コーポレートガバナンス・コードが2026年7月21日に改訂され、同日から施行されました。今回の改訂は表現の手直しではなく、補充原則を廃止して解釈指針を新設するという構造の変更を含んでいます。
基本原則は5つから4つになり、株主との対話を扱っていた章は第1章に統合されました。成長投資と経営資源の配分についての説明も新たに求められています。
この記事では、改訂の内容と対応の期限、そして上場準備会社への影響を整理します。
- 補充原則の廃止と解釈指針の新設という構造の変更
- 改訂の4つの柱(経営資源の配分、取締役会、有報の総会前開示、ステークホルダー)
- 市場区分ごとに説明義務がかかる範囲
- 報告書の提出期限(2027年7月末日)と経過措置
図 コーポレートガバナンス・コードの改訂への対応の判定
この記事の見出し
📌 2026年7月21日に改訂されて同日から施行
コーポレートガバナンス・コードが改訂されました。2026年4月10日に金融庁と東証が改訂案を公表してパブリックコメントを募集し、2026年7月21日に改訂版が確定して同日から施行されています。
改訂の考え方は、金融庁の資料では成長投資の促進とされています。形式的に原則を満たしているかどうかの説明に労力が向かうのではなく、中長期的な価値の向上に向けた取組みに注力できるようにするという趣旨です。
📌 補充原則が廃止され解釈指針が新設された
今回の改訂で最も大きいのは、原則の構造そのものが変わったことです。従来の補充原則は廃止され、その中核となる部分は原則に格上げして整理し直されました。代わりに解釈指針が新設され、原則の背景となる考え方や目的が示されています。
解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありません。実施しない場合に理由を説明する義務は、基本原則と原則にかかります。
表 金融庁および東証の公表資料をもとに作成
基本原則は5つから4つになりました。株主との対話を扱っていた第5章は独立した章ではなくなり、第1章の株主の権利・平等性の確保、株主との対話に統合されています。
実務への影響が大きいのは、既存の社内資料や報告書で補充原則の番号を引用している場合です。改訂後は同じ番号の補充原則が存在しないため、記載を洗い出して置き換える必要があります。
📌 改訂の4つの柱
金融庁が公表した資料では、改訂の内容は大きく4つに整理されています。
1つ目は経営資源の配分です。成長投資として設備、研究開発、人的資本、無形資産への投資が挙げられ、事業ポートフォリオの見直しを含めて具体的に何を実行するのかを説明すべきとされています(原則4-1)。あわせて、経営資源の配分が経営戦略や経営計画に照らして適切なものとなっているかを取締役会が不断に検証すべきとされています(原則4-2)。
2つ目は取締役会の機能強化です。独立社外取締役について、プライム市場の上場会社は3分の1以上、その他の市場の上場会社は2名以上を選任すべきとされています(原則4-10)。取締役会事務局についても、単なる事務方ではなく運営を能動的に行うことが望ましいとされました(原則4-14)。
3つ目は有価証券報告書の株主総会前の開示です。株主が総会で適切な判断を行うことに資する情報を提供すべきとされ(原則1-2)、解釈指針では株主総会の開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましいとされています。
4つ目はステークホルダーとの協働で、人的資本への投資などの例示が拡充されました。
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📌 市場区分による適用の違い
表 東証の公表資料をもとに作成
グロース市場の上場会社は基本原則のみが対象という点は改訂の前後で変わりません。ただし補充原則が廃止されたことで、プライム市場とスタンダード市場が説明すべき範囲の内訳は変わっています。
なお、プライム市場の上場会社に固有の要求が置かれている原則として、原則1-2、原則4-7、原則4-10、原則4-13があります。
📌 報告書はいつまでに更新するか
図 改訂から対応期限までの流れ
改訂後のコードに対応したコーポレート・ガバナンスに関する報告書の提出期限は2027年7月末日です。それまでの定期的な更新については、改訂前のコードにもとづく更新でも差し支えないという経過措置が置かれています。
ただし、経過措置を使って改訂前のコードで更新する場合は、報告書に改訂前の版にもとづき記載している旨を明記したうえで、期限までに改訂後のコードによる更新を別途行う必要があります。二度手間になるため、次の更新の機会に改訂後のコードで作り直すほうが結果として負担は軽くなります。
📌 上場準備会社への影響
新規上場を予定している会社は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書を上場申請時に提出します。東証が公表している提出書類のフォーマットは、2027年2月までに上場する会社用と2027年3月以降に上場する会社用に分かれており、2027年3月以降に上場する会社は改訂後のコードに対応した様式で提出することになります。
このため、2027年3月以降の上場を目指す会社は、申請書類の準備の段階から改訂後のコードを前提に体制を整えることになります。とくに独立社外取締役の人数は、選任の手続に時間がかかるため早めの検討が必要です。プライム市場を目指すなら3分の1以上、スタンダード市場やグロース市場でも2名以上が求められます。
成長投資と経営資源の配分の説明も、上場準備会社にとっては新しい論点です。調達した資金を何に使い、それが経営計画とどう結びついているかを取締役会で検証し、説明できるようにしておく必要があります。
改訂されたコードへの対応は、報告書の書き換えだけでは終わりません。取締役会の運営と説明の中身を整えるところから対応できます。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
❓ よくある質問
A. 2027年7月末日までの定期的な更新については、改訂前の2021年6月版にもとづく更新でも差し支えないとされています。その場合は改訂前の版にもとづき記載している旨を報告書に明記し、期限までに改訂後のコードによる更新を別途行う必要があります。
A. 改訂後は同じ番号の補充原則が存在しません。社内規程、取締役会の資料、投資家向けの説明資料などで補充原則の番号を引用している箇所を洗い出し、改訂後の原則または解釈指針の記載に置き換えてください。
A. 解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないため、実施しない場合に理由を説明する義務はありません。ただし原則の背景となる考え方やベストプラクティスが示されているため、記載の中身を検討するうえでは実質的な基準になります。
A. グロース市場の上場会社が説明義務を負うのは基本原則のみです。ただしコーポレート・ガバナンスに関する報告書の提出自体は必要で、2027年3月以降に上場する会社は改訂後のコードに対応した様式で提出することになります。
📄 まとめ
2026年7月21日の改訂で、コーポレートガバナンス・コードは補充原則が廃止され、解釈指針が新設されました。基本原則は5つから4つになり、株主との対話は第1章に統合されています。
対応の期限は2027年7月末日です。それまでは改訂前のコードによる更新も認められますが、その場合は改訂前の版にもとづく旨の明記と、期限までの再更新が必要になります。
上場準備会社は、2027年3月以降に上場する場合、改訂後のコードに対応した様式で報告書を提出します。独立社外取締役の人数と、成長投資を含む経営資源の配分の説明は、準備に時間がかかる項目です。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
📚 参考(公的な一次情報)
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