合意された手続の費用と期間|見積りが変わる要因と準備する資料

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

合意された手続(AUP)を依頼しようとすると、まず気になるのが「いくらかかるのか」「いつ報告書が出るのか」です。監査と比べると範囲を絞れる業務ですが、同じ「合意された手続」でも、手続の数や資料の整い方によって費用も期間も大きく変わります。

結論からいえば、合意された手続の費用と期間は「どの手続を、何件、どの範囲で実施するか」と「資料がどれだけ整っているか」で決まります。提出先の要求を確認して手続を必要な範囲に絞り、資料を先にそろえることが、費用と期間を抑える一番の近道です。本記事では、見積りが変わる要因、日程の考え方、準備する資料、当事務所の料金の目安を解説します。

費用は何で決まるのか|6つの要素

合意された手続の費用は、基本的に公認会計士の作業時間(工数)で決まります。工数を左右するのは、手続の数、証憑と照合する抽出件数、対象となる期間や拠点の範囲、資料の整い方、報告書の様式、そして納期です。

費用を決める6つの要素手続の数照合・再計算などの項目数抽出件数証憑と照合する取引の件数対象の範囲期間・事業所・拠点の数資料の整い方帳簿・証憑がそろっているか報告書の様式指定様式・英文の有無納期提出期限までの残り日数

図1 費用は主に、手続の量と、資料の整い方で決まります。

要因 費用が上がりやすい例 費用を抑える工夫
手続の数 提出先の要求以上に、念のための手続を追加する 要求事項を確認し、必要な手続に絞る
抽出件数 全件照合や、件数の多い抽出を求められる 提出先が求める件数や基準を確認する
対象の範囲 複数の事業所・拠点、複数年度を対象にする 対象期間・拠点を目的に合わせて限定する
資料の整い方 証憑が見つからない、帳簿に誤りが多い 着手前に資料を一覧にしてそろえる
報告書の様式 提出先の独自様式や英文での作成 様式の指定の有無を最初に伝える
納期 提出期限まで日数がなく、作業を集中させる必要がある 提出期限から逆算して早めに相談する

合意された手続は、監査と違って手続の範囲を事前に決めるため、範囲が決まれば工数を見積もりやすいという特徴があります。逆に言えば、手続が決まらない段階では正確な見積りが出せません。業務の全体像は合意された手続(AUP)とは?監査・レビューとの違いと使われる場面で解説しています。

工数の中身|手続の実施以外にも時間がかかる

工数の中心は手続の実施ですが、それだけではありません。提出先の要求を確かめて手続を設計する時間、資料を確認する時間、作業の記録(調書)の作成と内部の審査、報告書の作成にも時間がかかります。下の図は、比較的小規模な業務を想定した架空の内訳です。

工数の内訳の例(架空)03.97.711.615.4手続の設計資料の確認手続の実施調書・審査報告書(時間)

図2 手続の実施が工数の中心ですが、手続の設計や報告書の作成にも時間がかかります(時間数は架空)。

抽出件数の影響も大きく、証憑と照合する件数が増えるほど、手続の実施時間は増えます。件数を決めるときは、提出先が具体的な件数や基準を示しているかを確認し、示していない場合は、目的に照らして依頼者側で判断します(手続が目的に適切かどうかの判断は依頼者側にあります)。

抽出件数と工数の関係(架空)06.613.219.826.410件25件60件(手続の実施時間)

図3 証憑と照合する件数が増えるほど、手続の実施にかかる時間は増えます(時間数は架空)。

監査と比べて費用はどう違うのか

監査では、財務諸表全体について意見を表明するために、監査人がリスクを評価し、必要と判断した手続を幅広く実施します。そのため、対象となる会社の規模や複雑さに応じて工数が大きくなりがちです。

一方、合意された手続は、事前に合意した手続だけを実施します。たとえば「預金残高を残高証明書と照合する」「売上報告書の合計を元帳と照合する」といった限られた手続であれば、監査に比べて工数を抑えやすくなります。ただし、提出先が監査証明を求めている場合は、合意された手続で代えることはできません。費用だけで業務を選ばず、まず提出先が何を求めているかを確認してください。

また、同じ合意された手続でも、手続の数が増え、抽出件数が多くなれば、工数は監査に近づくこともあります。「合意された手続なら必ず安い」とは限らない点にも注意が必要です。どの業務を選ぶべきかの比較は監査・レビュー・合意された手続・財務DDの違い|目的別にどれを選ぶかで詳しく解説しています。

当事務所の料金の目安

当事務所では、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可の更新(事後申立て)や事業所新設の届出に関する合意された手続について、9.8万円〜(税別、事業所1か所)を目安としています(新規許可で必要な監査証明は別途お見積り)。帳簿の誤りが多く、月次決算の記帳を巻き直したうえで手続を行う必要がある場合は、25万円〜(税別)となります。

それ以外の合意された手続(補助金の実績報告、ロイヤリティ報告、親会社向けの報告パッケージ、M&Aや融資の前の確認など)は、手続の範囲・件数に応じて個別にお見積りします。お見積りは着手前に書面で提示し、ご相談は無料です。

料金の目安派遣・職業紹介の許可申請それ以外の合意された手続9.8万円〜(税別)事業所1か所25万円〜(税別)記帳の巻き直しを含む場合範囲・件数に応じて個別にお見積り着手前に書面で提示相談無料

図4 派遣・職業紹介の許可申請向けは定額の目安があり、それ以外は範囲に応じて個別にお見積りします(いずれも税別)。

「記帳の巻き直し」とは、中間決算や月次決算の帳簿に誤りや未計上が多く、そのままでは手続の対象にできない場合に、記帳を見直して決算を組み直す作業のことです。たとえば、売上や仕入の計上月がずれている、未払金や預り金が計上されていない、減価償却費が月次で計上されていない、といった状態では、決算書の数字そのものを整える必要があります。

派遣・職業紹介の許可申請では、中間・月次決算書の基準資産額や現金預金額が要件を満たすかが問われるため、負債の計上漏れがあると要件の判定にも影響します。日ごろから月次で締める体制があれば、巻き直しが不要になり、費用も期間も抑えられます。

業務 料金の目安 備考
派遣・職業紹介の許可申請(AUP) 9.8万円〜(税別) 事業所1か所の場合
同上(記帳の巻き直しを含む場合) 25万円〜(税別) 帳簿の修正が必要な場合
その他の合意された手続 範囲・件数に応じて個別にお見積り 着手前に書面で提示、相談無料

派遣の許可申請で監査証明が必要になる場合の費用の考え方は派遣の監査証明の費用|金額の決まり方と依頼の流れで解説しています。全国対応・オンライン完結で進められるため、遠方の会社でも移動の費用はかかりません。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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期間はどれくらいかかるか|日程の考え方

期間も、手続の量と資料の整い方で決まります。資料がそろっていて手続の数が少なければ、手続の合意から報告書の発行までを短期間で進められることもあります。下の図は、資料の提出から報告書の発行までを約4週間で進める場合の架空の日程です。

依頼から報告書までの日程の例(架空)作業1週目2週目3週目4週目手続の合意・契約●---資料の提出●●--手続の実施・質問-●●-報告書の確認・発行--●●

図5 資料がそろっていれば、手続の実施から報告書までは短期間で進みます(日程は架空)。

注意したいのは、報告書の日付です。専門業務実務指針4400では、合意された手続を完了し手続実施結果を決定した日より前の日付を報告書に付けることはできません。提出期限の日付で報告書を出すには、それまでに手続を終えている必要があります。報告書の日付の考え方は合意された手続の報告書|記載事項・手続実施結果の書き方・利用の制限で解説しています。

期間が延びる原因と短納期での対応

期間が延びる原因の多くは、手続がなかなか決まらないこと、資料の準備に時間がかかること、質問への回答が遅れることです。特に、証憑の保存場所が部署ごとにばらばらな場合や、担当者が他の業務と兼務している場合は、想定以上に時間がかかります。

期間を左右する要因要因期間が延びる例手続の合意提出先の要求がわからず手続が決まらない資料の準備証憑の保存場所がばらばらで集めるのに時間がかかる質問への回答担当者が不在で回答が遅れる

図6 期間を延ばす原因の多くは、資料の準備と質問への回答の遅れです。

当事務所では、申請期限が迫っている場合の短納期での対応も行っています。ただし、短納期で進められるかどうかは、資料がすぐに出せるか、質問にすぐ回答できるかに大きく左右されます。派遣・職業紹介の許可申請で期限から日程を逆算する方法は派遣・職業紹介の許可申請の日程|決算日と申請期限から逆算する、許可更新の費用と日程は派遣許可の更新|費用と日程を逆算するもご覧ください。

見積りまでの流れ|書面で範囲と費用を確定させる

見積りは、無料相談で提出先と目的を伺い、提出先の要求事項を確認したうえで手続案を作り、その範囲に基づいて書面で提示します。手続の範囲が決まっていない段階の概算は、あくまで目安です。

見積りまでの流れ無料相談要求事項の確認手続案の作成書面で見積り契約・着手

図7 着手前に、手続の範囲と費用を書面で提示します。相談は無料です。

見積書には、実施する手続の範囲、対象期間、抽出件数の前提、報告書の様式、日程を記載します。前提が変わった場合(手続の追加、資料の不足による代替手続など)は、着手前または変更の時点で改めてご相談します。依頼から報告書の受領までの詳しい流れは合意された手続の依頼の流れ|手続の合意から報告書の受領までで解説しています。

準備しておく資料

どの場面でも共通して必要になるのは、提出先の様式や指示書、決算書・試算表・総勘定元帳、対象となる報告書や明細、請求書や契約書などの証憑、預金通帳や残高証明書です。資料を一覧にして着手前にまとめて提出できると、期間を大きく短縮できます。

準備しておく資料提出先の様式・指示書(求められている内容)決算書・試算表総勘定元帳対象となる報告書や明細(売上報告書など)請求書・契約書・領収書などの証憑預金通帳・残高証明書担当者の連絡先と回答の体制

図8 場面によって必要な資料は異なりますが、共通して求められるものがあります。

場面 主な追加資料
派遣・職業紹介の許可申請 中間決算書・月次決算書、年度決算書、預金残高証明書
補助金・委託事業の実績報告 交付決定通知書、経費の支出明細、請求書・振込記録
ロイヤリティ・フランチャイズ ライセンス契約書、売上報告書、売上台帳・POSデータ
親会社・海外本社への報告 報告パッケージ、親会社からの指示書、科目明細
M&A・融資 対象項目の明細、借入契約書(財務制限条項)、計算資料

場面ごとの手続例は、派遣許可の更新で合意された手続を使える条件、補助金の実績報告と公認会計士の確認などの各記事で紹介しています。

費用と期間を抑える4つの工夫

最後に、費用と期間を抑えるための工夫をまとめます。いちばん効果が大きいのは、提出先の要求を正確に確認し、手続を必要な範囲に絞ることです。次に、資料を一覧にして先にそろえること、質問への回答担当者を決めておくこと、そして提出期限から逆算して早めに相談することです。

費用と期間を抑える4つの工夫提出先の要求を確認し、手続を必要な範囲に絞る資料を一覧にして、着手前にまとめて提出する質問への回答担当者を決めておく提出期限から逆算して早めに相談する

図9 手続を必要な範囲に絞り、資料を先にそろえることが最も効果的です。

  • 提出先の様式・指示書を手元にそろえた
  • 提出先が求める手続の範囲と件数を確認した
  • 対象期間・事業所・拠点の範囲を決めた
  • 必要な資料を一覧にし、保存場所を確認した
  • 質問への回答担当者と連絡方法を決めた
  • 提出期限から逆算して、相談・契約の時期を決めた

よくある質問

Q1. 見積りだけでも依頼できますか。

はい。ご相談は無料で、手続の範囲を確認したうえで、着手前に書面でお見積りを提示します。お見積りの段階で費用が発生することはありません。

Q2. 途中で費用が増えることはありますか。

手続の追加や、資料の不足による代替手続などで範囲が変わる場合は、変更の時点でご相談し、合意してから進めます。合意なく費用が増えることはありません。

Q3. 遠方でも依頼できますか。

全国対応で、資料の受け渡しや打合せはオンラインで完結できます。

Q4. 申請期限まで時間がありません。

申請期限が迫っている場合も短納期での対応をご相談いただけます。資料をすぐに提出できるかどうかで対応できる日程が変わるため、まずは期限と手元の資料の状況をお知らせください。

最初の一歩は、提出期限と手元の資料を一覧にすることです

提出先、提出期限、手元にある資料(決算書、試算表、証憑、様式)を一覧にしてください。それだけで、どの手続が必要か、どれくらいの期間がかかりそうかの見通しが立てられます。一覧をお送りいただければ、無料で範囲と費用の目安をお伝えします。

まとめ

合意された手続の費用と期間は、手続の数・抽出件数・対象範囲と、資料の整い方で決まります。派遣・職業紹介の許可申請向けは9.8万円〜(税別、事業所1か所)、それ以外は範囲に応じて個別にお見積りします。提出先の要求を確認して手続を絞り、資料を先にそろえ、早めに相談することで、費用も期間も抑えられます。

合意された手続(AUP)のご依頼を検討している方へ

許可申請・補助金の実績報告・ロイヤリティの確認・M&Aや融資の前の財務の確認まで、手続の設計から報告書の作成まで公認会計士が対応します。全国対応・オンライン完結、申請期限が迫っている場合もご相談ください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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