数理技研のTOKYO PRO Market上場|大株主との取引とSO5回【発行者情報から読む上場準備】

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

2026年8月24日、オンメモリ型データベース「CoreSaver」を持つシステムインテグレーターの株式会社数理技研(本社:東京都品川区)が、東京証券取引所のTOKYO PRO Market(以下「TPM」)に上場しました。上場に際して特定投資家向け取得勧誘等(一般市場の公募・売出しに当たる勧誘)は行わず、「発行者情報」を公表しての上場です。本記事では、JPXの新規上場会社情報に掲載された同社の発行者情報を読み、上場準備の実務で参考になる点を公認会計士の視点で整理します。

結論からいえば、数理技研のケースは「創業47年・売上高約12億円のSIerが、直前1期の監査と中間の期中レビューを受け、5回のストック・オプションと上場前の減資を経て、資金調達なしでTPMへ上場した例」です。主要顧客であり株主でもある企業グループとの取引、潜在株式が発行済株式の34.44%に達するストック・オプション、受注損失引当金を計上した減益決算と進捗度に基づく収益認識、社外取締役2名を含む監査役会設置会社の体制、内部監査担当者1名の運用など、受託開発型の会社がTPMを使うときの論点が具体的に記載されています。

数理技研はどんな会社で、いつTPMに上場したのか

数理技研は、1979年3月に東京都新宿区大久保で、創業者の東條巖氏ほか6名が発起人となって設立されました。設立当初から科学技術計算を手がけ、1983年12月にAT&T社とUNIXのソースライセンス契約を締結して基盤システム分野に、1986年に本田技研工業の生産管理システムを受注して業務システム分野に進出しています。2015年には共同株式移転で持株会社(のちの数理ホールディングス)を設立しましたが、2019年7月にその親会社を吸収合併し、現在は子会社のない単体の会社です。決算期は9月で、直前事業年度は第48期(2025年9月期)、発行者情報には第49期の中間会計期間(2026年3月まで)の財務諸表も掲載されています。

上場の手続面では、2026年7月24日に新規上場の申請が受け付けられ(同日に発行者情報を公表)、8月7日に上場承認、8月24日に上場しました。担当J-Adviserは宝印刷株式会社です。申請受付から上場承認までは10営業日で、TPMで「原則として上場申請から10営業日後に上場を承認」とされている流れどおりの日程です。申請に先立ち、2025年12月に減資を行い、2026年5月15日の臨時株主総会で単元株制度(1単元100株)を採用、5月18日に1株を10株とする株式分割を行っています。

数理技研のTOKYO PRO Market上場までの日程2025年9月30日直前事業年度末(第48期末)2026年5月18日株式分割(1株→10株)2026年7月24日申請受付・発行者情報公表2026年8月7日上場承認2026年8月24日TPM上場申請受付から上場承認まで10営業日、上場承認から上場日まで17日(暦日、本記事の計算)2025年12月に減資(資本金10,000千円へ)、2026年5月15日の臨時株主総会で単元株制度を採用特定投資家向け取得勧誘等(公募・売出しに当たる勧誘)は行わずに上場

図1 発行者情報の記載とJPXの新規上場会社情報(申請受付日・上場承認日・上場日)をもとに作成

項目 内容
会社名 株式会社数理技研(SURIGIKEN CO.,LTD.)、証券コード616A
市場 東京証券取引所 TOKYO PRO Market
上場日 2026年8月24日
上場承認日 2026年8月7日
申請受付日 2026年7月24日(発行者情報の公表日)
担当J-Adviser 宝印刷株式会社
上場時の開示書類 発行者情報(特例110条3項。特定投資家向け取得勧誘等なし)
本店 東京都品川区西五反田
設立 1979年3月
決算期 9月(第48期=2025年9月期)
事業 システムインテグレーション事業の単一セグメント(業務システム・基盤システム・科学技術の3分野)
関係会社 なし(連結財務諸表は作成していない)
従業員 65名、平均年齢52.0歳、平均勤続年数15.9年(2026年6月30日現在)
監査 監査法人アヴァンティア(第48期の監査、第49期中間の期中レビュー)

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なぜTOKYO PRO Marketを選んだのか

数理技研の発行者情報には、「上場目的」や「TPMを選んだ理由」を説明する記載はありません。株式分割と単元株制度の採用については「当社株式の流通性向上を目的として」と記載されていますが、これは株式分割等の目的であり、TPMを選んだ理由として説明されたものではありません。対処すべき課題には、トップ営業に偏った現状からの脱却、プロジェクト管理の強化、人材確保、内部管理体制の強化などが挙げられていますが、これらを上場と結びつけた説明はなく、本記事では同社の選択理由を推測することは控えます。

一般論として、TPMには一般市場と異なる特徴があります。株主数・流通株式・利益の額などの形式基準(数値基準)がなく、上場時に資金調達を行わない上場も可能です。東証は2026年4月から、新規上場時に「なぜTPMに上場するのか・どう活用するのか」という上場目的を検討・開示するよう要請しています(規程上の義務ではなく「お願い」です)。東証が公表した2026年6月15日時点の集計では、上場目的の上位は社内体制強化・営業力強化・採用力強化で、「増資」を挙げた会社は1割程度にとどまります。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)も参考にしてください。

TPMの上場の仕組みは一般市場とどう違うのか

TPMは、2008年の金融商品取引法改正で導入された「プロ向け市場制度」に基づく市場で、法令上は「特定取引所金融商品市場」に当たります。株式を買い付けられるのは特定投資家(適格機関投資家など)や一定の要件を満たして特定投資家に移行した個人等で、一般投資家は取引所で買付けができません(保有株式の売却は可能です)。数理技研の発行者情報の冒頭にも、TPMは特定投資家等を対象とした市場であり、上場会社は高い投資リスクを含んでいる場合がある、という注意事項が置かれています。

上場審査の中心になるのが担当J-Adviserです。TPMには数値の形式基準がない代わりに、担当J-Adviserが5つの上場適格性要件を調査・確認し、「上場適格性に係る宣誓書」を作成します。東証も意向表明の後に面談を行うため、「審査がない市場」ではありません。数理技研の発行者情報には、上場予定日(2026年8月24日)から12か月間の運転資本は「自己資本により十分に確保されております」という記載があります。

TOKYO PRO Marketの上場手続と上場適格性要件J-Adviser契約・調査意向表明申請の約30営業日前まで上場申請発行者情報等を公表上場承認原則申請から10営業日後上場日担当J-Adviser(J-QS)が上場適格性を調査・確認し「上場適格性に係る宣誓書」を作成東証も意向表明後に面談を行う(「審査がない市場」ではない)上場適格性要件(5項目)企業としての相応性事業の公正・忠実な遂行ガバナンス・内部管理体制適正な開示を行える体制反社会的勢力との関係なし等

図2 JPX「2025 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編」等をもとに一般的な流れを整理したもの。形式基準(数値基準)はなく、担当J-Adviserが上場適格性を調査・確認する

開示書類については、上場に際して特定投資家向け取得勧誘等を行う会社は「特定証券情報」を公表しますが、数理技研は勧誘を行わないため、特例110条3項により「発行者情報に相当する情報」を公表しています。上場後は、年次と中間の発行者情報を各期末後3か月以内に公表します。

上場時の開示書類はどう決まるか(数理技研のケース)上場に際して特定投資家向け取得勧誘等を行うか行う場合特定証券情報を提供・公表(金融商品取引法27条の31)数理技研:行わない特例110条3項により発行者情報に相当する情報を公表上場後はいずれも年次・中間の「発行者情報」を各期末後3か月以内に公表(一般市場の有価証券報告書・半期報告書とは別の書類)行う行わない

図3 金融商品取引法27条の31と、発行者情報表紙の「取引所金融商品市場等に関する事項」の記載をもとに作成

監査について、TPMの新規上場で求められる監査期間は「最近1年間」です。数理技研は第48期(2025年9月期)の財務諸表について監査法人アヴァンティアの監査を受け、第49期の中間財務諸表について期中レビューを受けています。主要な経営指標の注記では「第46期及び第47期の財務諸表については当該監査を受けておりません」と明記され、第46期は会社計算規則に基づく数値であることも記載されています。中間財務諸表に期中レビューの結論が付いている点は、TPMで中間財務諸表に「有用な情報を表示している旨の意見」や「無限定の結論」等が求められる建付けと対応しています。一般市場の新規上場では直前2期の監査が求められるため、監査法人と契約する時期の考え方が変わります(監査法人はいつまでに決めるか)。

一般市場(グロース・スタンダード)との比較

項目 TOKYO PRO Market 一般市場(グロース・スタンダード)
買付けができる投資家 特定投資家等(一般投資家は買付け不可、売却は可能) 一般投資家を含む
形式基準 なし(数値基準がない) 株主数・流通株式等の形式基準あり
上場適格性の調査 担当J-Adviserが調査・確認、東証が面談 東証の上場審査
申請から承認まで 原則として申請から10営業日後に承認 一般市場の審査日程による
新規上場時の監査期間 最近1年間 直前2期
開示書類 特定証券情報・発行者情報 有価証券届出書・有価証券報告書等
四半期開示 任意 四半期決算短信(取引所規則)
内部統制報告書 任意 提出が必要
会計基準 日本基準・米国基準・IFRS等 日本基準・米国基準・IFRS等
上場維持の前提 担当J-Adviserとの契約の維持 J-Adviser制度なし

表のTPM欄は、JPXのTPM概要ページと上場ガイドブック(TPM編)の記載に基づいています。一般市場の会社を前提にしたルール(実質審査基準など)を、そのままTPMの会社に当てはめて考えないよう注意が必要です(IPOの実質審査基準とは)。

事業内容と収益モデル:3つの分野と契約形態

数理技研は、業務システム、基盤システム、科学技術の3分野でソフトウェア開発を行うシステムインテグレーション事業を展開しています。主にコンペティションを通じて案件を受注し、要件定義から設計・開発、導入、運用・保守までを一貫して自社で対応する体制で、一部の案件ではビジネスパートナーと連携しています。開発工程ごとに契約を締結する「多段階契約」を採用していることも特徴として挙げられています。

分野ごとに契約形態が異なる点も記載されています。業務システム分野(流通系・金融系に強み)は主に請負契約で受託し、導入後は保守契約(準委任契約)で支援します。基盤システム分野(OSのカーネルや通信ネットワーク)は主に準委任契約、科学技術分野(最適化、金融工学、構造解析など)は主に請負契約です。事業等のリスクでは、請負契約はコスト管理次第で高い利益率を見込める一方でプロジェクト管理に左右され、準委任契約は安定した利益率が見込める、と整理しています。

3つの事業分野と主な契約形態数理技研システムインテグレーション事業業務システム分野流通・金融に強みCoreSaver活用980,960基盤システム分野OS(カーネル)・通信1983年UNIXソース契約211,885科学技術分野最適化・金融工学・構造解析2,000主に請負(保守は準委任)主に準委任主に請負要件定義から運用・保守まで一貫対応。主にコンペで受注し、工程ごとの多段階契約を採用

図4 発行者情報「事業の内容」より。売上高は第48期(千円)

業務システム分野の中核にあるのが、自社開発のオンメモリ型データベースエンジン「CoreSaver」です。データをメインメモリ上で保持し、バッチ処理によるサマリー化を行わずに生データを直接扱うことで、最新データの即時活用とシンプルなデータ構造を実現すると説明されています。流通小売向けの基幹システム(Retail MD)、CRM/BI、経営管理(BM)、アパレル向け(Retail AP)、仮想通貨取引管理(ARG)などのシリーズがあり、導入・運用時のライセンス収入で収益の安定化を図るとしています。

自社開発のオンメモリ型データベース「CoreSaver」従来の仕組み(会社の説明)バッチ処理でデータをサマリー化データの鮮度が低い・データ量が膨大機能改修コストが増大CoreSaver生データをメモリ上で保持し即時に演算サマリーデータを持たないデータ構造がシンプルシリーズ:Retail MD(流通小売の基幹)、CRM/BI、MDB、BM(経営管理)、ARG(仮想通貨取引)、Retail AP(アパレル)クラウド型・オンプレミス型の両方に対応。導入・運用時のライセンス収入で収益の安定化を図る課題として「既開発製品を標準パッケージ化」し安定したライセンスフィーの獲得を挙げる

図5 発行者情報「製・商品及びサービスの特徴」の説明をもとに作成

第48期の売上高1,194,845千円の内訳は、業務システム分野980,960千円(前期比95.0%)、基盤システム分野211,885千円(同99.7%)、科学技術分野2,000千円(同200.0%)です。業務システム分野は前期に新規の大型開発案件を納品・計上した反動で減収となりました。受注高は1,145,576千円、期末の受注残高は159,403千円で、第49期中間会計期間末の受注残高は387,340千円と記載されています。

事業分野別の売上高と受注業務システム1,032,814→980,960基盤システム212,521→211,885科学技術1,000→2,000淡色:第47期 濃色:第48期。合計 1,246,336→1,194,845(前期比95.9%)第48期 受注高1,145,576・受注残高159,403、第49期中間 受注残高387,340

図6 発行者情報「生産、受注及び販売の状況」より(千円)

沿革と上場までの道のり

沿革には、1979年10月に原子力研究所から「原子炉破断解析」「核融合プラズマシミュレーション」を受注したことに始まり、2003年11月のCoreSaverの提供開始、2009年の情報セキュリティ認証(ISO27001)取得、2013年の大手紳士服小売業への総合情報管理システムの納品などが並びます。グループ再編の経緯も特徴的で、2015年10月にアストロラボ株式会社との共同株式移転で株式会社アストロ数理ホールディングスを設立し、2018年に同社が数理ホールディングスに名称を変更、2019年2月に子会社の数理エンジニアリングサービスを売却したうえで、同年7月に親会社である数理ホールディングスを吸収合併しています。

上場準備との関係では、過去のグループ再編の経緯と、その結果として現在の株主構成や会計処理がどうなっているかを説明できるよう整理しておくことが重要です。

科学技術計算から始まった沿革1979年3月新宿区大久保で設立1983年12月AT&TとUNIXソース契約2003年11月CoreSaver提供開始2015年10月共同株式移転で持株会社設立2019年7月親会社(数理HD)を吸収合併1979年10月 原子力研究所から原子炉破断解析等を受注(科学技術分野)1986年1月 本田技研工業から新生産管理システムを受注(業務システム分野に進出)2018年6月 持株会社が数理ホールディングスに名称変更、2019年2月 子会社を売却2023年1月 大手紳士服小売業とCoreSaver等を活用した統合システムの開発を開始2026年8月24日 TOKYO PRO Marketに上場

図7 発行者情報「沿革」より主要な出来事を抜粋

業績はどう推移しているか

項目(千円) 第46期 2023年9月期 第47期 2024年9月期 第48期 2025年9月期 第49期中間 2026年3月
売上高 1,162,166 1,246,336 1,194,845 530,146
経常利益 339,942 249,436 140,854 22,664
当期(中間)純利益 193,212 249,882 131,380 14,409
純資産額 293,623 634,867 743,568 736,906
総資産額 729,829 868,942 952,252 910,855
自己資本比率(%) 40.15 72.99 78.03 80.85
営業活動によるキャッシュ・フロー ― 245,749 176,820 170,373
現金及び現金同等物の期末残高 ― 212,551 307,383 455,520
従業員数(人) 64 68 67 66

第48期は売上高1,194,845千円(前期比4.1%減)、営業利益140,374千円(同45.0%減)、経常利益140,854千円(同43.5%減)、当期純利益131,380千円(同47.4%減)の減収減益でした。発行者情報は、システム開発要員を補うための外注費の増加と、受注損失引当金の計上を減益の理由に挙げています。売上原価明細書では外注費が216,197千円から239,525千円に、受注損失引当金繰入額が1,403千円から42,512千円に増えています。販売費及び一般管理費では役員報酬が34,800千円から65,925千円に増加しました。

第49期中間会計期間は、売上高530,146千円、営業利益22,460千円、中間純利益14,409千円です。会社は、外注費の増加に加え、ガバナンス体制および経営管理体制の整備・強化を目的とした役員体制の拡充(役員報酬の増加)等の「先行投資」を実施したと説明しています。上場準備に伴う体制整備のコストが利益に表れている例として、上場準備会社にとっても参考になります(IPOにかかる費用はいくらか)。

売上高と経常利益の推移売上高0375,000750,0001,125,0001,500,000第46期第47期第48期経常利益0100,000200,000300,000400,000第46期第47期第48期売上高 1,162,166→1,246,336→1,194,845、経常利益 339,942→249,436→140,854第49期中間:売上高530,146、経常利益22,664、中間純利益14,409

図8 発行者情報「主要な経営指標等の推移」より(単位:千円)。第46期・第47期は監査を受けていない。第49期中間は期中レビュー済

第48期 売上高から当期純利益まで売上高1,194,845売上原価-806,050売上総利益388,795販管費-248,421営業利益140,374営業外・特別+1,969税引前142,343法人税等-10,962純利益131,380法人税等は10,962(税効果会計適用後の負担率7.7%)

図9 発行者情報 損益計算書より(単位:千円)。営業外・特別損益は純額

第48期の減益要因(会社の説明と注記の金額)営業利益255,103 → 140,374(45.0%減)外注費の増加216,197 → 239,525(開発要員の補充)受注損失引当金繰入額1,403 → 42,512(売上原価に計上)役員報酬(販管費)34,800 → 65,925売上高も1,246,336→1,194,845(前期に大型案件を納品・計上した影響)第49期中間はガバナンス・経営管理体制の強化を目的とした役員体制の拡充等を「先行投資」と説明

図10 発行者情報「業績等の概要」「売上原価明細書」「販売費及び一般管理費」の注記より(千円)

財政状態では、第48期末の総資産952,252千円に対し純資産743,568千円、自己資本比率78.03%です。長期借入金は繰上返済により第48期中に完済しており、取引銀行1行と極度額100,000千円の当座貸越契約(未実行)を結んでいます。事業等のリスクでは「銀行借入に頼らない経営を目指す」方針が示されています。

顧客と株主の重なり:大株主グループとの取引

数理技研の発行者情報で目を引くのが、主要顧客と株主の重なりです。販売実績では、第48期に青山商事株式会社への売上高が396,509千円(総販売実績の33.1%)、第49期中間会計期間には200,832千円(同37.9%)と開示されています。第47期は株式会社PUREWORKSへの売上高が429,944千円(35.3%)でした。

事業等のリスクの「大株主との取引について」では、株式会社アニヴェルセルHOLDINGS(株式会社AOKI及び株式会社快活フロンティアの親会社である株式会社AOKIホールディングスのその他の関係会社)が当社株式の17.87%を、青山商事株式会社が9.59%を所有していること(いずれも発行済株式総数2,293,880株に対する割合)、そして第48期に株式会社AOKI、株式会社AOKIホールディングス、株式会社快活フロンティアとの取引が計169,150千円(売上高の14.2%)、青山商事との取引が売上高の33.1%を占めることが記載されています。取引条件は取締役会等で妥当性を慎重に確認しており、今後は他の取引の拡大により相対的に割合を縮小するよう努めるとしています。

顧客であり株主でもある相手との取引は、取引条件の妥当性と、特定の顧客に業績が左右されるリスクの両面から説明が求められます。同社は、売上高が最も多い取引先でも33.1%であり、第47期に売上計上があった顧客の90.0%が第48期にも継続していることを示し、エンドユーザーからの直接受託の割合を高める戦略にも触れています。関連当事者取引の考え方はIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)で解説しています(同社の関連当事者情報は前期・当期とも「該当事項はありません」です)。

主要顧客と大株主グループとの取引(第48期)数理技研青山商事㈱売上高 396,509(33.1%)期末売掛金 266,154株主(7.13%)㈱AOKI・㈱AOKIホールディングス・㈱快活フロンティア売上高 計169,150(14.2%)システム開発・保守㈱アニヴェルセルHOLDINGS株主(13.29%)AOKIホールディングスのその他の関係会社(会社の記載)取引条件は取締役会等で妥当性を確認今後は他の取引の拡大で割合の縮小に努める(会社の記載)株主の割合は潜在株式を含む3,083,880株に対するもの

図11 発行者情報「販売実績」「事業等のリスク(大株主との取引について)」より(千円)

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資本政策と株主構成:株主44名、潜在株式34.44%

発行者情報の公表日現在の発行済株式数は2,293,880株で、自己株式や種類株式はありません。2026年6月30日現在の株主数は44名(その他の法人3名、個人41名)です。第四部「株主の状況」では、代表取締役社長の小川浩二氏が1,069,030株(うち新株予約権による潜在株式450,000株、34.67%)を所有し、株式会社アニヴェルセルHOLDINGS(13.29%)、青山商事株式会社(7.13%)、数理技研従業員持株会(7.03%)が続きます(割合は潜在株式790,000株を含む3,083,880株に対するもの)。

株主(属性) 所有株式数(株) 割合(%)
小川浩二氏(代表取締役社長) 1,069,030(450,000) 34.67
株式会社アニヴェルセルHOLDINGS 410,000 13.29
青山商事株式会社 220,000 7.13
数理技研従業員持株会 216,720 7.03
元役員・元従業員(1名) 100,870 3.27
立川浩三氏(取締役) 100,080(80,000) 3.25
東條巖氏(創業者) 100,000 3.24
大塚利弘氏(取締役) 64,660(15,000) 2.10
元役員・元従業員(1名) 52,500(20,000) 1.70
その他35名 750,020(225,000) 24.32
計 3,083,880(790,000) 100.00

( )内は新株予約権による潜在株式数で内書きです。「その他35名」は第四部の表に個別に記載された個人3名(各50,000株)と「その他32名」を本記事で合算したものです。従業員持株会が7%を超える株式を保有している点も特徴で、持株会の運営は上場準備で整理しておきたい論点の一つです(従業員持株会はいつ作るか)。

株主の状況(発行者情報記載時点)代表取締役社長34.67%㈱アニヴェルセルHOLDINGS13.29%青山商事㈱7.13%従業員持株会7.03%取締役2名(社長を除く)5.35%その他の株主(38名)32.53%株主数は44名(その他の法人3、個人41)。潜在株式の割合は25.62%発行済株式2,293,880株に対する潜在株式790,000株の割合は34.44%(会社の記載)

図12 発行者情報 第四部「株主の状況」より。新株予約権による潜在株式790,000株を含む3,083,880株に対する割合。区分の集計は本記事による

5回のストック・オプションと上場前の株式移動

新株予約権(ストック・オプション)は2023年6月から2025年4月までに5回発行されており、公表日の前月末現在の潜在株式は計790,000株、発行済株式総数の34.44%に相当すると事業等のリスクに記載されています。行使価額は株式分割後で53円(第1回・第2回)、143円(第3回)、283円(第4回・第5回)です。第3回から第5回の発行価格は修正簿価純資産法により算定されたと記載され、ストック・オプションの公正な評価単価は、未公開企業であったため単位当たりの本源的価値(自社株式の価値は修正簿価純資産法で算定)により見積もっています。

行使の条件には違いがあります。第1回は、行使価額を下回る価格での株式発行や取引、第三者評価機関等による評価額が行使価額を下回った場合などに行使できなくなる、株価に連動した条件が付いています。第2回から第5回は「当社普通株式がいずれかの金融商品取引所に上場すること」が行使の条件です。割当てを受けた者は、特例115条・同施行規則107条に基づき、上場日以後6か月間(又は割当日から1年間)の継続所有等を担当J-Adviserに確約しています。

特別利害関係者等の株式移動は1件で、2024年6月24日に元取引先の会社から特別利害関係者等に1,000株(株式分割前)が1株1,500円で譲渡されています。移動価格は修正簿価純資産方式(時価純資産方式)により算出した価格を参考に当事者間で協議して決定したと注記されています。潜在株式の比率が高い会社では、行使された場合の希薄化と、価格算定の根拠を一貫して説明できるようにしておくことが大切です(税制適格ストックオプション)。

新株予約権(ストック・オプション)の発行状況回決議目的株式数行使価額行使期間の始期第1回2023年6月500,000株53円2023年6月27日第2回2023年6月40,000株53円2025年6月27日第3回2023年12月65,000株143円2025年12月22日第4回2024年12月135,000株283円2026年12月20日第5回2025年4月50,000株283円2027年4月26日第1回:株価条件型(行使価額を下回る発行・取引・評価等があれば行使不可)第2〜5回:いずれかの金融商品取引所への上場が行使の条件第3〜5回の発行価格は修正簿価純資産法により算定。潜在株式は計790,000株

図13 発行者情報「新株予約権等の状況」より。株式分割(1株→10株)反映後の数値(公表日の前月末現在)

回 決議 目的株式数(株) 行使価額(円) 行使期間
第1回 2023年6月26日 臨時株主総会 500,000 53 2023年6月27日〜2033年6月26日
第2回 2023年6月26日 臨時株主総会 40,000 53 2025年6月27日〜2033年6月26日
第3回 2023年12月21日 定時株主総会 65,000 143 2025年12月22日〜2033年12月21日
第4回 2024年12月19日 定時株主総会 135,000 283 2026年12月20日〜2034年12月19日
第5回 2025年4月25日 臨時株主総会 50,000 283 2027年4月26日〜2035年4月25日

上場前の減資

2025年12月4日の定時株主総会で、資本金90,808千円と資本準備金80,008千円を減少し、全額をその他資本剰余金に振り替えることが決議され、12月9日に効力が発生しました(会社法447条1項・448条1項、減資割合90.1%)。資本金は10,000千円となっています。目的は「現在の事業規模に応じた適切な税制の適用を通じて財務の健全性を維持し、今後の資本政策の柔軟性および機動性を確保すること」と記載されています。純資産の部の勘定科目間の振替であり、純資産の額や発行済株式総数は変わりません。

上場前の減資の仕組み(2025年12月9日効力発生)資本金100,808 → 10,000資本準備金80,008 → 0その他資本剰余金+170,817会社法447条1項・448条1項。純資産の額・発行済株式総数は変わらない(勘定科目間の振替)目的:事業規模に応じた適切な税制の適用を通じた財務の健全性維持と資本政策の柔軟性・機動性の確保△90,808△80,008

図14 発行者情報「重要な後発事象(資本金及び資本準備金の額の減少)」より(千円)

コーポレート・ガバナンス:社外取締役2名の監査役会設置会社

役員は男性7名・女性1名で、取締役5名(うち社外取締役2名)、監査役3名(常勤監査役1名、社外監査役2名)の監査役会設置会社です。取締役会は代表取締役社長が議長を務め毎月1回開催、監査役会は常勤監査役が議長を務め毎月1回開催しています。社外取締役は、経営コンサルティング会社やソフトウェア会社の経営を経験した大学教授と、弁護士です。社外監査役は、事業会社の役員経験者と公認会計士です。執行役員制度を採用し、取締役3名は執行役員を兼ねています。

同社は監査役会設置会社を選んだ理由として、取締役会が経営の基本方針や重要な業務執行を決定し、独立した立場の監査役会が取締役の職務執行を監査する体制が、経営の効率性と健全性の確保に有効だと説明しています。社外役員の独立性に関する基準は特段定めていませんが、社外取締役1名と社外監査役1名が当社株式を所有している以外に利害関係はないと記載されています。リスク管理とコンプライアンスは「その規模感から」区分せず、代表取締役社長を委員長とし社外取締役(弁護士)を含むリスク・コンプライアンス委員会が3か月に1回開催されます。内部統制システムに関する基本方針は2025年5月30日の取締役会で決議されています。

数理技研の機関設計株主総会取締役会(5名)うち社外取締役2名毎月1回+臨時監査役会(3名)常勤1名・社外2名毎月1回代表取締役社長(執行役員社長)会計監査人監査法人アヴァンティア内部監査担当者(1名)代表取締役社長直轄リスク・コンプライアンス委員会社長が委員長・3か月に1回社外取締役は経営コンサルタント出身の大学教授と弁護士。社外監査役は事業会社出身者と公認会計士選任・解任選任・解任監査選定・監督連携指示・報告

図15 発行者情報「コーポレート・ガバナンスの状況」の記載をもとに作成

2025年9月期の役員報酬は、取締役(社外取締役を除く)4名に53,500千円(固定報酬47,500千円、賞与6,000千円)、監査役(社外監査役を除く)1名に4,876千円、社外役員4名に7,550千円の計65,926千円です。報酬限度額は取締役年3億円以内、監査役年5千万円以内(2019年6月の臨時株主総会決議)で、各取締役の報酬額の決定は取締役会から代表取締役社長に委任されています。委任の理由は、当社全体の業績等を勘案しつつ各取締役の担当部門を評価するには代表取締役社長が適しているためと説明されています。定款では、責任限定契約(会社法427条1項)や役員等賠償責任保険契約(D&O保険)も記載されています。機関設計の考え方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?で整理しています。

内部監査と内部統制:内部監査担当者1名の運用

内部監査は、代表取締役社長直轄の内部監査担当者1名が担当しています(従業員の部門別内訳でも「内部監査担当」1名)。内部監査計画書に基づき全部門を原則年1回監査し、結果を代表取締役社長、全取締役、全監査役に報告するとともに、監査対象部門に指摘・フィードバックを行います。内部監査担当者と監査役会は適宜情報・意見交換を行い、三様監査の観点から監査法人を交えた定期的な情報・意見交換も実施しています。

従業員65名、管理部門(経営管理グループ)5名という規模では、内部監査を専任1名で担う形は珍しくありません。その場合でも、報告先を社長だけにせず全取締役・全監査役に広げる、監査役・監査法人と定期的に連携するといった工夫で、内部監査の独立性と実効性を補うことができます(内部監査の報告先は社長だけでよいのか)。事業等のリスクでも「小規模組織であること」が挙げられ、役員・従業員の流出が業務に支障をきたす可能性に触れています。

内部監査担当者1名と三様監査の連携代表取締役社長内部監査担当者(1名、社長直轄)全部門(原則年1回)結果を社長・全取締役・全監査役へ報告監査役会内部監査担当者監査法人三様監査の観点から監査法人を交えた定期的な情報・意見交換を実施(会社の記載)監査連携連携

図16 発行者情報「コーポレート・ガバナンスの状況」(内部監査・監査役会・会計監査)の記載をもとに作成

会計・開示の論点:進捗度に基づく収益認識と受注損失引当金

システム開発受託契約の収益は、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もれる案件は進捗度(原価比例法)に基づき一定の期間にわたり認識し、期間がごく短い契約は顧客の検収時点で認識しています。保守サービスは一定の期間にわたり収益を認識します。重要な会計上の見積りとして、一定の期間にわたり認識した収益(第48期13,406千円、契約資産13,406千円)と受注損失引当金(43,915千円)、繰延税金資産の回収可能性(76,913千円)が挙げられています。原価総額の見積りの主要な仮定は工数で、仕様変更や予期せぬ事象で見積りが変わると翌期の財務諸表に影響する可能性があると説明されています。

受注損失引当金は、受注案件で将来の損失が見込まれ、その金額を合理的に見積もれる場合に計上するもので、損失が見込まれる請負契約に係る仕掛品と受注損失引当金は相殺せずに両建てで表示しています。対処すべき課題で「開発プロジェクト管理の体制強化」が挙げられ、会議体による工数・品質・進捗の定期チェックに触れているのは、この会計処理と表裏の関係にあります(上場審査で問われる収益認識)。

会計監査人は監査法人アヴァンティアで、業務を執行した公認会計士は3名、補助者は公認会計士2名・その他6名、監査証明業務に基づく報酬は16,800千円(非監査業務なし)です。繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金147,106千円などに対し評価性引当額148,976千円を控除した76,913千円が計上されています。

収益認識と受注損失引当金の判断システム開発受託契約(主に請負)履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もれるかごく短期は検収時点原価比例法で一定の期間にわたり収益認識(第48期 13,406、契約資産13,406)将来の損失が見込まれ合理的に見積もれるか受注損失引当金43,915主要な仮定は原価総額(工数)。仕様変更等で見積りが変わると翌期の収益に影響(会社の記載)できる

図17 発行者情報 注記「重要な会計方針」「重要な会計上の見積り」より。金額は第48期末(千円)

事業等のリスクとJ-Adviser契約

事業等のリスクは24項目にわたり、代表取締役社長への依存、人材とビジネスパートナー(外注先)の確保、従業員の安全衛生、小規模組織、内部管理体制、特定の取引先への依存、大株主との取引、契約形態(請負・準委任)、追加コストや不採算プロジェクト、情報セキュリティ、新株予約権による希薄化などが挙げられています。社長が新規顧客開拓や営業戦略でも重要な役割を担っていることと、対処すべき課題の「トップ営業に偏っている現状からの脱却」は対応しています。

J-Adviser契約については、特例102条によりTPM上場企業は担当J-Adviserとの契約締結が義務であること、義務の不履行等の場合は相当の期間(特段の事情のない限り1か月)を定めた書面催告の後に解除されうること、書面による合意又は1か月以上前の書面通知でも解除できること、債務超過(上場後1年間において債務超過となった場合を除く等)や発行者情報等の提出遅延、虚偽記載など無催告で解除できる事由が記載されています。代わりの担当J-Adviserを確保できない場合はTPM上場廃止につながる可能性があり、公表日現在、解約につながる要因は発生していないとされています。

一般市場へのステップアップを考える会社への示唆

数理技研の発行者情報には、将来の一般市場への上場や市場変更に関する記載はありません。第2回から第5回のストック・オプションには「いずれかの金融商品取引所に上場すること」という行使条件がありますが、本記事ではこれをもとに同社の方針を推測することは控え、一般的な留意点を整理します。

TPMから一般市場への移行は「市場区分の変更」ではなく、TPMを申請により上場廃止し、一般市場に新規上場する手続として扱われます。実例として、AlbaLinkは2025年12月14日にTPMを上場廃止し、翌15日にグロース市場に新規上場しています。東証は2026年4月の資料で「26年秋めど」にTPM実績を勘案した一般市場上場審査の効率化と開示様式の共通化・簡素化を予定していると公表しています(本記事執筆時点で実施済みかどうかは確認できていません)。一般市場を視野に入れる会社は、直前2期の監査、株主数・流通株式の形式基準、内部統制報告書などへの対応を別途計画する必要があります(グロース市場事前チェックリスト)。

上場準備会社が数理技研の事例から学べること

1. 資金調達なしでもTPMに上場できる:特定投資家向け取得勧誘等を行わず、発行者情報で上場しています。

2. 年度監査に加えて中間の期中レビューも必要になる:申請時期によっては、直前期の監査に加えて中間財務諸表の期中レビューを受けることになります。

3. 顧客であり株主でもある相手との取引は条件の妥当性を確認する:取締役会等での確認と、依存度を下げる方針をセットで説明しています。

4. ストック・オプションは潜在株式の比率と算定根拠を管理する:5回の発行で潜在株式は34.44%。発行価格の算定方法と行使条件を一覧で説明できるようにしておきます。

5. 受託開発は見積りとプロジェクト管理が決算に直結する:受注損失引当金の計上が減益要因となり、課題としてプロジェクト管理の強化を掲げています。

6. 小規模な内部監査は報告先と連携で補う:内部監査担当者1名でも、全取締役・全監査役への報告と三様監査の連携で実効性を確保しています。

数理技研の事例から学べること資金調達なしでも上場発行者情報で上場年度監査+中間の期中レビュー顧客・株主の重なりと取引条件の確認SO5回・潜在株式34.44%の管理受注損失引当金とプロジェクト管理内部監査1名でも三様監査で補完

図18 本記事で取り上げた論点のまとめ

  • 上場目的(なぜTPMか、上場をどう活用するか)を社内で言語化している
  • 監査を受ける事業年度と、中間の期中レビューが必要になるかを申請時期から確認している
  • 主要顧客・株主との取引の条件と依存度を一覧化し、取締役会での確認記録を残している
  • ストック・オプションの各回の行使価額・算定方法・行使条件と潜在株式比率を整理している
  • 受注損失引当金や進捗度の見積りの根拠となるプロジェクト管理の記録を整備している
  • 内部監査の計画・報告先・三様監査の連携方法を規程と記録で説明できる

よくある質問

Q1. 数理技研の上場時の書類が「特定証券情報」ではなく「発行者情報」なのはなぜですか?

上場に際して特定投資家向け取得勧誘又は特定投資家向け売付け勧誘等を実施しないため、特例110条3項の規定により「発行者情報に相当する情報」を公表して上場したためです。

Q2. TPMの上場に必要な監査は何期分ですか?

新規上場時に求められる監査期間は最近1年間です。数理技研は第48期の財務諸表について監査法人アヴァンティアの監査を受け、第49期の中間財務諸表について期中レビューを受けています。第46期・第47期は監査を受けていないことを明記しています。

Q3. 上場前に減資をしても問題はありませんか?

数理技研は上場前の2025年12月に資本金と資本準備金をその他資本剰余金に振り替える減資を行い、目的と手続(債権者異議申述公告を含む日程)を発行者情報に記載しています。純資産の額は変わりませんが、目的と手続を説明できるようにしておくことが大切です。

最初の一歩は「監査対象期」と「株式・取引の棚卸し」から

TPMを検討する会社が最初に取り組みたいのは、上場目的を言語化したうえで、監査を受ける事業年度と担当J-Adviserの調査期間から上場時期を逆算し、あわせてストック・オプションや株主との取引など説明が必要な論点を棚卸しすることです。自社の現状を把握するには、まずショートレビューで課題を洗い出すのが近道です。

まとめ

数理技研は、2026年8月24日にTOKYO PRO Marketへ上場しました。特定投資家向け取得勧誘等を行わず、直前1期の監査と中間の期中レビューを受けた発行者情報で上場しており、申請受付(7月24日)から上場承認(8月7日)までは10営業日、担当J-Adviserは宝印刷株式会社です。

発行者情報からは、3つの事業分野と契約形態、顧客であり株主でもある企業グループとの取引、5回のストック・オプションと潜在株式34.44%、上場前の減資、受注損失引当金と進捗度に基づく収益認識、社外取締役2名を含む監査役会設置会社の体制と内部監査担当者1名の運用など、受託開発型の会社がTPMを使う際の論点を具体的に読み取ることができます。形式基準がないTPMだからこそ、「自社の体制を、どの水準で、どう説明できるか」を整えておくことが大切だといえます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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