チャットプラスのIPO|事業承継後の資本政策とSaaSのKPI開示【Ⅰの部から読む上場準備】

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

2026年7月15日、チャットボットシステム「ChatPlus」や生成AIと連携した「AI AgentPlus」を提供するチャットプラス株式会社(証券コード598A)が東証グロース市場に上場しました。2016年8月に設立され、SaaSのサブスクリプション方式でチャットボットとFAQシステムを提供している会社です。外部の第三者割当増資やベンチャーキャピタル(VC)からの出資を受けず、資本金10,000千円のまま自己資金と借入で成長してきた点、そして創業代表の逝去を経て現在の代表取締役社長が経営を引き継いだうえで上場に至った点が、Ⅰの部から読み取れる大きな特徴です。

結論からいえば、チャットプラスのⅠの部から学べるのは、①経営者の交代に伴う株式の移動と、その取得資金に関する役員貸付を上場前に解消した資本政策の整え方、②株式移動とストック・オプション(SO)で異なる株価算定方法を用いた場合の記載の仕方、③直前期の早い段階で監査役会設置会社へ移行し、任意の報酬委員会を設けたガバナンスの整備、④兼務2名で自己監査を避ける内部監査、⑤ARR・ARPA・Churnレートを定義とともに示すSaaSのKPI開示の5点です。本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)の記載をもとに、上場準備の実務の目線でこれらを整理します。

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チャットプラスはどのような会社で、どの市場に上場したのか

まず、会社と上場の概要を確認します。チャットプラスは、東京都千代田区丸の内に本店を置く会社で、2016年8月に資本金10,000千円で設立されました。事業は「SaaSソリューション事業」の単一セグメントで、子会社などの関係会社はありません。そのため、Ⅰの部の財務諸表は連結ではなく単体のみで作成されています。

代表取締役社長は大江繭子氏です。Ⅰの部では、大江氏は創業メンバーであり、2016年8月に当社の営業部長として参画し、取締役COO、取締役CFOを経て、2023年10月に代表取締役社長に就任したと記載されています。決算期は6月30日で、最近事業年度は第10期(2025年6月期)です。

従業員数は2026年4月30日現在で22名(臨時雇用者は平均4名で外書き)、平均年齢は29.6歳、平均勤続年数は3.1年と記載されています。事業等のリスクでは、提出日現在の組織規模を「取締役4名、監査役3名、従業員22名」と示しており、小規模な組織で上場準備を進めたケースといえます。

項目 内容
会社名 チャットプラス株式会社(英訳名 ChatPlus Co., Ltd.)
証券コード・市場 598A・東証グロース市場
上場日 2026年7月15日
本店所在地 東京都千代田区丸の内
代表者 代表取締役社長 大江 繭子
設立 2016年8月(資本金10,000千円)
決算期 6月30日(最近事業年度は第10期=2025年6月期)
事業 SaaSソリューション事業(単一セグメント)
従業員数 22名(臨時4名・外書き、2026年4月30日現在)
関係会社 なし(単体のみで開示)

Ⅰの部の「主要な経営指標等の推移」を見ると、チャットプラスは決算期を2回変更しています。2020年12月の臨時株主総会で6月決算から12月決算へ、2023年6月の臨時株主総会で12月決算から6月決算へ変更しており、第5期(2020年12月期)と第8期(2023年6月期)はいずれも6か月の変則決算です。

決算期の変更は、上場準備のスケジュールに直接影響します。上場申請では、直前々期と直前期の2期分の財務諸表について、金融商品取引法に準じた監査(いわゆる準金商法監査)を受ける必要があり、変則決算が入ると、どの期を「直前々期」「直前期」とするか、監査の受嘱時期をいつにするかを早めに監査法人と詰めておく必要があります。チャットプラスでも、第9期(2024年6月期)と第10期(2025年6月期)が、有価証券上場規程第216条第6項に基づきみおぎ監査法人の監査を受けた期として記載されています。監査法人の選定時期については監査法人はいつまでに決めるかも参考にしてください。

決算期の変更と監査を受けた期第5期2020年12月期6か月決算第6期2021年12月期第7期2022年12月期第8期2023年6月期6か月決算第9期2024年6月期監査対象第10期2025年6月期監査対象2020年12月に6月決算→12月決算、2023年6月に12月決算→6月決算(いずれも臨時株主総会)

図1 2回の決算期変更により第5期・第8期は6か月決算(Ⅰの部「主要な経営指標等の推移」をもとに作成)

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何で稼ぐ会社か:事業内容と収益モデル

チャットプラスのミッションは「コミュニケーションによる感動を最大限に追求し、AIを駆使した全自動社会を最速で実現する」です。Ⅰの部では、SaaSのサブスクリプション方式によるチャットボットシステム「ChatPlus」「AI AgentPlus」と、FAQシステム「FAQPlus」の開発・提供を主な事業としています。

2025年6月期の売上構成は、チャットボットとFAQシステムが97.1%、コンテンツ配信サービスが2.9%と記載されています。コンテンツ配信サービスは、占いなどのコンテンツをWebメディアの運営会社へ提供するもので、2021年8月に株式会社ネットシーズから譲り受けた事業です。

チャットプラスの事業モデルChatPlus有人・シナリオ・AI型月額1,980〜88,000円AI AgentPlus生成AI連携(RAG型)月額170,000円からFAQPlusヘルプサイト運用AIで記事を自動生成顧客企業企業規模・業種を問わない全方位型主な収益(2025年6月期の収益の分解)ストック型収益月額・年額課金(自動更新)983,201千円フロー型収益初期設定・機能追加開発等38,522千円販売は直販が基本(代理店経由は9.7%)/インフラはAWS、Pマーク・ISMS取得利用料スポット開発等

図2 チャットプラスのサービスと収益の流れ(Ⅰの部「事業の内容」をもとに筆者作成)

3つのサービスの位置づけ

「ChatPlus」は、有人チャット、シナリオ型チャットボット、自社開発AIによるフリーワード型チャットボットを提供するサービスで、料金は月額1,980円から88,000円(月契約の場合)と幅広いプランが用意されています。

「AI AgentPlus」(旧「AIチャットボットプラン」)は、ChatPlusにChatGPTなどの生成AIを連携させたサービスです。Ⅰの部では、RAG型の仕組みとして、自社開発AIが登録データから関連情報を抽出し、生成AIが回答を作成することで、ハルシネーション(事実と異なる回答)を抑える工夫をしていると説明されています。料金は月額170,000円(月契約の場合)からです。

「FAQPlus」は、ヘルプサイトの運用サービスで、AIによる記事の自動生成やカテゴリ・タグの自動振り分けといった機能を持ち、主にAI AgentPlusとのクロスセルで提供されていると記載されています。

販売は直販が基本で、代理店経由の売上高構成比は9.7%です。10日間の無償トライアルがあり、1か月単位から導入でき、初期費用や最低利用期間はないとされています。インフラはAWS(Amazon Web Services)を利用し、WAFを導入しているほか、プライバシーマークとISMS(ISO27001)の認証を取得しています。

ストック型とフロー型の2つの収益

収益構造は、月額または年額の課金によるストック型収益と、スポットの機能追加開発や設定サポートなどによるフロー型収益に分かれます。ストック型収益の契約形態の構成比は、月契約が60.9%、年契約が39.1%と記載されています。

財務諸表の「収益認識関係」注記にある収益の分解情報を見ると、2025年6月期の売上高1,021,723千円のうち、ストック型収益が983,201千円、フロー型収益が38,522千円です。売上高の大半が継続課金によるストック型収益で占められていることがわかります。また、主要な販売先(売上高の10%以上を占める相手先)はなく、顧客が分散している点も特徴です。

KPIはどのように開示されているか

チャットプラスは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)として、売上高、営業利益、ARR(年間経常収益)の3つを掲げています。ARRは「チャットボット及びFAQシステムのオプション料を含む月額利用料金(年契約は年額÷12)の合計×12」と定義されています。

Ⅰの部では、ARRの合計額だけでなく、サービス別のARR、サービス別のアカウント数、ARPA(ARR÷アカウント数)、Churnレート(解約率)まで、四半期ごとに開示しています。ARRの合計は2021年12月末の423百万円から、2026年3月末には1,198百万円まで増加しています。

ARRとアカウント数の推移0329.5658.9988.41,317.821/1222/1223/624/625/625/1226/34235305807881,0771,1711,198件数1,9142,1142,1972,2782,3282,3152,249

図3 ARR(百万円)の推移。下段はアカウント数合計(件)(Ⅰの部「事業の内容」「経営成績等の状況」をもとに筆者作成)

時点 ARR合計(百万円) ChatPlus(件) AI AgentPlus(件) FAQPlus(件) 合計(件)
2021年12月末 423 1,887 27 0 1,914
2022年12月末 530 2,085 29 0 2,114
2023年6月末 580 2,167 30 0 2,197
2024年6月末 788 2,204 70 4 2,278
2025年6月末 1,077 2,182 136 10 2,328
2025年12月末 1,171 2,128 175 12 2,315
2026年3月末 1,198 2,037 197 15 2,249

この表からは、アカウント数の合計は横ばいから減少傾向にある一方で、ARRは増加を続けていることが読み取れます。Ⅰの部では、ChatPlusについて上位プランは増加したものの下位プランの減少によりアカウント数が減少した一方、ARRは毎期増加傾向にあると説明されています。また、AI AgentPlusのアカウント数は2024年6月末の70件から2026年3月末には197件に増え、サービス別ARRも2024年6月期第4四半期の144百万円から2026年6月期第3四半期の498百万円へ増加しています。

ARPAの平均は、2024年6月期第1四半期の287千円から2026年6月期第3四半期には532千円に上昇しています。サービス別では、同四半期のAI AgentPlusが2,528千円、ChatPlusが325千円、FAQPlusが2,605千円です。

サービス別のARPA(2026年6月期第3四半期、千円)07501,5002,2503,000ChatPlusAI AgentPlusFAQPlus3252,5282,605ARPAの平均:2024年6月期第1四半期 287千円 → 2026年6月期第3四半期 532千円

図4 ARPA=ARR÷アカウント数(Ⅰの部「事業の内容」をもとに作成)

Churnレートは、直近12か月平均の月次解約率として、2024年6月期の2.0〜2.1%から、2026年6月期(第3四半期まで)の1.8〜1.9%へ推移しています。月次の解約率は「当月解約件数÷(前月アカウント数+当月新規契約件数)」で算定すると定義されています。また、解約件数の集計は2023年1月から始めたため、2024年6月期第2四半期から記載している旨も注記されています。

SaaSのKPIの定義ARRオプション料を含む月額利用料金の合計 × 12(年契約は年額 ÷ 12 を月額とする)ARPAARR ÷ アカウント数Churnレート当月解約件数 ÷(前月アカウント数+当月新規契約件数)直近12か月平均の月次解約率として開示解約件数の集計は2023年1月から開始(2024年6月期第2四半期から記載)

図5 Ⅰの部に記載されたKPIの算式(Ⅰの部「事業の内容」をもとに作成)

上場準備会社にとっての実務上のポイント:KPIは「定義」と「集計の開始時期」をセットで

SaaS企業がKPIを開示する場合、審査では、数値そのものよりも「その数値がどのように集計され、どこまで遡って検証できるか」が確認されます。チャットプラスのように、ARRやChurnレートの算式を明記し、集計を始めた時期と、それ以前の数値を記載していない理由まで書いておくと、読み手が数値の意味を誤解しにくくなります。

上場準備会社では、次の3点を早めに固めておくとよいでしょう。1つ目は、KPIの定義を社内規程やマニュアルで文書化し、期中に定義を変えないことです。2つ目は、KPIの元データ(契約管理システムや請求データ)と会計上の売上高との整合性を説明できるようにしておくことです。3つ目は、KPIの集計を内部統制の対象に含め、誰が集計し、誰が確認するのかを決めておくことです。KPIは事業計画の合理性の説明にも使われるため、IPO審査の「事業計画の合理性」の観点からも重要です。

沿革と上場までの道のり:どのような出来事があったのか

次に、Ⅰの部の「沿革」と関連する記載から、上場までの主な出来事を整理します。

2016年8月に設立され、同時に有人対応型の「ChatPlus」をリリースしました。2017年1月にシナリオ型チャットボット機能を実装し、同年6月にプライバシーマークを取得しています。2021年1月にはISO27001(ISMS)の認証を取得しました。本社は、中央区京橋、千代田区神田神保町、千代田区西神田を経て、2024年2月に千代田区丸の内へ移転しています。

2021年8月には、株式会社ネットシーズからコンテンツ企画制作配信事業を譲り受けています。Ⅰの部では、ネットシーズは当社の前代表取締役社長である西田省人氏が設立した会社と記載されています。

生成AIへの対応としては、2023年2月にGPT-3.5と連携した生成AI型の「AIチャットボットプラン」をリリースし、2023年11月にGPT-4 Turbo、2024年5月にGPT-4oとの連携を進めました。2024年10月に「FAQPlus」をリリースし、2025年10月にはOpenAIとゼロデータ保持(ZERO DATA RETENTION)等を含むエンタープライズ契約を締結しています。2025年12月には「AIチャットボットプラン」を「AI AgentPlus」としてリニューアルしました。

沿革と上場までの主な出来事事業2016年8月設立・ChatPlus2017〜21年Pマーク・ISMS2021年8月事業譲受2023年2月生成AI連携2024〜25年FAQPlus等体制・資本2023年10月新社長就任2024年9月監査役会設置2025年12月1:200分割2026年3月報酬委員会2026年7月グロース上場

図6 事業面(上段)と体制・資本面(下段)の主な出来事(Ⅰの部「沿革」ほかをもとに筆者作成)

体制面では、2023年9月26日に前代表取締役社長の西田省人氏が逝去され、同日付で退任したことが関連当事者注記に記載されています。その後、2023年10月に大江繭子氏が代表取締役社長に就任しました。2024年9月には監査役会設置会社へ移行しており、取締役会の出席状況の記載では、吉富純一氏(略歴上は2021年1月に当社取締役に就任)と社外監査役の髙橋智氏・久礼美紀子氏について、2024年9月19日就任後の出席回数が記載されています。2025年12月には1株を200株とする株式分割と単元株制度(100株)を採用し、2026年3月に任意の報酬委員会を設置しています。

このように、チャットプラスは、経営トップの交代、ガバナンス体制の整備、株式の整理を、申請までの3年弱の間に順に進めてきたことがわかります。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:経営者の交代は「継続性」の説明が鍵

グロース市場の上場審査では、「事業計画の合理性」や「企業経営の健全性」が実質審査基準とされています。経営者の交代があった場合、審査では、交代後も事業運営が安定して継続できるか、意思決定の体制が特定の人物に依存しすぎていないかといった点が確認されます。

チャットプラスのⅠの部では、事業等のリスクの「特定人物への依存」として、創業メンバーである代表取締役社長の大江氏を挙げ、発生可能性は「低」、影響度は「中」と記載しています。経営者の交代を経た会社では、新しい経営体制での実績(交代後の業績推移や、取締役会・経営会議の運営状況)を積み上げ、それをⅠの部やヒアリングで具体的に説明できるようにしておくことが重要です。継続性の考え方はIPO審査の「企業の継続性及び収益性」で詳しく解説しています。

業績はどう推移してきたか:数字の読み方

Ⅰの部の「主要な経営指標等の推移」から、第5期から第10期までの業績を確認します。前述のとおり、第5期と第8期は6か月の変則決算であるため、単純に前期と比べることはできない点に注意が必要です。

回次(決算年月) 売上高 経常利益 当期純利益 純資産額 自己資本比率
第5期(2020年12月・6か月) 121,764 8,585 6,037 21,904 19.1%
第6期(2021年12月) 386,978 42,880 24,411 46,316 23.3%
第7期(2022年12月) 507,971 34,588 26,562 72,878 23.4%
第8期(2023年6月・6か月) 310,314 4,820 6,381 79,260 19.9%
第9期(2024年6月) 749,483 162,025 105,393 184,654 29.1%
第10期(2025年6月) 1,021,723 369,074 246,051 418,705 43.9%

(単位:千円。Ⅰの部「主要な経営指標等の推移」より)

売上高と経常利益の推移0281561.9842.91,123.9第5期※第6期第7期第8期※第9期第10期1223875083107491022売上高経常利益※第5期(2020年12月期)と第8期(2023年6月期)は6か月決算

図7 売上高(棒)と経常利益(線)、千円単位を百万円に換算。第5期・第8期は決算期変更による6か月決算(Ⅰの部「主要な経営指標等の推移」をもとに筆者作成)

第10期(2025年6月期)の売上高は1,021,723千円で前期比36.3%増、営業利益は369,382千円で同128.8%増、当期純利益は246,051千円で同133.5%増と記載されています。売上原価は263,554千円(同75.5%増)で、売上や利用量の増加に伴うシステム利用料の増加と、セキュリティ対策費用の増加が要因とされています。一方、販売費及び一般管理費は388,786千円(同11.2%減)で、展示会やリスティング広告の見直しによる広告宣伝費の減少や、のれん償却の終了などが要因として挙げられています。

第10期(2025年6月期)の売上高から営業利益まで(千円)売上高1,021,723売上原価-263,554販管費-388,786営業利益369,382

図8 売上原価はシステム利用料等の増加、販管費は広告宣伝費の減少やのれん償却の終了で減少(Ⅰの部をもとに作成)

第8期の当期純利益が6,381千円と小さいのは、6か月決算であることに加え、過年度分を含めて役員退職慰労引当金を計上したためと注記されています。なお、役員退職慰労金規程は2024年4月に廃止されています。

直近の第11期については、第3四半期累計期間(2025年7月〜2026年3月)の売上高が912,477千円、営業利益が437,679千円、四半期純利益が286,952千円と記載されています。

キャッシュ・フローと財政状態

第10期の営業活動によるキャッシュ・フローは409,984千円で、税引前当期純利益369,019千円に加え、契約負債の増加51,556千円などが寄与しています。年契約などで利用料を一括で前受けすると、売上計上前に資金が入るため、契約負債が増え、営業キャッシュ・フローを押し上げる構造になります。投資活動によるキャッシュ・フローは△10,060千円、財務活動によるキャッシュ・フローは△85,221千円(長期借入金の返済88,220千円、配当金の支払12,000千円など)です。

2025年6月末の現金及び現金同等物は689,358千円、流動比率は164.7%と記載されています。資本の財源については自己資金を基本とする方針が示されています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:グロース市場での「成長可能性」の説明

グロース市場への上場では、利益の額に関する形式基準はなく、事業計画とその進捗、成長可能性に関する情報の開示が重視されます。チャットプラスのように利益が出ている会社でも、成長の源泉がどこにあるのか(新規顧客の獲得なのか、単価の上昇なのか、解約率の低下なのか)を、KPIで説明できることが重要です。チャットプラスの開示では、アカウント数が横ばいでもARPAの上昇によりARRが伸びているという構造が、四半期ごとのデータで示されています。

また、事業等のリスクでは、提出日現在の想定時価総額がグロース市場の上場維持基準(時価総額100億円)を下回っている旨が記載され、配当政策の項でも、この基準の達成を重要な課題と位置づけています。グロース市場の上場維持基準は見直しが行われ、上場から5年経過後に時価総額100億円以上が求められる内容となっています(適用時期や経過措置などの詳細は東証の公表資料で確認してください)。上場準備会社では、上場後の維持基準も視野に入れて成長戦略を説明する必要があります。グロース市場の「高い成長可能性」とはもあわせて参考にしてください。

資本政策と株主構成:外部資金に頼らないオーナー企業の株式はどう整理されたか

チャットプラスの資本政策の特徴は、外部からの出資を受けていない点にあります。資本金は設立以来10,000千円のままで、資本準備金もありません。株主数は2026年4月30日現在で8名(その他の法人1名、個人7名)で、所有者別の割合は、その他の法人が40.0%、個人その他が60.0%と記載されています。株主名簿上、VCや事業会社の株主はおらず、自己株式もありません。また、親会社等もありません。

一般に、VCから出資を受けている会社では、上場前に種類株式を普通株式へ転換したり、VCの持株が上場後に売却されることを前提とした資本政策を組んだりします。チャットプラスは普通株式のみで、種類株式の転換やVCとの調整といった論点がない一方、経営者の交代に伴う株式の移動とストック・オプションの設計が、資本政策の主な論点になっています。

株主の状況(上位10位)マネーストレージ㈱35.08%大江 繭子(代表取締役社長)29.27%西田 厚生7.54%赤松 哲典(取締役)6.89%西田 幸子3.77%古市 直子3.77%西田 大翔3.07%西田 美朝3.07%森下 俊光(取締役)2.63%従業員1.10%

図9 潜在株式(ストック・オプション)を含めた所有割合の上位10位。合計4,560,400株のうち潜在株式は560,400株(Ⅰの部「株主の状況」をもとに筆者作成)

大株主の状況

Ⅰの部の「株主の状況」(潜在株式を含む)では、第1位がマネーストレージ株式会社で1,600,000株(35.08%)、第2位が代表取締役社長の大江繭子氏で1,335,000株(29.27%、うち潜在株式75,000株)です。マネーストレージ株式会社は「役員等により総株主等の議決権の過半数を所有されている会社」と記載されています。関連当事者注記でも、大江氏の議決権の被所有割合は直接31.5%、間接40.0%(2024年6月期)とされています。

第3位以下には、西田厚生氏(344,000株、7.54%)、取締役COOの赤松哲典氏(314,000株、6.89%、うち潜在株式142,000株)、西田幸子氏・古市直子氏(各172,000株、3.77%)、西田大翔氏・西田美朝氏(各140,000株、3.07%)、取締役CFOの森下俊光氏(120,000株、2.63%、全て潜在株式)が続きます。株式総数は潜在株式を含めて4,560,400株で、うち潜在株式は560,400株(12.29%)と記載されています。

順位 株主 属性(Ⅰの部の記載) 所有株式数(株) 割合
1 マネーストレージ株式会社 大株主上位10名、役員等により議決権の過半数を所有されている会社 1,600,000 35.08%
2 大江 繭子 代表取締役社長 1,335,000(75,000) 29.27%
3 西田 厚生 大株主上位10名 344,000 7.54%
4 赤松 哲典 取締役 314,000(142,000) 6.89%
5 西田 幸子 大株主上位10名 172,000 3.77%
5 古市 直子 大株主上位10名 172,000 3.77%
7 西田 大翔 大株主上位10名 140,000 3.07%
7 西田 美朝 大株主上位10名 140,000 3.07%
9 森下 俊光 取締役 120,000(120,000) 2.63%
10 従業員 ― 50,000(50,000) 1.10%

(括弧内は潜在株式数の内数。Ⅰの部「株主の状況」より)

経営者の交代に伴う株式の移動はどう記載されているか

Ⅰの部の「第四部 株式公開情報」には、特別利害関係者等の株式等の移動状況が記載されています。対象期間は、有価証券上場規程施行規則第266条に基づき、2023年7月1日から上場日の前日までとされています。

まず、2023年9月5日に、当時の代表取締役社長である西田省人氏から、当時取締役であった大江繭子氏へ、2,000,000株(株式分割後の株数)が55,936,000円(1株当たり27.97円)で移動しています。移動理由は「移動前所有者の売却意向」で、価格は「純資産価額方式により算出した価格を総合的に勘案して、当事者間で協議の上決定」と記載されています。

次に、2024年6月30日に、大江氏から取締役の赤松哲典氏へ172,000株が無償で移動しています(移動理由は役員に対する経営参画意識の向上)。同日、大江氏から西田厚生氏(344,000株)、西田幸子氏(172,000株)、古市直子氏(172,000株)、西田大翔氏(140,000株)、西田美朝氏(140,000株)へ、いずれも無償で親族間の移動が行われています。

これらの移動については注記で、大江氏が西田省人氏から取得した株式について、西田省人氏の逝去後、親族間協議の結果、無償譲渡により移転したもので、移動後の所有者は大江氏の配偶者であった西田省人氏の血族であると説明されています。株式移動の経緯が注記で補足されていることで、株主構成の背景が読み手に伝わる記載になっています。

経営者の交代に伴う株式の移動と取得資金西田 省人(当時の代表取締役社長)大江 繭子(当時取締役)2023年9月5日2,000,000株・1株27.97円(純資産価額方式を勘案)赤松 哲典(取締役)172,000株・無償西田省人氏の親族5名無償(親族間協議)2024年6月30日に移動チャットプラス貸付50,000千円(金利は所得税基本通達に基づき決定)→ 2024年6月期中に全額返済株式取得資金を貸付

図10 株式数・価格は株式分割(1:200)後のベース(Ⅰの部「株式公開情報」「関連当事者情報」をもとに作成)

資本政策の主な動き2019年9月1:100分割SO第1・2回2021〜22年SO第3・4回役職員向け2023年9月前代表から株式を譲受2024年6月親族等へ移動SO第5回2025年12月1:200分割単元株制度株式譲渡の単価27.97円純資産価額方式を勘案SO第5回・第6回の行使価額495円DCF法を勘案資本金は設立以来10,000千円のまま。第三者割当増資・VCの出資はなし株主数は8名(法人1名・個人7名)、自己株式は該当なし

図11 株式数・価格はいずれも2025年12月の株式分割(1:200)後のベース(Ⅰの部「株式等の状況」「株式公開情報」をもとに筆者作成)

株式取得資金と役員貸付:関連当事者取引の解消

関連当事者注記(2024年6月期)では、会社から役員への資金の貸付が2件記載されています。1件は、当時の代表取締役社長である西田省人氏への貸付30,000千円で、資金使途は個人的な資金需要、期中に30,000千円が返済され、受取利息は160千円です。もう1件は、大江繭子氏への貸付50,000千円で、資金使途は西田省人氏からの当社株式の取得とされ、期中に50,000千円が返済され、受取利息は288千円です。

いずれの貸付も、金利は所得税基本通達に基づいて決定し、当初の返済条件は5年・元利一括返済、無担保と記載されています。キャッシュ・フロー計算書でも、2024年6月期の投資活動の区分に「役員に対する貸付けによる支出」80,000千円と同額の回収が計上されており、期末残高はありません。2025年6月期の関連当事者取引は「該当事項はありません」とされています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:役員との資金取引は申請前に解消する

上場審査では、「企業経営の健全性」の観点から、役員やその近親者との取引(関連当事者取引)について、取引の合理性と条件の妥当性が確認されます。特に、会社から役員への貸付は、会社の資金が役員個人のために使われる取引であるため、原則として上場前に解消しておくことが求められます。

チャットプラスのケースでは、経営者の交代に伴う株式の取得という事情のある貸付でしたが、金利を所得税基本通達に基づいて設定し、同じ事業年度のうちに全額回収したことが記載されています。上場準備会社で同様の取引がある場合は、①取引の必要性と条件(金利・返済期間・担保)の根拠を取締役会の議事録等に残す、②申請期より前に解消する、③関連当事者注記で取引の内容を正確に開示する、の3点を意識するとよいでしょう。詳しくはIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)や社長個人と会社の取引はどう解消するかで解説しています。

株式移動とストック・オプションで異なる株価算定方法

Ⅰの部では、株価の算定方法が取引ごとに記載されています。2023年9月の株式移動は「純資産価額方式により算出した価格を総合的に勘案」して決定され、1株当たり27.97円(分割後)でした。一方、2024年6月27日に発行した第5回新株予約権と、2025年3月6日に発行した第6回新株予約権の行使価額は、いずれも495円(分割後)で、「DCF法により算定した価格を総合的に勘案して決定」したと記載されています。

また、財務諸表のストック・オプション注記では、付与日時点の公正な評価単価について、未公開企業であるため本源的価値によっており、本源的価値の見積りの基礎となる株式の評価方法はDCF法により算出した価格を総合的に勘案して決定したとされています。ストック・オプションの本源的価値の合計額は、2024年6月末で96,820千円、2025年6月末で88,360千円と記載されています。

未上場株式の価格の算定方法には、純資産価額方式、DCF法、類似会社比準方式、税法上の評価方法などがあり、取引の当事者や目的によって用いる方法が異なることがあります。上場審査では、上場前の一定期間に行われた株式の移動や新株予約権の発行について、その価格の算定方法と、価格が妥当である理由が確認されます。特に、近い時期に異なる方法で算定した価格がある場合は、それぞれの取引の目的、当事者、算定時点の事業や業績の状況を整理し、なぜその方法を選んだのかを説明できるようにしておくことが大切です。算定方法の選び方は未上場株式の株価算定はどの方法を使うか、株式の移動に伴う審査上の論点は上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)で解説しています。

ストック・オプションは6回発行、潜在株式比率は14.0%

チャットプラスは、2019年から2025年にかけて6回の新株予約権(ストック・オプション)を発行しています。各回の概要は次のとおりです(株式数・行使価額は2025年12月の株式分割後、2026年5月末現在)。

回 付与日 付与対象者 株式数(株) 行使価額 行使期間
第1回 2019年9月21日 取締役1名、従業員3名 120,000 25円 2021年9月22日〜2029年9月21日
第2回 2019年9月21日 社外協力者4名 68,000 25円 2019年9月22日〜2029年9月21日
第3回 2021年12月29日 取締役4名、監査役3名、従業員12名 11,200 495円 2023年12月30日〜2031年12月29日
第4回 2022年12月16日 取締役3名、監査役3名、従業員12名 12,000 495円 2024年12月16日〜2032年12月15日
第5回 2024年6月27日 取締役2名、従業員8名 294,000 495円 2026年6月27日〜2034年6月26日
第6回 2025年3月6日 取締役1名、監査役2名、従業員12名 56,200 495円 2027年3月6日〜2035年3月5日

(Ⅰの部「新株予約権等の状況」「ストック・オプション等関係」より筆者作成)

行使条件を見ると、第1回は禁錮以上の刑に処せられた場合や懲戒処分を受けた場合、権利の放棄、退職、死亡などで行使できなくなる定めがあり、上場を行使の条件とする定めはありません。第2回は社外協力者向けで、行使できなくなる事由は死亡のみと記載されています。第3回以降は、権利行使時にも当社の役職員等の地位にあること、当社株式が上場していることなどが行使の条件とされています(第5回・第6回は、取締役会が正当な理由があると認めた場合を除くとされています)。これまでに権利が行使された実績はなく、ストック・オプションに係る費用の計上もありません。

事業等のリスクでは、新株予約権の行使による株式の希薄化について、潜在株式数560,400株が発行済株式総数の14.0%に相当すると記載し、発生可能性「中」、時期「数年内」、影響度「低」としています。また、第三者割当等の概況では、第5回と第6回の新株予約権が記載され、第6回については有価証券上場規程施行規則第272条に基づく継続保有の確約がある旨が示されています。第5回の取得者としては、赤松哲典氏と森下俊光氏が各120,000株と記載されています。

ストック・オプションの設計では、行使価額と付与時点の株価の関係、行使条件(地位要件や上場条件)、行使期間、そして税制適格要件を満たすかどうかが主な論点になります。税制適格ストック・オプションとするには、租税特別措置法第29条の2の要件(付与対象者の範囲、権利行使期間、年間の権利行使価額の上限、行使価額が付与契約時の株式の時価以上であることなど)を満たす必要があります。また、社外協力者に付与する場合は、対象者の範囲や手続の要件があるため、事前に専門家に確認しておくことが重要です。詳しくは税制適格ストックオプションやストック・オプションの注記の記載例を参考にしてください。

株式分割と流通株式

チャットプラスは、2019年9月21日に1株を100株に(20,000株)、2025年12月8日に1株を200株に(4,000,000株)分割しています。2025年12月8日の臨時株主総会では、発行可能株式総数を16,000,000株に変更し、単元株式数を100株とする単元株制度を採用しています。上場時の売買単位に合わせて、株式分割と単元株制度の採用を申請前に済ませておくのは、上場準備の一般的な手順です。

上場にあたっては、流通株式の数や比率に関する形式基準を満たす必要があります。役員(その配偶者及び二親等内の血族を含む)、役員等が議決権の過半数を所有する会社、10%以上を保有する主要株主などが保有する株式は、原則として流通株式から除かれます。チャットプラスのように、役員と親族、資産管理会社で株式の大半を保有している会社では、上場時の公募・売出しによって流通株式をどう確保するかが資本政策上の重要な検討事項になります。流通株式の考え方は流通株式比率の計算式と調べ方で解説しています。

配当政策

配当については、第9期と第10期にそれぞれ12百万円(1株当たり600円、分割前)を支払っています。配当政策では、成長投資を優先しつつ、余剰キャッシュ・フローの範囲内で継続的かつ安定的な配当を行う方針とし、将来的には配当性向を指標とする配当方針の導入を検討するとしています。剰余金の配当の決定機関は取締役会とし、中間配当(会社法第454条第5項)を取締役会の決議で行うことができる旨も記載されています。

コーポレート・ガバナンス:小規模組織でどのような機関設計をとったのか

チャットプラスは、監査役会設置会社です。Ⅰの部では、2024年9月に監査役会設置会社へ移行したと記載されています。機関としては、株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人を置き、任意の機関として報酬委員会、経営会議、リスク・コンプライアンス委員会を設けています。コーポレート・ガバナンスの基本的な考え方としては、経営の機動性、透明性、健全性の確保が挙げられています。

機関設計と主な会議体株主総会報酬委員会(任意)取締役会4名(社外1名)監査役会3名(全員社外)代表取締役社長経営会議/リスク・コンプライアンス委員会(週1回)内部監査担当2名(兼務)自部門は監査しない会計監査人みおぎ監査法人選任選任諮問監査選定・監督指名相当性の評価

図12 チャットプラスの機関設計と主な会議体の関係(Ⅰの部「コーポレート・ガバナンスの状況等」をもとに筆者作成)

取締役会と監査役会の構成

取締役会は、常勤取締役3名と社外取締役1名の計4名で構成され、原則として月1回開催されます。議長は代表取締役社長です。2025年6月期は14回開催され、大江氏、赤松氏、森下氏、常勤監査役の成田氏は14回すべてに出席し、2024年9月19日に就任した吉富氏、髙橋氏、久礼氏は就任後に開催された12回すべてに出席したと記載されています。

監査役会は、常勤監査役1名と非常勤監査役2名で構成され、3名全員が社外監査役です。原則として月1回開催され、2025年6月期は10回開催、全員が10回すべてに出席しています。役員は男性5名・女性2名で、女性の比率は28.6%です。

役職 氏名 主な経歴(Ⅰの部の記載から抜粋)
代表取締役社長 大江 繭子 西松建設、株式会社ネットシーズを経て2016年8月に当社営業部長。取締役COO、取締役CFOを経て2023年10月より現職
取締役COO兼開発部長 赤松 哲典 ブイキューブなどを経て2021年1月に当社開発部長、2021年3月に取締役、2022年7月より取締役COO
取締役CFO兼管理部長 森下 俊光 監査法人勤務、2002年公認会計士登録。他社の取締役・監査役を経て2023年10月に当社取締役、2024年7月より取締役CFO兼管理部長
取締役(社外) 吉富 純一 証券会社で上場推進業務に従事。他社の取締役監査等委員などを兼任
常勤監査役(社外) 成田 勝範 証券会社、他社の常勤監査役を経て2021年12月に当社常勤監査役
監査役(社外) 髙橋 智 IT企業勤務、会社経営、他社監査役などを経て2024年9月に当社監査役
監査役(社外) 久礼 美紀子 日本IBM勤務を経て2007年弁護士登録。法律事務所のパートナー

社外取締役1名と社外監査役3名について、Ⅰの部では、独立性に関する基準を独自には定めていないものの、東京証券取引所の独立役員の独立性に関する判断基準を参考にしていると記載されています。社外役員の一部はストック・オプションを保有していますが、それ以外の人的関係、資本的関係、取引関係その他の利害関係はないとされています。また、社外取締役・社外監査役との間で責任限定契約(限度額は法令が定める最低責任限度額)を締結し、役員等賠償責任保険(D&O保険)にも加入しています。

任意の報酬委員会と役員報酬の決め方

役員報酬について、取締役の報酬は月例の基本報酬のみで、地位・職責・在任年数に応じ、他社水準、業績、従業員給与の水準を考慮して決めるとされています。報酬の上限は、取締役が年額200,000千円以内(2025年9月18日定時株主総会)、監査役が年額30,000千円以内(2022年3月30日定時株主総会)です。

決定の手続については、2026年3月6日に任意の報酬委員会を設置し、取締役会の諮問を受けた報酬委員会の答申を踏まえて取締役会が決定する体制になりました。委員長は社外取締役の吉富氏で、委員は代表取締役社長の大江氏と社外監査役の髙橋氏です。報酬委員会の設置前は、取締役会の一任を受けた代表取締役社長が決定していたと記載されています。監査役の報酬は監査役会の協議で決めています。

取締役報酬の決定手続の変化報酬委員会の設置前取締役会代表取締役社長に一任代表取締役社長が決定2026年3月6日の設置後取締役会報酬委員会へ諮問報酬委員会委員長:社外取締役委員:社長・社外監査役取締役会答申を踏まえて決定報酬は月例の基本報酬のみ。上限:取締役 年額200,000千円以内、監査役 年額30,000千円以内

図13 任意の報酬委員会の設置前後の決定手続(Ⅰの部「役員の報酬等」をもとに作成)

2025年6月期の役員報酬の総額は、取締役(社外取締役を除く)3名で52,350千円、監査役(社外監査役を除く)1名で750千円、社外役員4名で8,640千円で、いずれも固定報酬のみです。業績連動報酬や退職慰労金はありません。

経営会議とリスク・コンプライアンス委員会

経営会議は週1回開催され、代表取締役社長(議長)、取締役COO、取締役CFO、常勤監査役、営業部長で構成されます。リスク・コンプライアンス委員会も週1回開催され、構成員は経営会議と同じです。常勤監査役が経営会議とリスク・コンプライアンス委員会の両方に出席する体制です。一般に、常勤監査役が重要な会議に出席することは、日常の業務執行の状況を把握する手段の1つとされています。

その他、内部統制システムの基本方針として、内部通報制度、文書保管管理規程、ISMSとプライバシーマークの基準に準拠した情報管理、リスク・コンプライアンス管理規程、組織規程・業務分掌規程・職務権限規程・稟議規程、反社会的勢力対策規程などの整備が記載されています。取締役の定数は7名以下とされ、取締役・監査役の責任免除(会社法第426条第1項)を取締役会決議で行える旨も定款で定められています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:機関設計の移行は「運用実績」まで見て逆算する

上場審査では、取締役会や監査役会が形式的に設置されているだけでなく、実際に機能していることが確認されます。そのため、機関設計の移行や社外役員の選任は、申請までに一定期間の運用実績を積めるよう、余裕をもって行うのが一般的です。チャットプラスでは、2024年9月に監査役会設置会社へ移行し、2025年6月期(直前期)には取締役会14回、監査役会10回の開催実績が記載されています。

監査役会設置会社と監査等委員会設置会社のどちらを選ぶかは、社外役員の確保のしやすさや、常勤者を置くかどうかなどによって判断します。また、任意の報酬委員会は法令上の義務ではありませんが、報酬決定の客観性・透明性を高める手段として設置する会社が増えています。機関設計の選び方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?、社外取締役の人数については社外取締役は何人必要かで解説しています。

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内部監査・内部統制:兼務2名の内部監査はどう運用されているか

Ⅰの部の「監査の状況」によると、チャットプラスは独立した内部監査部門を設置しておらず、代表取締役社長が指名した内部監査担当者2名が内部監査を行っています。2名は他部門の業務と兼務しており、自らが所属する部門の内部監査には加わらないことで、自己監査を回避していると記載されています。

内部監査の手続は、内部監査担当者が内部監査報告書を代表取締役社長に提出し、代表取締役社長名の改善命令書を被監査部門へ通知し、被監査部門が業務改善実施報告書を提出し、その後に改善状況を確認するという流れです。内部監査の結果は取締役会にも報告されます。

内部監査の流れと三様監査内部監査の実施監査報告書を社長へ改善命令書(社長名)業務改善実施報告書改善状況の確認結果を取締役会へ報告三様監査(三者間の定期会合で情報を共有)内部監査担当業務の適正性・効率性監査役会常勤監査役が内部監査に同席会計監査人財務諸表の監査期中レビュー

図14 内部監査の手続の流れと、内部監査担当・監査役会・会計監査人の連携(Ⅰの部「監査の状況」をもとに筆者作成)

三様監査については、内部監査担当者、監査役会、会計監査人の三者で定期的に会合を開き、情報や意見を交換していると記載されています。また、常勤監査役が内部監査に同席するなど、監査役監査と内部監査の連携が図られています。

リスク管理体制としては、リスク・コンプライアンス委員会で全社的なリスクを把握・管理し、必要に応じて外部の専門家に照会したうえで対処し、取締役会に報告する体制とされています。子会社がないため、子会社管理に関する体制の記載はありません。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:兼務の内部監査でも「独立性」と「フォローアップ」を確保する

従業員数が少ない会社では、内部監査の専任者を置くことが難しい場合があります。その場合でも、上場審査では、①内部監査担当者が自分の所属部門を監査しない仕組み(自己監査の回避)があること、②年間の監査計画に基づいて全部門を監査していること、③指摘事項の改善状況まで確認していること、④結果が代表者と取締役会に報告されていること、が確認されます。チャットプラスの記載にも、自己監査の回避、改善状況の確認、取締役会への報告といった要素が含まれています。

実務上は、兼務者同士で相互に監査する「クロス監査」の形をとり、管理部門の担当者が管理部門以外を、他部門の担当者が管理部門を監査するように分担を決めておくと、自己監査を避けやすくなります。また、内部監査の報告先は代表者だけでなく、監査役(会)とも情報を共有しておくと、三様監査の連携が実効的になります。詳しくは内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)、監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査)もご覧ください。

会計・開示の論点:SaaS企業の収益認識と注記をどう読むか

収益認識:SaaSは期間按分、機能追加開発はインプット法

チャットプラスは、収益認識に関する会計基準を第7期(2022年12月期)の期首から適用しています。重要な会計方針では、主な収益を2つに分けて説明しています。

1つ目のSaaSサービスは、契約期間にわたってサービスを提供する義務を負うことから、一定の期間にわたり充足される履行義務として、契約期間にわたって収益を認識しています。2つ目の機能追加開発サービスは、顧客の要望に基づく機能追加等の開発で、義務の履行により資産の価値が増加し、その増加に応じて顧客が当該資産を支配することから、一定の期間にわたり充足される履行義務と判断しています。進捗度は、実績工数を見込総工数で除したインプット法で見積もり、期間がごく短い案件については代替的な取扱いを適用して、履行義務を完全に充足した時点で収益を認識すると記載されています。

収益認識の考え方(SaaSと機能追加開発)SaaSサービス契約期間にわたり収益を認識機能追加開発サービス(一定の期間にわたり充足)期間がごく短い案件か完全に充足した時点で認識インプット法実績工数 ÷ 見込総工数年契約などで前受けした利用料は契約負債として計上はいいいえ

図15 重要な会計方針に記載された2つの収益の認識方法(Ⅰの部をもとに作成)

年契約などで利用料を一括で前受けした部分は契約負債として計上され、2023年6月末の95,156千円から、2024年6月末146,727千円、2025年6月末198,283千円へ増加しています。残存履行義務については、当初に予想される契約期間が1年を超える重要な契約がないため、記載を省略しています。

契約負債の推移(千円)055,000110,000165,000220,0002023年6月末2024年6月末2025年6月末95,156146,727198,283

図16 年契約などで前受けした利用料(Ⅰの部「収益認識関係」をもとに作成)

SaaS企業の上場準備では、月額・年額の利用料の期間按分、初期費用の取扱い、カスタマイズ開発の進捗度の見積り、解約時の返金の取扱いなどが、監査法人と事前に詰めておくべき論点になります。特に、インプット法で進捗度を見積もる場合は、工数の記録と見込総工数の見直しの手続を内部統制として整備しておく必要があります。収益認識の審査上の論点は上場審査で問われる収益認識で解説しています。

重要な会計上の見積りと特徴的な注記

財務諸表の注記における「重要な会計上の見積り」は、前事業年度・当事業年度ともに「該当事項はありません」とされています。一方、経営成績等の分析(MD&A)では、主に固定資産の評価、繰延税金資産の回収可能性などの見積りを継続的に検討しているものの、翌期以降に重要な影響を及ぼすものはないと認識していると記載されています。

特徴的な注記としては、まず、2021年8月のネットシーズからの事業譲受で生じたのれん(取得原価29,083千円)と顧客関連資産(同50,917千円)を3年で均等償却し、2025年6月期で償却が完了したことが挙げられます。MD&Aでも、のれん償却の終了が販売費及び一般管理費の減少要因として説明されています。

次に、売上原価明細書では、2025年6月期の経費251,806千円のうちシステム利用料が175,068千円(前期109,815千円)と記載されています。買掛金の相手先にはAmazon Web Services, Inc.やOpenAI, LLCが並び、事業等のリスクでも、AWSやChatGPTの利用料がドル建てであることによる為替リスクが記載されています。中間期と第3四半期累計期間には為替差損も計上されています。

このほか、本社事務所の原状回復義務に係る資産除去債務(2025年6月末47,227千円、使用見込期間15年)、解約不能のオペレーティング・リースの未経過リース料(同95,941千円)が注記されています。未適用の会計基準として、新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)を2028年6月期の期首から適用予定で、影響額は評価中とされています。

監査法人と監査報酬

会計監査人はみおぎ監査法人で、継続監査期間は2年、業務執行社員は2名、監査業務の補助者は公認会計士3名と記載されています。選定理由としては、独立性・専門性、事業への理解、効率的かつ適切な監査が可能な規模と監査体制、監査計画・監査費用の合理性などが挙げられています。監査報酬は、2024年6月期が8,500千円、2025年6月期が10,000千円で、いずれも非監査業務の報酬はありません。中間財務諸表と四半期財務諸表についても、同監査法人の期中レビューを受けています。

項目 内容
会計監査人 みおぎ監査法人(継続監査期間2年)
監査報酬(2024年6月期) 監査証明業務 8,500千円、非監査業務なし
監査報酬(2025年6月期) 監査証明業務 10,000千円、非監査業務なし
監査報酬の決定方針 特段の定めなし。監査役会の同意のもとに決定
財務諸表等の適正性確保の取組み 外部機関の研修への参加、監査法人との協議

事業等のリスクと審査で問われやすい点

チャットプラスの「事業等のリスク」は、事業環境、事業内容、法的規制、組織体制、その他の5つに区分され、各項目に「発生可能性」「発生する可能性のある時期」「影響度」が記載されています。リスクはリスク・コンプライアンス委員会で全社的に把握・管理していると説明されています。主な項目は次のとおりです。

区分 主なリスク項目 発生可能性/影響度 記載の要点
事業環境 特定サービスへの依存 中/高 ChatPlusとAI AgentPlusのストック型収益が売上高の92.2%(2025年6月期)
事業環境 競合他社 中/中 大手IT企業を含む多数の企業が参入
事業内容 第三者の事業サービスへの依存 低/高 AWSとOpenAI(ChatGPT)を利用。SLA等の合意やゼロデータ保持の契約を締結。ドル建て利用料による為替リスク
事業内容 顧客企業の継続率 中/高 予算・経営計画では過去の実績をもとに一定の解約率を見込む
法的規制 法的規制 低/中 主要な法規制は電気通信事業法。SaaS事業そのものを直接規制する法令はない
組織体制 小規模組織 低/中 取締役4名、監査役3名、従業員22名
組織体制 特定人物への依存 低/中 創業メンバーである代表取締役社長
その他 新株予約権の行使による希薄化 中/低 潜在株式560,400株(発行済株式総数の14.0%)
その他 当社株式の時価総額 低/高 想定時価総額がグロース市場の上場維持基準(100億円)を下回っている

(Ⅰの部「事業等のリスク」より筆者作成。発生可能性・影響度は会社の記載による)

このリスク一覧から、上場審査で確認されやすい点を一般論として整理すると、次のようになります。

1つ目は、外部のプラットフォームへの依存です。生成AIのAPIやクラウド基盤を利用するSaaS企業では、提供元の価格改定、仕様変更、障害、データの取扱いがサービスの継続性や原価に影響します。審査では、契約条件(SLAやデータの取扱い)、代替手段の有無、為替変動の影響などを説明できるかが問われます。チャットプラスでも、OpenAIとSLA・テクニカルサポートの合意やゼロデータ保持の契約を締結していることが記載されています。

2つ目は、解約率と事業計画の関係です。ストック型収益のビジネスでは、事業計画に織り込んだ解約率が過去の実績と整合しているかが確認されます。チャットプラスは、予算・経営計画に過去の実績をもとに一定の解約率を見込んでいると記載しています。

3つ目は、小規模組織での内部管理体制の持続性です。管理部門の人員が少ない場合、担当者の退職などで業務が止まらないよう、業務の文書化や引継ぎの仕組みが整っているかが問われます。チャットプラスは、人材の確保策として、ストック・オプションの付与や近接住居手当などを記載しています。

4つ目は、情報セキュリティです。チャットボットは顧客企業のエンドユーザーとのやり取りを扱うため、情報管理体制が重要です。チャットプラスは、プライバシーマークとISMSの認証、WAFの導入、外部の脆弱性診断などを記載しています。審査全体の考え方はIPOの実質審査基準とはで解説しています。

上場準備会社がこのケースから学べること

ここまでの内容を踏まえ、チャットプラスのⅠの部から引き出せる実務上の示唆を整理します。

このケースから学べる主なポイント1.事業承継と株式移動の記録を残す2.役員貸付は期中に解消する3.価格の算定方法を説明できるように4.機関設計は運用実績を見て逆算5.少人数でも自己監査を回避6.KPIの定義を明確にして開示

図17 チャットプラスのⅠの部から読み取れる、上場準備の実務上のポイント(筆者作成)

1. 経営者の交代と株式の移動は、経緯を時系列で説明できるようにする

経営者の交代や相続・親族間の株式移動があった場合、Ⅰの部の「株式等の移動状況」には、移動の理由と価格の決め方を記載する必要があります。チャットプラスのように注記で経緯を補足すると、株主構成の背景が伝わりやすくなります。議事録、契約書、価格算定書などの根拠資料を一式で保管しておきましょう。

2. 役員への貸付などの関連当事者取引は、申請期より前に解消する

株式取得資金などの事情があっても、会社から役員への貸付は審査で必ず確認されます。条件の根拠を残し、早期に回収して、関連当事者注記で正確に開示することが基本です。

3. 株価の算定方法は、取引ごとに目的と根拠を整理する

株式の移動とストック・オプションの発行で異なる算定方法を用いる場合は、それぞれの取引の目的や算定時点の状況を整理し、選んだ理由を説明できるようにしておきます。ストック・オプション注記の本源的価値の算定とも整合をとる必要があります。

4. ストック・オプションは行使条件と潜在株式比率を設計段階で確認する

付与の回数が増えると、行使条件や行使期間が回ごとに異なり、管理が複雑になります。上場条件や地位要件の有無、税制適格要件、潜在株式比率への影響を、付与のたびに確認しておきましょう。

5. 機関設計の移行は、申請前に運用実績を積める時期に行う

チャットプラスは、直前期(2025年6月期)の早い段階にあたる2024年9月に監査役会設置会社へ移行し、同期中に取締役会・監査役会の開催実績を積んでいます。報酬委員会のような任意の機関も、設置の時期と運用の実態をあわせて説明できるように準備します。

6. 兼務の内部監査でも、自己監査の回避と改善のフォローを仕組みにする

専任の内部監査部門がなくても、担当者の分担、報告ルート、改善状況の確認、三様監査の連携を決めておけば、審査で説明できる体制になります。内部監査の人数と体制も参考にしてください。

7. SaaSのKPIは、定義・集計方法・集計開始時期をセットで開示する

ARR、ARPA、Churnレートといった指標は、定義が曖昧だと比較や検証ができません。算式と集計の開始時期を明記し、会計上の売上高との関係を説明できるようにしておくことが、審査対応と上場後の開示の両方に役立ちます。

上場準備のセルフチェック

  • 経営者の交代や親族間の株式移動について、移動の理由・価格・算定方法を説明できる資料がそろっている
  • 役員や近親者との資金の貸借など、関連当事者取引の一覧を作り、解消の時期を決めている
  • 株式移動とストック・オプションの価格の算定方法を整理し、それぞれの根拠を説明できる
  • ストック・オプションの各回の行使条件・行使期間・潜在株式比率を一覧で管理している
  • 機関設計の移行や社外役員の選任を、申請までに運用実績を積める時期に計画している
  • KPIの定義と集計方法を文書化し、会計上の売上高との整合を確認する手続がある

よくある質問

Q1. VCから出資を受けていなくても、グロース市場に上場できますか。

できます。上場審査では、株主の属性よりも、事業の継続性や成長可能性、内部管理体制、開示の適正性などが確認されます。チャットプラスも、VCや事業会社の株主がいない状態で上場しています。ただし、オーナーや役員・親族の持株比率が高い会社では、流通株式の基準を満たすために、公募・売出しの規模を資本政策の段階から検討しておく必要があります。

Q2. 経営者が交代した直後でも上場申請はできますか。

経営者の交代そのものが上場申請を妨げるわけではありません。ただし、審査では新しい経営体制で事業が安定して運営されているか、意思決定の仕組みが機能しているかが確認されます。交代後の業績や会議体の運営実績を積み上げ、交代に伴う株式の移動や資金の取引の経緯を説明できるようにしておくことが大切です。

Q3. 内部監査の担当者が他部門と兼務していても問題ありませんか。

少人数の会社では兼務も認められますが、自分の所属部門を自ら監査しない仕組みが必要です。チャットプラスでも、兼務の担当者2名が自部門の監査に加わらないことで自己監査を回避しています。年間計画に基づく監査、改善状況の確認、取締役会・監査役との連携まで含めて体制を整えましょう。

Q4. 株式の移動とストック・オプションで株価の算定方法が違っても問題ありませんか。

取引の目的や当事者、算定時点の状況によって、異なる算定方法を用いることはあります。重要なのは、それぞれの方法を選んだ理由と、算定の前提を説明できることです。上場審査では、上場前の一定期間の株式移動や新株予約権の発行価格の妥当性が確認されるため、算定書などの根拠資料を保管しておきましょう。

最初の一歩は、株式の移動と関連当事者取引の棚卸しから

チャットプラスのように、経営者の交代や親族間の株式移動、役員との資金取引があった会社では、まず、過去の株式移動・新株予約権の発行と、役員や近親者との取引を時系列で一覧にすることから始めるのがおすすめです。どの取引にどの根拠資料があり、どの取引をいつまでに解消すべきかが見えれば、資本政策やガバナンスの整備を無理のないスケジュールで進められます。現状の課題を洗い出す方法としては、ショートレビューの活用も有効です。

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チャットプラスのⅠの部と比べる 上場準備ギャップ診断シート(Excel)

チャットプラスの機関設計・内部監査・会計・資本政策の25論点を、自社の状況と並べて点検できます。申請期の期末日を入れると上場までの逆算表も作れます。

まとめ

チャットプラス株式会社は、チャットボットとFAQシステムをSaaSで提供し、生成AIとの連携サービスを伸ばしながら、2026年7月に東証グロース市場に上場しました。Ⅰの部からは、外部資金に頼らないオーナー企業としての資本政策、経営者の交代に伴う株式の移動と役員貸付の解消、株式移動とストック・オプションでの株価算定方法の記載、直前期の早い段階での監査役会設置会社への移行と任意の報酬委員会の設置、兼務2名で自己監査を回避する内部監査、定義を明示したSaaSのKPI開示など、上場準備の実務に直結する具体例を読み取ることができます。

特に、株式の移動の経緯を注記で補足する書き方や、ARR・ARPA・Churnレートを集計開始時期とあわせて開示する方法は、オーナー企業やSaaS企業の上場準備会社にとって参考になります。自社の状況に置き換えて、早い段階から論点を整理しておきましょう。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)で確認できます。

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ショートレビュー、資本政策、機関設計、内部監査・内部統制、会計方針と開示、Ⅰの部の作成、審査対応まで、上場準備の実務を公認会計士が支援します。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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