表示方法の変更の注記は、書くことが3つしかありません。組替えの内容、組替えを行った理由、そして前事業年度の主な項目の金額です。
会計方針の変更と違い、1株当たり情報への影響額も、期首の純資産に対する累積的影響額も出てきません。利益の額が変わらないからです。
ここを取り違えて、書かなくてよい影響額を並べている注記をときどき見かけます。財規8条の3の4を開いて、号を確かめてください。
- 財規8条の3の4が求める3つの号
- 表示方法の変更が起きる4つの型と、それぞれの記載例
- 上場会社の実際の開示事例と、その読み方
- 会計方針の変更との違い
- 組替えが実務上不可能なときの書き方
この記事の見出し
📌 結論 書くのは3つだけ
3つだけです。会計方針の変更と違い、1株当たり情報も累積的影響額も出てきません。
財務諸表等規則8条の3の4第1項は、表示方法の変更を行った場合に、財務諸表の組替えの内容、財務諸表の組替えを行った理由、財務諸表の主な項目に係る前事業年度における金額を注記しなければならないとしています。
第2項は、財務諸表の組替えが実務上不可能な場合には、その理由を注記しなければならないとしています。第3項は、重要性が乏しい場合には注記を省略できるとしています。
そして第4項により、連結財務諸表に同一の内容が記載される場合には、第1項第2号と第3号および第2項について、その旨を記載して省略することができます。
🧭 4つの型で書き分ける
多いのは上の2つです。財務諸表等規則が定める重要性の基準を超えたか、下回ったかが理由になります。
実務で多いのは、独立掲記していたものを金額的重要性が乏しくなったので「その他」に含める型と、逆に「その他」に含めていたものが重要性の基準を超えたので区分掲記する型です。
どちらも理由は同じ構造になります。財務諸表等規則が定める基準を超えたか、下回ったか。それだけです。
📄 型1 独立掲記から一括表示へ
(表示方法の変更)
(損益計算書関係)
前事業年度において、独立掲記しておりました営業外収益の「受取手数料」は、営業外収益の総額の100分の10以下となったため、当事業年度より営業外収益の「その他」に含めて表示しております。この表示方法の変更を反映させるため、前事業年度の財務諸表の組替えを行っております。
この結果、前事業年度の損益計算書において、営業外収益の「受取手数料」に表示していた8百万円は、営業外収益の「その他」として組み替えております。
会社名と数値は架空です。前期にどうだったか(1号)、なぜ変えたか(2号)、当期はどう表示するか(1号)、前期の金額(3号)が順に入っています。
書き出しは「前事業年度において」から始めるのが定型です。そのあとに、当事業年度からどうするかを続けます。
そして最後に、前事業年度の金額を必ず書いてください。ここが第3号です。書き忘れが最も多いところです。
📊 型2 一括表示から独立掲記へ
(表示方法の変更)
(貸借対照表関係)
前事業年度において、流動負債の「その他」に含めておりました「未払費用」は、負債及び純資産の合計額の100分の1を超えたため、当事業年度より区分掲記しております。この表示方法の変更を反映させるため、前事業年度の財務諸表の組替えを行っております。
この結果、前事業年度の貸借対照表において、流動負債の「その他」に表示していた142百万円は、「未払費用」96百万円、「その他」46百万円として組み替えております。
会社名と数値は架空です。組替えの結果として、前期の金額がどう分かれたのかまで書くと、読み手が前期比較を追えます。
ここで実際の開示を見てください。1つの注記のなかに、区分掲記への変更と、逆に「その他」への集約の両方が入っている例です。
(表示方法の変更)
(連結損益計算書関係)
前連結会計年度において、営業外費用「その他」に含めて表示しておりました「投資事業組合運用損」(前連結会計年度3百万円)は、営業外費用の総額の100分の10を超えたため、当連結会計年度より営業外費用「投資事業組合運用損」に区分掲記しております。
(連結キャッシュ・フロー計算書関係)
前連結会計年度において独立掲記していた「投資活動によるキャッシュ・フロー」の「固定資産の売却による収入」は、金額的重要性が乏しくなったため、当連結会計年度において「投資活動によるキャッシュ・フロー」の「その他」に含めて表示しております。なお、当連結会計年度の「固定資産の売却による収入」は6百万円であります。
出典:新日本空調株式会社「有価証券報告書」(2026年3月期、2026年6月18日提出)連結財務諸表 注記事項(連結)(表示方法の変更)
▶ 読み方 計算書ごとに見出しを立てているのが要点です。損益計算書のほうは、前期の金額を括弧書きで文中に入れています。キャッシュ・フロー計算書のほうは、なお書きで当期の金額を示しています。前期の組替額と当期の金額のどちらを書くかは、読み手が前期比較を追えるかどうかで決めてください。
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🏷 型3 科目名を変えた
(表示方法の変更)
(貸借対照表関係)
前事業年度において「電子記録債権」として表示しておりました科目は、取引実態をより明瞭に示すため、当事業年度より「売掛金及び電子記録債権」に含めて表示しております。この表示方法の変更を反映させるため、前事業年度の財務諸表の組替えを行っております。
この結果、前事業年度の貸借対照表において、「電子記録債権」に表示していた312百万円は、「売掛金及び電子記録債権」に組み替えております。
会社名と数値は架空です。科目名の変更でも組替えは必要です。理由には、なぜその名称のほうが実態に合うのかを書きます。
🔀 型4 区分を移した
(表示方法の変更)
(損益計算書関係)
前事業年度において、特別損失に表示しておりました「固定資産除却損」は、当社の事業内容に照らして経常的に発生するものと判断したため、当事業年度より営業外費用に表示しております。この表示方法の変更を反映させるため、前事業年度の財務諸表の組替えを行っております。
この結果、前事業年度の損益計算書において、特別損失に表示していた24百万円は、営業外費用の「固定資産除却損」として組み替えております。経常利益はそれぞれ24百万円減少しております。
会社名と数値は架空です。区分の移動は経常利益の額を動かすため、理由の説明を丁寧にしてください。金額の重要性の話ではなく、性質の判断だからです。
区分の移動は、単なる見た目の変更ではありません。営業外と特別の間で動かせば経常利益が変わり、流動と固定の間で動かせば流動比率が変わります。
ですから理由には、なぜその区分のほうが実態に合うのかを書く必要があります。重要性の基準を超えたという説明では足りません。
⚖️ 会計方針の変更との違い
利益の額は変わりません。変わるのは見せ方です。ここを取り違えると、書かなくてよい影響額を書くことになります。
会計方針の変更は認識や測定の方法が変わるので、利益の額が動きます。表示方法の変更は見せ方だけなので、利益の額は動きません。
この違いから、書く項目も変わります。表示方法の変更では1株当たり情報への影響額を書きませんし、累積的影響額という概念も出てきません。
詳しくは会計方針の変更の注記の記載例のほうで整理しています。
🗒️ 組替えができないとき
前期にどうだったか、なぜ、当期はどうする、いくら。この4点が入っていれば形になります。
財規8条の3の4第2項は、財務諸表の組替えが実務上不可能な場合には、その理由を注記しなければならないとしています。
組替えが不可能というのは、前事業年度の内訳データが残っていない場合などです。基幹システムを入れ替えて、旧システムから明細が取り出せないといった事情がこれに当たります。
ただし、単に手間がかかるという理由では通りません。会計方針の変更における実務上不可能と同じ考え方です。
❓ よくある質問
A. 組替えの内容、組替えを行った理由、前事業年度の主な項目の金額の3つです。財規8条の3の4第1項です。
A. 書きません。利益の額が変わらないためです。
A. 第3号として求められています。重要性が乏しい場合は省略できます。
A. 表示方法の変更にあたります。重要性が乏しければ省略できます。
A. 金額の重要性ではなく、なぜその区分のほうが実態に合うのかという性質の判断を書きます。
A. その理由を注記します。財規8条の3の4第2項です。
A. 第4項により、理由と金額について、その旨を記載して省略できます。
A. 利益の額が動くかどうかで見分けます。動けば会計方針の変更です。
📄 まとめ
表示方法の変更で書くのは、組替えの内容、理由、前事業年度の金額の3つです。
型は4つ。独立掲記から一括表示へ、一括表示から独立掲記へ、科目名の変更、区分の移動です。前の2つは重要性の基準が理由になります。
区分の移動だけは性質の判断なので、理由を丁寧に書いてください。経常利益の額が動くこともあります。
いま注記を書いているなら、まず前期の金額を書いたか確かめてください。ここが最も抜けます。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事に掲載した実際の開示事例は、各社が金融商品取引法にもとづき公衆縦覧に供している有価証券報告書からの引用です。設例として示した文例は、条文の記載事項を確認するために当事務所が作成したもので、会社名と数値は架空です。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の注記の作成にあたっては、監査法人にご確認ください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索) 8条の3の4
- 会社計算規則(e-Gov法令検索)
- EDINET(金融庁) 引用した有価証券報告書はここで閲覧できます
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