オカダコーポレーションのTOKYO PRO Market上場|株主2名と債務超過の解消【発行者情報から読む上場準備】

※本記事は2026年10月7日時点の公表資料に基づきます。

※本記事は、オカダコーポレーション株式会社が上場に際して公表した「発行者情報」の公開情報に基づき、上場準備の実務解説を目的として作成したものです。投資の勧誘を目的とするものではありません。

オカダコーポレーション株式会社(証券コード560A)は、2026年3月25日に上場申請を行い(東京証券取引所の申請受付日)、4月8日に上場承認を受けて、2026年4月15日に東京証券取引所の TOKYO PRO Market に上場しました。担当J-Adviserは株式会社日本M&Aセンターです。三重県松阪市に本店を置き、「丸源ラーメン」「牛角」「シャトレーゼ」など複数のフランチャイズブランドの店舗を運営する、いわゆるメガフランチャイジーで、子会社では太陽光発電事業も営んでいます。本記事では、同社が上場に際して公表した「発行者情報」(全62ページ)を読み、上場準備を進める会社の経営者・CFO・管理部門の方が参考にできるポイントを整理します。

結論からいえば、オカダコーポレーションの発行者情報は「株主2名・社外取締役なし・監査1期分という、一般市場とはまったく異なる前提でも上場できるTOKYO PRO Marketの仕組み」と「債務超過を解消してから上場に臨んだ地方の中堅企業の財務・資本政策」を学ぶのに適した事例です。2024年7月期末の債務超過を増資と利益で解消したこと、親族からの株式集約・第三者割当・株式分割という上場前の資本政策、店舗単位の減損判定や有利子負債依存度85.0%といった財務の論点が、具体的な数字とともに記載されています。

オカダコーポレーションはどんな会社で、いつ上場したのか

オカダコーポレーションは、現代表取締役社長である岡田卓也氏の父・岡田忠彦氏が1973年に惣菜製造卸売業を目的として設立した会社です。当時の商号は岡田食品惣菜株式会社で、2018年10月に現在の商号に変更しました。経営理念として「人々の幸せの創造」を掲げ、「元気・笑顔・スピード」を指針に、飲食・小売産業を通じた地域社会への貢献を追求していると説明されています。

上場時に公表された書類の表紙には「発行者情報」と記載されています。同社は上場に際して特定投資家向け取得勧誘又は特定投資家向け売付け勧誘等を実施しないため、「特定上場有価証券に関する有価証券上場規程の特例」第110条第3項の規定により、発行者情報に相当する情報を公表したと説明しています。つまり、上場時に新株の募集や株式の売出しは行っていません。

項目 内容
会社名 オカダコーポレーション株式会社(OKADA CORPORATION Inc.)
証券コード 560A
市場 TOKYO PRO Market(東京証券取引所)
申請受付日 2026年3月25日(発行者情報の公表日も同日)
上場承認日 2026年4月8日
上場日 2026年4月15日
担当J-Adviser 株式会社日本M&Aセンター
本店所在地 三重県松阪市
設立 1973年8月(岡田食品惣菜株式会社として創業)
決算期 7月(第52期=2024年8月1日〜2025年7月31日)
事業 外食事業・小売事業(フランチャイズ加盟店)、太陽光事業(子会社)
従業員数 連結70名(臨時従業員の年間平均489名、2026年2月28日現在)
上場時の公募・売出し なし(特例第110条第3項により発行者情報を公表)
監査法人 Amaterasu有限責任監査法人(第52期の連結財務諸表を監査)

グループは、同社と連結子会社のオカダトラスト株式会社の2社で構成されています。オカダトラストは2024年5月1日に代表取締役社長の岡田卓也氏から株式を取得して子会社化した会社で、太陽光発電所の運営と不動産賃貸業などを行っています。同社社長がオカダトラストの代表取締役社長を兼任しています。

従業員は2026年2月28日現在で連結70名、臨時従業員は年間平均で489名です。単体の平均年齢は33歳、平均勤続年数は4年、平均年間給与は2,975千円と記載されています。店舗運営の多くをアルバイト・パートが担う一方、正社員は外食38名、小売18名、管理本部13名という構成です。

オカダコーポレーショングループの事業の仕組みフランチャイザー(8社)甲羅/物語コーポレーションダンダダン/コメダレインズインターナショナルフジオフードシステムシャトレーゼ/サンクゼールオカダコーポレーション外食事業小売事業一般消費者(店舗の顧客)その他仕入先(食材卸等)オカダトラスト(100%子会社)太陽光発電所 92カ所電力会社(送配電事業者)中部電力PG・関西電力送配電※その他事業:オカダトラストが不動産賃貸業等を営むFC契約提供商品・原材料売電

図1 複数のフランチャイズ本部と契約して店舗を運営する外食・小売事業と、子会社が営む太陽光発電事業の2本柱です(発行者情報「事業の内容」「事業系統図」をもとに作成)

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何で稼いでいるのか:メガフランチャイジーの収益モデル

同社は外食事業と小売事業で複数の有力なフランチャイズブランドに加盟し、メガフランチャイジーとして店舗展開を行っていると説明しています。外食事業ではファミリー層向けのロードサイド店舗を中心とする「丸源ラーメン」、焼肉の「牛角」、辛鍋の「赤から」、「コメダ珈琲店」「肉汁餃子のダンダダン」「串家物語」などを運営し、小売事業ではスイーツの「シャトレーゼ」と和食食材の「久世福商店」を展開しています。

第52期(2025年7月期)の連結売上高3,170,853千円の内訳は、外食事業1,485,320千円、小売事業1,509,383千円、太陽光事業172,910千円、その他3,240千円です。外食と小売がほぼ半分ずつを占め、太陽光事業は売上高こそ小さいものの、セグメント利益は47,635千円と、外食(72,453千円)・小売(85,734千円)と並ぶ利益の柱になっています。

セグメント別の売上高と利益(第52期・2025年7月期、千円)売上高セグメント利益外食事業1,485,32072,453小売事業1,509,38385,734太陽光事業172,91047,635セグメント利益計205,823 + その他5,339 − 全社費用141,701 = 連結営業利益69,461

図2 外食事業と小売事業が売上高をほぼ二分し、太陽光事業は売上高は小さいものの利益の柱の一つです。セグメント利益の合計から全社費用141,701千円を差し引いた額が連結営業利益です(セグメント情報より)

店舗数は「増やす」より「選ぶ」局面

発行者情報には、過去3事業年度末のブランド別店舗数が記載されています。第50期末(2023年7月)に33店舗あった店舗数は、第51期末に27店舗、第52期末に26店舗となりました。第50期末にあった「コロッケのころっ家」「お酒の美術館」などの自社運営ブランドは第51期中に撤退し、「21時にアイス」は2025年9月、「やっぱりステーキ」は2025年10月に撤退しています。一方で、シャトレーゼは4店舗から7店舗に増えています。

上場準備の観点では、不採算店舗の整理が業績にどう表れているかを説明できることが大切です。同社は第52期の外食事業について「不採算店舗の3店舗を閉店した」と記載し、事業等のリスクでは、2024年7月期末の債務超過の原因の一つとして不採算店舗の存在を挙げています。店舗の出退店と業績・財務の関係を、数字でつなげて説明できるようにしておくことは、どの市場を目指す場合でも求められる準備です。

事業年度末の運営店舗数の推移外食 21小売 1233店舗外食 16小売 1127店舗外食 15小売 1126店舗第50期末(2023/7)第51期末(2024/7)第52期末(2025/7)第52期末の外食:丸源ラーメン5・牛角3・ダンダダン2・やっぱりステーキ2・ほか3

図3 第50期末の33店舗から、不採算ブランドの撤退を進めて第52期末は26店舗となりました。2025年9月に「21時にアイス」、10月に「やっぱりステーキ」から撤退しています(「事業の内容」の店舗数推移より)

出店の意思決定は規程と取締役会でたどれるか

新規出店の流れも具体的に記載されています。フランチャイズ本部からの物件提案や地元不動産業者からの情報で候補地を集め、本部の提案資料に基づいて商圏分析や競合店調査を行います。そのうえで「出退店規程」に基づく投資回収シミュレーションを作成し、社内会議で審議し、取締役会の承認を得てからフランチャイズ契約と賃貸借契約を締結する、というフローです。

店舗型ビジネスでは、出店1件ごとの投資額が大きく、失敗すれば減損や閉店損失として業績に直結します。出店基準を規程に落とし込み、取締役会の承認を経る流れを作っておくことは、上場審査で問われる「業務の意思決定の仕組み」の分かりやすい具体例です。

新規出店の意思決定フロー物件情報の収集FC本部の提案地元不動産業者出店妥当性の検証商圏分析・競合調査投資回収シミュレーション(出退店規程)社内会議で審議↓取締役会で承認FC契約・賃貸借契約の締結→内装・採用各店舗には店長を含む正社員を1名以上配置し、臨時従業員の教育とQSC管理を行う

図4 物件情報の収集から取締役会の承認、契約締結までの流れです。「出退店規程」に基づく投資回収シミュレーションが社内審議の基礎になっています(「事業の内容」より)

8つのフランチャイズ契約の違い

「重要な契約等」には、8つのブランドごとのフランチャイズ契約の概要が記載されています。加盟金・保証金はおおむね契約締結時に一定額を支払う形ですが、ロイヤリティの決め方と契約期間はブランドによって大きく異なります。

ブランド(本部) ロイヤリティ等 契約期間
赤から(㈱甲羅) 売上高の一定率又は毎月一定額 3年又は5年(以後3年又は5年ごとの自動更新)
丸源ラーメン(㈱物語コーポレーション) 売上高の一定率 10年(以後2年ごとの自動更新)
肉汁餃子のダンダダン(㈱ダンダダン) 売上高の一定率 3年(以後3年ごとの自動更新)
コメダ珈琲店(㈱コメダ) 1席当たり毎月一定額 10年(以後は協議のうえ再契約)
牛角(㈱レインズインターナショナル) 売上高の一定率 5年(以後5年ごとの自動更新)
串家物語(㈱フジオフードシステム) 売上高の一定率 10年(以後5年ごとの自動更新)
シャトレーゼ(㈱シャトレーゼ) 記載なし(加盟金も記載なし。保証金あり) 4年又は10年(以後は協議のうえ再契約)
久世福商店(㈱サンクゼール) チャージ:売上総利益の一定率(パートナーシップ契約) 1年(以後1年ごとの自動更新)

支払った加盟金は返還されず同社で償却し、加盟保証金は契約終了後に全額又は一部が控除されて返還されると記載されています。事業等のリスクの第1項目も「フランチャイズ契約に関するリスク」で、シャトレーゼや丸源ラーメンなど特定ブランドへの売上依存度が高く、本部の経営破綻やブランド力低下のリスクがあると説明しています。フランチャイズ加盟店の上場準備では、契約の更新条件や解除事由が事業継続の前提になるため、契約書の一覧と管理台帳を整えておくことが欠かせません。

沿革:惣菜製造卸から外食・小売・太陽光へ

沿革を見ると、同社は2004年10月の牛角津高茶屋店の開店を皮切りに、2009年から2010年にかけて赤から・丸源ラーメンを相次いで出店し、2018年からは久世福商店で小売事業に参入しました。2021年以降はシャトレーゼの出店を重ね、2023年にはダンダダン、串家物語、コメダ珈琲店と新しいブランドに加盟しています。2025年10月には赤からイオンタウン鈴鹿店と丸源ラーメン伊勢店を開店しました。

上場に向けた組織・資本面の動きとしては、2024年5月のオカダトラストの子会社化、2025年5月の第三者割当増資、2026年1月の株式分割と単元株制度の導入が続きます。発行者情報の「設備の新設、除却等の計画」には、丸源ラーメン伊勢店(投資予定額120,000千円)、赤からイオンタウン鈴鹿店(同20,000千円)に加えて、「フィットイージー名張店」(同145,000千円、セグメントは「その他」)の計画も記載されています。

創業から上場までの主な沿革1973年8月岡田食品惣菜として創業2004年10月牛角津高茶屋店を開店2009〜2010年赤から・丸源ラーメン出店2018年小売事業開始現商号に変更2021年5月〜シャトレーゼ出店を拡大2023年ダンダダン・串家・コメダ出店第51期中不採算ブランドから撤退2024年5月オカダトラストを子会社化2025年5月第三者割当(30百万円)2026年4月15日TOKYO PROMarketに上場※上段から下段へ時系列で続く

図5 惣菜製造卸売業として創業し、外食・小売のフランチャイズ展開を経て、2024年の子会社化、2025年の増資、2026年の株式分割を経てTOKYO PRO Marketに上場しました(「沿革」等より)

なぜTOKYO PRO Marketを選んだのか

まず確認しておきたいのは、同社の発行者情報には「なぜTOKYO PRO Marketに上場するのか」という上場目的やTOKYO PRO Marketを選んだ理由についての記載が見当たらない、という点です。事業等のリスクの「担当J-Adviserとの契約の解除に関するリスク」の項目で、TOKYO PRO Marketへの上場を予定していることと、J-Adviser契約が上場と上場維持の前提であることが説明されているのみです。したがって、本記事では同社の意図を推測せず、市場の特徴を一般論として整理します。

TOKYO PRO Marketは、2008年の金融商品取引法改正で導入された「プロ向け市場制度」に基づき2009年に開設された市場(前身はTOKYO AIM)で、2012年7月から東京証券取引所が運営しています。法令上は「特定取引所金融商品市場」と呼ばれ、プライム・スタンダード・グロースの一般市場とは別の市場です。株式を買い付けられるのは特定投資家等に限られ、一般投資家は取引所に買い注文を出すことはできません(保有している株式の売却は可能です)。

JPXの説明では、TOKYO PRO Marketには株主数・流通株式・利益の額といった数値の形式基準がなく、「柔軟なガバナンス設計による上場も可能」とされています。また、東京証券取引所は2026年4月3日、TOKYO PRO Marketを「一般市場上場と非上場の間の多様な活用ニーズに対応する市場」と位置づけ直し、新規上場時に上場目的(なぜTOKYO PRO Marketに上場し、どう活用するか)を検討・開示するよう要請しています。これは東証の「お願い」であり、規程上の義務ではありません。2026年6月15日時点の集計では、開示した会社の上場目的の上位は社内体制の強化、営業力の強化、採用力の強化で、「増資」を挙げた会社は1割程度でした。

同社の場合も、上場時に株式の募集や売出しは行っておらず、株主は上場前と同じ2名です。少なくとも発行者情報から読み取れる範囲では、上場による資金調達や株式の売出しを伴わない上場であることが分かります。これからTOKYO PRO Marketを検討する会社は、資金調達の有無にかかわらず、上場によって何を実現したいのかを社内で言語化しておくことが、東証の要請に応えるうえでも、J-Adviserとの協議を進めるうえでも出発点になります。

TOKYO PRO Marketの上場の仕組みを同社の書類で確認する

審査の主体は担当J-Adviser、申請から承認までは原則10営業日

TOKYO PRO Marketでは、東京証券取引所から資格認証を受けたJ-Adviser(同社の場合は日本M&Aセンター)が、上場前に上場適格性を調査・確認し、上場後も適時開示の助言・指導や上場維持要件への適合状況の調査を担います。上場適格性要件は、①企業としての相応性、②事業の公正かつ忠実な遂行、③企業の規模や成熟度等に応じたコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制、④企業内容等の開示を適正に行える体制、⑤反社会的勢力との関係がないこと等の5項目です。「上場審査がない」わけではなく、数値基準の代わりにJ-Adviserが実質面を確認する仕組みだと理解するのが正確です。

JPXの上場ガイドブック(TOKYO PRO Market編)によれば、J-Adviserの調査・確認を経て、上場申請日の30営業日程度前までに意向表明を行い、東証の面談を受けたうえで上場申請をします。東証は原則として上場申請から10営業日後に上場を承認します。同社の日程は、申請受付日が2026年3月25日、上場承認日が4月8日、上場日が4月15日で、この流れどおりに進んでいます。発行者情報の公表日も3月25日です。

TOKYO PRO Market上場までの手続とオカダコーポレーションの日程J-Adviser契約の締結日本M&AセンターJ-Adviserによる上場適格性の調査・確認意向表明(申請の30営業日程度前まで)上場申請2026/3/25発行者情報を公表上場承認 4/8↓上場 4/15TPMの特徴・形式基準(数値基準)がない・担当J-Adviserが上場適格性を確認・申請から原則10営業日で承認同社の場合・公募・売出しは行わない・特例110条3項により 発行者情報に相当する情報を公表

図6 J-Adviserの調査・確認と意向表明を経て上場申請を行い、申請から原則10営業日で上場承認となる流れです。同社は2026年3月25日に申請(発行者情報を公表)、4月8日に承認、4月15日に上場しました(JPX「上場ガイドブック TPM編」と同社資料をもとに作成)

TOKYO PRO Marketの関係者とオカダコーポレーションの位置づけ東京証券取引所担当J-Adviser日本M&Aセンターオカダコーポレーション監査法人Amaterasu有限責任特定投資家等(一般投資家は買付け不可)資格認証・業務委託調査・指導監査上場申請・適時開示発行者情報(年2回)

図7 担当J-Adviserが上場適格性の調査・確認と上場後の助言・指導を担い、会社は上場後も発行者情報を公表します。株式を買い付けられるのは特定投資家等に限られます(JPXの制度説明と同社資料をもとに作成)

上場時の書類は「特定証券情報」ではなく「発行者情報」

TOKYO PRO Marketで上場時に株式の勧誘(特定投資家向け取得勧誘・売付け勧誘等)を行う場合、金融商品取引法第27条の31に基づき「特定証券情報」を公表します。一方、同社のように上場時に勧誘を行わない会社は、特例第110条第3項に基づいて「発行者情報に相当する情報」を公表します。書類の構成は、第一部「企業情報」(事業の状況、設備、発行者の状況、経理の状況など)、第二部「特別情報」、第三部「株式公開情報」という形で、一般市場の新規上場時に作成するⅠの部と似た項目が並びますが、名称と根拠規定が異なる点に注意が必要です。

上場後は、事業年度と中間会計期間のそれぞれの末日から3か月以内に「発行者情報」を作成・公表します(年2回)。冒頭の「投資者に対する注意事項」には、発行者情報に重要な虚偽や欠落があった場合、公表時の役員が金融商品取引法第27条の34で準用する第22条に基づき損害賠償責任を負う旨が記載されています。簡素な開示制度ではあっても、記載内容に対する役員の責任は軽くありません。

監査は「最近1年間」、同社は第52期の連結財務諸表のみ監査

TOKYO PRO Marketでは、上場前に求められる監査期間は最近1年間です。同社は、特例第110条第5項に基づき、第52期(2025年7月期)の連結財務諸表についてAmaterasu有限責任監査法人の監査を受けています。一方で、第51期の連結財務諸表は監査を受けておらず、参考情報として記載された単体の第50期から第52期の財務諸表も監査を受けていない旨が注記されています。監査報酬は、監査証明業務に基づく報酬が8,000千円で、非監査業務はありません。

監査期間が1年で足りるといっても、監査法人が期首残高を確かめる手続は必要です。監査法人の選定から初年度監査の受嘱までには時間がかかるため、監査法人はいつまでに決めるかで整理しているように、早めに相談を始めることが大切です。

J-Adviser契約は上場維持の前提

同社は事業等のリスクの最後の項目で、日本M&Aセンターとの担当J-Adviser契約の解除条項を詳しく開示しています。契約が解除され、ほかの担当J-Adviserを確保できない場合には上場廃止となるためです。即日無催告で解除できる事由は18項目にわたり、主なものは下の表のとおりです。

あわせて、契約違反があれば1か月の期間を定めて書面で催告し、是正されない場合に解除できること、合意によりいつでも解除でき、1か月前の書面通知でも解除できること、解除する場合は原則としてJ-Adviserが事前に東証へ通知することも記載されています。上場廃止に直結する事由が「J-Adviser契約の解除事由」という形で示されている点は、押さえておきたいポイントです。

解除事由(抜粋) 上場準備・上場後に意識したいこと
債務超過 事業年度末に債務超過で、1年以内に解消できない場合(再建計画等の場合は2年以内)。同社は2024年7月期末に債務超過だった
発行者情報等の提出遅延 期限内に提出できず、遅延理由が適切でないとJ-Adviserが判断した場合。決算・開示の体制が前提になる
虚偽記載又は不適正意見等 開示書類の虚偽記載の影響が重大な場合や、監査報告書で不適正意見等が付された場合
支配株主との取引の健全性の毀損 第三者割当で支配株主が異動し、支配株主との取引の健全性が著しく毀損されたと認められる場合
株主の権利の不当な制限 買収防衛策や議決権の多い株式の発行など、株主の権利を不当に制限すると認められる場合
反社会的勢力の関与 関与の実態が市場の信頼を著しく毀損したと認められる場合

一般市場(グロース・スタンダード)と何が違うのか

TOKYO PRO Marketと一般市場の主な違いを、JPXの公表資料に基づいて整理すると次のとおりです。同社の発行者情報に表れている特徴(株主2名、社外取締役なし、監査1期分)は、いずれもこの制度の違いを背景にしています。なお、コーポレートガバナンス・コードについて、JPXはプライム・スタンダード市場(全原則)とグロース市場(基本原則)への適用を示しており、TOKYO PRO Marketへの言及はありません。

項目 TOKYO PRO Market 一般市場(グロース・スタンダード)
買付けできる投資者 特定投資家等(一般投資家は買付け不可、売却は可) 制限なし
数値の形式基準 なし 株主数・流通株式などの基準あり
上場適格性の確認 担当J-Adviserが調査・確認し、東証が面談 主幹事証券の引受審査と東証の上場審査
申請から承認まで 原則10営業日(申請前にJ-Adviserの調査と意向表明) 東証の上場審査を経て承認
上場時の開示書類 特定証券情報(勧誘しない場合は発行者情報に相当する情報) 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)・有価証券届出書など
上場後の定期開示 発行者情報(年次・中間、期末後3か月以内) 有価証券報告書・半期報告書
上場前の監査期間 最近1年間 直前2期
四半期の開示 任意 取引所規則に基づく四半期決算短信
内部統制報告書 任意 提出が必要
上場維持の前提 担当J-Adviserとの契約の維持 J-Adviser制度はない

業績と財務はどう読むか

連結は実質1期分、単体の参考情報は未監査

同社は前連結会計年度(第51期)から連結財務諸表を作成していますが、オカダトラストのみなし取得日を連結会計年度末日としているため、第51期は貸借対照表のみを連結しています。そのため、連結損益計算書やキャッシュ・フロー計算書は第52期の1期分しかなく、前期との比較分析も行われていません。これを補うため、発行者情報には子会社化前の同社単体の主要な経営指標等が「参考情報」として3期分記載されています。

連結の主要指標(千円) 第51期(2024年7月期) 第52期(2025年7月期)
売上高 - 3,170,853
営業利益 - 69,461
経常利益 - 33,981
親会社株主に帰属する当期純利益 - 27,582
純資産額 △36,987 20,594
総資産額 2,526,254 2,455,684
自己資本比率 - 0.8%
営業活動によるキャッシュ・フロー - 219,473
投資活動によるキャッシュ・フロー - △61,511
財務活動によるキャッシュ・フロー - △110,970
現金及び現金同等物の期末残高 - 288,797

単体の参考情報では、売上高は2,621,822千円(第50期)、2,915,341千円(第51期)、2,994,703千円(第52期)と推移しています。第51期は経常損失21,374千円、当期純損失165,848千円を計上し、純資産は△51,252千円の債務超過となりました。第52期は経常利益40,045千円、当期純利益33,549千円と黒字に戻っています。なお、これらの単体財務諸表は監査を受けていない旨が注記されているため、読む際にはその前提を踏まえる必要があります。

オカダコーポレーション単体の業績推移(参考情報)01,0002,0003,0004,000第50期(2023/7)第51期(2024/7)第52期(2025/7)売上高(百万円)(千円)第50期第51期第52期売上高2,621,8222,915,3412,994,703経常利益33,255△21,37440,045当期純利益602△165,84833,549純資産114,596△51,25212,297

図8 子会社化前の会社の姿を示すために記載された単体の参考情報です。第50期から第52期の財務諸表は監査を受けていない旨が注記されています(「主要な経営指標等の推移」の参考情報より)

債務超過をどう解消したか

事業等のリスクの「資金調達に関するリスク」では、2024年7月期末に不採算店舗の存在等により36百万円の債務超過となったが、店舗閉鎖等の構造改革と30百万円の増資により2025年7月期末に解消したと説明されています。連結株主資本等変動計算書でも、期首の純資産△36,987千円に、新株の発行30,000千円(資本金15,000千円・資本剰余金15,000千円)と当期純利益27,582千円が加わり、期末は20,594千円となっています。

TOKYO PRO Marketには利益の額などの数値基準はありませんが、J-Adviser契約の解除事由には債務超過が含まれており、上場適格性要件の一つには、上場予定日から12か月間の運転資金の確保など「企業としての相応性」が挙げられています。同社も「運転資本」の項目で、自己資金と金融機関からの借入により、上場予定日から12か月間の運転資本は十分であると判断していると記載しています。

債務超過から資産超過への推移(連結純資産、千円)2024年7月期末純資産△36,987第三者割当(2025/5/7)+30,000第52期の当期純利益+27,5822025年7月期末純資産20,594同社の説明(事業等のリスク)・不採算店舗の存在等で36百万円の債務超過・店舗閉鎖等の構造改革と30百万円の増資で 2025年7月期末に解消・自己資本比率は依然として低水準J-Adviser契約の解除事由(一部)・事業年度末に債務超過で、1年以内に 解消できなかったとき (再建計画等の場合は2年以内)→上場維持の前提にかかわる

図9 2024年7月期末の連結純資産は△36,987千円の債務超過でしたが、30,000千円の第三者割当と第52期の利益により2025年7月期末に20,594千円となりました(連結株主資本等変動計算書・事業等のリスクより)

営業利益の7割近くが支払利息に

第52期の連結損益計算書を見ると、営業利益69,461千円に対して支払利息が48,348千円あり、経常利益は33,981千円です。特別利益には固定資産売却益752千円と、主に外食事業店舗の火災損失に対する受取保険金18,851千円があり、特別損失には固定資産除却損7,511千円、店舗閉鎖損失3,348千円、減損損失1,111千円が計上されています。税金等調整前当期純利益は41,614千円、法人税等合計14,032千円を差し引いた当期純利益は27,582千円です。

営業利益から当期純利益まで(第52期連結、千円)営業利益69,461営業外収益+13,320支払利息-48,348その他-451経常利益33,981特別利益+19,604特別損失-11,970法人税等-14,032当期純利益27,582

図10 営業利益69,461千円に対して支払利息が48,348千円あり、経常利益は33,981千円にとどまります。特別利益には火災損失に対する受取保険金18,851千円が含まれます(連結損益計算書より)

貸借対照表では、2025年7月期末の総資産2,455,684千円に対し、有利子負債合計は2,088,375千円で、有利子負債依存度は85.0%と記載されています。金融商品関係の注記によれば、長期借入金(1年内返済予定を含む)は1,186,982千円、リース債務(同)は881,392千円、社債(同)は20,000千円です。同社は、子会社の太陽光発電設備の導入にあたり、銀行借入等による自己所有(28件)のほか、リース契約(59件)や割賦販売契約(5件)を組み合わせていると説明しており、オカダトラストの太陽光発電所の帳簿価額1,252,270千円のうち844,967千円がリース資産です。

一方で、営業キャッシュ・フローは219,473千円のプラスで、減価償却費164,973千円が大きく寄与しています。同社は棚卸資産回転期間6.31日、売掛金回転期間10.02日、買掛金回転期間9.25日、キャッシュ・コンバージョン・サイクル7.09日と、資金繰りの指標も開示しています。設備投資が大きく借入依存度の高い会社が上場準備をする場合、損益だけでなく、返済予定とキャッシュ・フローの関係を自社の言葉で説明できるようにしておくことが重要です。

有利子負債と純資産の大きさ(2025年7月期末、千円)長期借入金1,186,982リース債務881,392社債20,000純資産20,594有利子負債合計 2,088,375 / 総資産 2,455,684 = 依存度85.0% 支払利息 48,348

図11 借入金とリース債務が総資産の大半を占め、有利子負債依存度は85.0%です。純資産20,594千円との差が財務面の最大の論点です(金融商品関係注記・事業等のリスクより)

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資本政策と株主構成:創業家2名のまま上場

同社の上場前の株主は、代表取締役社長の岡田卓也氏(87,860株、76.40%)と、同氏が代表取締役を務める資産管理会社の株式会社岡田本家(27,140株、23.60%)の2名だけです。発行済株式総数は115,000株、議決権は1,150個で、新株予約権(ストック・オプション)、自己株式、従業員持株会はいずれもありません。上場時の募集・売出しもないため、上場後もこの株主構成から出発することになります。

株主数や流通株式比率の基準がある一般市場では、このような株主構成のまま上場することはできません。一方、TOKYO PRO Marketには数値の形式基準がないため、オーナー経営の会社が株主構成を大きく変えずに上場する選択肢がある、ということをこの事例ははっきり示しています。

上場前の株主構成(発行者情報記載時点)岡田卓也(代表取締役)87,860株 76.40%株式会社岡田本家27,140株 23.60%発行済株式総数 115,000株議決権 1,150個(単元株式数100株)新株予約権・自己株式:なし第三者割当(2025/5/7)の割当先岡田卓也 1,146株/岡田本家 354株(分割前の株数)

図12 株主は代表取締役と、その資産管理会社の2名のみです。株主数などの形式基準がないTOKYO PRO Marketならではの株主構成といえます(株主の状況より)

上場前の3つのステップ

第三部「株式公開情報」と「株式等の状況」からは、上場前の資本政策を時系列で追うことができます。第一に、2024年5月1日に、代表取締役の二親等内の血族4名が保有していた計2,700株(株式分割前)が、代表取締役(340株)と岡田本家(2,360株)に移動しています。移動価格は1株3,200円で、純資産方式と類似会社比準方式で算出した価格を総合的に勘案し、当事者間で協議のうえ決定したと記載されています。同じ日に、同社は代表取締役からオカダトラストの株式を取得して子会社化しています。

第二に、2025年5月7日に、2025年5月2日の臨時株主総会決議に基づく第三者割当で普通株式1,500株を発行しました。発行価格は1株20,000円で、類似会社比準方式により算出した価格とされています。割当先は岡田卓也氏(1,146株、22,920千円)と岡田本家(354株、7,080千円)で、払込総額は30,000千円です。第三に、2025年12月22日の取締役会決議により、2026年1月20日付で1株を10株に分割し、1月19日付の定款変更で単元株式数を100株とする単元株制度を導入しました。株式分割の目的は、株式単位当たりの金額を引き下げて流動性を高め、投資家層の拡充を図ることと説明されています。

上場前の資本政策の時系列2024/5/1親族4名から株式を集約2024/5/1オカダトラストを子会社化2025/5/7第三者割当1株20,000円2026/1/19・20単元株100株1株→10株分割2026/4/15TPM上場公募・売出しなし発行済株式数:10,000株 → 11,500株(第三者割当後)→ 115,000株(分割後・1,150単元)

図13 親族からの株式の集約、子会社化、増資、株式分割と単元株制度の導入を経て上場しました。上場時の公募・売出しは行っていません(株式公開情報・株式等の状況より)

2024年5月1日の特別利害関係者等の株式移動(株式分割前)親族A 1,500株親族B 400株親族C 400株親族D 400株2024年5月1日計2,700株単価3,200円(分割前)理由:所有者の事情による代表取締役 岡田卓也+340株株式会社岡田本家(資産管理会社)+2,360株親族A〜Dは代表取締役の二親等内の血族。親族Aは代表取締役へ340株、岡田本家へ1,160株

図14 代表取締役の二親等内の血族4名が保有していた計2,700株が、代表取締役(340株)と資産管理会社(2,360株)に移動しました。価格は純資産方式と類似会社比準方式を総合的に勘案して協議のうえ決定されています(株式公開情報より)

上場前の株式の移動や増資の価格は、算定方法と算定時点の業績・財産の状況を説明できるようにしておく必要があります。同社のように、同じ年度内でも取引の目的や時点によって価格や算定方法が異なることはあり得るため、それぞれの取引について算定書や議事録を保存しておくことが大切です。株価算定の考え方は未上場株式の株価算定はどの方法を使うかも参考にしてください。

また、同社の発行者情報には、特例第115条と同施行規則に基づく二つのルールが記載されています。一つは、直前事業年度末(2025年7月31日)の2年前の日から上場日の前日までの特別利害関係者等の株式の移動状況について、上場日から5年間記録を保存すること。もう一つは、直前事業年度末の1年前から上場日の前日までの第三者割当について、割当を受けた者が、割当日から上場日以後6か月を経過する日(割当日から1年を経過していない場合は割当日から1年を経過する日)まで継続して所有する等の確約を行うことです。同社の2025年5月の第三者割当もこの対象で、確約を行っていると記載されています。一般市場の継続所有の確約については上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)で解説しています。

コーポレート・ガバナンス:取締役3名・社外監査役1名の体制

同社の役員は、代表取締役社長の岡田卓也氏、取締役営業本部長の岩﨑広太氏、取締役管理本部長の三ツ矢武史氏、社外監査役の加藤健一郎氏の4名(男性4名)です。取締役会は「取締役3名、監査役1名で構成」と記載され、毎月1回の定時取締役会と必要に応じた臨時取締役会で、経営方針、中期経営計画、年次予算などの経営目標の策定や業務執行報告を行っています。定款上の員数は取締役3名以上5名以内、監査役2名以内です。

社外取締役は選任していません。同社は、グループの経営規模・体制や社外取締役の役割等を総合的に勘案し、設置の必要があると判断する場合には具体的に検討したいと説明しています。社外監査役については、独立に関する基準・方針の特段の定めはないものの、客観的かつ中立的な経営監視機能が発揮されるよう考慮して選任していると記載されています。

役職 氏名 主な経歴(発行者情報より)
代表取締役社長 岡田卓也 1989年東芝入社、1994年当社取締役、1998年代表取締役(現任)
取締役 営業本部長 岩﨑広太 すかいらーく等を経て2010年当社入社、2024年6月取締役
取締役 管理本部長 三ツ矢武史 税理士事務所勤務等を経て2016年当社入社、2024年6月取締役
監査役(社外) 加藤健一郎 さくら経営支援室代表(現任)、2024年6月当社監査役

役員報酬は、取締役・監査役とも株主総会の決議で決定する旨を定款で定めています。2025年7月期の報酬総額は37,080千円で、社外取締役を除く取締役3名が36,480千円、社外役員1名が600千円、いずれも基本報酬のみで賞与や退職慰労金はありません。取締役の選任決議は議決権の3分の1以上を有する株主の出席と過半数で行い累積投票によらないこと、特別決議の定足数を3分の1以上とすることも定款で定めています。

TOKYO PRO Marketでは、企業の規模や成熟度等に応じたガバナンス体制の整備が求められ、一般市場のような数値や形式の要件は示されていません。ただし、将来一般市場を目指す場合には、機関設計や社外役員の構成を改めて検討することになります。考え方はIPO審査の「機関設計」とはや社外取締役は何人必要かで整理しています。

オカダコーポレーションの機関設計と監査の体制株主総会取締役会(毎月1回)取締役3名(社外取締役なし)監査役 1名(社外監査役)代表取締役社長内部監査室(社長直轄)専任なし・2名で相互牽制監査法人Amaterasu有限責任監査法人※三様監査の場を定期的に設け、監査役は代表取締役社長・監査法人と定期的に意見交換選任選任選定・監督直轄監査随時報告意見交換

図15 取締役3名(社外取締役なし)と社外監査役1名の体制で、取締役会は毎月開催されます。内部監査室は社長直轄で、監査法人の監査は特例110条5項に基づくものです(コーポレート・ガバナンスの状況より)

関連当事者取引:代表者による債務保証が残る

関連当事者情報には、代表取締役による店舗の不動産賃貸借契約に対する債務被保証(当期の地代家賃支払額69,735千円、保証料の授受なし)、第三者割当増資の引受(22,920千円)、役員借入金の返済(32,002千円、無利息・無担保)が記載されています。資産管理会社の岡田本家も増資の引受(7,080千円)が開示され、子会社のオカダトラストについては、代表取締役によるリビングクレジット契約に対する債務被保証(期末残高28,332千円、保証料の授受なし)があります。役員借入金は第52期中に全額返済され、期末残高はありません。

同社は「支配株主との取引を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針」として、取引条件を一般の取引条件と同等の条件に照らして決定し、関連当事者取引には取締役会の承認を必要とする運営をしていると説明しています。代表者による債務保証や代表者との資金の貸し借りは、オーナー企業の上場準備でよく問題になる論点です。解消の進め方は社長個人と会社の取引はどう解消するか、審査での見られ方はIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)を参照してください。

関連当事者との取引(第52期)代表取締役社長岡田卓也(直接76.4%)店舗の不動産賃貸借契約の債務被保証 69,735第三者割当増資の引受 22,920役員借入金の返済 32,002(無利息・無担保)子会社のリビングクレジット契約の債務被保証 28,332株式会社岡田本家(資産管理会社)第三者割当増資の引受 7,080方針:支配株主との取引は一般の取引条件と同等の条件で決定し、関連当事者取引は取締役会の承認を要する

図16 代表取締役による店舗賃貸借契約の債務被保証(保証料なし)、増資の引受、役員借入金の返済などが注記されています。金額は千円(関連当事者情報より)

内部監査・内部統制:専任なし・2名の相互牽制

内部監査は、社長直轄の内部監査室が担当しています。専任担当者は置かず、2名の担当者が相互に牽制する体制を採っていると記載されています。内部監査室は翌期の内部監査計画を事業年度末までに作成し、全ての子会社・部門・店舗を対象に、業務運営の効率性・合理性と法令等の遵守について監査します。監査結果と問題点の改善指示は社長へ報告され、各店舗の監査結果と改善点は、内部監査規程、内部監査計画書、内部監査臨店スケジュールに基づいて取締役会に報告書・改善要望書として提出されます。

兼務者で内部監査を行う場合、担当者が自分の所属部門を監査する「自己監査」をどう避けるかが論点になります。同社の「2名で相互に牽制する」体制は、その一つの答え方です。考え方は内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)で詳しく解説しています。

内部監査の進め方と自己監査を避ける工夫翌期の内部監査計画(期末までに作成)臨店監査全子会社・部門・店舗監査結果報告書改善要望書を作成社長・取締役会へ報告問題点の改善指示内部監査担当者(1人目)内部監査担当者(2人目)相互牽制根拠となる規程・資料:内部監査規程、内部監査計画書、内部監査臨店スケジュール

図17 翌期の監査計画を事業年度末までに作り、全子会社・部門・店舗を対象に臨店監査を行います。専任者は置かず、2名の担当者が相互に牽制する体制です(コーポレート・ガバナンスの状況より)

監査役は内部監査室から監査実施状況について随時報告を受け、代表取締役社長や監査法人と定期的に意見交換を行っています。さらに、監査法人・監査役・内部監査の三者が情報や意見を交換する「三様監査等の場」を定期的に設けていると記載されています(監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査))。リスク管理は、取締役管理本部長をリスク管理担当役員とし、管理本部が情報を一元化する体制です。

内部統制システムについては、同社は会社法上の大会社に該当しないため、法令上の内部統制システムの整備に関する取締役会決議は行っていないと明記しています。そのうえで、内部統制システムの構築を重要な課題と認識し、会社法上の内部統制はもとより、金融商品取引法における内部統制の整備・運用の充実を目指すとしています。TOKYO PRO Marketでは内部統制報告書の提出は任意ですが、職務権限規程や業務分掌規程による権限の分散、リスク・コンプライアンス規程と研修といった基礎的な仕組みを整えている点が読み取れます。

会計・開示の論点

収益認識はセグメントごとにシンプル

連結財務諸表は連結財務諸表規則に基づき、特例第110条第6項で認められた会計基準のうち日本基準に準拠して作成されています。収益の計上基準は、セグメントごとに次のように記載されています。契約資産・契約負債や残存履行義務は「該当事項はありません」とされています。

セグメント 取引の内容 収益を認識する時点
外食事業 店舗での飲食サービスの提供 飲食品を提供し、対価を収受した時点
小売事業 店舗での飲食品等の商品販売 店舗で顧客に商品を引き渡した時点
太陽光事業 自社で発電した電力を電力会社に供給 電力の供給量に応じて会計期間に対応した売電売上を算定

ポイントやクーポン、ギフト券などがある場合は別途の検討が必要になります。収益認識の審査上の論点は上場審査で問われる収益認識で整理しています。

重要な会計上の見積りは固定資産の減損

重要な会計上の見積りとして開示されているのは固定資産の減損です。同社は店舗や発電施設などの各拠点を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位とし、営業損益が過去2期連続してマイナスとなった場合、マイナスで翌期以降も継続してマイナスの見込みである場合、閉鎖の意思決定をした場合などに減損の兆候があるとしています。割引前将来キャッシュ・フローは取締役会で承認された事業計画等を基礎に算定し、回収可能価額のうち使用価値は将来キャッシュ・フローを5%で割り引いて算定しています。第52期の減損損失は1,111千円(外食事業店舗3店舗151千円、太陽光事業施設1箇所の土地959千円)です。

固定資産の減損の判定の流れ拠点(店舗・発電設備)ごと減損の兆候はあるか兆候の例・営業損益2期連続赤字・赤字が続く見込み・閉鎖の意思決定割引前将来CF<帳簿価額か回収可能価額まで減額→減損損失を計上減損損失は認識しない使用価値:将来CFを5%で割引ありはいなしいいえ

図18 店舗や発電設備などの拠点ごとに減損の兆候を判定し、割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識します。第52期の減損損失は1,111千円です(重要な会計上の見積り・減損損失注記より)

このほか、税効果会計では、繰越欠損金に係る繰延税金資産52,846千円に対して評価性引当額43,224千円を計上し、繰延税金資産の純額は10,692千円です。資産除去債務は、太陽光発電所等の定期借地権契約などに伴う原状回復義務13,726千円を計上する一方、店舗の賃貸借契約に伴う原状回復義務は、負債計上に代えて敷金の回収が最終的に見込めない金額を合理的に見積り費用計上する方法によっています。未適用の会計基準として、新リース会計基準(企業会計基準第34号等)を2028年7月期の期首から適用予定で、影響額は評価中と記載されています。店舗の賃借と設備リースが多い会社にとっては、早めに影響を把握しておきたい論点です。

事業等のリスクと上場後に問われやすい点

事業等のリスクには19項目が挙げられています。主なものを整理すると次のとおりです。いずれもフランチャイズ加盟店としての事業構造と、借入に依存した財務構造に結びついた内容です。

リスク項目 発行者情報の記載の要点
フランチャイズ契約 シャトレーゼ・丸源ラーメン等の特定ブランドへの売上依存度が高い
法的規制 食品衛生法に基づく飲食店営業等の許認可(有効期間は通常5年〜6年)が事業の前提
有利子負債・金利 有利子負債依存度85.0%、支払利息48,348千円(2025年7月期)
資金調達 2024年7月期末の債務超過は解消したが、自己資本比率は依然として低水準
仕入先への依存 シャトレーゼやトーホーフードサービス等からの仕入割合が高い
特定地域への出店 特定地域への依存度が高い状況
代表取締役への依存 経営方針・物件開発・本部との関係構築で極めて重要な役割
J-Adviser契約の解除 解除され、ほかのJ-Adviserを確保できない場合は上場廃止

一般市場へのステップアップを考える会社にとっての示唆

同社の発行者情報には、将来の一般市場への市場変更などについての記載はありません。そのため、同社の今後について推測はせず、TOKYO PRO Market上場を一般市場への準備段階と考える会社一般にとっての示唆を整理します。

まず、TOKYO PRO Marketから一般市場へ移る場合は「市場区分の変更」ではなく、TOKYO PRO Marketの上場を申請により廃止し、一般市場に新規上場する手続になります。2025年12月にはAlbaLinkが、TOKYO PRO Marketの上場廃止の翌日にグロース市場へ新規上場した例があります。東証は2026年4月の資料で、TOKYO PRO Marketでの実績を勘案した一般市場の上場審査の効率化を「26年秋めど」に予定していると公表していますが、本記事執筆時点で実施状況は確認できていません。

一般市場を目指すなら、監査期間(直前2期)、内部統制報告書、四半期の決算短信、株主数や流通株式などの形式基準、社外役員の構成など、TOKYO PRO Marketでは求められていない要件を一つずつ埋めていく必要があります。同社の事例でいえば、株主2名という構成、監査を受けているのが1期分であること、社外取締役がいないことは、一般市場の基準と照らせば準備が必要な項目にあたります。一方で、発行者情報の公表と適時開示を続けることで、開示の体制を先に経験できる点はTOKYO PRO Marketを経由する意味の一つになり得ます。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)を参考にしてください。

上場準備会社が学べること

1. 上場の目的を言語化する。同社は上場時に募集・売出しを行っていません。資金調達を伴わない上場では、上場で何を実現するのかを説明できることが、東証の上場目的の開示要請に応えるうえでも重要です。

2. 債務超過は上場前に解消し、その経緯を説明できるようにする。同社は不採算店舗の閉鎖と30百万円の増資で債務超過を解消しました。J-Adviser契約の解除事由にも債務超過が含まれます。

3. 株式の移動・増資は価格の算定根拠とともに記録する。親族からの株式集約(1株3,200円)と第三者割当(1株20,000円)は、それぞれ算定方法が記載されています。記録の保存や継続所有の確約のルールもあります。

4. 出店・退店の意思決定を規程と取締役会でたどれるようにする。投資回収シミュレーションから取締役会承認までの流れは、店舗型ビジネスの内部管理体制の中核です。

5. 少人数でも内部監査の独立性を工夫する。専任者を置かず2名で相互に牽制する方法は、管理部門が小さい会社の参考になります。

6. 代表者との取引と債務保証を棚卸しする。店舗賃貸借の債務被保証や役員借入金など、オーナー企業に多い取引を一覧にし、取締役会での承認と解消の方針を決めておきましょう。

7. 監査1期分でも準備は早めに。TOKYO PRO Marketの監査期間は最近1年間ですが、監査法人の選定や期首残高の確認には時間がかかります。

  • 上場の目的(資金調達の有無を含む)を社内で言語化できているか
  • 債務超過や運転資金の不足がなく、上場後12か月の資金繰りを説明できるか
  • 上場前の株式移動・増資の価格算定書と決議の記録がそろっているか
  • 出店・退店などの重要な投資判断が規程と取締役会決議で確認できるか
  • 内部監査の担当者が自分の部門を監査しない仕組みがあるか
  • 代表者による債務保証や代表者との資金取引を一覧化し、取締役会で管理しているか

よくある質問

Q1. 株主が2名でもTOKYO PRO Marketに上場できるのですか?

TOKYO PRO Marketには株主数や流通株式といった数値の形式基準がありません。オカダコーポレーションも、代表取締役と資産管理会社の2名が株主のまま上場しています。ただし、担当J-Adviserによる上場適格性の調査・確認は必要です。

Q2. 上場時に「特定証券情報」ではなく「発行者情報」を公表したのはなぜですか?

上場に際して特定投資家向け取得勧誘又は特定投資家向け売付け勧誘等を実施しないため、特例第110条第3項の規定により発行者情報に相当する情報を公表したと説明されています。

Q3. TOKYO PRO Marketでは監査は不要ですか?

不要ではありません。上場前に求められる監査期間が最近1年間とされており、同社も第52期の連結財務諸表についてAmaterasu有限責任監査法人の監査を受けています。

最初の一歩は「上場の目的」と「上場後12か月の資金繰り」を書き出すことから

オカダコーポレーションの事例が示すように、TOKYO PRO Marketは数値基準がない分、会社ごとの「なぜ上場するのか」「上場後も事業と開示を続けられるか」が問われる市場です。まずは、上場で実現したいことを3つ程度書き出し、あわせて上場後12か月の資金繰り表と、現在の株主・役員・関連当事者取引の一覧を作ってみてください。どこから手を付けるべきかは、ショートレビューとはで紹介している課題の洗い出しから始めるのが近道です。

まとめ

オカダコーポレーション株式会社は、1973年に惣菜製造卸売業として創業し、外食・小売のフランチャイズ店舗と子会社の太陽光発電事業を営む三重県の会社で、2026年4月15日にTOKYO PRO Marketに上場しました。担当J-Adviserは日本M&Aセンターで、上場時に募集・売出しは行わず、特例第110条第3項に基づいて発行者情報を公表しています。

発行者情報からは、株主2名・社外取締役なし・監査1期分というTOKYO PRO Marketならではの上場の形と、債務超過の解消、親族からの株式集約と第三者割当、有利子負債依存度85.0%という財務構造、店舗単位の減損判定、2名の相互牽制による内部監査といった具体的な論点を読み取ることができます。本記事のチェックリストで、自社の準備状況を確認してみてください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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