継続企業の前提に関する注記は、会社が事業を続けられるかどうかに重要な不確実性があるときに書くものです。ゴーイングコンサーン注記、GC注記とも呼ばれます。
書くことは財規8条の27に4つの号として並んでいます。何が起きているか、どう対応するか、それでも不確実性が残る理由、そして財務諸表に反映しているかどうかです。
この記事では、注記が必要になる条件を整理したうえで、記載例と、上場会社の実際の開示事例を示します。
- 財規8条の27が求める4つの号
- 疑義があっても注記しない場合があること
- 重要な疑義を生じさせる事象または状況の例
- 記載例と、上場会社の実際の開示事例
- 事業等のリスクとの書き分け
図 継続企業の前提に関する注記の記載事項
この記事の見出し
📌 結論 4つの号をこの順に書く
4つとも書きます。とくに第4号を落とす例が多いので、最後の一文を必ず入れてください。
財務諸表等規則8条の27第1項は、貸借対照表日において、企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、次に掲げる事項を注記しなければならない、としています。
第1号が当該事象又は状況が存在する旨及びその内容、第2号が当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策です。
第3号が当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由、第4号が当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別です。
そして但し書きにより、貸借対照表日後において、当該重要な不確実性が認められなくなった場合は、注記することを要しません。
🧭 疑義があっても注記しないことがある
疑義があるだけでは注記しません。対応策を講じてもなお不確実性が残るかどうかが分かれ目です。
条文の構造をよく読んでください。注記が必要になるのは、疑義が存在し、対応をしてもなお重要な不確実性が認められるときです。
つまり、疑義があるだけでは注記しません。会社が資金調達や経費削減などの対応策を講じ、その結果として不確実性が解消されるなら、注記は不要です。
実際、有価証券報告書の事業等のリスクには継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると書きながら、重要な不確実性は認められないと判断し、注記を出していない会社があります。この判断は監査法人と詰めることになります。
逆に言えば、注記が出ている会社は、対応策を講じてもなお不確実性が残ると経営者自身が認めた会社です。読み手はそこを見ています。
📄 何が疑義にあたるか
1つあれば直ちに注記というものではありません。全体として資金繰りに懸念が生じているかで判断します。
財務指標だけで機械的に決まるものではありません。営業損失が続いていても、手元資金が潤沢で借入枠に余裕があるなら、資金繰りに懸念は生じません。
逆に、単年度の損失でも、借入金の返済期限が迫っていて借換えの目処が立たないなら、疑義が生じます。
見るのは資金繰りです。翌期の資金繰り表を作り、いつ資金が尽きるかを確かめてください。
📊 記載例
(継続企業の前提に関する事項)
当社は、前事業年度まで3期連続して営業損失を計上し、当事業年度においても営業損失◯◯百万円を計上いたしました。また、営業活動によるキャッシュ・フローも◯◯百万円のマイナスとなり、現金及び預金の当事業年度末残高は◯◯百万円となりました。これにより、当社の資金繰りに重要な懸念が生じていることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
当社は、当該状況を解消するため、以下の施策に取り組んでおります。
1 財務基盤の安定 取引金融機関に対して継続的な支援を要請するとともに、資本性資金の調達を検討しております。
2 収益力の向上 不採算事業からの撤退と主力製品への集中により、売上総利益率の改善を図ります。
3 経費の削減 役員報酬の減額、拠点の統廃合、外注費の見直しにより固定費を削減いたします。
以上の施策を実施することにより、継続企業の前提に関する重要な疑義を解消すべく取り組んでおりますが、これらの対応策は実施途上にあり、資金調達の状況や収益の改善の進捗によっては当社の資金繰りに重要な懸念が生じることから、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。
なお、財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しておりません。
会社名と数値は架空です。第1号(事象)、第2号(対応策)、第3号(不確実性が残る理由)、第4号(反映の別)の順に並んでいます。
最後の一文が第4号です。財務諸表は継続企業を前提として作成しており、重要な不確実性の影響を反映していない。この定型文を落とさないでください。
第3号の書き方にはコツがあります。対応策は実施途上にある、という一文を挟むと、なぜ不確実性が残るのかが自然につながります。
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📁 実際の開示事例
4つの号がそろっている例です。対応策を4つに分けて書いています。
【注記事項】
(継続企業の前提に関する事項)
当社グループは前連結会計年度まで5期連続して営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、当連結会計年度においても営業損失1,629百万円、経常損失1,548百万円、親会社株主に帰属する当期純損失2,179百万円を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローは3,127百万円のマイナスとなったことで現金及び現金同等物の当期末残高は3,634百万円となりました。これにより、当社グループの資金繰りに重要な懸念が生じていることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
このような状況の解消を図るべく、当社グループでは以下の施策により、財務基盤の安定及び収益性の改善に努めてまいります。
① 財務基盤の安定 (第三者割当による新株予約権の行使及び新株式の発行による資金調達を実施。さらなる資金調達を最適な手法により進めるとともに、収益力の向上及び継続的なコスト削減に取り組む旨)
② 収益力の向上 (既存タイトルの収益性の改善、他社との差別化、グローバルなサービス展開の推進)
③ 経費削減 (外注費用の削減、営業所の縮小と転貸、人員配置の見直し、役員報酬の削減)
④ 経営資源の選択と集中 (将来の収益性が期待できる事業及び子会社の検討・選択、事業売却及び子会社の再編)
以上の施策を実施することにより、継続企業の前提に関する重要な疑義を解消すべく取り組んでおりますが、その対応策は実施途上にあり、今後の追加的な資金調達の状況や収益性の改善等によっては、当社の資金繰りに重要な懸念が生じることから、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。
なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表に反映しておりません。
出典:サイバーステップホールディングス株式会社「有価証券報告書」(2026年5月期、2026年8月28日提出)連結財務諸表 注記事項(連結)(継続企業の前提に関する事項) ※対応策の各項目は要約しています
▶ 読み方 第1号にあたる冒頭で、何期続いているか、当期はいくらか、営業キャッシュ・フローはいくらか、手元資金はいくら残っているかを順に示しています。この4つを並べると、読み手が資金繰りの厳しさを自分で判断できます。対応策は番号を振って4つに分けています。そして最後の2段落が第3号と第4号です。対応策は実施途上にあるという一文で、不確実性が残る理由につないでいるところが定型です。
⚖️ 3つの規則の対応関係
連結は準用です。条文の中身は同じで、言葉だけ読み替えます。
連結財務諸表規則15条の22は、財務諸表等規則8条の27の規定は、連結財務諸表提出会社について準用する、としています。読替えは、貸借対照表日を連結決算日に、同条第4号の財務諸表を連結財務諸表にするだけです。
会社計算規則100条も、ほぼ同じ内容です。事業年度の末日において重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在し、対応をしてもなお重要な不確実性が認められるときの注記としています。
括弧書きも同じです。当該事業年度の末日後に当該重要な不確実性が認められなくなった場合を除く、とされています。
🗒️ 事業等のリスクとの書き分け
継続企業の前提に関する記述は、有価証券報告書の中で複数の場所に出てきます。経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、事業等のリスク、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、そして注記です。
事業等のリスクには、疑義を生じさせる事象または状況があれば書きます。重要な不確実性が認められるかどうかにかかわらず書きます。
注記に書くのは、対応をしてもなお重要な不確実性が認められるときだけです。ここが違います。
内容は整合させてください。事業等のリスクで挙げた事象と、注記で挙げた事象が食い違っていると、審査でも監査でも必ず指摘されます。
❓ よくある質問
A. 事象または状況の内容、対応策、重要な不確実性が認められる旨と理由、財務諸表に反映しているか否かの別の4つです。財規8条の27です。
A. しません。対応をしてもなお重要な不確実性が認められるときだけです。
A. 継続的な営業損失、営業キャッシュ・フローのマイナス、債務超過、借入金の返済期限の到来などです。全体として資金繰りに懸念が生じているかで判断します。
A. 財務諸表は継続企業を前提として作成しており、重要な不確実性の影響を財務諸表に反映していない旨を書くのが定型です。
A. 注記を要しません。第1項但し書きです。
A. 連結規則15条の22により財規8条の27を準用します。言葉を読み替えるだけで中身は同じです。
A. 会社計算規則100条により注記します。内容はほぼ同じです。
A. 事業等のリスクは疑義があれば書きます。注記は重要な不確実性が認められるときだけです。内容は整合させてください。
📄 まとめ
継続企業の前提で書くのは、事象または状況、対応策、不確実性が残る理由、財務諸表への反映の別の4つです。
疑義があるだけでは注記しません。対応をしてもなお不確実性が認められるかどうかが分かれ目です。
第1号では、何期続いているか、当期はいくらか、営業キャッシュ・フローはいくらか、手元資金はいくらかを順に示すと伝わります。
最後の一文、財務諸表に反映していない旨を落とさないでください。第4号です。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事に掲載した実際の開示事例は、各社が金融商品取引法にもとづき公衆縦覧に供している有価証券報告書からの引用です。設例として示した文例は、条文の記載事項を確認するために当事務所が作成したもので、会社名と数値は架空です。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の注記の作成にあたっては、監査法人にご確認ください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索) 8条の27
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索) 15条の22
- 会社計算規則(e-Gov法令検索) 100条
- EDINET(金融庁) 引用した有価証券報告書はここで閲覧できます
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