関連会社と共同支配企業への投資は、持分法で処理します。連結ほど詳細な情報は求められませんが、投資先の状況を投資家が把握できるだけの注記が必要です。とくに個々に重要な関連会社については、その会社の要約財務情報の開示が求められます。
この記事では、上場準備会社がIFRSを任意適用する場面を想定して、関与の形態の分類、重要な影響力の判定、そして持分法適用会社について注記で何を書くのかを整理します。
- 子会社・共同支配企業・共同支配事業・関連会社の分かれ方
- 共同支配の取決めで会計処理が2つに分かれる理由
- 個々に重要な関連会社について求められる要約財務情報
- 持分法の適用をやめた場合の処理
この記事の見出し
📌 関与の形態を4つに分ける
他の会社への関与は、支配しているか、共同で支配しているか、重要な影響力を持つかという段階で分かれます。支配していれば連結、重要な影響力があれば持分法です。共同支配の場合は、取決めの内容によってさらに2つに分かれる点が、日本基準にはない整理です。
共同支配の取決めは、権利義務の内容によって処理が2つに分かれます。
共同支配企業と共同支配事業の違いは、参加者が何に対する権利を持つかです。取決めの対象が別法人になっていて、参加者はその純資産に対する権利を持つにすぎない場合は共同支配企業となり、持分法で処理します。これに対して参加者が個々の資産と負債に直接の権利義務を負う場合は共同支配事業となり、自分の持分に対応する資産と負債を直接計上します。
法人形態だけでは決まらず、契約条件や、参加者以外に販売する能力があるかといった事実を総合して判断します。共同で工場を運営する取決めや、共同で研究開発を行う取決めがある会社では、この判定を早めに済ませておく必要があります。
📌 重要な影響力は実質で判断する
関連会社とするかどうかは、重要な影響力があるかで決まります。議決権の20パーセント以上を保有していれば影響力があると推定されますが、これは反証可能な推定です。取締役を派遣していない、重要な取引がない、他の株主が支配しているといった事実があれば、20パーセント以上でも関連会社としない判断がありえます。
20パーセントは推定にすぎず、実質で判断する点は日本基準と同じ考え方です。
上場準備会社では、事業提携先や出資を受けた投資先との関係でこの判定が問題になります。少数持分でも取締役を派遣し、技術面で深く関与している場合は、関連会社と判断される可能性があります。判定の結論だけでなく、その理由を文書として残しておくことが、監査の場面で役に立ちます。
📌 個々に重要な会社は要約財務情報を示す
持分法適用会社のうち、グループにとって個々に重要なものについては、その会社の要約財務情報を注記で示します。流動資産、非流動資産、流動負債、非流動負債、収益、当期利益、その他の包括利益といった項目を、持分相当額ではなくその会社の金額そのもので示すのが原則です。
要約財務情報は持分相当額ではなく、その会社の金額そのものを示すのが原則です。
そのうえで、要約財務情報の純資産に持分比率を乗じ、のれん相当額や未実現利益の調整を加えて、財政状態計算書に計上している持分法による投資額へつながることを示します。この調整表があると、読み手が投資額の内訳を追えるようになります。
個々には重要でない会社については、まとめて合計額を示せば足ります。どの会社を個々に重要とするかの基準は会社が定めますが、投資額の大きさや持分法による投資損益の影響を目安にするのが一般的です。
📌 損失が投資額を超えた場合
持分法適用会社が損失を計上し、持分相当額が投資額を超えた場合、投資額をゼロまで減らしたところで持分法の適用を停止します。それ以上の損失は、その会社に対して法的または推定的な義務を負っている場合を除き、認識しません。停止した後に生じた未認識の損失の累計額は、注記で示します。
その後にその会社が利益を計上した場合は、未認識の損失の累計額を回復してから、持分法の適用を再開します。赤字の関連会社を抱えている上場準備会社では、この累計額の管理が必要になります。
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📌 持分法の適用をやめる場合
持分を追加取得して支配を獲得した場合、これまでの持分法による投資を支配獲得時の公正価値で再測定し、差額を純損益に計上します。段階取得による差益や差損と呼ばれるもので、日本基準の連結でも同様の処理がありますが、IFRSでは持分法適用会社から子会社になる場面が典型例です。
逆に、持分を売却して重要な影響力を失った場合も、残っている持分を公正価値で再測定します。関連会社への投資は、上場準備の過程で持分比率が動きやすい領域なので、比率が変わるたびに会計処理の分岐を確認する運用にしておくと安全です。
📊 記載例
持分法適用会社の注記の例です。個々に重要な会社は要約財務情報を示します。
(1)個々に重要な関連会社(サンプル・パートナーズ株式会社、議決権の所有割合30.0パーセント、物流サービス)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 流動資産 | 2,400 |
| 非流動資産 | 3,100 |
| 流動負債 | 1,800 |
| 非流動負債 | 1,300 |
| 資本 | 2,400 |
| 売上収益 | 6,800 |
| 当期利益 | 320 |
| 当期包括利益 | 320 |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 資本に対する持分相当額(30.0パーセント) | 720 |
| のれん相当額 | 180 |
| 連結財政状態計算書上の帳簿価額 | 900 |
(2)個々に重要でない関連会社
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 帳簿価額の合計 | 240 |
| 持分法による投資利益の合計 | 18 |
(3)未認識の損失
持分法の適用を停止した関連会社について、認識していない損失の累計額は32百万円であります。
会社名と数値は架空です。要約財務情報の資本に持分割合を乗じ、のれん相当額を加えて帳簿価額につながることを示すと、読み手が検算できます。
個々に重要かどうかの判断基準は会社が決めますが、毎期変えると比較可能性が損なわれます。投資額または持分法による投資損益の一定割合という基準を、社内で決めておいてください。
📁 実際の開示事例
個々には重要性のない関連会社と共同支配企業について、合計額でまとめて開示している例です。
17.持分法で会計処理されている投資 (1) 関連会社
個々には重要性のない関連会社に対する持分の帳簿価額、並びに当期利益、その他の包括利益及び包括利益合計に対する持分は以下のとおりです。
関連会社(単位:百万円) 項目 前連結会計年度 当連結会計年度 関連会社に対する持分の帳簿価額 83,986 88,159 親会社の所有者に帰属する当期利益 4,293 4,997 親会社の所有者に帰属するその他の包括利益 △239 772 親会社の所有者に帰属する包括利益合計 4,054 5,769 (2) 共同支配企業
共同支配企業(単位:百万円) 項目 前連結会計年度 当連結会計年度 共同支配企業に対する持分の帳簿価額 45,658 50,411 親会社の所有者に帰属する当期利益 2,021 3,116 親会社の所有者に帰属するその他の包括利益 △2,254 1,544 親会社の所有者に帰属する包括利益合計 △233 4,661
出典:味の素株式会社(証券コード2802)「有価証券報告書」(2026年3月期、2026年6月12日提出)連結財務諸表注記 17.持分法で会計処理されている投資
▶ 読み方 個々に重要な関連会社がない場合は、このように合計額でまとめて示せば足ります。要約財務情報を1社ずつ載せる必要はありません。注目したいのは、関連会社と共同支配企業を分けて示している点です。持分法という同じ処理でも、共同支配の取決めによるものかどうかで関与の性質が違うため、区分して開示します。個々に重要な会社がある場合は、その会社の要約財務情報を別に示すことになります。
共同支配の分類や重要な影響力の判定は、契約条件の読み込みが必要な領域です。判定の整理から要約財務情報の様式まで、IFRSの導入支援と上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
❓ よくある質問
A. 原則はその会社の金額そのものです。持分相当額だけを示すと、読み手が投資先の規模を把握できないためです。そのうえで持分比率を乗じた金額へつながる調整を示す形が一般的です。
A. 子会社ほど厳格ではありませんが、差異は3か月以内であることが前提で、その間の重要な取引や事象は調整します。決算日が異なる事実は注記で記載します。
A. 取締役を派遣している、重要な技術や資金を提供している、経営方針の決定に実質的に関与しているといった事実がある場合です。持株比率だけで判断しない点に注意が必要です。
📄 まとめ
関連会社と共同支配企業の注記は、投資額の一覧だけでは足りません。個々に重要な会社については要約財務情報を示し、投資額との対応が追えるようにします。
共同支配の取決めは、法人形態ではなく権利義務の内容で処理が分かれます。提携先との取決めがある会社は、契約条件を読み込んだうえでの判定が必要なので、適用時期を決める前に整理しておくことをおすすめします。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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- 子会社への関与の注記
- 関連会社と共同支配の注記(この記事)
- 企業結合の注記
- 事業セグメントの注記
📚 参考(公的な一次情報)
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索)
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索)
- 会社法(e-Gov法令検索)
- 企業内容等の開示に関する内閣府令(e-Gov法令検索)