インターパークのTOKYO PRO Market上場|債務超過からの回復とJ-Adviser契約【発行者情報から読む上場準備】

※本記事は2026年10月7日時点の公表資料に基づきます。

2026年8月28日、札幌市に本社を置くクラウドサービス会社の株式会社インターパークが、東京証券取引所のTOKYO PRO Market(以下「TPM」)に上場しました。営業支援・顧客管理の「サスケ」、ノーコードの「サスケワークス」、スマートフォン向けIP電話の「SUBLINE」を自社で開発・提供する会社です。上場に際して特定投資家向け取得勧誘等(一般市場の公募・売出しに当たる勧誘)は行わず、「発行者情報」を公表しての上場でした。本記事では、JPXの新規上場会社情報に掲載された同社の発行者情報を読み、上場準備の実務で参考になる点を公認会計士の視点で整理します。

結論からいえば、インターパークのケースは「売上高7億円規模のSaaS企業が、上場直前期の前期に債務超過となり、直前期に黒字化して債務超過を解消したうえで、直前1期の監査と担当J-Adviserの調査を経てTPMに上場した例」です。創業者2名とその資産管理会社で発行済株式のほぼすべてを保有する株主構成、3回のストック・オプション、社外監査役3名の監査役会と社外取締役1名の取締役会、社長直轄の内部監査担当者1名、代表者による借入の債務保証、サブスクリプションと受託開発が混在する収益認識、繰延税金資産の回収可能性など、小規模な成長企業がTPMを使うときに論点になりやすい項目が具体的に記載されています。

インターパークはどんな会社で、いつTPMに上場したのか

インターパークは、代表取締役社長の舩越裕勝氏が2001年7月に札幌市で設立した有限会社ちえぶくろを前身とする会社です。2006年に株式会社へ組織変更し、2015年6月に、取締役副社長の須田祐馬氏が2008年2月に設立した株式会社インターパーク(旧MilleniaNet)を吸収合併して、現在の商号に変更しました。MilleniaNetは、須田氏がエンジニアとして個人でシステム開発をしていた際の屋号だと記載されています。決算期は8月で、上場時点の直前事業年度は第24期(2025年8月期)です。子会社はなく、財務諸表は単体のみです。

従業員は48名(ほかに臨時従業員4名)、平均年齢36.4歳、平均勤続年数6.4年、平均年間給与4,799千円です(2026年6月30日現在)。札幌の本社に32名、東京支社(渋谷区)に17名が在籍し(2026年2月28日現在の主要な設備の状況による)、本社は開発機能、東京支社は営業機能を担っています。

上場の手続面では、2026年7月24日に新規上場の申請が受け付けられ(同日に発行者情報を公表)、8月7日に上場承認、8月28日に上場しました。担当J-Adviserは株式会社ジャパンインベストメントアドバイザーです。申請受付から上場承認までは10営業日で、TPMで「原則として上場申請から10営業日後に上場を承認」とされている流れどおりの日程です。申請前の準備として、2026年4月15日の臨時株主総会で1単元を100株とする単元株制度を導入し、7月1日付で1株を4株に分割しています。

インターパークのTOKYO PRO Market上場までの日程2026年4月15日臨時株主総会単元株100株2026年7月1日株式分割1株→4株2026年7月24日申請受付・発行者情報公表2026年8月7日上場承認2026年8月28日TPM上場申請受付から上場承認まで10営業日、上場承認から上場日まで21日(暦日、本記事の計算)担当J-Adviser:株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー特定投資家向け取得勧誘等(公募・売出しに当たる勧誘)は行わずに上場

図1 発行者情報の記載とJPXの新規上場会社情報(申請受付日・上場承認日・上場日)をもとに作成

項目 内容
会社名 株式会社インターパーク(証券コード615A)
市場 東京証券取引所 TOKYO PRO Market
上場日 2026年8月28日
上場承認日 2026年8月7日
申請受付日 2026年7月24日(発行者情報の公表日)
担当J-Adviser 株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー
本店 北海道札幌市中央区
設立 2001年7月(有限会社ちえぶくろとして設立)
決算期 8月(直前事業年度は第24期=2025年8月期)
事業 AI×クラウドサービス事業(単一セグメント)
従業員 48名(臨時4名、2026年6月30日現在)
上場時の開示書類 発行者情報(特例110条3項による発行者情報に相当する情報)
公募・売出し なし(特定投資家向け取得勧誘等を実施しない)
会計監査 太陽有限責任監査法人(第24期の監査、第25期中間の期中レビュー)

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なぜTOKYO PRO Marketを選んだのか

まず確認しておきたいのは、インターパークの発行者情報には、TPMへの上場目的やTPMを選んだ理由についての記載が見当たらないことです。そのため本記事では、同社の理由を推測することはせず、TPMという市場の一般的な特徴を整理するにとどめます。

TPMは、2008年の改正金融商品取引法で導入されたプロ向け市場制度に基づく市場で、法令上は「特定取引所金融商品市場」に当たります。一般投資家は取引所で株式を買い付けることができず(保有株式の売却は可能)、買付けができるのは特定投資家等に限られます。株主数や流通株式、利益の額といった形式基準(数値基準)がなく、担当J-Adviserが上場適格性を調査・確認する仕組みになっている点が、プライム・スタンダード・グロースの一般市場との大きな違いです。

東証は2026年4月、TPMを「一般市場上場と非上場の間の多様な活用ニーズに対応する市場」と位置づけ直し、新規上場時に「上場目的」(なぜTPMに上場し、どう活用するか)を検討・開示するよう要請しています。これは規程上の義務ではなく東証からの「お願い」ですが、2026年6月15日時点の集計では、上場目的として多かったのは社内体制の強化、営業力の強化、採用力の強化で、「増資」を挙げた会社は1割程度でした。TPM上場は必ずしも資金調達を目的とするものではない、ということがわかります。インターパークも上場に際して資金調達は行っていません。

上場時の開示書類はどう決まるか(インターパークのケース)上場に際して特定投資家向け取得勧誘等を行うか行う場合特定証券情報を提供・公表(金融商品取引法27条の31)インターパーク:行わない特例110条3項により発行者情報に相当する情報を公表上場後はいずれも年次・中間の「発行者情報」を各期末後3か月以内に公表(一般市場の有価証券報告書・半期報告書とは別の書類)行う行わない

図2 金融商品取引法27条の31と、発行者情報表紙の「取引所金融商品市場等に関する事項」の記載をもとに作成

インターパークの発行者情報の表紙には「上場に際して特定投資家向け取得勧誘又は特定投資家向け売付け勧誘等を実施しないことから、特例110条3項の規定により、発行者情報に相当する情報を公表」すると記載されています。上場時に勧誘を行う会社は金融商品取引法27条の31に基づく「特定証券情報」を公表しますが、勧誘を行わない会社は「発行者情報」の形式で上場時の情報を公表する、という使い分けです。いずれの場合も、上場後は年次と中間の「発行者情報」を、それぞれ期末後3か月以内に公表していくことになります。

TPMの上場の仕組みをインターパークの記載で確認する

TPMには形式基準がありませんが、「上場審査がない」わけではありません。担当J-Adviserが、①企業としての相応性、②事業を公正かつ忠実に遂行していること、③コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が企業の規模や成熟度等に応じて整備・機能していること、④企業内容等の開示を適正に行える体制、⑤反社会的勢力との関係がないこと等、という5つの上場適格性要件を調査・確認し、「上場適格性に係る宣誓書」を作成します。東証も、上場申請の約30営業日前までの意向表明の後に面談を行います。

インターパークの発行者情報でも、この仕組みが随所に現れています。事業等のリスクには「特例102条の定めにより、TPM上場企業は担当J-Adviserと、上場適格性の審査及び上場後の上場適格性を維持するための指導・助言・審査等の業務を委託する契約を締結する義務がある」と記載され、契約上の義務として「特例113条に定める上場適格性要件を継続的に満たすこと」が挙げられています。また、MD&Aには「上場予定日(2026年8月28日)から12カ月間の運転資本は、自己資本及び借入金による資金調達が可能であることから十分である」との記載があり、上場適格性要件の「企業としての相応性」で確認される運転資金の確保に対応する記載と読めます。

TOKYO PRO Marketの上場手続と上場適格性要件J-Adviser契約・調査意向表明申請の約30営業日前まで上場申請発行者情報等を公表上場承認原則申請から10営業日後上場日担当J-Adviser(J-QS)が上場適格性を調査・確認し「上場適格性に係る宣誓書」を作成東証も意向表明後に面談を行う(「審査がない市場」ではない)上場適格性要件(5項目)企業としての相応性事業の公正・忠実な遂行ガバナンス・内部管理体制適正な開示を行える体制反社会的勢力との関係なし等

図3 JPX「2025 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編」等をもとに一般的な流れを整理したもの。形式基準(数値基準)はなく、担当J-Adviserが上場適格性を調査・確認する

監査についても、TPMの特徴がそのまま表れています。主要な経営指標等の推移の注記によれば、特例110条5項に基づき監査を受けているのは第24期(2025年8月期)の財務諸表のみで、第22期・第23期は監査を受けていません。第25期中間会計期間の中間財務諸表は期中レビューを受けています。TPMの上場前の監査期間は「最近1年間」とされており、直前2期の監査が求められるとされる一般市場の新規上場とは負担が異なります。ただし、監査そのものが不要になるわけではなく、上場後の中間の発行者情報にも中間監査又はレビューの意見・結論が必要です。

項目 TOKYO PRO Market 一般市場(グロース・スタンダード)
投資家 特定投資家等(一般投資家は買付け不可、保有株の売却は可) 一般投資家を含む
形式基準 数値基準なし 株主数・流通株式等の形式要件あり
上場適格性の確認 担当J-Adviserが調査・確認(東証も面談) 東証の上場審査
申請から承認まで 原則10営業日(申請前にJ-Adviserの調査と意向表明) 東証の審査期間を経て承認
上場前の監査期間 最近1年間 直前2期とされる
上場時の開示書類 特定証券情報(勧誘しない場合は発行者情報に相当する情報) 有価証券届出書等
継続開示 発行者情報(年次・中間、各期末後3か月以内) 有価証券報告書・半期報告書
四半期開示 任意 取引所規則上の四半期決算短信
内部統制報告書 任意 提出が必要
上場の前提 J-Adviser契約の維持 上場維持基準への適合

この比較からわかるとおり、TPMは「基準が緩い市場」というより、「数値基準の代わりに担当J-Adviserが個別に適格性を確認する市場」です。上場後もJ-Adviser契約を維持し続けることが前提になるため、契約の解除事由がどう定められているかを理解しておくことが重要です。この点は後ほど、インターパークの記載に即して詳しく見ていきます。

インターパークは何で稼いでいるのか

インターパークは「ビジネスや日常をシンプルに、効率的に、より価値のあるものにする」をミッションに掲げ、自社内でゼロからクラウドシステムを開発・製品化し、セールスからカスタマーサポートまで一貫して提供しています。セグメントは「AI×クラウドサービス事業」の単一ですが、販売実績はSaaSサービス、SUBLINEサービス、WEBサービスの3区分で開示されています。

SaaSサービスの柱は、営業活動や顧客管理を効率化するクラウド型セールス&マーケティング支援ツール「サスケ」と、プログラミングの知識がなくても業務アプリを作成できるノーコード型プラットフォーム「サスケワークス」です。SUBLINEサービスは、社員のスマートフォンに業務用の050番号を付与できるクラウド型IP電話で、IVR(自動音声応答)機能も備えています。WEBサービスは、サスケをベースにお客様の業務に合わせて拡張開発し、お客様のプライベート環境に「オリジナルサスケ」を提供する受託開発と、Webサイト等の開発・保守です。

インターパークの事業の仕組み(AI×クラウドサービス事業)インターパーク(当社)自社でクラウドシステムを開発し販売・サポートまで一貫提供SaaSサービス「サスケ」(顧客管理)「サスケワークス」SUBLINEサービススマホのクラウド型IP電話(050番号)WEBサービスサスケをベースにした受託開発・Web保守事業者のお客様(月額などのサブスクリプション・受託契約)最大の販売先:株式会社マイナビ(第24期 売上高の10.3%)Twilio Inc.電話番号・通話サービスSUBLINEの一部はポイントによる従量課金で、資金決済法に基づく発行保証金を供託利用

図4 発行者情報「事業の内容」「事業等のリスク」をもとに作成。単一セグメントで、サービス区分は3つ

第24期の売上高745,117千円の内訳は、SaaSサービス433,444千円(前期比103.9%)、SUBLINEサービス248,956千円(同123.2%)、WEBサービス62,716千円(同120.0%)です。金額ではSaaSが約6割を占め、伸び率ではSUBLINEが最も高くなっています。総販売実績の10%以上を占める相手先は株式会社マイナビで、第23期72,961千円(10.9%)、第24期76,822千円(10.3%)です。

第24期(2025年8月期)のサービス区分別売上高SaaSサービス433,444千円(58.2%、前期比103.9%)SUBLINEサービス248,956千円(33.4%、前期比123.2%)WEBサービス62,716千円(8.4%、前期比120.0%)合計 745,117千円(前期比111.0%)。伸び率はSUBLINEが最も高く、金額はSaaSが約6割

図5 発行者情報「販売実績」より。構成比は本記事の計算、前期比は会社の記載

事業の仕組みのうえで押さえておきたいのが、仕入先と規制の論点です。SUBLINEはTwilio Inc.(米国)が提供する電話番号及び通話サービスを利用して提供されており、会社は同サービスの停止や値上げ、契約解除をリスクとして記載しています。また、SUBLINEの一部ではポイントによる従量課金モデルを採用しており、資金決済に関する法律に基づき発行保証金を供託しています(第24期末で国債9,872千円と長期預け金7,000千円の計16,872千円)。供託額は年2回見直しているとされ、社内体制として出納と経理を分離していることも記載されています。

上場準備の観点では、特定の仕入先や特定の顧客への依存、事業に関係する法令(ここでは資金決済法)への対応は、J-Adviserの調査でも一般市場の審査でも確認されやすい項目です。許認可や届出が事業に関わる会社は、IPOで許認可はどこまで見られるかもあわせて確認しておくとよいでしょう。

沿革から見える上場までの道のり

沿革を見ると、インターパークは2つの会社が資本提携を経て統合した会社であることがわかります。舩越氏の有限会社ちえぶくろは2001年10月にMilleniaNetと業務提携を開始し、2012年6月には両社が資本提携、2015年6月に旧インターパークを吸収合併して現在の商号になりました。サービス面では、2009年9月に「サスケ」、2017年12月に「SUBLINE」、2019年3月に「サスケワークス」の提供を開始しています。2015年にはISO 27001認証とプライバシーマークを取得しています。

資本政策の面では、2020年2月に第1回新株予約権(有償ストック・オプション)、2022年1月に第3回新株予約権、2024年11月に第4回新株予約権を付与しています。2012年8月に資本金を20,000千円に変更して以降、発行者情報の主要な経営指標等に記載された期間(第22期以降)では、資本金は20,000千円、発行済株式総数は400,000株(分割前)のまま推移しています。

インターパークの沿革(主な出来事)2001年7月有限会社ちえぶくろ設立2008年2月旧インターパーク設立(須田氏)2009年9月「サスケ」サービス開始2015年6月吸収合併しインターパークへ2017年12月「SUBLINE」サービス開始2019年3月「サスケワークス」サービス開始2020年2月第1回新株予約権(有償SO)2022年1月第3回新株予約権付与2024年11月第4回新株予約権付与2026年8月TOKYO PROMarket上場

図6 発行者情報「沿革」と株式等の状況の記載をもとに作成

創業者2名がそれぞれの会社を経営してきた経緯は、後で見る株主構成(創業者2名とその資産管理会社でほぼすべての株式を保有)や、事業等のリスクに記載された「特定の人物への依存」(舩越氏は経営戦略・取引先との関係構築・資金調達、須田氏は開発方針・技術的意思決定で中心的な役割)にもつながっています。会社は、権限委譲や業務の標準化、組織的な開発体制の構築によって特定個人への依存の低減に努めていると記載しています。

業績の推移と債務超過からの回復をどう読むか

主要な経営指標等の推移には、第22期(2023年8月期)から第24期(2025年8月期)までの3期分と、第25期の中間会計期間(2025年9月〜2026年2月)の数値が掲載されています。前述のとおり、監査を受けているのは第24期のみで、第22期・第23期は監査を受けていない数値です。

項目(千円) 第22期 2023年8月期 第23期 2024年8月期 第24期 2025年8月期 第25期中間 2026年2月
売上高 640,522 671,348 745,117 407,563
経常損益 21,590 △61,847 25,622 8,012
当期(中間)純損益 15,611 △56,844 29,657 5,230
純資産額 28,504 △28,340 1,305 6,535
総資産額 298,724 250,864 304,604 327,336
自己資本比率 9.49% △11.36% 0.38% 1.95%
営業活動によるCF 14,882 △60,816 66,546 △5,235
現金及び現金同等物 166,038 120,009 161,491 182,041
監査 未監査 未監査 監査済み 期中レビュー

売上高は第22期640,522千円から第24期745,117千円まで伸びていますが、損益は第23期に大きく落ち込みました。第23期は営業損失61,460千円、経常損失61,847千円、当期純損失56,844千円となり、期末の純資産は△28,340千円の債務超過となりました。会社は事業等のリスクの中で、その理由を「投入した広告費に見合う売上高を獲得できなかったこと」と「新たに構築した営業及びサポート体制が想定した通りには機能しなかったこと」と説明しています。

売上高と経常損益の推移0200,000400,000600,000800,000第22期第23期第24期第25期中間640,522671,348745,117407,563経常損益21,590△61,84725,6228,012第23期(2024年8月期)は広告費に見合う売上を得られず営業赤字第24期に黒字転換売上高の月数:第22〜24期は12か月、第25期中間は6か月

図7 発行者情報「主要な経営指標等の推移」より(単位:千円)。第22期・第23期は監査を受けていない数値、第25期中間は期中レビュー済み

第24期は、新しい営業体制やサポート体制が機能し、広告費の削減効果もあって黒字転換したと記載されています。損益計算書で確認すると、売上総利益は331,615千円から386,534千円へ54,919千円増え、売上総利益率は約49.4%から約51.9%に上がっています(本記事の計算)。販売費及び一般管理費は393,075千円から362,069千円へ31,006千円減少し、そのうち広告宣伝費は66,822千円から51,623千円へ15,199千円減少しました。この結果、営業損益は24,465千円の黒字となっています。

営業損益が黒字転換した要因(第23期→第24期)第23期-61,460売上総利益増+54,919広告宣伝費減+15,199その他販管費減+15,807第24期24,465

図8 発行者情報の損益計算書と販売費及び一般管理費の注記をもとに本記事で計算(単位:千円)。「その他販管費の減少」は販管費全体の減少額31,006千円から広告宣伝費の減少分を差し引いたもの

純資産は第24期末に1,305千円とプラスに戻り、債務超過は解消しました。ただし、利益剰余金は第24期末で△19,123千円、第25期中間末でも△13,893千円とマイナスが続いており、自己資本比率は第24期末0.38%、中間期末1.95%にとどまります。会社自身も「純資産は依然として低い水準」であり、業績悪化等で再び債務超過となった場合には資金調達や信用力に影響を及ぼす可能性があるとして、「財務基盤の脆弱性及び債務超過再発に関するリスク」を事業等のリスクに掲げています。

純資産額の推移(債務超過とその解消)028,504第22期△28,340第23期1,305第24期6,535第25期中間第23期末に債務超過、第24期末に解消。利益剰余金は第25期中間末も△13,893千円

図9 発行者情報「主要な経営指標等の推移」より(単位:千円)。自己資本比率は第22期9.49%、第23期△11.36%、第24期0.38%、第25期中間1.95%

資金面では、第24期の営業キャッシュ・フローは66,546千円の収入に転じ、現金及び現金同等物は161,491千円(中間期末182,041千円)です。借入金は第24期末で127,245千円(1年内返済予定47,297千円、平均利率1.6〜1.7%)、中間期末には長期借入金100,762千円と1年内返済予定44,673千円となっています。会社は運転資金を金融機関からの借入及び自己資金等で賄う方針で、今後は有利子負債とのバランスを勘案しながら自己資本の拡充を目指すと記載しています。

上場準備会社にとってのポイントは、赤字や債務超過の期があること自体よりも、その原因と回復の理由を、数字と整合する形で具体的に説明できるかどうかです。インターパークは、赤字の原因(広告費と体制の機能不全)と回復の理由(新体制の機能と広告費削減)を、損益計算書の動きと対応する形で記載しています。一般市場の審査で問われる観点についてはIPO審査の「企業の継続性及び収益性」も参考になります(同記事はプライム・スタンダード市場の審査基準の解説です)。

資本政策と株主構成はどうなっているか

上場申請時点の株主は5名(個人3名、法人2名)です。代表取締役社長の舩越裕勝氏が512,000株、同氏の資産管理会社である株式会社ちえぶくろが320,000株、取締役副社長の須田祐馬氏が432,000株、同氏の資産管理会社である株式会社SAMが320,000株、ほかに高井伸氏が16,000株を保有しています(2026年7月1日の株式分割後)。発行済株式1,600,000株に対する比率は、舩越氏グループが52.0%、須田氏グループが47.0%、高井氏が1.0%です(本記事の計算。関連当事者注記では舩越氏の議決権被所有割合を直接32.0%・間接20.0%と記載)。

ベンチャーキャピタルや事業会社の出資はなく、従業員持株会もありません。第四部の「特別利害関係者等の株式等の移動状況」は「該当事項はありません」とされています。なお、これらはいずれも上場申請時点の比率であり、上場時に公募・売出しは行われていません。

上場申請時点の株主構成(発行済株式1,600,000株)舩越裕勝氏+資産管理会社(株式会社ちえぶくろ)832,000株(52.0%)須田祐馬氏+資産管理会社(株式会社SAM)752,000株(47.0%)高井伸氏16,000株(1.0%)株主は5名(個人3名・法人2名)。このほか新株予約権による潜在株式64,200株(潜在株式を含む総数1,664,200株の3.9%)を役員・従業員が保有

図10 発行者情報「株主の状況」「所有者別状況」をもとに作成。比率は発行済株式総数に対する本記事の計算で、上場申請時点のもの

このほか、新株予約権による潜在株式が64,200株あり、潜在株式を含む総数1,664,200株に対して3.9%です(会社の記載)。潜在株式は取締役の梶原友昭氏(24,000株)と従業員が保有しています。上場前の資本政策としては、新株予約権の発行のほか、2026年4月15日の単元株制度(100株)の導入と、2026年7月1日の1株→4株の株式分割が行われました。株式分割の目的は「投資単位を適切な水準に調整するため」と記載されています。

上場前の資本政策の主な動き2020年2月第1回SO有償・250円2022年1月第3回SO付与798円2024年11月第4回SO付与288円2026年4月単元株制度100株2026年7月株式分割1株→4株第22期以降、発行済株式数は400,000株(分割前)で変わらず資本金は20,000千円特別利害関係者等の株式等の移動:該当事項なし公募・売出し:行わない

図11 発行者情報「株式等の状況」「ストックオプション制度の内容」「第三者割当等の概況」をもとに作成。行使価額は2026年7月1日の株式分割後の金額

項目 第1回新株予約権 第3回新株予約権 第4回新株予約権
決議日(付与日) 2020年2月28日(同日) 2021年11月26日(2022年1月1日) 2024年9月18日(2024年11月1日)
付与対象(付与時) 従業員15名 取締役1名・従業員37名 取締役1名
公表日現在の対象者 従業員10名 従業員30名 取締役1名
種類 有償(1個30円) ストック・オプション ストック・オプション
行使価額(分割後) 250円 798円 288円
行使期間 国内取引所への上場日〜2030年2月28日 2024年1月1日〜2031年11月25日 2027年1月1日〜2034年8月29日
未行使の株式数(分割後換算) 5,200株 35,000株 24,000株
主な行使条件 上場後1年は割当数の2分の1まで、第20期売上高3億5,880万円超 在職要件等 在職要件等

第1回新株予約権は、新株予約権1個につき30円で発行された有償ストック・オプションで、第20期(2021年8月期)の売上高が3億5,880万円を超えることが行使の条件とされています。また、上場日から1年を経過する日までは割り当てられた新株予約権の2分の1までしか行使できない、という段階的な行使制限が付いています。未行使の株式数は第24期末時点のストック・オプション注記の数値(分割後換算)で、第1回と第3回は退職による権利喪失等により付与時より減少しています。

ストック・オプションの公正な評価単価は、付与時点で非上場であったことから、単位当たりの本源的価値(類似企業比較法により算定した株式の評価額から行使価額を控除した額)の見積りによっていると記載されています。未公開企業では、公正な評価単価に代えて本源的価値によることが会計基準上認められています。第24期末の本源的価値の合計額は4,336千円とされ、ストック・オプションに係る費用計上額は「該当事項はありません」とされています。なお、有償ストック・オプション(権利確定条件付き有償新株予約権)は、実務対応報告第36号によりストック・オプションに準じて会計処理するのが原則です。設計の考え方は税制適格ストックオプションの記事でも整理しています。

第4回新株予約権と継続所有の確約2024年9月1日対象期間の始期2024年11月1日第4回SO割当2025年8月31日直前事業年度末2026年7月24日上場申請2026年8月28日上場日直前事業年度末の1年前の日から上場日の前日までの第三者割当等(新株予約権の割当てを含む)が対象割当先(取締役 梶原友昭氏、24,000株分)は担当J-Adviserに対して確約確約の内容:割当日から上場日以降6カ月を経過する日(割当日から1年未満なら1年を経過する日)まで所有譲渡する場合の事前通知・事後報告 等

図12 発行者情報「第三者割当等の概況」の注記をもとに作成。確約の対象期間の考え方は特例115条・同施行規則107条の記載による

第4回新株予約権(取締役の梶原友昭氏に24,000株分)は、2024年11月1日に割り当てられています。発行者情報の「第三者割当等の概況」では、特例115条と同施行規則107条により、新規上場申請日の直前事業年度の末日(2025年8月31日)から起算して1年前から上場日の前日までに第三者割当等を行っている場合、割当てを受けた者に担当J-Adviserに対する継続所有等の確約を行わせる、と説明されています。第4回はこの期間内の割当てに当たるため、梶原氏は割当日から上場日以降6カ月を経過する日(割当日から1年を経過していない場合は1年を経過する日)まで所有する等の確約を行っています。

行使価額(分割後288円)は、マーケット・アプローチのうちEV/EBIT倍率及びEV/EBITDA倍率による類似企業比較法により算出した価格を総合的に勘案して決定したと記載されています。上場前の新株予約権の発行価格の算定根拠は、TPMでも一般市場でも説明を求められる項目です。株価算定の考え方は未上場株式の株価算定はどの方法を使うか、確約の仕組みは上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)で解説しています。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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コーポレート・ガバナンスの体制はどうなっているか

インターパークは、取締役会と監査役会を置く監査役会設置会社です。取締役会は社外取締役1名を含む取締役5名で構成され、原則として月1回の定時取締役会のほか必要に応じて臨時取締役会を開催し、監査役も出席しています。監査役会は3名の社外監査役(常勤1名、非常勤2名)で構成され、原則月1回の定例会を開いています。このほか、常勤取締役、常勤監査役及び部長等で構成する経営会議(毎月1回)と、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会(原則3カ月に1回以上)が置かれています。取締役会・監査役会の開催回数や出席状況の実績値は記載されていません。

インターパークの機関設計(監査役会設置会社)株主総会取締役会(5名、うち社外1名)原則月1回+臨時監査役会(3名、全員社外)常勤1名・非常勤2名、月1回代表取締役社長内部監査担当者1名(社長直轄)経営会議(月1回)常勤取締役・常勤監査役・部長リスク・コンプライアンス委員会(3カ月に1回以上)会計監査人:太陽有限責任監査法人選任選任監査

図13 発行者情報「コーポレート・ガバナンスの状況」をもとに作成

役職 氏名 主な経歴・選任理由(発行者情報の記載)
代表取締役社長 舩越 裕勝 2001年に有限会社ちえぶくろを設立。2015年から現職
取締役副社長 須田 祐馬 MilleniaNet創業、2008年に旧インターパークを設立。2015年から現職
取締役 梶原 友昭 IT企業での営業部門等を経て2023年4月執行役員、同年11月取締役
取締役 管理部部長 上山 裕幸 住宅会社の財務経理部長等を経て2022年8月入社、2023年11月取締役
社外取締役 川村 秀憲 北海道大学大学院情報科学研究科教授。高い専門性と幅広い知見
常勤社外監査役 島津 光宏 信用組合での長年の経験。財務及び会計に関する知見
社外監査役 鈴木 隆司 公認会計士・税理士。企業会計・企業監査の経験
社外監査役 田代 耕平 弁護士。法務に関する知識と経験

社外監査役3名は、金融機関出身者、公認会計士、弁護士という構成で、財務・会計と法務の専門家がそろっています。事業等のリスクでも「監査役に弁護士を選任し、能動的に法務リスクを発見できるような組織体制を整えている」と記載されています。社外取締役の川村氏は北海道大学大学院情報科学研究科の教授で、高い専門性と幅広い知見を有することが選任理由とされています。一方、社外取締役・社外監査役の独立性に関する基準又は方針について「特段の定めはありません」とし、選任に際しては取引関係等を考慮していると記載されています。

TPMでは、一般市場のような機関設計の形式要件は示されておらず、ガバナンス・内部管理体制は「企業の規模や成熟度等に応じて」整備・機能していることが求められます。インターパークは、小規模な会社でありながら監査役会を置き、社外監査役3名・社外取締役1名を選任しています。将来の一般市場への上場も視野に入れる場合には、独立性基準の整備や社外取締役の員数を改めて検討することになるでしょう。機関設計の選び方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?で解説しています。

役員報酬は、2025年8月期で取締役(社外取締役を除く)4名に56,400千円、社外役員4名に7,200千円、合計63,600千円で、すべて固定報酬です。業績連動報酬や退職慰労金はなく、報酬の決定方針の記載はありません。定款では、取締役の員数を3名以上7名以内とし、取締役の選任決議は議決権の過半数を有する株主が出席しその過半数で行い、累積投票によらないこと、株主総会の特別決議の定足数を議決権の3分の1以上に緩和すること、非業務執行取締役及び監査役と責任限定契約を締結できることを定めています。いずれも上場会社で一般的に見られる定款の整備です。

代表取締役による債務保証(関連当事者との取引)舩越裕勝(代表取締役)議決権 直接32.0%・間接20.0%インターパーク金融機関(銀行借入)事務所の賃貸人(賃貸借契約)被保証の借入残高:第23期末86,250千円 → 第24期末89,845千円債務保証債務保証借入賃借

図14 発行者情報「関連当事者情報」をもとに作成。保証料の支払いはない

関連当事者との取引としては、代表取締役社長の舩越氏による債務保証が記載されています。当社の銀行借入に対する債務保証(期末借入残高で第23期86,250千円、第24期89,845千円)と、事務所の賃貸借契約に対する債務保証(保証対象の賃借料は年12,334千円)で、いずれも保証料の支払いはありません。解消の予定についての記載はありません。また、第23期のキャッシュ・フロー計算書には「役員貸付金の回収による収入」10,184千円が計上されており、第24期にはこの項目はありません。

代表者による債務保証は、非上場の中小企業では一般的ですが、上場準備では「経営者個人と会社の関係」の一つとして、継続の必要性や解消の方針を説明できるようにしておくことが求められやすい論点です。考え方は社長個人と会社の取引はどう解消するかとIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)で詳しく扱っています。

内部監査・内部統制はどのような体制か

内部監査は、代表取締役社長が任命する社長直轄の内部監査担当者1名が担当しています。内部監査規程と、代表取締役社長の承認を得た年間内部監査計画書に基づき、監査役や監査法人と連携を取りながら各部門へのヒアリング・実地調査を行い、結果は代表取締役に直接報告されるほか、定期的に行う監査役及び監査法人との意見交換でも報告されます。監査役も、内部監査担当者及び監査法人と情報交換を行い、監査の実効性と効率性の向上を目指していると記載されています。

一方で、内部監査担当者の所属部署や他業務との兼務の有無、内部監査担当者自身が所属する部門を誰が監査するか(自己監査の回避策)は記載されていません。少人数の会社では内部監査の専任者を置くことが難しく、他部門と兼務するケースが多いため、兼務の場合は自部門を別の担当者が監査する、外部に委託するといった手当てを用意しておくのが一般的です。考え方は内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)と内部監査の人数と体制で解説しています。

内部監査担当者1名の体制と三様監査の連携代表取締役社長内部監査担当者(1名)年間内部監査計画書(社長承認)に基づく各部門(ヒアリング・実地調査)監査役会(常勤1+非常勤2)会計監査人太陽有限責任監査法人三者が定期的に情報交換し、監査の実効性と効率性の向上を図る(会社の記載)任命直接報告意見交換意見交換

図15 発行者情報「内部監査及び監査役監査」の記載をもとに作成。担当者の所属部署・兼務の有無は記載がない

リスク管理とコンプライアンスについては、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会が、全社的なコンプライアンス体制とリスク管理体制の整備を推進し、事業に係るリスクの識別・分析・評価・対応策やコンプライアンス違反の防止策を検討しています。事業等のリスクの記載からは、具体的な仕組みとして次のようなものが読み取れます。

反社会的勢力については「反社会的勢力の排除にかかる調査実施マニュアル」に基づき、取引先の選定時に記事検索を行って関連性を事前に審査しています。情報管理では「機密情報取扱規程」「個人情報保護規程」を整備し、プライバシーマークとISMS認証を取得しています。労務面では社会保険労務士と顧問契約を結び、PCログ管理と勤怠打刻システムを併用して労働時間を管理しています。ハラスメントについては「ハラスメント防止規程」と弁護士への相談窓口を設けています。資金決済法への対応では、発行保証金の供託額を年2回見直し、出納と経理を分離しています。

会社は対処すべき課題の一つに「ガバナンス体制の構築」を挙げ、内部管理体制について適正な人員配置や社員教育、専門性の向上によって体制の拡充に取り組み、内部監査の実施と内部統制システムの整備・強化を図っていると記載しています。なお、TPMでは内部統制報告書の提出は任意です。一般市場への上場を考える段階では、J-SOXの進め方を参考に、全社的な内部統制と業務プロセスの文書化を前倒しで進めておくとよいでしょう。

会計・開示で押さえるべき論点は何か

財務諸表は財務諸表等規則に基づき、特例110条6項で認められた会計基準のうち日本の会計基準に準拠して作成されています。TPMでは日本基準のほか米国基準やIFRS等も選択できますが、インターパークは日本基準を採用しています。中間財務諸表は第1種中間財務諸表です。

収益認識は、サービスの性質ごとに整理されています。SaaSサービスとSUBLINEサービスは、契約期間にわたり概ね一定の役務を継続的に提供することから一定の期間にわたり充足される履行義務と判断し、契約期間にわたって収益を認識しています。SaaS関連やWebサイト等の受託開発は主に請負であることから、履行義務の充足に係る進捗度に基づいて収益を認識し、進捗度は見積総工数に対する発生工数の割合(インプット法)で見積もっています。期間がごく短い開発案件は代替的な取扱いを適用し、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しています。保守管理サービスは契約期間にわたり定額で認識しています。

サービス別の収益認識の考え方SaaSサービスSUBLINEサービスWEBサービスサブスクリプション一定の期間にわたり充足契約期間で定額IP通話サービス一定の期間にわたり充足契約期間に従い認識保守管理サービス一定の期間にわたり充足契約期間で定額SaaS関連・Webサイト等の受託開発(請負):進捗度に基づき認識進捗度は見積総工数に対する発生工数の割合(インプット法)期間がごく短い開発案件は代替的な取扱いを適用し、完全に履行義務を充足した時点で認識対価は概ね1か月以内に受領、重要な金融要素なし

図16 発行者情報「重要な会計方針(収益及び費用の計上基準)」をもとに作成

サブスクリプションの対価を前もって受け取る取引があるため、貸借対照表には契約負債が計上されています。契約負債は第23期末54,889千円、第24期末61,540千円、第25期中間末59,757千円で、第24期に認識した収益のうち期首の契約負債に含まれていた額は53,157千円です。残存履行義務については、個別の予想契約期間が1年を超える重要な取引がないため、実務上の便法により記載を省略しています。また、受託契約に係る将来の損失に備える受注損失引当金の計上基準も会計方針に記載されています。

SaaSと受託開発が混在する会社では、契約ごとに履行義務を識別し、期間按分とインプット法、短期案件の代替的取扱いの使い分けを社内のルールとして明確にしておくことが重要です。進捗度の見積りは工数の集計精度に依存するため、プロジェクト別の工数管理が上場準備の論点になります。詳しくは上場審査で問われる収益認識をご覧ください。

項目(千円) 第23期末(2024年8月) 第24期末(2025年8月)
税務上の繰越欠損金(税率を乗じた額) 23,644 11,532
繰越欠損金に係る評価性引当額 △14,886 △1,286
評価性引当額小計 △18,317 △5,190
繰延税金資産(純額) 9,178 13,587
税効果会計適用後の法人税等の負担率 ―(税引前当期純損失) △15.7%

重要な会計上の見積りとして開示されているのは、繰延税金資産の回収可能性です。将来の課税所得の見積りは中期経営計画における税引前当期純利益を基礎としており、その主要な仮定は売上高予測だと記載されています。第24期は、繰越欠損金に係る評価性引当額が減少したことで評価性引当額が13,127千円減少し、法人税等調整額△4,408千円を計上した結果、税引前当期純利益25,634千円に対して当期純利益が29,657千円と上回っています。第23期の赤字で生じた繰越欠損金について、将来の課税所得の見込みにより回収可能と判断した部分に繰延税金資産を計上しているという説明です。

このように、赤字の期を経た会社では、繰延税金資産の回収可能性の判断が利益と純資産に直接影響します。純資産が薄いインターパークのような会社では特に、中期経営計画の合理性と見積りの根拠を、監査法人と事前に十分すり合わせておくことが大切です。

このほか、本社と東京オフィスの原状回復義務を資産除去債務として計上しており(第24期末11,134千円、使用見込期間は中期経営計画に基づき15年)、新リース会計基準(企業会計基準第34号)は2028年8月期の期首から適用予定で影響額は評価中とされています。賃借オフィスを使う会社にとっては、資産除去債務とリースの論点が今後の開示に関わってきます。

会計監査人は太陽有限責任監査法人で、2025年8月期の業務執行社員は2名(継続監査年数はいずれも7年以内)、補助者は公認会計士3名とその他7名です。最近事業年度の監査証明業務に基づく報酬は15,100千円で、非監査業務に基づく報酬はありません。監査法人の選定時期の考え方は監査法人はいつまでに決めるかで解説しています。

事業等のリスクとJ-Adviser契約はどう読むか

事業等のリスクには18項目が並んでいます。ユーザーの継続率、競合、技術革新、重大クレーム、特定の人物への依存、ハラスメント・服務規律、資金繰り・資金調達、財務基盤の脆弱性及び債務超過再発、情報漏えい、情報の不正利用等、特定の仕入先(Twilio)への依存、通信・インフラの不具合、反社会的勢力、個人情報保護法、労働基準法、知的財産権、資金決済法、J-Adviserとの契約です。ストック型の収益モデルであることから、新規顧客の獲得に加えて既存顧客の維持と単価向上が重要だと記載されています。

TPM上場会社に特有なのが、最後のJ-Adviserとの契約に関するリスクです。インターパークの記載によれば、契約上の義務を怠った場合、相手方は相当の期間(特段の事情のない限り1カ月)を定めて書面で催告し、是正されなければ契約を解除できます。合意によりいつでも解除でき、1カ月前の書面通知でも解除できるとされています。さらに、債務超過、銀行取引の停止、破産手続等、事業活動の停止、発行者情報等の提出遅延、虚偽記載又は不適正意見等、反社会的勢力の関与などの事由に該当した場合は、J-Adviserが即日無催告で解除できると定められています。代わりの担当J-Adviserを確保できない場合は、上場廃止につながる可能性があります。

J-Adviser契約の解除事由と財務基盤の関係インターパークJ-Adviser契約の締結義務(特例102条)担当J-Adviserジャパンインベストメントアドバイザー債務超過(期末に債務超過で1年以内に解消しないとき等)発行者情報等の提出遅延虚偽記載・不適正意見等即日無催告解除の事由(例)義務違反時は1カ月の催告期間合意や1カ月前の書面通知でも解除可代わりのJ-Adviserを確保できなければ上場廃止につながる可能性第23期末に債務超過(純資産△28,340千円)、第24期末に解消(1,305千円)会社は債務超過の再発をリスクとして記載契約

図17 発行者情報「事業等のリスク」⑧⑱の記載をもとに作成。契約に列挙された解除事由のうち主なものを抜粋

解除事由の第一に挙げられているのが債務超過です(事業年度の末日に債務超過で、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき等)。インターパークは第23期末に債務超過となり第24期末に解消した経緯があり、会社自身も債務超過の再発をリスクとして記載しています。TPMには数値の上場維持基準はありませんが、J-Adviser契約の解除事由を通じて、財務の健全性が上場の継続に関わる仕組みになっていることがわかります。発行者情報の公表日現在、契約の解除条項に該当する事象は生じていないと記載されています。

一般市場へのステップアップを考える会社にとっての示唆

インターパークの発行者情報には、将来の一般市場への上場(市場の変更)についての記載はありません。したがって、同社がそれを予定しているかどうかは本記事では扱いません。ここでは、TPM上場後に一般市場を目指す会社一般にとっての制度上の留意点を整理します。

第一に、TPMから一般市場への移行は「市場区分の変更」ではなく、TPMを申請により上場廃止し、一般市場に新規上場する手続として扱われます。実例として、AlbaLinkは2025年12月14日にTPMを上場廃止し、翌15日にグロース市場へ新規上場しています。第二に、東証は2025年11月の資料で、TPMから一般市場への上場審査は非上場企業と同様に一から確認が行われ相応の負担がある、と現状を認識しています。2026年4月には、TPM実績を勘案した一般市場上場審査の効率化と開示様式の共通化・簡素化を「26年秋めど」に予定すると公表していますが、本記事の執筆時点で実施状況は確認できていません。

第三に、一般市場の新規上場では、直前2期の監査、内部統制報告制度への対応、株主数や流通株式などの形式要件、主幹事証券の引受審査と東証の上場審査が必要になります。TPM上場時に直前1期の監査で上場した会社は、監査の対象期間や内部統制の文書化を前もって準備しておく必要があります。一般市場の準備の全体像はIPO準備 完全ガイドにまとめています。

インターパークの事例から上場準備会社が学べること

インターパークの事例から学べること公募なしでも上場発行者情報で上場監査は直前1期未監査期は明記薄い純資産と債務超過の説明創業者2名中心の株主構成とSO内部監査1名は独立性の確保が鍵代表者保証と収益認識の整理

図18 本記事で取り上げた論点のまとめ

1. 公募・売出しをしなくても上場できる。インターパークは特定投資家向け取得勧誘等を行わず、発行者情報に相当する情報を公表して上場しました。TPMは資金調達を伴わない上場の選択肢になり得ます。

2. 監査は直前1期だが、未監査の期は明記される。主要な経営指標等の推移には第22期・第23期が監査を受けていない旨が注記されています。比較情報として未監査の数値が並ぶことを前提に、決算の精度を高めておく必要があります。

3. 赤字や債務超過の経緯は、原因と回復の理由を数字で説明する。広告費と体制の問題で赤字・債務超過となり、体制の機能と広告費削減で黒字化した経緯が、損益計算書の動きと対応する形で記載されています。

4. J-Adviser契約の解除事由を財務管理の目線に組み込む。債務超過は即日無催告解除の事由の一つです。純資産が薄い会社は、月次で純資産の推移を管理し、自己資本の拡充策を検討しておくことが重要です。

5. 創業者中心の株主構成でもストック・オプションで報いる設計は可能。3回の新株予約権を役員・従業員に付与し、直前事業年度末の1年前以後に割り当てた第4回には継続所有の確約が付いています。行使価額の算定根拠も記録しておきましょう。

6. 内部監査が1名でも、独立性と連携の仕組みを用意する。社長直轄の担当者が監査役・監査法人と意見交換する体制です。兼務がある場合の自己監査の回避策もあわせて整えておくと説明しやすくなります。

7. 代表者保証などの経営者との関係を棚卸しする。銀行借入と事務所賃貸借に代表者の債務保証があり、保証料の支払いはありません。継続するか解消するか、方針を整理しておくことが求められやすい論点です。

  • TPMを選ぶ目的(上場目的)を言語化し、資金調達の有無を決めているか
  • 担当J-Adviserの候補と、監査を受ける事業年度(最近1年間)を決めているか
  • 上場予定日から12か月間の運転資金の見通しを説明できるか
  • 純資産の水準と、J-Adviser契約の解除事由(債務超過等)との関係を把握しているか
  • 内部監査の担当者・兼務状況と自己監査の回避策を整理しているか
  • 代表者保証や役員貸付など、経営者との取引の方針を決めているか

よくある質問

Q1. TPMには公募をしなくても上場できますか?

できます。インターパークは上場に際して特定投資家向け取得勧誘等を行わず、特例110条3項により発行者情報に相当する情報を公表して上場しました。勧誘を行う場合は金融商品取引法27条の31に基づく特定証券情報を公表します。

Q2. TPMでは何期分の監査が必要ですか?

上場前の監査期間は「最近1年間」とされています。インターパークも監査を受けたのは第24期(2025年8月期)のみで、第22期・第23期は監査を受けていない旨が注記されています。中間財務諸表には期中レビューが行われています。

Q3. 債務超過の期があっても上場できますか?

TPMには純資産額などの形式基準はなく、担当J-Adviserが上場適格性を個別に確認します。インターパークは第23期末に債務超過となり、第24期末に解消したうえで上場しています。ただし、J-Adviser契約では債務超過が即日無催告解除の事由とされているため、上場後も財務の健全性の管理が重要です。

Q4. TPMから後でグロース市場に移ることはできますか?

市場区分の変更ではなく、TPMを申請により上場廃止し、グロース市場などの一般市場に新規上場する手続になります(AlbaLinkの例)。一般市場の新規上場の要件(直前2期の監査、形式要件、審査等)を満たす必要があります。なお、インターパークの発行者情報には一般市場への移行についての記載はありません。

最初の一歩は「上場目的」と「監査を受ける1年」の決定から

TPMを検討する会社が最初に取り組みたいのは、TPMに上場する目的を言語化したうえで、監査を受ける事業年度と担当J-Adviserの調査期間から上場時期を逆算することです。純資産や資金繰りに不安がある場合は、その見通しも早めに整理しておく必要があります。自社の現状を把握するには、まずショートレビューで課題を洗い出すのが近道です。

まとめ

インターパークは、2026年8月28日にTOKYO PRO Marketへ上場しました。特定投資家向け取得勧誘等を行わず、直前1期の監査を受けた発行者情報で上場しており、申請受付(7月24日)から上場承認(8月7日)までは10営業日、担当J-Adviserは株式会社ジャパンインベストメントアドバイザーです。

発行者情報からは、第23期の赤字と債務超過から第24期の黒字化と債務超過解消に至る経緯、創業者2名中心の株主構成と3回のストック・オプション、社外監査役3名の監査役会と社外取締役1名の取締役会、社長直轄の内部監査担当者1名、代表者による債務保証、SaaSと受託開発の収益認識、繰延税金資産の回収可能性、J-Adviser契約の解除事由など、小規模な成長企業がTPMを使う際の論点を具体的に読み取ることができます。形式基準がないTPMだからこそ、「自社の体制と財務の状況を、どの水準で、どう説明できるか」を整えておくことが大切だといえます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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