2027年3月期の決算で、会計方針の変更の注記に何を書くのか。この質問に答えるには、まず「2026年4月1日以後に開始する事業年度から原則適用になる基準はどれか」を確定させる必要があります。
ここでよく起きるのが、リース会計基準との取り違えです。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の原則適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からで、3月決算なら2028年3月期です。2027年3月期は早期適用ができる年度にすぎません。この記事では、適用時期を基準ごとに項番号まで確認したうえで、注記に何を書くかを整理します。
- 2027年3月期から原則適用になる基準等の一覧と適用時期の項番号
- 2027年3月期には適用開始しないもの(リース、法人税等、後発事象)
- 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の注記事項(第24号第10項の7項目)
- それ以外の正当な理由による変更の注記事項(同第11項)
- 未適用の会計基準等に関する注記(財規第8条の3の3)
- 連結で書けば個別で省略できる範囲
この記事の見出し
📌 結論 2027年3月期の主役は期中財務諸表に関する会計基準
先に結論を書きます。2026年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度から原則適用となる主なものは、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」を中心とする一群です。同基準の第34項が、2026年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間から適用すると定めています。
同時に、適用指針第34号、企業会計基準第38号、第39号、第40号も同じ適用時期です。これらには早期適用の定めが置かれていません。あわせて、実務対応報告第47号(非化石価値)と実務対応報告第48号(防衛特別法人税)も、2026年4月1日以後に開始する年度の期首から適用されます。
注意すべきは「最初の期中会計期間から」という文言です。3月決算であれば、2026年4月から6月の第1四半期から効きます。年度末になって初めて考える論点ではありません。
🗂️ 適用時期を一覧にする
期中財務諸表の一群は「最初の期中会計期間から」です。3月決算なら2026年4月から6月の第1四半期から効きます。年度末からではありません。
「2027年3月期からリース会計基準が強制適用」という説明を見かけますが誤りです。強制適用は2028年3月期です。
この論点の実務は、ほぼ一覧作りに尽きます。公表済みの会計基準等について、号数、正式名称、適用時期の項番号、原則適用の開始年度、早期適用の可否を並べた表を作れば、当期の会計方針の変更として書くものと、未適用の注記として書くものが機械的に決まります。
リース会計基準は2028年3月期から
いちばん取り違えられているのがここです。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の第58項は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するとしています。3月決算なら2028年3月期です。ただし2025年4月1日以後に開始する年度の期首から早期適用することができるとされています。
つまり2027年3月期は、リース会計基準の早期適用ができる2年目の年度です。早期適用しない会社にとっては、未適用の会計基準等に関する注記の対象になります。第59項により、企業会計基準第13号、適用指針第16号、実務対応報告第31号、移管指針第3号の適用が終了することも、注記の概要に書くべき内容です。
法人税等の一群は2029年3月期から
2026年7月7日に公表された改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」ほかの一群は、2028年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首からが原則です。公表日以後に開始する年度の期首からの早期適用が認められています。2027年3月期は、早期適用を選ぶかどうかを検討する年度であり、選ばなければ未適用の注記の対象になります。
すでに適用済みのもの
2025年3月11日の2024年年次改善プロジェクトによる改正(特別法人事業税)は、2025年4月1日以後最初に開始する年度の期首からで、3月決算なら2026年3月期です。実務対応報告第46号(グローバル・ミニマム課税)は、会計処理が2024年4月1日以後開始、期中の注記が2025年4月1日以後開始です。いずれも2027年3月期の会計方針の変更ではありません。
公表済みの会計基準等を号数と適用時期の項番号まで並べた一覧を作り、当期の会計方針の変更として書くもの、未適用の注記に書くもの、影響額の算定が必要なものに振り分けてお返しします。上場準備会社のⅠの部の注記の点検にも対応します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
📗 基準の名称は2020年に変わっている
会計方針の変更の注記を定めているのは企業会計基準第24号です。正式名称は「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」で、2009年12月4日に公表され、2020年3月31日に最終改正されました。
2020年の改正で「会計方針の開示、」が冠されています。旧称の「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」のまま書いている解説が多いのですが、現行の名称ではありません。注記の中で基準名を引く場面もあるので、ここは正確にしてください。
2つに分けて考える
第5項が、正当な理由による会計方針の変更を2つに分類しています。(1)会計基準等の改正に伴う会計方針の変更と、(2)それ以外の正当な理由による会計方針の変更です。注記事項も、前者が第10項、後者が第11項と分かれています。
第6項が原則的な取扱いです。(1)については、会計基準等に経過的な取扱いが定められていないときに過去の期間すべてに遡及適用し、経過的な取扱いが定められているときはそれに従います。(2)については、過去の期間すべてに遡及適用します。第9項が、原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱いです。
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📝 何を書くのか
(3)から(7)は、(5)のただし書に該当する場合を除き、連結財務諸表で同一の内容を記載しているときは個別ではその旨の記載で代えられます。
第10項の柱書は、当期または過去の期間に影響があるとき、または将来の期間に影響を及ぼす可能性があるときに、当期に注記するとしています。7つの号が並びます。
実務でいちばん手間がかかるのが(5)と(6)です。(5)は表示期間のうち過去の期間について、主な表示科目に対する影響額と1株当たり情報に対する影響額。(6)は表示されている最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する累積的影響額です。経過的な取扱いを適用した場合や第9項(1)(2)に該当して遡及適用していない場合は、実務上算定可能な影響額を書くことになります。
会計基準等の改正以外の場合
第11項は、(1)変更の内容、(2)変更を行った正当な理由、(3)過去の期間の主な表示科目への影響額および1株当たり情報への影響額、(4)累積的影響額、(5)実務上不可能な場合の理由・適用方法・適用開始時期を求めています。
(2)の「正当な理由」が実務の山場です。会社が自らの判断で会計方針を変えるには、変更後の方針のほうが企業の財政状態および経営成績をより適切に表示するという説明が要ります。監査法人と十分に議論し、取締役会や監査役会の議事録に検討の経緯を残しておいてください。
同一期間に複数の変更をした場合
企業会計基準適用指針第24号の第10項は、同一期間に複数の会計方針の変更を行った場合、実務上可能な範囲で変更の内容ごとに注記するとしています。基準の適用開始が重なる年度では、まとめて1文で済ませたくなりますが、内容ごとに分けるのが原則です。
📄 未適用の会計基準等に関する注記
財規8条の3の3第3項により、連結財務諸表を作成している場合は個別で未適用の注記を記載する必要がありません。
財務諸表等規則第8条の3の3が、未適用の会計基準等に関する注記を定めています。既に公表されている会計基準等のうち適用していないものがある場合に、次の3つを注記します。当該会計基準等の名称およびその概要、適用予定日(適用開始すべき日前に適用する場合はその適用予定日)、そして当該会計基準等が財務諸表に与える影響に関する事項です。重要性の乏しいものは省略できます。
第2項は、専ら表示方法および注記事項を定めた会計基準等の場合には、影響に関する事項の記載を要しないとしています。第3項は、連結財務諸表を作成している場合には個別で記載する必要がないとしています。連結財規第14条の4が、第1項および第2項を準用しています。
影響を評価中と書き続けない
影響に関する事項について「評価中である」と書くことは実務上よくあります。ただ、公表から適用開始まで数年ある基準について、2期も3期も評価中と書き続けるのは説明として弱くなります。とくにリース会計基準のように、影響額の把握に時間がかかるものほど、早く着手して定量的な情報を出せるようにしておくべきです。
2027年3月期の未適用注記の対象
2027年3月期に未適用の注記の対象になるのは、早期適用しない限り、リース会計基準の一群、2026年7月7日公表の法人税等の一群、企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」の一群です。それぞれ号数と正式名称、概要、適用予定日、影響を書くことになります。
🏢 上場準備会社が気をつけること
上場申請時に提出する財務諸表は、上場会社と同じ水準の注記が求められます。未適用の会計基準等に関する注記が漏れていないかは、監査法人が必ず見る箇所です。基準の数が多い時期なので、一覧を作らずに前期の注記を写していると、確実に漏れます。
もうひとつ重要なのが、申請直前期に会計方針を変えないことです。会計基準等の改正に伴う変更は避けられませんが、それ以外の正当な理由による変更を申請期や直前期に行うと、なぜこの時期なのかを審査で問われます。変えるべきものがあるなら、N-2期までに片づけておくのが実務です。
期中財務諸表に関する会計基準は、上場後の半期報告書や四半期決算短信に直結します。上場のタイミングによっては、上場初年度からこの基準に沿った期中の財務諸表を作ることになります。決算体制の設計に組み込んでおいてください。関連する論点はIPO準備 完全ガイドと過年度遡及会計基準で扱っています。
❓ よくある質問
A. 違います。企業会計基準第34号第58項は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するとしています。3月決算なら2028年3月期です。
A. 第34項により、2026年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間からです。3月決算なら2026年4月から6月の第1四半期からです。
A. 早期適用の定めは置かれていません。
A. 「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」です。2020年3月31日の改正で「会計方針の開示、」が冠されました。
A. 第10項の(3)から(7)は、(5)のただし書に該当する場合を除き、連結財務諸表で同一の内容を記載しているときは個別でその旨の記載に代えられます。未適用の注記も、財規第8条の3の3第3項により連結を作成していれば個別で不要です。
A. 第10項(4)は、将来への影響が不明または合理的な見積りが困難な場合にその旨を記載するとしています。未適用の注記も同様の書き方になりますが、評価中と書き続けることは避けてください。
A. サステナビリティ情報の開示であり、財務諸表等規則上の会計方針の変更や未適用の会計基準等の注記の枠組みとは別です。
A. 変更後の方針のほうが財政状態および経営成績をより適切に表示するという正当な理由が必要です。第11項(2)がその理由の注記を求めています。
A. 適用指針第24号第10項は、実務上可能な範囲で変更の内容ごとに注記するとしています。原則は分けて書きます。
📄 まとめ
2027年3月期に原則適用が始まるのは、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」を中心とする一群と、実務対応報告第47号、第48号です。期中財務諸表の一群は最初の期中会計期間から効き、早期適用の定めはありません。
リース会計基準は2028年3月期から、2026年7月7日公表の法人税等の一群は2029年3月期からが原則です。2027年3月期では、早期適用しない限り未適用の会計基準等に関する注記の対象になります。
注記の内容は、企業会計基準第24号の第10項(会計基準等の改正に伴う変更)と第11項(それ以外)、そして財務諸表等規則第8条の3、第8条の3の2、第8条の3の3が定めています。適用時期の項番号まで書いた一覧を先に作れば、あとは機械的に振り分けられます。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第5項・第6項・第9項・第10項・第11項
- 企業会計基準適用指針第24号 第10項
- 企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」第34項ほか(2025年10月16日公表)
- 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項・第59項
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第8条の3、第8条の3の2、第8条の3の3、第8条の3の4
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第14条の2、第14条の3、第14条の4
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