フランチャイズ・代理店契約の売上報告の確認|合意された手続の手続例

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

フランチャイズ本部は加盟店から、代理店網を持つ会社は代理店から、売上や獲得件数の報告を受け、それをもとにロイヤルティや手数料を計算します。報告が正しくなければ、本部の収入も代理店への支払も狂います。店舗や代理店の数が増えるほど、本部の担当者だけで報告の正しさを確かめるのは難しくなります。

結論からいえば、売上報告の確認は、POSの日報・入金記録・会計帳簿との突き合わせを中心に、確認する店舗の選び方と異常の基準を客観的に決めて、合意された手続(AUP)で行うのが効果的です。結果は事実として報告されるため、加盟店や代理店との話し合いの材料としても使えます。

フランチャイズと代理店で何を報告し、何を確かめるか

フランチャイズでは、加盟店が売上を本部に報告し、本部がロイヤルティを計算して加盟店が支払います。代理店では、代理店が獲得した契約件数や売上を報告し、本部がそれに基づいて手数料を支払う形が典型です。どちらも、報告する側と計算する側が分かれているため、報告の正しさを確かめる仕組みが必要になります。

フランチャイズと代理店の報告・支払の流れフランチャイズ代理店加盟店が売上を本部に報告代理店が獲得件数・売上を報告本部がロイヤルティを計算本部が手数料を計算加盟店が本部に支払う本部が代理店に支払う

図1 フランチャイズでは加盟店が売上を報告してロイヤルティを支払い、代理店では本部が代理店の獲得実績に基づいて手数料を支払う形が典型です。

ライセンス契約のロイヤリティと同じく、契約に帳簿閲覧や報告の確認に関する条項を置き、第三者の確認を受けられるようにしておくのが基本です。ライセンス契約の場合の考え方はロイヤリティ監査と合意された手続|ライセンス契約の売上報告を確かめるで解説しています。

ロイヤルティの算定方式と確かめるポイント

フランチャイズのロイヤルティには、売上高に料率を掛ける売上歩合方式、売上総利益に料率を掛ける粗利分配方式、店舗数や期間に応じた定額方式などがあります。方式によって確かめるべき数字が変わります。

ロイヤルティの主な算定方式売上歩合方式粗利分配方式定額方式売上高×料率確かめる中心:売上の網羅性売上総利益×料率確かめる中心:売上原価の定義店舗数・月数×定額確かめる中心:店舗数と期間

図2 方式によって、確かめるべき数字が変わります。粗利分配方式では売上原価の定義(廃棄ロスの扱いなど)が論点になります。

公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」は、本部が加盟者を募集する際に開示が望ましい事項として、ロイヤルティの額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法を挙げています。また、コンビニエンスストアの多くが採用する方式として、実際に売れた商品の仕入原価だけを売上原価とし、廃棄ロス原価を売上原価に算入しない場合、算入する場合よりもロイヤルティの額が高くなることを指摘しています。粗利分配方式では、売上原価の定義をどう手続に落とし込むかが重要です。

また、中小小売商業振興法第11条は、加盟者に特定の商標などを使用させ、加盟に際し加盟金や保証金などを徴収する連鎖化事業を行う者に対し、契約締結前に、加盟金・保証金その他の金銭に関する事項などを記載した書面を交付し説明することを求めています。売上報告の確認でも、契約書と開示書面に書かれた算定方法が出発点になります。

方式 計算式 確かめる中心 差異が出やすい点
売上歩合方式 売上高×料率 売上の網羅性 現金売上・店外販売の報告漏れ
粗利分配方式 売上総利益×料率 売上原価の定義 廃棄・値引・棚卸差異の扱い
定額方式 店舗数・月数×定額 店舗数と期間 開店・閉店月の扱い

店舗の売上報告を確かめる手続の例

売上歩合方式で最も多い論点は、報告された売上が実際の売上をすべて含んでいるか(網羅性)です。加盟店の売上報告を、POSの日報やレジ締め記録、銀行や決済代行会社からの入金、会計帳簿の売上高と照合します。キャッシュレス決済の売上は入金記録で裏付けやすい一方、現金売上は入金されないまま抜けることがあるため、レジ締め記録と預入記録の照合が重要です。

店舗売上を4つの記録で突き合わせる売上報告(加盟店)POS日報・レジ締め記録銀行・決済代行の入金会計帳簿(売上高)日別・月別の合計が一致するか/入金されない売上(現金の抜き取りなど)がないか

図3 加盟店の売上報告を、POSの日報、銀行・決済代行の入金、会計帳簿と照合します。

手続の例 確かめる内容 使う資料
合計の照合 月次の売上報告とPOS日報の月合計が一致するか 売上報告書、POS日報
日別の照合 抽出した日のレジ締め記録と報告売上が一致するか レジ締め記録
入金の照合 キャッシュレス売上が決済代行の入金明細と一致するか 入金明細、通帳
現金の照合 現金売上と銀行への預入額が一致するか 預入記録、通帳
帳簿の照合 報告売上と加盟店の会計帳簿の売上高が一致するか 総勘定元帳
再計算 報告売上×料率でロイヤルティを再計算 契約書、請求書

差異の計算例(架空)

ある店舗の1か月の売上報告が3,000万円、POS日報の合計が3,150万円だったとします。差150万円に料率5%を掛けると、ロイヤルティの不足は月7.5万円、同じ状況が1年続けば90万円です。店舗数が多い本部では、小さな差でも合計すると大きな金額になります。

売上報告とPOS売上の差(架空例、単位:万円)報告売上3,000未報告分+150POS売上3,150

図4 ある店舗の1か月の架空例(差を見やすくするため縦軸は2,700万円から表示)。差150万円に料率5%を掛けると、ロイヤルティの不足は月7.5万円になります。

手続実施結果には、「抽出した店舗の第3月の売上報告額は、POS日報の合計より150万円少なかった」と事実だけを書きます。差の理由(たとえば店外販売を報告対象外と考えていたなど)は、本部が加盟店に確認し、契約に照らして判断します。報告書の書き方は合意された手続の報告書|記載事項・手続実施結果の書き方を参照してください。

差異が見つかったときに精算をどう進めるかも、あらかじめ契約で確認しておきます。次の表は、上の架空例の店舗について、差異の大きさと精算の考え方を整理したものです。

項目 金額(架空) 考え方
月の売上の差 150万円 POS日報3,150万円−報告3,000万円
月のロイヤルティ不足 7.5万円 150万円×料率5%
年間の影響 90万円 同じ差が12か月続いた場合
精算の対象期間 契約による 過去何か月分まで遡るかは契約の定め
利息・費用負担 契約による 差異が一定割合を超えた場合の費用負担など

同じ差が複数の店舗で見つかった場合、個々の加盟店の問題ではなく、本部のマニュアルや報告様式の分かりにくさが原因のこともあります。報告の対象となる売上(店外販売、ネット注文、ギフト券など)の範囲を明確にしておくことが、差異の再発を防ぐ近道です。

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多店舗の中から確認する店舗を選ぶ

数百店舗を毎年すべて確かめるのは現実的ではありません。売上上位の店舗、指標で抽出した店舗、無作為に選んだ店舗を組み合わせる方法があります。どの基準で何店舗を選ぶかも、手続として依頼者と合意します。

確認する店舗の選び方(架空例)全200店売上上位20店指標で抽出10店無作為に10店確認対象計40店

図5 金額基準・指標による抽出・無作為抽出を組み合わせる例。選定基準も手続として事前に合意します。

指標による抽出では、仕入高を報告売上高で割った原価率などを店舗ごとに比べ、あらかじめ決めた基準を超える店舗を選びます。合意された手続では、手続を客観的に記述する必要があるため、「異常な店舗」ではなく「原価率が38%を超える店舗」のように数値で定めます。基準を超えたからといって報告漏れがあるとは限らず、あくまで個別に確かめる対象を選ぶための基準です。

店舗別の原価率と基準(架空例、単位:%)011.823.735.547.3A店B店C店D店E店F店G店H店原価率抽出の基準

図6 仕入高÷報告売上高の原価率を店舗ごとに比べた架空例。基準(例:38%)を超える店舗は、売上の報告漏れがないかを個別に確かめる対象とします。

代理店の手数料を確かめる手続の例

代理店では、代理店が報告した獲得件数や売上に基づいて本部が手数料を支払います。ここで確かめるのは、報告された契約が実在し、手数料の対象となる条件(入金の完了、一定期間の継続など)を満たしているかです。解約や返金があった場合に手数料を戻す条項がある場合は、その戻しが反映されているかも確かめます。

代理店手数料を確かめる流れ獲得件数の報告顧客の契約書顧客からの入金記録手数料の再計算解約・返金の戻し

図7 代理店が報告した獲得件数を、顧客との契約、入金、解約・返金の記録まで確かめます。

手続の例 確かめる内容 使う資料
件数の照合 代理店の報告件数と本部の顧客管理システムの件数が一致するか 報告書、顧客リスト
契約の実在 抽出した顧客の契約書・申込書があるか 契約書、申込書
入金の確認 手数料の条件となる入金が完了しているか 入金記録
再計算 件数・売上×手数料率で手数料を再計算 代理店契約、支払明細
戻しの確認 解約・返金分の手数料が戻されているか 解約記録、精算書

加盟店・代理店の側から依頼する場合

売上報告の確認は、本部が依頼するとは限りません。粗利分配方式のように本部がロイヤルティを計算して精算書を出す仕組みでは、加盟店の側が、本部の計算が契約どおりかを確かめたい場合があります。代理店が、本部の手数料計算を確かめたい場合も同じです。

本部が依頼する場合と加盟店が依頼する場合本部が依頼加盟店・代理店が依頼加盟店の売上報告を確かめる本部の計算・精算書を確かめる契約の帳簿閲覧条項が根拠本部から受け取った資料が中心複数店舗から抽出して確認自店の記録と照合する

図8 加盟店側が、本部が計算したロイヤルティや精算書の正しさを確かめるために依頼する場合もあります。

この場合は、本部から受け取った精算書や明細を、自店のPOSや仕入記録と照合し、契約の算定方法に沿って再計算する手続が中心になります。誰が依頼者で、誰が報告書を利用するかによって、報告書の宛先や利用の制限が変わる点に注意してください。

確認を一度で終わらせず仕組みにする

合意された手続は年に一度など定期的に行うのが効果的ですが、日常の仕組みと組み合わせるとさらに効果が上がります。毎月の売上報告をPOSや入金のデータと自動で照合し、差がある店舗や指標が基準を超えた店舗を抽出して、年1回の手続の対象に加えます。結果は、契約の定義やマニュアルの見直しにつなげます。

売上報告の確認を仕組みにする月次の売上報告POS・入金との自動照合異常店舗の抽出年1回の合意された手続契約・ルールの見直し

図9 毎月の自動照合で異常を拾い、年1回の合意された手続で深く確かめ、結果を契約やルールの見直しにつなげます。

費用は、確認する店舗・代理店の数、対象期間、往査の有無によって変わります。当事務所では範囲・件数に応じて個別にお見積りし、着手前に書面で提示します(相談無料)。全国対応・オンライン完結で、期限が迫っている場合の短納期にも対応しています。見積りの考え方は合意された手続の費用と期間、依頼の流れは合意された手続の依頼の流れをご覧ください。売上の実在性の観点では循環取引の見つけ方、事業計画の前提となる売上の見方はIPO審査の「事業計画の合理性」も参考になります。

  • 契約書と開示書面のロイヤルティ・手数料の算定方法を一覧にした
  • 帳簿閲覧や報告の確認に関する条項があるか確認した
  • POS日報・入金・会計帳簿のどれと照合するかを決めた
  • 確認する店舗・代理店の選定基準を数値で決めた
  • 差異が見つかった場合の精算方法を契約で確認した
  • 月次の自動照合と年1回の手続の役割分担を決めた

よくある質問

Q1. 加盟店の売上報告を確かめるのに、加盟店の同意は必要ですか?

契約上の根拠が必要です。帳簿閲覧や報告の確認に関する条項があればそれに基づいて進めます。条項がない場合は、加盟店の協力を得て資料を受け取る形になります。

Q2. 全店舗を確認しなければ意味がありませんか?

いいえ。金額基準、指標による抽出、無作為抽出を組み合わせれば、限られた店舗数でも報告の傾向をつかめます。ただし確認しなかった店舗について結論を述べることはしません。

Q3. 原価率が基準を超えた店舗は報告漏れと判断してよいですか?

基準は確かめる店舗を選ぶためのものです。報告漏れかどうかは、POSや入金記録との照合など個別の手続の結果と、加盟店への確認で判断します。

Q4. 代理店の手数料が過大だった場合、報告書に返金を求める記載はできますか?

合意された手続の報告書は事実を報告するもので、返金の要否は書きません。返金の請求は、報告書の事実をもとに契約に従って本部が判断します。

最初の一歩は、契約書のロイヤルティ・手数料の算定方法と帳簿閲覧条項を抜き出すことです

算定方法の定義と確認の根拠がそろえば、照合する記録、店舗の選び方、必要な資料がすぐに決まります。

まとめ

フランチャイズや代理店の売上報告は、POS日報、入金記録、会計帳簿との突き合わせで確かめるのが基本です。多店舗では選定基準を数値で決め、粗利分配方式では売上原価の定義を、代理店では契約の実在と戻しの反映を確かめます。合意された手続で事実を報告し、月次の自動照合と組み合わせれば、報告の正しさを継続的に保てます。合意された手続の全体像は合意された手続(AUP)とは?でまとめています。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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