整します。
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📌 請求額にもとづく方法
企業の履行が完了した部分と、顧客に請求する金額が直接対応する場合には、請求する権利を有している金額で収益を認識する簡便的な方法が認められています。時間単価で請求する契約や、出来高に応じて毎月請求する契約が該当します。
この方法は計算が簡単で、請求書と収益が一致するため管理も容易です。ただし、請求のタイミングが契約上の都合で決まっている場合には使えません。前払いを受けている、着手金として一定額を先に請求している、といった契約では、請求額と履行の完了部分が対応していないためです。
📌 見積りの変更
見積総原価が変わった場合、その時点から進捗度を計算し直します。過去に計上した収益を修正するのではなく、変更後の進捗度にもとづいて累積の収益を再計算し、既計上額との差額を当期の収益として調整します。
受託開発では、仕様変更や工数の追加により見積総原価が増えることがよくあります。原価が増えれば進捗度は下がるため、当期の収益が減る、あるいはマイナスになることもあります。見積りを定期的に更新する仕組みがなければ、期末にまとめて大きな調整が入ることになります。
測定方法の選択から、原価の集計単位の設計、見積総原価の更新の仕組みづくりまでをお受けします。収益認識基準の適用支援と上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
❓ よくある質問
A. 進捗をより忠実に描写できるほうを選びます。成果が客観的に測れるならアウトプット法、日々の作業の積み上げが進捗を表すならインプット法が適しています。
A. 進捗度の計算から除くか、その原価と同額の収益を認識して利益を乗せない方法をとります。どちらの方法でも、未使用分に利益が乗らない点は同じです。
A. しません。変更後の進捗度で累積収益を再計算し、既計上額との差額を当期の収益として調整します。
📄 まとめ
進捗度の測定は、成果を測るアウトプット法と、投入を測るインプット法に分かれます。原価にもとづく方法を使う場合は、未使用の材料や手戻りによる原価を除く調整が必要です。
見積総原価が変われば進捗度も変わり、当期の収益が調整されます。期末にまとめて大きな調整が入らないよう、見積りを定期的に更新する仕組みを整えてください。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
全体像と適用の準備
ステップ1 契約の識別
ステップ2 履行義務の識別
ステップ3 取引価格の算定
ステップ4 取引価格の配分
ステップ5 収益の認識
表示と開示と実務
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準委員会(ASBJ) 収益認識に関する会計基準および適用指針
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索)
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索)
- 企業内容等の開示に関する内閣府令(e-Gov法令検索)