※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。
2026年8月26日、東京都中央区に本社を置く不動産会社の株式会社レイシャス(Reicious Co., Ltd.)が、東京証券取引所のTOKYO PRO Market(以下「TPM」)に上場しました。自社ブランドの投資用マンション「ディアレイシャス」シリーズの開発・販売を中核に、賃貸管理、建物管理、不動産仲介、生命保険代理店までを社内で手がける会社です。上場に際して特定投資家向け取得勧誘等(一般市場の公募・売出しに当たる勧誘)は行わず、「発行者情報」を公表しての上場でした。本記事では、JPXの新規上場会社情報に掲載された同社の発行者情報を読み、上場準備の実務で参考になる点を公認会計士の視点で整理します。
結論からいえば、レイシャスのケースは「売上高157億円規模のオーナー企業が、直前1期の監査と担当J-Adviserの調査を経て、株主2名のままTPMに上場した例」です。株式分割と株式併合による投資単位の調整、資産管理会社への株式の移動、TPM以外の市場への上場を行使条件とするストック・オプション、中小企業会計要領から一般に公正妥当と認められる企業会計の基準への会計方針の変更、自己資本比率5%前後で借入と代表者保証に支えられた財務構造、社外取締役を置かず社外監査役2名で牽制する機関設計など、上場準備の論点が具体的に記載されています。
この記事の見出し
- レイシャスはどんな会社で、いつTPMに上場したのか
- なぜTOKYO PRO Marketを選んだのか
- TPMの上場の仕組みは一般市場とどう違うのか
- 事業内容と収益モデル:開発から管理・仲介・保険まで社内で一貫
- 沿革と上場までの道のり
- 業績はどう推移しているか
- 資本政策と株主構成:株主2名で上場
- コーポレート・ガバナンス:社内取締役3名と社外監査役2名
- 内部監査と内部統制:代表取締役直轄の内部監査担当者
- 会計・開示の論点:会計方針の変更、収益認識、棚卸資産の評価
- 事業等のリスクとJ-Adviser契約
- 一般市場へのステップアップを考える会社への示唆
- 上場準備会社がレイシャスの事例から学べること
- よくある質問
- まとめ
- 本記事の根拠
レイシャスはどんな会社で、いつTPMに上場したのか
レイシャスは2011年3月に、東京都中央区日本橋人形町で投資マンションの販売を目的として設立された会社です。2012年9月に自社ブランド「ディアレイシャス」シリーズの1号物件を竣工し、2026年6月時点で同シリーズは竣工前の物件を含めて112棟になっています。決算期は6月で、上場時点の直前事業年度は第15期(2025年6月期)、発行者情報には第16期の中間会計期間(2025年12月期)の中間財務諸表も掲載されています。
上場の手続面では、2026年8月4日に新規上場の申請が受け付けられ(同日に発行者情報を公表)、8月19日に上場承認、8月26日に上場しました。担当J-Adviserは株式会社日本M&Aセンターで、J-Adviser契約は2024年12月12日に締結されています。申請受付から上場承認までは10営業日で、TPMで「原則として上場申請から10営業日後に上場を承認」とされている流れどおりの日程です。
図1 発行者情報の記載とJPXの新規上場会社情報(申請受付日・上場承認日・上場日)をもとに作成
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社レイシャス(Reicious Co., Ltd.)、証券コード617A |
| 市場 | 東京証券取引所 TOKYO PRO Market |
| 上場日 | 2026年8月26日 |
| 上場承認日 | 2026年8月19日 |
| 申請受付日 | 2026年8月4日(発行者情報の公表日) |
| 担当J-Adviser | 株式会社日本M&Aセンター(J-Adviser契約 2024年12月12日) |
| 上場時の開示書類 | 発行者情報(特例110条3項。特定投資家向け取得勧誘等なし) |
| 本店 | 東京都中央区京橋 |
| 設立 | 2011年3月 |
| 決算期 | 6月(第15期=2025年6月期) |
| 事業 | 投資不動産事業の単一セグメント(投資用マンション、賃貸管理、建物管理、不動産仲介、生命保険代理店等) |
| 従業員 | 121名、平均年齢29.5歳、平均勤続年数3.1年、平均年間給与6,264千円(2026年6月30日現在) |
| 監査 | かなで監査法人(第15期の財務諸表の監査、第16期中間の期中レビュー) |
従業員121名の平均年齢は29.5歳、平均勤続年数は3.1年と若い組織です。事業区分別では投資用マンション事業68名、賃貸・建物管理事業13名、不動産仲介事業10名、生命保険事業6名、全社(共通)24名で、営業の中心である投資用マンション事業に人員の半分以上が配置されています。会社は対処すべき課題の一つに「人材の確保と育成」を挙げ、従業員の平均年齢が若い当社にとって専門性とマネジメント力を兼ね備えた人材の育成は喫緊の課題だと記載しています。
関係会社は2社です。建物管理会社として2017年12月に設立した株式会社レイシャス合人社(議決権60.0%)と、2025年11月に全株式を取得した台湾の瑞旭國際股份有限公司(旧社名 時流國際股份有限公司、議決権100%)で、いずれも役員の兼任があります。ただし、子会社の資産・売上高・損益等からみて重要性が乏しいとして、連結財務諸表は作成していません。上場準備で子会社を持つ会社は、連結の範囲を重要性で判断した根拠を、監査法人と担当J-Adviserに説明できるようにしておく必要があります。
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なぜTOKYO PRO Marketを選んだのか
レイシャスの発行者情報には、「上場目的」や「TPMを選んだ理由」を説明する記載はありません。対処すべき課題として、投資用マンション事業の競争力強化、新規事業(海外事業・不動産証券化事業)の推進、人材の確保と育成、内部統制・ガバナンス体制の強化の4項目が挙げられていますが、これらを上場と結びつけた説明はなく、本記事では同社の選択理由を推測することは控えます。
一般論として、TPMには一般市場と異なる特徴があります。株主数・流通株式・利益の額などの形式基準(数値基準)がなく、上場時に資金調達を行わない上場も可能です。レイシャスのように上場申請時点の株主が2名でも、形式基準がないTPMでは上場の妨げにはなりません。東証は2026年4月から、新規上場時に「なぜTPMに上場するのか・どう活用するのか」という上場目的を検討・開示するよう要請しています(規程上の義務ではなく「お願い」です)。東証が公表した2026年6月15日時点の集計では、上場目的の上位は社内体制強化・営業力強化・採用力強化で、「増資」を挙げた会社は1割程度にとどまります。
これからTPMを検討する会社は、「何のために上場するのか」を社内で言語化し、上場後に実現状況を評価できる形にしておくことが求められる流れにあります。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)も参考にしてください。
TPMの上場の仕組みは一般市場とどう違うのか
TPMは、2008年の金融商品取引法改正で導入された「プロ向け市場制度」に基づく市場で、法令上は「特定取引所金融商品市場」に当たります。株式を買い付けられるのは特定投資家(適格機関投資家など)や一定の要件を満たして特定投資家に移行した個人等で、一般投資家は取引所で買付けができません(保有株式の売却は可能です)。レイシャスの発行者情報の冒頭にも、TPMは特定投資家等を対象とした市場であり、上場会社は高い投資リスクを含んでいる場合がある、という注意事項が置かれています。
上場審査の中心になるのが担当J-Adviserです。TPMには数値の形式基準がない代わりに、担当J-Adviserが「企業としての相応性」「事業の公正・忠実な遂行」「ガバナンス・内部管理体制」「適正な開示を行える体制」「反社会的勢力との関係がないこと等」の5つの上場適格性要件を調査・確認し、「上場適格性に係る宣誓書」を作成します。東証も意向表明の後に面談を行うため、「審査がない市場」ではありません。
図2 JPX「2025 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編」等をもとに一般的な流れを整理したもの。形式基準(数値基準)はなく、担当J-Adviserが上場適格性を調査・確認する
レイシャスの発行者情報には、上場適格性要件の「企業としての相応性」に関わる記載として、上場予定日(2026年8月26日)から12か月間の運転資本は「現状の自己資金及び金融機関からの借入による資金調達が可能であることから十分であると認識しております」という一文があります。上場時に資金調達をしない会社でも、上場後1年間の資金繰りに問題がないことを説明できるようにしておく必要があります。借入で物件を仕入れる不動産会社の場合は、金融機関との取引継続を前提にした資金繰り計画の合理性が、説明の中心になるでしょう。
開示書類の名称にも注意が必要です。上場に際して特定投資家向け取得勧誘等を行う会社は「特定証券情報」を公表しますが、レイシャスは勧誘を行わないため、特例110条3項により「発行者情報に相当する情報」を公表しています。表紙の書類名が「発行者情報」になっているのはこのためです。上場後は、年次と中間の発行者情報を各期末後3か月以内に公表します。これらは一般市場の有価証券報告書・半期報告書とは別の書類です。
図3 金融商品取引法27条の31と、発行者情報表紙の「取引所金融商品市場等に関する事項」の記載をもとに作成
監査についても一般市場と違いがあります。TPMの新規上場で求められる監査期間は「最近1年間」です。レイシャスは第15期(2025年6月期)の財務諸表についてかなで監査法人の監査を受け、第16期の中間財務諸表について期中レビューを受けています。主要な経営指標の注記では「第13期及び第14期の財務諸表については、当該監査を受けておりません」と明記しています。一般市場の新規上場では直前2期の監査が求められるため、監査法人と契約する時期の考え方が変わります(監査法人はいつまでに決めるか)。
一般市場(グロース・スタンダード)との比較
| 項目 | TOKYO PRO Market | 一般市場(グロース・スタンダード) |
|---|---|---|
| 買付けができる投資家 | 特定投資家等(一般投資家は買付け不可、売却は可能) | 一般投資家を含む |
| 形式基準 | なし(数値基準がない) | 株主数・流通株式等の形式基準あり |
| 上場適格性の調査 | 担当J-Adviserが調査・確認、東証が面談 | 東証の上場審査 |
| 申請から承認まで | 原則として申請から10営業日後に承認 | 一般市場の審査日程による |
| 新規上場時の監査期間 | 最近1年間 | 直前2期 |
| 開示書類 | 特定証券情報・発行者情報 | 有価証券届出書・有価証券報告書等 |
| 四半期開示 | 任意 | 四半期決算短信(取引所規則) |
| 内部統制報告書 | 任意 | 提出が必要 |
| 会計基準 | 日本基準・米国基準・IFRS等 | 日本基準・米国基準・IFRS等 |
| 上場維持の前提 | 担当J-Adviserとの契約の維持 | J-Adviser制度なし |
表のTPM欄は、JPXのTPM概要ページと上場ガイドブック(TPM編)の記載に基づいています。一般市場の会社を前提にしたルール(実質審査基準など)を、そのままTPMの会社に当てはめて考えないよう注意が必要です。一般市場の審査の考え方はIPOの実質審査基準とはで整理しています。
事業内容と収益モデル:開発から管理・仲介・保険まで社内で一貫
レイシャスは「不動産を中心とした最良のウェルスパートナー」をビジョンに掲げ、マンション経営を軸とした資産形成支援を行っています。中核は東京23区や名古屋市等で自社ブランド「ディアレイシャス」を開発・販売する投資用マンション事業で、土地の取得から企画・設計・建築まで一貫して関与する自社開発を基本としています(施工自体は外部の施工業者に委託)。価格帯は東京エリアが25㎡程度の住戸で概ね3,500万円前後、名古屋エリアは同程度で概ね2,000万円前後と記載されています。
特徴は、販売後のサービスを社内の別部門で提供している点です。賃貸管理(入居者募集・トラブル対応・収支報告、場合によって住戸の借上げ(サブリース))、建物管理、不動産売買の仲介、生命保険の代理店業務までを社内に持ち、部門横断で不動産取得者に対応する体制だと説明しています。不動産取得者の3分の2は2戸以上を所有し、2026年6月時点の入居稼働率は98%とされています。
図4 発行者情報「事業の内容」をもとに作成。セグメントは投資不動産事業の単一セグメントで、下段は会社が示す事業区分
仲介事業ではセンチュリー21・ジャパンとのフランチャイズ契約を活用し、1件当たりの仲介手数料は平均170万円、販売件数の81%が売主・買主双方から手数料を受け取る両手取引、約10%が海外顧客による購入と記載されています。生命保険事業は2022年3月に始めた比較的新しい事業で、2026年6月30日現在で生命保険14社・損害保険1社と提携し、顧客の約半数は不動産取得者以外になっています。
売上の区分を見ると、収益の大部分は投資用マンションの販売です。第15期の売上高15,715,840千円のうち、投資用マンション売上が13,853,924千円で、賃料・建物管理業務売上1,516,887千円、不動産仲介売上135,820千円、その他209,207千円が続きます。会社は単一セグメント(投資不動産事業)としつつ、事業内容の理解のために事業区分別の説明を加えています。
図5 発行者情報 注記「収益認識関係」より。「その他」は賃貸管理、建物管理、生命保険の手数料売上等(会社の記載)
主要な販売先として、第15期は株式会社NSTへの売上高が2,004,386千円(総販売実績の12.8%)と記載されています。投資用マンションは1件の金額が大きいため、法人への販売が1社あるだけで売上の1割を超えることがあります。上場準備では、10%以上の販売先について取引の経緯や価格の決め方を説明できるようにしておくことが一般的に求められます。売上計上の実在性を確かめる観点は上場審査で問われる収益認識でも整理しています。
沿革と上場までの道のり
沿革からは、投資用マンションの販売会社として始まり、販売後の管理・仲介・保険へと事業を広げてきた流れが読み取れます。2013年7月にセンチュリー21に加盟、2015年5月に賃貸事業部を発足し、2017年12月には建物管理会社として株式会社レイシャス合人社を設立しました。2019年1月には名古屋支店の開設とあわせて宅地建物取引業の国土交通大臣免許を取得し、2021年6月に札幌支店、2025年6月に大阪支店を開設しています。
2022年3月には生命保険事業、同年6月には仲介事業部を発足させ、2025年4月には海外事業部を発足して外国人をターゲットとした投資用マンション事業を開始しました。2025年11月には台湾の時流國際股份有限公司の全株式を取得し、2026年5月に瑞旭國際股份有限公司へ社名を変更しています。上場に向けては、2024年12月にJ-Adviser契約を結び、2025年4月の株式分割、2025年7月のストック・オプション発行、2026年6月の株式併合と単元株制度の導入を経て上場しました。
図6 発行者情報「沿革」より主要な出来事を抜粋
宅地建物取引業の免許(国土交通大臣(02)第009488号、有効期限は令和11年1月10日)は、主要事業の前提となる許認可です。発行者情報では、取消事由(宅地建物取引業法66条)とあわせて事業等のリスクに記載しています。許認可の管理体制がどう見られるかはIPOで許認可はどこまで見られるかを参考にしてください。
業績はどう推移しているか
主要な経営指標を見ると、売上高は第13期12,682,215千円、第14期12,542,073千円、第15期15,715,840千円と推移し、第15期は前期比25.3%の増収です。経常利益は第13期69,648千円、第14期32,673千円、第15期177,433千円で、第15期は前期比443.1%の増益となりました。第16期中間会計期間(6か月)は売上高11,574,257千円、経常利益279,199千円、中間純利益150,594千円です。
ただし、第13期と第14期の数値は監査を受けていません。さらに、収益認識に関する会計基準は第14期の期首から適用され、第14期には中小企業の会計に関する基本要領から一般に公正妥当と認められる企業会計の基準へ会計方針を変更しています(後述)。期をまたいで比較するときは、こうした前提の違いを踏まえて読む必要があります。
図7 発行者情報「主要な経営指標等の推移」より(百万円未満切捨て)。第13期・第14期は監査を受けていない
| 指標(千円) | 第13期 2023年6月期 | 第14期 2024年6月期 | 第15期 2025年6月期 | 第16期中間 2025年12月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,682,215 | 12,542,073 | 15,715,840 | 11,574,257 |
| 経常利益 | 69,648 | 32,673 | 177,433 | 279,199 |
| 当期(中間)純利益 | 43,135 | 11,453 | 102,624 | 150,594 |
| 純資産額 | 821,949 | 512,787 | 614,613 | 765,643 |
| 総資産額 | 9,339,329 | 12,333,343 | 12,134,303 | 10,628,408 |
| 自己資本比率 | 8.80% | 4.16% | 5.07% | 7.20% |
| 営業活動によるCF | ― | △2,778,804 | 1,500,436 | 924,959 |
| 従業員数 | 113人 | 104人 | 96人 | 93人 |
| 監査等 | 未監査 | 未監査 | 監査 | 期中レビュー |
第15期の損益の内訳を見ると、売上総利益2,336,609千円から販売費及び一般管理費1,976,814千円を差し引いた営業利益は359,794千円です。一方、営業外費用が197,033千円(うち支払利息149,044千円、支払手数料47,588千円)と大きく、経常利益は営業利益の半分程度の177,433千円になっています。物件の仕入・建築資金を借入で賄う事業構造が、利益の段階ごとの差に表れています。
図8 発行者情報 損益計算書より(単位:千円)
売上原価明細書では、第15期の売上原価13,379,231千円のうち、土地取得費が4,685,000千円(35.0%)、建物取得費が7,166,126千円(53.6%)を占め、原価計算は個別原価計算です。会社は対処すべき課題として、円安による資材高騰や主要都市の土地費の高騰で不動産の原価が増加する傾向にあることを挙げ、原価と維持費を抑えるマンション開発のノウハウの深化と、用地取得の独自の情報網の強化が不可欠だと記載しています。
税金費用にも特徴があります。税効果会計適用後の法人税等の負担率は第14期64.94%、第15期42.16%で、第14期は交際費等の永久に損金に算入されない項目の影響(33.67%)が大きくなっています。利益水準が小さい期は、永久差異の影響で負担率が大きく振れることがあります。
財政状態と借入の構造
第15期末の総資産12,134,303千円のうち、販売用不動産が5,010,453千円、仕掛販売用不動産が2,797,977千円を占めます。負債側では短期借入金2,978,297千円、1年内返済予定の長期借入金3,153,630千円、長期借入金3,259,657千円(借入金合計9,391,585千円)に加えて社債186,000千円があり、純資産は614,613千円、自己資本比率は5.07%です。借入金の平均利率は短期2.801%、長期(1年内返済予定を除く)2.614%と記載されています。
借入の多くは担保付きで、第15期末に担保に供している資産は販売用不動産・仕掛販売用不動産・建物の合計8,241,740千円、担保付債務は8,341,379千円です。さらに、銀行借入と社債の発行については代表取締役から債務保証を受けており、その額は第15期で5,237,523千円です(関連当事者取引として後述)。第16期中間会計期間末では短期借入金が699,950千円に減り、長期借入金が4,359,821千円に増えるなど、借入の構成も変化しています。
図9 発行者情報「主要な経営指標等の推移」、貸借対照表、注記(担保資産・関連当事者情報)より
営業活動によるキャッシュ・フローは、第14期が△2,778,804千円(棚卸資産の増加△1,970,092千円、売上債権の増加△918,255千円等)、第15期が1,500,436千円(買掛金の増加933,542千円、棚卸資産の減少320,182千円等)と大きく振れています。物件の仕入と販売のタイミングで資金収支が大きく動くことは、事業等のリスクでも「キャッシュ・フローの急激な変動」「資金繰り悪化と在庫の滞留」として記載されています。こうした会社では、月次の資金繰り管理と借入の満期管理が上場準備の重要な論点になります。
資本政策と株主構成:株主2名で上場
レイシャスの株主は、2026年6月30日現在で2名です。代表取締役の住吉秀一氏が410,000株(発行済株式550,000株の74.55%)、住吉氏が議決権の過半数を所有する資産管理会社の株式会社レイシャスキャピタルが140,000株(25.45%)を所有し、実質的にオーナーが全株式を保有しています。役員の状況でも、住吉氏の所有株式数は資産管理会社分を含めて550,000株と記載されています。
このほか、役員・従業員に付与した新株予約権(ストック・オプション)があり、その目的となる株式数は株式併合後で67,670株です。第四部「株主の状況」では、潜在株式を含めた合計617,670株に対して住吉氏66.38%、レイシャスキャピタル22.67%、新株予約権による潜在株式10.96%と表示されています。発行済株式数を分母にした比率と、潜在株式を含めた比率を混同しないよう注意が必要です。
図10 発行者情報「所有者別状況」「役員の状況」「株主の状況」より。株式数は2026年6月1日の株式併合後
| 株主・保有者 | 株式数(株式併合後) | 備考 |
|---|---|---|
| 住吉 秀一(代表取締役) | 410,000株 | 発行済株式の74.55% |
| ㈱レイシャスキャピタル | 140,000株 | 発行済株式の25.45%。役員が議決権の過半数を所有する資産管理会社 |
| 奥川 まどか・熊澤 博之(取締役) | 各7,500株(潜在) | 第1回新株予約権 |
| 従業員33名 | 計51,520株(潜在) | 第1回新株予約権(合計は本記事の計算) |
| 有澤 政利・遠藤 康彦(監査役) | 750株・400株(潜在) | 第2回新株予約権 |
| 合計 | 617,670株 | うち潜在株式67,670株(10.96%) |
株式分割・株式併合と資産管理会社への移動
上場前の株式数の動きも特徴的です。第15期の期首時点の発行済株式は100株で、2025年4月1日付で1株を55,000株に分割して5,500,000株とし、さらに2026年6月1日付で10株を1株に併合して550,000株とすると同時に、100株を1単元とする単元株制度を導入しました。株式併合について会社は、発行済株式総数を削減して「当社株式の投資単位を適切な水準に調整することを目的」と説明しています。
2025年8月20日には、住吉氏から株式会社レイシャスキャピタルへ1,400,000株(株式分割後・株式併合前の株数。併合後の140,000株に相当)が移動しています。移動理由は「資産管理会社への株式移転のため」、移動の形態は「現物配当による無償の移動」で、対価の授受はないと注記されています。TPMでも、新規上場申請日の直前事業年度の末日の2年前から上場日の前日までの特別利害関係者等の株式等の移動は、特例115条・同施行規則106条により上場日から5年間記録を保存する対象になると会社は記載しています。
図11 発行者情報「発行済株式総数、資本金等の推移」「新株予約権等の状況」「特別利害関係者等の株式等の移動状況」より
上場前に資産管理会社を作り、オーナー個人の株式を移す例は少なくありません。ただし、移動の時期・方法・価格によって税務上の取扱いが変わり、上場前の株式の動きは記録・開示の対象にもなります。株式移動のルールと実務上の留意点は上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)、資本政策全体の考え方は上場準備の資本政策で整理しています。
ストック・オプションは「TPM以外の市場への上場」が行使条件
2025年7月10日の臨時株主総会決議に基づき、2025年7月31日に第1回新株予約権(取締役2名・従業員)と第2回新株予約権(監査役2名)を無償で発行しています。株式併合後の行使価額は1株500円(発行時は1株50円)、行使期間は2027年7月11日から2035年7月10日までです。行使価額は「当社の財務状況及び株式価値を総合的に勘案し、ストックオプション制度の趣旨を踏まえて決定」したと記載されています。一部の新株予約権者の退職に伴い会社が無償取得した新株予約権は、発行者情報の公表日現在で償却済みです。
注目したいのは行使条件です。新株予約権の行使は「当社普通株式がいずれかの金融商品取引所(ただし、東京証券取引所が開設する『TOKYO PRO Market』を除く。)に上場すること」を条件としています。つまり、TPMへの上場だけでは行使できず、TPM以外の市場に上場した場合に、上場日以降は3分の1、2年経過後は3分の2、3年経過後は全部を行使できる設計です。なお、発行者情報には、会社として一般市場への上場を目指すといった方針の記載はありません。
図12 発行者情報「新株予約権等の状況」「第三者割当等の概況」より。第1回(取締役・従業員)・第2回(監査役)とも同じ条件
上場前に第三者割当で新株予約権を付与した場合、TPMでも継続所有等の確約が求められます。会社の注記によれば、特例115条・同施行規則107条により、新規上場申請日の直前事業年度の末日(2025年6月30日)の1年前から上場日の前日までに割当てを受けた者は、割当日から上場日以降6か月を経過する日(割当日から1年を経過していない場合は1年を経過する日)まで所有する等の確約を担当J-Adviserに対して行っています。ストック・オプションの設計は税制適格ストックオプション、注記の書き方はストック・オプションの注記の記載例も参考になります。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら / IPO支援を見る
コーポレート・ガバナンス:社内取締役3名と社外監査役2名
レイシャスの取締役会は3名の取締役で構成され、いずれも社内の取締役です。代表取締役の住吉秀一氏、専務取締役 経営推進本部長の奥川まどか氏、常務取締役 開発事業本部長の熊澤博之氏で、定例の取締役会を毎月1回、必要に応じて臨時取締役会を開催しています。監査役は2名で、常勤監査役の有澤政利氏(総合商社で監査部やグループ会社の監査役を経験)と、非常勤監査役で公認会計士の遠藤康彦氏はいずれも社外監査役です。役員5名のうち女性は1名(20%)です。
監査役の会議体は「監査役会」ではなく「監査役協議会」と記載され、監査役協議会規則に基づいて相互の意見共有や監査方針の検討・決定を行っています。社外取締役は選任されておらず、社外取締役・社外監査役の独立性に関する基準や方針は「特段の定めはありません」としたうえで、取引関係等を考慮して選任する方針を示しています。
図13 発行者情報「コーポレート・ガバナンスの状況」の記載をもとに作成
| 役職 | 氏名 | 主な経歴・特徴 |
|---|---|---|
| 代表取締役 | 住吉 秀一 | 工務店等での勤務を経て2011年に当社を設立。資産管理会社分を含め550,000株を所有 |
| 専務取締役 経営推進本部長 | 奥川 まどか | 2011年入社、2019年取締役、2025年1月専務取締役 |
| 常務取締役 開発事業本部長 | 熊澤 博之 | 複数の会社での勤務を経て2013年入社、2017年取締役、2025年1月常務取締役 |
| 常勤監査役(社外) | 有澤 政利 | 総合商社で監査部、グループ会社の監査役等を歴任。2023年11月就任 |
| 非常勤監査役(社外) | 遠藤 康彦 | 公認会計士。監査法人勤務を経て事務所開設、他社の非常勤監査役も兼任。2023年12月就任 |
TPMには一般市場のような機関設計の形式要件はなく、上場適格性要件として「企業の規模や成熟度等に応じて」ガバナンス・内部管理体制が整備・機能していることが求められます。レイシャスの体制は、社内取締役3名の取締役会を、商社出身の常勤監査役と会計士の非常勤監査役が監査する形です。一般市場への上場を考える場合は社外取締役の選任が論点になるため、検討の考え方は社外取締役は何人必要かやIPO審査の「機関設計」とはも参考にしてください。
役員報酬と定款の定め
2025年6月期の役員報酬は、取締役(社外取締役を除く)3名に78,000千円、社外役員(社外監査役2名)に9,600千円で、いずれも固定報酬のみです。報酬限度額は2025年9月25日の株主総会で取締役年額400百万円以内、監査役年額70百万円以内と決議されています。
定款では、取締役・監査役の選任決議の定足数を議決権の3分の1以上とし累積投票によらないこと、株主総会の特別決議の定足数を3分の1以上とすること、取締役会決議による自己株式の取得、会社法426条による責任免除、427条による責任限定契約(監査役との間で締結済み)を定めています。役員等賠償責任保険(D&O保険)も締結し、保険料は全額会社負担です。いずれも上場会社で一般的に見られる定めで、上場準備の段階で定款を上場会社仕様に改めておく典型例といえます。
代表者による債務保証は関連当事者取引として開示
関連当事者との取引として、代表取締役の住吉秀一氏から、当社の銀行借入及び社債の発行に対する債務保証を受けていることが開示されています。取引金額は第14期7,154,203千円、第15期5,237,523千円で、保証料の支払いは行っていません。発行者情報には、この保証を解消する予定についての記載はありません。
会社はコーポレート・ガバナンスの状況で、支配株主との取引は一般の取引条件と同等の条件に照らして決定し、関連当事者取引は取引の際に取締役会の承認を必要とする、という方針を示しています。一般市場の上場審査では、代表者による債務保証は解消の方針や時期を問われることが多い論点です。解消の進め方は社長個人と会社の取引はどう解消するかで解説しています。
図14 発行者情報 財務諸表注記「関連当事者情報」より。取引金額は保証を受けている債務の額
内部監査と内部統制:代表取締役直轄の内部監査担当者
内部監査は、代表取締役の命により内部監査担当者が実施し、各部の監査結果と改善点を、内部監査担当者から代表取締役に報告書と改善要望書で提出する体制です。内部監査担当者と監査役は監査法人と適宜情報交換・意見交換を行い、連携を図っていると記載されています。発行者情報には、内部監査の担当部署名や人数、担当者自身の所属部署を誰が監査するか(自己監査の回避)についての記載はありません。
内部統制については、職務権限規程の遵守により業務を合理的に分担し、特定の組織や担当者に業務や権限が集中することを回避して内部牽制が働くよう努めていると記載されています。リスク管理はリスク管理規程に基づき、リスク・コンプライアンス委員会で協議し、重要事項は取締役会で決定する仕組みで、必要に応じて弁護士等の複数の専門家から助言を受けています。
図15 発行者情報「内部監査及び監査役監査の状況」等の記載をもとに作成。内部監査の部署名・人数は記載されていない
少人数の会社では、内部監査担当者が他部署と兼務することが多く、兼務先の部署を自ら監査しない仕組み(自己監査の回避)をどう作るかが論点になります。TPMでも上場適格性要件の一つが「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制」の整備・運用であり、規模に応じた体制を説明できることが大切です。内部監査の始め方は内部監査の始め方、兼務と自己監査の回避は内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)、三様監査の連携は監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査)で解説しています。
会計・開示の論点:会計方針の変更、収益認識、棚卸資産の評価
会計面で最も特徴的なのは、第14期に「中小企業の会計に関する基本要領」に従った会計処理を、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従った会計処理に変更し、遡及適用している点です。株主資本等変動計算書では、会計方針の変更による累積的影響額△320,155千円が第14期の期首の利益剰余金から差し引かれ、期首の純資産は821,949千円から501,793千円になっています。
非上場の中小企業では、中小企業会計要領や税務基準に近い処理で決算を組んでいることが少なくありません。上場を目指す場合は、監査を受ける期より前に会計処理を上場会社の基準に合わせる必要があり、その影響で過去の純資産が大きく変わることがあります。同時に、収益認識に関する会計基準も第14期の期首から適用されています。過年度の処理を見直す場合の考え方は過年度の会計処理に誤りが見つかったときも参考になります。
| 項目 | 内容(発行者情報の記載) |
|---|---|
| 会計方針の変更 | 第14期に中小企業会計要領から一般に公正妥当と認められる企業会計の基準へ変更し、遡及適用 |
| 累積的影響額 | 第14期期首の利益剰余金から△320,155千円(期首純資産821,949千円→501,793千円) |
| 収益認識基準 | 第14期の期首から適用 |
| 監査 | 第15期の財務諸表を監査、第16期中間は期中レビュー(第13期・第14期は未監査) |
| 連結 | 子会社2社は重要性が乏しいとして連結財務諸表を作成せず |
| 未適用の基準 | リースに関する会計基準等(2028年6月期の期首から適用予定、影響額は評価中) |
収益認識:引渡時と契約成立時の一時点
収益の認識時点は事業ごとに定められています。投資用マンション事業は、不動産売買契約に基づき物件を引き渡す履行義務を負い、物件が引き渡される一時点で収益を認識します。賃貸・建物管理は賃貸借契約に基づき賃料を収益として認識し、管理サービスは提供が完了した時点で認識します。不動産仲介は、媒介契約に基づく一連の業務を履行義務とし、売買契約が成立した一時点で収益を認識しています。契約負債は主に不動産賃貸契約に基づく賃料等の前受金で、第15期末は153,458千円です。
図16 発行者情報 注記「重要な会計方針」「収益認識関係」より。金額は第15期
投資用マンションの販売は1件当たりの金額が大きく、引渡日が期末の前後どちらになるかで期間損益が大きく変わります。上場準備では、引渡しの事実を確かめる証憑(引渡確認書や決済の記録など)と、期末前後の取引の検証手続を整えておくことが重要です。収益認識の全体像は収益認識基準 完全ガイドで解説しています。
重要な会計上の見積り:販売用不動産の評価
重要な会計上の見積りとして、棚卸資産(販売用不動産・仕掛販売用不動産)の評価が挙げられています。物件ごとに事業計画上の見積売却価額から見積直接経費を控除して正味売却価額を算定し、帳簿価額を下回る場合は正味売却価額まで切り下げます。会社は、賃料の低下や空室率の上昇、想定外の追加コスト、市場金利の変動に伴う割引率の上昇、販売市況の悪化等が、正味売却価額の算定に重要な影響を及ぼす可能性があると記載しています。
図17 発行者情報 注記「重要な会計上の見積り」をもとに作成。金額は第15期末
このほか、第16期中間会計期間には投資有価証券評価損20,000千円を特別損失に計上しています。監査報酬は監査証明業務15,880千円で、非監査業務はありません。会計監査は業務執行社員2名(継続監査年数7年以内)と補助者(公認会計士5名、その他3名)で行われています。監査法人選定の時期と考え方は監査法人はいつまでに決めるかもあわせてご覧ください。
事業等のリスクとJ-Adviser契約
事業等のリスクは、市場・経済環境、開発・物件固有、財務・資金繰り、賃貸運営・管理、法制度・社会情勢、経営・内部管理の6区分に整理され、項目ごとに「当社は当該リスクに対して」と対応策を併記する形で記載されています。市況の下落、金融機関の融資姿勢の悪化、金利の上昇、地価・建築資材の高騰、借入依存度の上昇や借換えの困難化など、借入と販売に依存する投資用マンション事業の特徴に沿った項目が並んでいます。
TPM特有の項目が「担当J-Adviserとの契約について」です。J-Adviser契約は新規上場と上場維持の前提となる契約で、契約が解除され、かつ他の担当J-Adviserを確保できない場合は上場廃止となると記載されています。契約上は、義務違反があれば相当の期間(特段の事情のない限り1か月)を定めて書面で催告したうえで解除でき、合意又は1か月以上前の書面通知でいつでも解除できるほか、債務超過、銀行取引の停止、発行者情報等の提出遅延、虚偽記載など、即日無催告で解除できる事由が具体的に列挙されています。
図18 発行者情報「事業等のリスク(担当J-Adviserとの契約について)」をもとに作成
発行者情報の公表日時点では、契約の解除条項に該当する事象は生じていないと記載されています。TPMの上場会社にとって、担当J-Adviserとの関係維持は上場維持そのものに直結します。開示の体制づくりはIPOの適時開示体制も参考にしてください。
一般市場へのステップアップを考える会社への示唆
レイシャスの発行者情報には、会社として一般市場への上場や市場変更を目指すという方針の記載はありません。一方で、前述のとおりストック・オプションの行使条件は「TPMを除く金融商品取引所への上場」とされており、TPMへの上場だけでは行使できない設計になっていることは事実として記載されています。ここでは同社の方針を推測せず、TPMから一般市場を目指す場合の一般的な留意点を整理します。
まず、TPMから一般市場への移行は「市場区分の変更」ではなく、TPMを申請により上場廃止し、一般市場に新規上場する手続として扱われます。実例として、AlbaLinkは2025年12月14日にTPMを上場廃止し、翌15日にグロース市場に新規上場しています。東証は2025年11月の資料で、TPMから一般市場への上場審査は非上場企業と同様に一から確認が行われていると現状を整理し、2026年4月の資料では「26年秋めど」にTPM実績を勘案した一般市場上場審査の効率化と開示様式の共通化・簡素化を予定していると公表しています(本記事執筆時点で実施済みかどうかは確認できていません)。
一般市場を視野に入れる会社にとっては、TPMで求められない項目、たとえば直前2期の監査、株主数・流通株式の形式基準、内部統制報告書などへの対応を別途計画する必要があります。株主が2名の会社であれば、流通株式や株主数の基準を満たすための資本政策も別に設計しなければなりません。準備の全体像はグロース市場事前チェックリスト、流通株式の考え方は流通株式比率の計算式と調べ方で確認できます。
上場準備会社がレイシャスの事例から学べること
レイシャスの発行者情報から、上場準備会社が実務に生かせるポイントを7つにまとめます。
- 資金調達をしない上場もある。特定投資家向け取得勧誘等を行わず、発行者情報を公表して上場しています。上場目的を自社の言葉で説明できるようにしておくことが出発点です。
- 株主が少なくても上場できるのがTPM。形式基準がないため、株主2名でも上場しています。ただし一般市場を目指すなら株主数・流通株式の設計が別に必要です。
- 投資単位は株式分割と株式併合で調整する。1株を55,000株に分割した後、10株を1株に併合し、単元株制度を導入しています。
- 資産管理会社への移動は記録の対象。上場前の特別利害関係者等の株式移動は、上場日から5年間の記録保存の対象です。
- 会計方針は監査対象期より前に整える。中小企業会計要領からの変更で、期首の純資産が△320,155千円変わりました。
- 借入依存の会社は資金繰りと代表者保証の説明が要る。自己資本比率5%前後、担保付債務と代表者保証が財務を支える構造です。
- 少人数のガバナンスは役割分担を明確に。社内取締役3名・社外監査役2名、代表取締役直轄の内部監査という体制を、規模に応じた体制として説明できることが大切です。
- 上場目的(なぜTPMか、上場後にどう活用するか)を言語化している
- 監査を受ける事業年度と担当J-Adviserの調査期間から上場時期を逆算している
- 中小企業会計要領や税務基準からの会計方針の変更と影響額を把握している
- 上場前の株式移動・新株予約権の割当てを記録し、継続所有等の確約の要否を確認している
- 上場後12か月の運転資金の見通しと借入の満期管理を説明できる
- 代表者保証や関連当事者取引について、取締役会での承認と今後の方針を整理している
よくある質問
上場に際して特定投資家向け取得勧誘又は特定投資家向け売付け勧誘等を実施しないため、特例110条3項の規定により「発行者情報に相当する情報」を公表して上場したためです。
TPMには株主数や流通株式などの形式基準(数値基準)がありません。レイシャスは代表取締役と資産管理会社の2名が全株式を保有する状態で上場しています。上場適格性は担当J-Adviserが5つの要件に照らして調査・確認します。
新規上場時に求められる監査期間は最近1年間です。レイシャスは第15期(2025年6月期)の財務諸表についてかなで監査法人の監査を受け、第16期中間は期中レビューを受けています。第13期・第14期は監査を受けていないことを明記しています。
新株予約権の行使には、当社株式がTOKYO PRO Market以外のいずれかの金融商品取引所に上場していることが必要という条件です。TPMへの上場だけでは行使できません。なお、発行者情報には一般市場への上場を目指すという会社の方針は記載されていません。
最初の一歩は「会計方針」と「資本政策」の棚卸しから
TPMを検討する会社が最初に取り組みたいのは、上場目的を言語化したうえで、現在の会計処理が上場会社の基準とどれだけ違うか、株式の保有状況と今後の資本政策をどう組むかを棚卸しすることです。監査を受ける事業年度の前に会計方針を整えておかないと、上場時期そのものが後ろにずれます。自社の現状を把握するには、まずショートレビューで課題を洗い出すのが近道です。
まとめ
レイシャスは、2026年8月26日にTOKYO PRO Marketへ上場しました。特定投資家向け取得勧誘等を行わず、直前1期の監査を受けた発行者情報で上場しており、申請受付(8月4日)から上場承認(8月19日)までは10営業日、担当J-Adviserは株式会社日本M&Aセンターです。
発行者情報からは、株主2名のオーナー企業としての資本政策(株式分割・併合、資産管理会社への移動、TPM以外の市場への上場を行使条件とするストック・オプション)、中小企業会計要領からの会計方針の変更、借入と代表者保証に支えられた財務構造、社内取締役3名と社外監査役2名による機関設計、引渡時の収益認識と販売用不動産の評価など、不動産会社がTPMを使う際の論点を具体的に読み取ることができます。TPMを検討する会社にとっては、形式基準がないからこそ「自社の体制を、どの水準で、どう説明できるか」を整えておくことが大切だといえます。
ショートレビュー、資本政策、機関設計、内部監査・内部統制、会計方針と開示、Ⅰの部の作成、審査対応まで、上場準備の実務を公認会計士が支援します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
本記事の根拠
- 東京証券取引所 TOKYO PRO Market 新規上場会社情報「レイシャス 発行者情報」(2026年8月4日公表)
- 日本取引所グループ「新規上場会社情報(TOKYO PRO Market)」
- 日本取引所グループ「TOKYO PRO Market 概要」
- 日本取引所グループ「特定投資家制度の概要」
- 日本取引所グループ「J-Adviser制度」
- 日本取引所グループ「TOKYO PRO Market 上場基準」
- 日本取引所グループ「2025 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編」
- 東京証券取引所「TOKYO PRO Marketの今後の方向性」(2026年4月3日)
- 東京証券取引所「上場目的の開示状況」(2026年6月15日時点)
- 東京証券取引所「プロマーケットの今後の方向性について」(2025年11月13日)
- 日本取引所グループ「上場廃止の決定:(株)AlbaLink」(2025年11月11日)
免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。
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