合意された手続の報告書|記載事項・手続実施結果の書き方・利用の制限

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

合意された手続(AUP)の成果物は「合意された手続実施結果報告書」です。初めて受け取った方からは、「結局、問題がなかったのかどうかが書いていない」「定型文が長くて、どこを読めばよいかわからない」という声をよく聞きます。

結論からいえば、報告書の中心は「実施した手続」と「手続実施結果(例外事項を含む)」の対応表で、それ以外の記載は、この業務が保証業務ではないことや報告書の目的・利用の範囲を説明するためのものです。結果の評価は報告書を受け取った側が行うため、手続の範囲と例外事項を正確に読むことが大切です。本記事では、専門業務実務指針4400に沿って、記載事項、結果の書き方、日付、利用の制限を解説します。

報告書の全体像|何がどの順で書かれているか

実務指針4400は、合意された手続実施結果報告書に記載する事項を定めています。大きく分けると、表題・宛先・業務対象、報告書の目的と利用の制限、業務の性質と責任、職業倫理・独立性・品質管理、実施した手続と手続実施結果、署名・日付・所在地の6つのまとまりです。

合意された手続実施結果報告書の構成表題・宛先・業務対象報告書の目的と利用の制限業務の性質と責任(保証業務ではない旨など)職業倫理・独立性・品質管理実施した手続と手続実施結果(例外事項を含む)署名・報告書日付・所在地

図1 冒頭で目的と業務の性質を示し、中心部分に手続と手続実施結果を記載します。

記載事項(要旨) 内容 読むときのポイント
表題 合意された手続実施結果報告書であることを明示 監査報告書ではないことがわかる
宛先・業務対象 契約で定めた宛先、手続の対象となる情報 誰に向けた、何についての報告か
目的と利用の制限 報告書の目的、他の目的に適さない場合がある旨 提出先が利用者として想定されているか
業務の性質 保証業務ではなく、意見や保証の結論を表明しない旨 「問題なし」とは書かれない理由
手続の適切性 業務実施者は手続の適切性について表明しない旨 手続が目的に足りるかは依頼者側の判断
追加手続 追加の手続を行えば他の事項が報告された可能性がある旨 報告書が確かめた範囲には限界がある
倫理・独立性・品質管理 遵守した職業倫理、独立性に関する事項、品質管理 独立性の扱いが提出先の要求に合うか
手続と結果 実施した手続と、例外事項を含む手続実施結果 報告書の中心部分
署名・日付・所在地 業務実施者の署名、報告書日付、事務所の所在地 日付が提出期限に間に合うか

長く見える定型文の多くは、「この報告書は監査報告書ではない」「報告書の範囲を超えて読まないでほしい」というメッセージです。業務全体の考え方は合意された手続(AUP)とは?監査・レビューとの違いと使われる場面、指針の要点は合意された手続の実務指針(専門業務実務指針4400)の要点で解説しています。

手続実施結果の書き方|手続と結果を1対1で対応させる

報告書の中心は、実施した手続と手続実施結果です。実務指針4400は、手続実施結果を「事実に即した客観的に検証可能な結果」としており、手続ごとに、一致したのか、差異があったのか、何件・いくらだったのかを書きます。下の例は、ライセンス契約の売上報告書を確かめる場面を想定した架空の記載例です。

番号 手続(架空例) 手続実施結果(架空例)
1 2025年度売上報告書の売上高合計を、会社の総勘定元帳の売上高勘定の年間合計額と照合する。 一致した。
2 売上台帳から1件10万円以上の取引を対象に無作為に25件を抽出し、請求書の金額と照合する。1万円以上の差異を例外事項として報告する。 25件のうち1件で、請求書の金額が売上台帳の金額より32,000円少なかった。その他の24件は一致した。
3 売上報告書の売上高合計に契約書の料率5%を乗じて、ロイヤリティ額を再計算する。 再計算した金額は、売上報告書のロイヤリティ額と一致した。
手続と手続実施結果の対応手続1 売上報告書の合計を総勘定元帳の売上高と照合結果1 一致した手続2 25件を抽出し請求書と照合結果2 1件で差異(32,000円)手続3 ロイヤリティ額を料率5%で再計算結果3 一致した

図2 手続ごとに結果を対応させて書きます。結果は一致・不一致や件数・金額などの事実です(架空例)。

手続2のように、差異をどこから報告するかという閾値を手続の中で決めておくと、結果の記載がぶれません。実務指針4400も、例外事項を決めるための閾値を定めた場合には、それを手続の記述に含めるとしています。ロイヤリティの場面での手続例はロイヤリティ監査と合意された手続|ライセンス契約の売上報告を確かめるで詳しく紹介しています。

例外事項はどう書かれるか

例外事項とは、手続を実施した結果、合意した内容と一致しなかった事項などのことです。実務指針4400は、発見された例外事項の詳細を含めて手続実施結果を報告することを求めています。「一部に差異があった」のような書き方では利用者が評価できないため、件数、金額、内容を具体的に書きます。

例外事項の書き方書く要素不十分な書き方具体的な書き方件数一部に差異があった抽出25件のうち1件金額少額の差異があった請求書が売上台帳より32,000円少なかった内容確認できなかった対応する請求書が提示されなかった

図3 例外事項は、件数・金額・内容を具体的に書きます(数値は架空)。

閾値を決めている場合、閾値未満の差異は例外事項として報告されません。たとえば「1万円以上の差異を報告する」と合意していれば、8,000円の差異は報告書に載りません。提出先が少額の差異も知りたいのか、一定額以上で足りるのかによって、閾値の決め方が変わります。閾値は手続の範囲そのものなので、提出先の要求を確認してから決めましょう。

また、抽出による手続の場合、報告書に書かれる結果はあくまで抽出した取引についての事実です。抽出しなかった取引に同じ差異がないことまでを示すものではない点にも注意が必要です。

例外事項が報告されても、それだけで「不正がある」「報告書が不合格」という意味にはなりません。差異の原因が単純な入力ミスなのか、計上時期のずれなのかを確かめ、提出先にどう説明するかを決めるのは、報告書を受け取った側の役割です。

報告書で使われない言葉|「適正」「問題なし」と書かれない理由

実務指針4400は、手続や結果の記述に、誤解を招くおそれのある言葉を使わないよう求めています。たとえば「適正に表示」「保証」「意見」のように監査やレビューを連想させる言葉や、「分析する」「評価する」「重要な」のように範囲や意味がはっきりしない言葉です。

報告書で使わない言葉使わない言葉の例理由適正に表示、保証、意見監査・レビューと誤解される証明する、判断した結論を表明したように読める分析する、評価する、重要な作業の範囲や意味が人によって異なって解釈される

図4 保証や意見を連想させる言葉、範囲があいまいな言葉は使いません。

依頼者から「最後に『問題はなかった』と一文入れてほしい」と頼まれることがありますが、これは合意された手続の報告書では書けません。もし提出先が問題がないことの結論を求めているなら、合意された手続ではなく監査やレビューが必要かどうかを検討します。派遣の許可申請での監査証明との違いは監査証明と合意された手続の違い|派遣の許可申請も参考にしてください。

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報告書の日付と確認書

実務指針4400は、合意された手続を完了し、手続実施結果を決定した日より前の日付を報告書に付けてはならないとしています。提出期限が決まっている場合、「期限の日付で報告書を出してほしい」と思っても、手続が終わっていなければその日付は付けられません。

報告書の日付の考え方手続の完了手続実施結果の決定確認書の入手(通常同日)報告書の日付

図5 報告書には、手続を完了し手続実施結果を決定した日より前の日付を付けません。

提出期限が迫っている場合は、資料の準備を先に進めておく、手続の数を必要な範囲に絞る、といった工夫で手続の完了を早めることができます。ただし、日付を前倒しして記載することはできませんので、早めに日程を相談することが最も確実です。

また、業務実施者は依頼者などに書面による確認(確認書)を求めることがあり、その日付は通常、報告書の日付と同じ日にします。資料の提出が遅れると手続の完了も遅れ、報告書の日付も後ろにずれます。提出期限から逆算した日程の立て方は合意された手続の費用と期間|見積りが変わる要因と準備する資料で解説しています。

利用の制限|報告書を誰に渡してよいか

報告書には、報告書の目的と、他の目的には適さない場合がある旨が記載されます。依頼者以外に利用者がいて配布を制限する場合は、利用者を契約書に記載したうえで、報告書の利用を依頼者とその利用者に限定する旨を書くことが適切とされています。

報告書を利用できる人業務依頼者手続に合意した利用者実施結果報告書手続に合意していない第三者想定しない

図6 報告書は、手続に合意した利用者を想定して作られます。

手続に合意していない第三者が報告書を読むと、どこまで確かめたのかを知らないまま、報告書を「公認会計士のお墨付き」と受け取ってしまうおそれがあります。報告書を行政や取引先以外に見せる予定がある場合は、事前に公認会計士へ相談してください。

行政に提出する場面では、提出先がどのような報告書を受け付けるかがあらかじめ決まっていることがあります。派遣・職業紹介の許可申請で求められる書類の全体像は労働者派遣と有料職業紹介の許可|財産的基礎の要件と監査証明で確認できます。

手続を実施できなかったとき、変更したとき

資料が見つからない、相手先から回答が得られないなどの理由で、合意した手続を実施できないことがあります。このような場合は依頼者と協議し、手続を変更するなら契約条件の変更として合意します。実務指針4400は、当初合意した手続を実施できなかった事実や変更した事実が重要な場合には、その手続と理由を報告書に記載することがあるとしています。

合意した手続を実施できなかったとき合意した手続をすべて実施できた?手続ごとに結果を報告依頼者と協議し手続の変更を合意実施できなかった手続と理由を報告書に記載はいいいえ

図7 実施できなかった手続や変更した手続は、その事実と理由を報告書に記載することがあります。

よくある状況(架空) 報告書での扱いの例
抽出した請求書のうち1件が保存されていなかった 手続実施結果として「請求書が提示されなかった」と記載
取引先への確認状が期限までに返送されなかった 依頼者と協議し代替手続に変更、変更の事実と理由を記載することがある
対象期間の帳簿がまだ締まっていなかった 締めを待って手続を実施(報告書の日付は後ろにずれる)

報告書を受け取ったら|読み方と社内での使い方

報告書を受け取ったら、まず手続の範囲(対象、期間、抽出件数)を確かめ、次に手続実施結果と例外事項を読みます。そのうえで、例外事項の原因を社内で確認し、提出先への説明や帳簿の修正が必要かを決めます。

受け取った報告書の読み方手続の範囲(対象・期間・件数)を確かめる手続実施結果と例外事項を読む例外事項の意味を自社で評価する提出先への説明や修正を決める

図8 報告書は「どこまで確かめたか」を読み、例外事項を自社で評価します。

報告書は依頼者の協力があって初めてできあがります。手続の合意、資料の提供、質問への回答、確認書の提出という各段階で、依頼者側の担当者がスムーズに動けるよう準備しておきましょう。依頼の流れは合意された手続の依頼の流れ|手続の合意から報告書の受領まで、補助金の実績報告での使い方は補助金の実績報告と公認会計士の確認|合意された手続で経費を確かめるをご覧ください。

報告書ができるまでの依頼者の関わり手続を合意資料を提供質問に回答確認書を提出報告書を受領

図9 依頼者は手続の合意、資料提供、確認書の提出で報告書の作成に関わります。

  • 報告書の宛先と利用者に、提出先が含まれているかを確認した
  • 手続ごとに手続実施結果が対応しているかを確認した
  • 例外事項の件数・金額・内容を読み、原因を社内で確かめた
  • 報告書の日付が提出期限に間に合うかを確認した
  • 報告書の配布範囲を契約どおりに管理している
  • 実施できなかった手続や変更した手続の記載がないかを確認した

よくある質問

Q1. 報告書に「問題はなかった」と書いてもらえますか。

書けません。合意された手続は保証業務ではなく、意見や結論を表明しないためです。報告書には手続と手続実施結果が事実として書かれます。

Q2. 例外事項が出たら、報告書を出し直してもらえますか。

手続の結果は事実として報告されるため、例外事項を消すために報告書を書き換えることはできません。帳簿の誤りを修正した場合は、修正後の情報を対象に改めて手続を合意し、実施することになります。

Q3. 報告書の様式は決まっていますか。

実務指針4400に記載事項と文例が示されています。提出先が独自の様式を求める場合は、指針の記載事項を満たす形で調整できるかを契約前に確認します。

Q4. 英文の報告書も作れますか。

海外本社や海外のライセンサー向けに英文で作成することもあります。言語や様式は契約時に合意しておきます。グループ報告の場面は親会社・海外本社から求められる合意された手続で解説しています。

最初の一歩は、提出先が求める報告書の様式と宛先を確認することです

提出先の様式、宛先、提出期限、英文か和文かを確認し、メモにまとめてください。これらは契約書と報告書の記載事項に直結します。様式が提出先から指定されている場合は、その写しを添えてご相談いただくと、手続の設計と日程を具体的にご提案できます。

まとめ

合意された手続の報告書は、実施した手続と手続実施結果(例外事項を含む)を中心に、業務の性質、目的と利用の制限、独立性などを記載したものです。「問題なし」とは書かれず、結果の評価は利用者が行います。手続の範囲、例外事項、日付、配布範囲の4点を押さえて読めば、報告書を正しく使えます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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