上場後のフォローアップと継続義務とは?適時開示・継続開示・上場維持基準の全体像を解説

上場承認を得て上場日を迎えると、IPO準備は一区切りとなります。しかし上場は会社にとってのゴールではなく、上場会社としての義務が続く新しいスタートです。東証は新規上場会社に対して上場後も一定期間のフォローアップを行いますし、適時開示や金融商品取引法に基づく継続開示、上場維持基準への適合など、上場を維持するために果たすべき義務は多岐にわたります。

この記事では、東証による上場後のフォローアップの仕組みと、上場会社が継続的に負う主な義務の全体像を整理します。上場規程や金融商品取引法の条番号とあわせて示しますので、IPO準備の段階で「上場後に何が待っているのか」を見通す地図としてお使いください。

この記事の要点

  • 東証は新規上場会社を対象に、プライム・スタンダードでは上場後概ね1年間、グロースでは概ね3年間のフォローアップを行う。
  • 上場会社は適時開示(有価証券上場規程第402条〜)と金商法の継続開示(有価証券報告書・半期報告書など)を並行して担う。
  • 決算短信は決算期末後45日以内の開示が適当とされ、30日以内がより望ましいとされている。
  • 上場維持基準(規程第501条)に適合し続ける必要があり、不適合になると改善期間を経て上場廃止につながる。
  • 新規上場後3年間は内部統制監査の免除特例など、新規上場会社向けの経過的な取扱いもある。

1.上場はゴールではない―上場後に求められることの全体像

IPO準備の過程では上場審査に通ることに意識が集中しがちですが、上場審査で確認された体制は、上場後も継続して運用されることが前提です。上場会社になると、会社の情報は投資者の投資判断の材料となるため、情報開示と体制維持に関する義務が法令と取引所ルールの両面から課されます。

🔍東証のフォローアップ新規上場審査で確認した事項を中心に、上場後概ね1年間(グロースは概ね3年間)継続的に確認される。
📢会社情報の開示適時開示(取引所ルール)と有価証券報告書等(金商法)の2系統の開示義務を継続的に果たす。
🏛️体制と基準の維持コーポレート・ガバナンス体制の維持・報告と、上場維持基準(規程第501条)への継続適合が求められる。

上場会社の義務は、大きく分けると①東京証券取引所の有価証券上場規程に基づくもの、②金融商品取引法(金商法)に基づくもの、の2系統があります。主なものを一覧にすると次のとおりです。

区分 東証ルール(有価証券上場規程) 金商法ルール
情報開示 適時開示(第402条・第403条・第405条)、決算短信・四半期決算短信(第404条) 有価証券報告書(第24条)、半期報告書(第24条の5)、臨時報告書
ガバナンス コーポレート・ガバナンス報告書(第419条)、独立役員の確保(第436条の2)、企業行動規範(第432条〜第452条) 内部統制報告書(第24条の4の4)
上場適格性 上場維持基準への適合(第501条)、上場後のフォローアップ
費用 年間上場料・TDnet利用料等

※年間上場料などの上場後にかかる費用は、別記事「上場に伴う費用」で詳しく解説しています。

2.東証による上場後のフォローアップとは

東証は、新規上場を果たした会社に対して、上場後においても適切な企業行動を継続的に行ってもらうという趣旨から、新規上場審査で確認した事項等を中心に継続的なフォローアップを行います。期間は市場区分によって異なり、プライム市場・スタンダード市場では上場後概ね1年間、グロース市場では上場後概ね3年間とされています(東証・新規上場ガイドブック プライム市場編・スタンダード市場編は2026年3月25日版、グロース市場編は2026年7月21日版)。

具体的には、上場後における重要な企業行動や、新規上場審査の過程で対応を要請した事項のその後の状況等を、適時開示情報等を基に東証が継続的にフォローし、必要に応じて上場会社や主幹事証券会社に対して照会・ヒアリングを行います。その結果、企業行動に適切でない点が認められる場合や、審査上の問題点への対応状況に問題がある場合には、今後の方針等を書面等で回答することを通じて改善を求められることになります。

フォローアップで確認される項目として東証が例示しているのは、次の3つの類型です。

類型 確認される項目の例
上場後における重要な企業行動 最高経営責任者(社長等)の辞任、合併・株式交換・株式移転・株式交付・会社分割などの組織再編行為、業務上の重要な提携やその解消、親会社や支配株主・その他の関係会社の異動
審査の過程で対応を要請した事項 審査期間中に整備した内部管理体制の適切な運用状況、解消の必要がある関連当事者取引の漸減・解消状況
上場後における適時開示情報 業績予想などの将来予測情報の修正、上場審査時における事業計画・中期経営計画の変更・見直し

また、上場後は自社の外部環境・内部環境の変化等を踏まえて有価証券報告書の内容を必要に応じて見直していくことが求められ、フォローアップでは特に「事業等のリスク」が上場後の自社の変化を踏まえて適切に見直されているかも確認されます。グロース市場では、上場時に開示した「事業計画及び成長可能性に関する事項」の進捗もフォローアップの中で確認されるため、上場して終わりではなく、審査時に説明した計画を実行し説明し続ける姿勢が問われます。

実務のポイント

審査中に整備した内部管理体制や関連当事者取引の解消方針は、上場後に緩めるとフォローアップで指摘を受ける典型例です。上場審査は「通過すればよい試験」ではなく、上場後の運用まで見られていることを前提に体制を設計しましょう。

3.会社情報の適時開示―投資判断に影響する情報は直ちに開示

上場会社は、投資者の投資判断に重要な影響を与える会社情報について、TDnet(適時開示情報伝達システム)を通じて直ちに開示することが求められます。開示が求められる情報は、大きく①会社の決定事実(有価証券上場規程第402条第1号)、②会社の発生事実(同条第2号)、③決算情報(同第404条)、④業績予想・配当予想の修正(同第405条)に分かれます。

区分 内容の例 タイミング
決定事実(第402条第1号) 募集株式の発行、合併等の組織再編、業務提携・解消、剰余金の配当など会社が決定した事項 決定後直ちに
発生事実(第402条第2号) 災害による損害、主要株主の異動、訴訟の提起など会社に発生した事実 発生後直ちに
決算情報(第404条・第405条) 決算短信・四半期決算短信(第404条)、業績予想・配当予想の修正(第405条)など 内容が定まったとき直ちに

決算短信は、事業年度に係る決算の内容が定まったときに直ちに開示するものとされ、東証は遅くとも決算期末後45日以内の開示が適当であり、決算期末後30日以内の開示がより望ましいとしています。なお金商法上の四半期報告書は2024年4月1日以後に開始する事業年度から廃止されましたが、取引所ルールとしての四半期決算短信の開示は引き続き求められています。

適時開示を適切に行うためには、子会社を含めて開示すべき情報を漏れなく把握し、経営陣と開示担当部署に集約する社内体制(情報取扱責任者の設置を含む)が不可欠です。この体制は上場審査の「企業内容等の開示の適正性」でも確認される項目であり、上場後もそのまま運用し続けることになります。

4.金商法に基づく継続開示―有価証券報告書・半期報告書・内部統制報告書

取引所ルールの適時開示と並行して、上場会社は金商法に基づく法定開示(継続開示)を行います。主な書類と提出期限は次のとおりです。以下は金商法の条文順に並べたもので、実際に提出する順序とは異なります。時系列は後掲の年間スケジュールをご覧ください。

書類 提出期限 根拠条文
有価証券報告書 事業年度経過後3か月以内 金商法第24条第1項
半期報告書 期間(事業年度開始後6か月)経過後45日以内 金商法第24条の5第1項
臨時報告書 重要な事実の発生後遅滞なく 金商法第24条の5第4項
内部統制報告書 有価証券報告書と併せて提出 金商法第24条の4の4第1項

内部統制報告書は、財務報告に係る内部統制(いわゆるJ-SOX)の有効性を経営者自らが評価して報告するもので、原則として公認会計士・監査法人による内部統制監査を受ける必要があります。ただし新規上場会社については負担軽減の観点から、資本金100億円未満かつ負債総額1,000億円未満の会社であれば、上場後3年間は内部統制監査の免除を選択できる特例があります(金商法第193条の2第2項第4号)。免除を受けても内部統制報告書の作成・提出自体は必要である点には注意が必要です。

年間の開示スケジュール(3月決算会社の例)

ここまで見てきた取引所ルールと金商法の開示を、3月決算の会社を例に時系列で並べると次のようになります。上の表は条文順の一覧であるため、実際の開示時期とは並び順が異なる点に注意してください。

時期 開示・提出するもの 根拠・期限
5月中旬まで 通期決算短信 取引所ルール。決算期末後45日以内が適当(30日以内がより望ましい)
6月下旬 定時株主総会、有価証券報告書内部統制報告書 金商法第24条第1項・第24条の4の4第1項。事業年度経過後3か月以内
8月中旬まで 第1四半期決算短信 取引所ルール。四半期末後45日以内が目安
11月中旬まで 第2四半期決算短信、半期報告書 金商法第24条の5第1項。事業年度開始後6か月経過後45日以内
2月中旬まで 第3四半期決算短信 取引所ルール。四半期末後45日以内が目安
随時 適時開示(決定事実・発生事実)、臨時報告書 規程第402条・金商法第24条の5第4項。直ちに・遅滞なく

半期報告書は「当期の上半期」に関する書類であるのに対し、決算短信と有価証券報告書は「前期」に関する書類です。半期報告書の提出時期が決算短信・有価証券報告書より後になるのはこのためで、期間の長短で前後するわけではありません。

実務のポイント

上場後の決算スケジュールは、3月決算会社であれば5月中旬の決算短信(45日以内目安)、6月下旬の有価証券報告書(事業年度経過後3か月以内)、11月中旬の半期報告書(事業年度開始後6か月経過後45日以内)と、四半期決算短信を挟んで年間を通じてタイトです。N-1期までに決算早期化と開示ドラフト作成の体制を作り込んでおくことが、上場後の安定運用につながります。

5.コーポレート・ガバナンスに関する継続的な義務

上場会社は、ガバナンス体制に関しても継続的な義務を負います。主なものは次のとおりです。

コーポレート・ガバナンス報告書(規程第419条)

コーポレート・ガバナンスに関する報告書は、機関設計・取締役会の構成・内部統制システムの状況などを記載して東証に提出するもので、記載内容に変更が生じた場合は遅滞なく変更後の報告書を提出します。新規上場時に提出した後も、役員構成の変更などの都度更新していく実務が続きます。

独立役員の確保(規程第436条の2)

上場会社は、一般株主保護のため、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役)を1名以上確保しなければなりません。独立役員届出書を提出し、異動がある場合は事前に届け出ます。

コーポレートガバナンス・コードへの対応(規程第436条の3)

コーポレートガバナンス・コードの各原則について、実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか(コンプライ・オア・エクスプレイン)が求められます。プライム市場・スタンダード市場は全原則、グロース市場は基本原則のみが対象です。

企業行動規範(規程第432条〜第452条)

有価証券上場規程は、上場会社が守るべき行動規範として「遵守すべき事項」(第432条〜第444条、違反すると実効性確保措置の対象)と「望まれる事項」(第445条〜第452条)を定めています。第三者割当による希釈化の制限、流通市場に混乱をもたらす株式分割等の禁止、反社会的勢力の排除などが含まれ、上場会社としての企業行動の枠組みになります。

6.上場維持基準への継続適合(規程第501条)

2022年4月の市場区分見直し以降、上場会社は新規上場時だけでなく上場後も継続して、所属する市場区分の上場維持基準に適合した状態を維持することが求められます(有価証券上場規程第501条)。主な基準は次のとおりです。

項目 プライム スタンダード グロース
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式数 2万単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上
流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上
売買状況 1日平均売買代金0.2億円以上 月平均売買高10単位以上 月平均売買高10単位以上
時価総額 上場10年経過後40億円以上
(2030年3月1日から、上場5年経過後100億円以上に見直し)
純資産の額 正であること 正であること 正であること

上場維持基準に適合しない状態となった場合は、所定の期間内に「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出・開示したうえで、原則1年(売買高に関する基準は6か月)の改善期間内に基準への適合を目指します。改善期間内に適合できなければ、監理銘柄・整理銘柄の指定を経て上場廃止となります。2022年の市場区分見直し時に設けられていた経過措置はすでに終了しており、上場維持基準は本来の水準で適用されています。

またグロース市場については、機関投資家の投資対象となり得る規模への早期の成長を促す観点から、時価総額に関する上場維持基準が見直され、2030年3月1日以後は「上場から5年経過後に時価総額100億円以上」(改善期間1年)が適用されます(規程第501条第1項第3号、2025年12月8日改正)。グロース市場への上場を検討する会社は、上場時からこの水準を意識した成長戦略が求められます。

7.プライム市場では英文開示も義務に

海外投資家への情報提供の充実を図る観点から、プライム市場の上場会社には2025年4月以後、決算情報および適時開示情報について日本語の開示と同時に英文で開示することが義務付けられました。英文開示は日本語開示の内容の全部でなく一部または概要の開示でも足りるとされていますが、開示体制の整備には翻訳フローの構築が必要です。プライム市場への上場や市場区分の変更を視野に入れる場合には、開示体制の設計段階から英文開示を織り込んでおくことが望まれます。

8.IPO準備の段階から「上場後」を見据える

ここまで見てきたとおり、上場会社の義務は多岐にわたりますが、その大部分は上場審査までに構築する体制がそのまま上場後の実務になるものです。決算早期化・開示体制・内部統制・ガバナンス体制は、審査対策としてではなく、上場後に毎期回し続ける仕組みとして設計しておくことで、上場後のフォローアップにも無理なく対応できます。

逆に、上場後に体制が形骸化すると、東証のフォローアップでの指摘、適時開示の遅延、上場維持基準への抵触といった形で表面化し、最悪の場合は上場廃止につながります。上場をゴールではなくスタートと捉え、持続可能な体制を作ることがIPO準備の本質といえます。

IPO準備の体制づくりを支援しています

鈴木佑也公認会計士税理士事務所では、IPO準備会社向けに決算早期化・開示体制・内部統制の構築支援を行っています。上場後を見据えた体制づくりについて、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1.上場後のフォローアップはどのくらいの期間続きますか。

プライム市場・スタンダード市場では上場後概ね1年間、グロース市場では上場後概ね3年間です。新規上場審査で確認した事項等を中心に、適時開示情報等を基に東証が継続的にフォローし、必要に応じて照会やヒアリングが行われます。

Q2.四半期報告書が廃止されたと聞きましたが、四半期開示は不要になったのですか。

金商法上の四半期報告書は2024年4月1日以後開始事業年度から廃止され、半期報告書(期間経過後45日以内)に一本化されました。ただし取引所ルールとしての四半期決算短信の開示は引き続き求められているため、第1・第3四半期も決算開示の実務は続きます。

Q3.上場維持基準に抵触するとすぐに上場廃止になりますか。

すぐに廃止となるわけではありません。適合しない状態となった場合は「上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示し、原則1年(売買高基準は6か月)の改善期間内に適合を目指します。それでも適合できない場合に、監理銘柄・整理銘柄を経て上場廃止となります。

Q4.内部統制監査は新規上場後すぐに受ける必要がありますか。

内部統制報告書の提出は上場後最初の事業年度から必要ですが、資本金100億円未満かつ負債総額1,000億円未満の新規上場会社は、上場後3年間は内部統制監査の免除を選択できます(金商法第193条の2第2項第4号)。免除を選択しても報告書の作成・提出は必要です。

まとめ

上場後の会社には、東証による概ね1年間(グロースは概ね3年間)のフォローアップに加え、適時開示・金商法の継続開示・ガバナンス報告・上場維持基準への適合といった継続的な義務が課されます。これらは新規上場審査で確認された体制を上場後も運用し続けることにほかなりません。IPO準備の段階から「上場後に毎期回る仕組み」として体制を設計することが、審査対応としても上場後の安定運用としても最も効率的です。

【参照条文等】東京証券取引所「新規上場ガイドブック」(プライム市場編・スタンダード市場編は2026年3月25日版、グロース市場編は2026年7月21日版)Ⅰ 上場制度の概要「上場後のフォローアップ」、有価証券上場規程第402条・第403条・第404条・第405条(適時開示)、第419条(コーポレート・ガバナンス報告書)、第432条〜第452条(企業行動規範)、第436条の2(独立役員)、第436条の3(コーポレートガバナンス・コード)、第501条(上場維持基準)、金融商品取引法第24条(有価証券報告書)、第24条の4の4(内部統制報告書)、第24条の5(半期報告書・臨時報告書)、第193条の2第2項(内部統制監査)、JPX「上場維持基準」「グロース市場の上場維持基準の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」(2025年12月1日)。本記事の内容は2026年7月28日時点の情報に基づいています。

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