新リース会計基準の減価償却と利息費用は?利息法と耐用年数を解説

IPO準備会社や上場会社の経理・管理部門、監査対応のご担当者から、「使用権資産を計上したあと、毎期の費用はどう計算するのか」「リース期間で償却するのか、それとも耐用年数か」というご質問をよくいただきます。本記事では、公認会計士・税理士の立場から、借手の事後測定(減価償却費と利息費用)を新リース会計基準の条項に沿って整理し、数値例とチェックリストで確認します。

償却の期間と方法をどう決めるか契約の内容と費用の配分を確かめる所有権が移転する契約か経済的耐用年数で償却するはいいいえ所有権が移転しない契約かリース期間で償却するはいいいえ利息費用をどう配分するか利息法で期間に配分するはいいいえ費用が前半に多く後半に少なくなることを織り込む

図 減価償却と利息費用の決め方

結論:事後測定は「償却」と「利息」の2本立てで考える

借手は、リース開始日にリース負債を計上し、これに開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(基準33項)。翌期以降は、この2つの科目が別の理屈で動きます。リース負債側では、利息相当額を借手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分します(基準36項)。使用権資産側では、原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかで償却期間と残存価額の定めが分かれます(基準37項、基準38項)。ここに、簡便法を使えるかどうかの判断が加わります(指針40項)。

図1 事後測定で決める3つのことSTEP1 利息相当額をどのように各期へ配分するか原則は利息法。未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定します。STEP2 使用権資産をどの期間・どの残存価額で償却するか原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかで分かれます。STEP3 簡便的な取扱いを適用できるか使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の2つの方法があります。

借手の事後測定は、利息の配分・償却の期間・簡便法の可否という3つの決定に整理できます。

利息相当額の配分──原則は利息法

借手のリース料は、原則として、利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として、後者はリース負債の元本返済として会計処理を行います(指針38項)。借手のリース期間にわたる利息相当額の総額は、リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額になります(指針38項)。

この利息相当額の総額を各期に配分する方法は、原則として利息法によります(指針39項)。利息法においては、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定します(指針39項)。したがって、リース料の支払額が毎期同額であっても、負債残高が減っていく分だけ支払利息は逓減し、費用の合計額は前半に厚く後半に薄くなります。

利息法を原則とした理由については、借手についてはすべてのリースについて使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上するIFRS第16号と同様の単一の会計処理モデルを採用しているためである、と説明されています(指針BC67項)。従来のオペレーティング・リース取引のように支払額をそのまま定額で費用化する処理が原則ではなくなった点が、実務上の最も大きな変化だと考えられます。なお「費用が前倒しになる」という言い方は費用の期間推移を指したものであり、リース期間を通じた費用総額が増えるという意味ではありません。

使用権資産の償却──2つの分岐

使用権資産の減価償却は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに該当するか否かによって、異なる定めが置かれています(指針BC71項)。該当する場合、減価償却費は原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定し、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額とします(基準37項)。該当しない場合、減価償却費は定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する必要はなく、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(基準38項)。

この分岐を設けた理由は、所有権が移転すると認められるリースは原資産の取得と同様と考えられる一方、それ以外のリースは原資産の取得とは異なり原資産を使用できる期間がリース期間に限定されるという特徴があるためと説明されています(基準BC47項)。ただし、実態に応じて借手のリース期間より短い使用権資産の耐用年数により減価償却費を算定することを妨げるものではない、とされています(基準BC47項)。

この「所有権が移転すると認められるリース」とは、次の(1)から(3)のいずれかに該当するものをいいます(指針43項)。

図2 償却期間と残存価額の分かれ道所有権が借手に移転すると認められるリースか(指針43項)(1) 契約期間終了後又は中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされている(2) 契約期間終了後又は中途で、借手による購入オプションの行使が合理的に確実である(3) 借手の用途等に合わせた特別の仕様で、借手によってのみ使用されることが明らかいずれかに該当いずれにも非該当基準37項の処理償却方法:自ら所有していたと仮定した場合と同一の方法耐用年数:経済的使用可能予測期間残存価額:合理的な見積額基準38項の処理償却方法:定額法等から企業の実態に応じて選択適用耐用年数:原則として借手のリース期間残存価額:原則としてゼロ

同じ原資産でも、この分岐によって毎期の減価償却費は大きく変わります。

なお(2)の判定は、従来の「割安購入選択権が与えられており、その行使が確実に予想される場合」から変更されています。割安かどうかのみではなく他の要因も考慮して購入オプションの行使が合理的に確実な場合とする方が、借手への所有権移転の可能性を反映して減価償却費の算定が可能となるため、と説明されています(指針BC71項)。過去に「割安ではないから対象外」と整理していた契約は、判断の入口が変わっている可能性があります。

使用権資産総額に重要性が乏しい場合の簡便的な取扱い

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、(1)指針38項の定めによらず借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法、又は(2)指針39項の定めによらず利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法のいずれかを適用することができます(指針40項)。(1)の方法による場合、使用権資産及びリース負債は借手のリース料をもって計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみ計上します(指針40項)。

ここでいう使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(指針41項)。連結財務諸表においては、この判定を連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができます(指針42項)。判定にあたっては、簡便的な取扱いにより費用処理したものや利息法により配分している使用権資産に係るものを未経過の借手のリース料の期末残高から除くこと、固定資産の期末残高と二重になる場合は二重にならないように調整を行うことが挙げられています(指針BC68項)。また、リースの種類によって重要性の判断基準を分けないこととされています(指針BC70項)。期末ごとの判定であるため、設備投資や新規契約によって年度間で結論が変わり得る点には注意が必要です。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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数値例で見る──同じ契約でも費用の出方が変わる

【前提】物流拠点で使用するマテリアルハンドリング設備のリース(当事務所で作成した設例、単位は千円)。借手のリース期間4年、リース料は年額6,000(各年度末払い、総額24,000)、割引率は年2.0パーセント、付随費用・インセンティブ・除去費用はゼロ、所有権が移転すると認められるリースには該当しないものとします。

リース負債は未払の借手のリース料を現在価値により算定するため(基準34項)、年金現価で22,846となり、使用権資産も同額で計上されます(基準33項)。減価償却費はリース期間4年・残存価額ゼロで年5,712です(基準38項)。

項目 1年度 2年度 3年度 4年度 合計
期首リース負債 22,846 17,303 11,649 5,882
支払額 6,000 6,000 6,000 6,000 24,000
支払利息 457 346 233 118 1,154
元本返済 5,543 5,654 5,767 5,882 22,846
期末リース負債 17,303 11,649 5,882 0
減価償却費 5,712 5,712 5,712 5,712 22,846
費用合計 6,169 6,058 5,945 5,830 24,000

※各年度の金額は単位未満を四捨五入しているため、縦計と一致しない箇所があります。

費用合計は1年度6,169から4年度5,830へ逓減し、4年間の総額は24,000でリース料総額と一致します。従来のオペレーティング・リース取引として毎期6,000を定額計上していた場合と比べると、1年度で169、率にして約2.8パーセントの費用増です。割引率が高い契約やリース期間が長い契約ほど、この前倒しの幅は大きくなります。

簡便法を選ぶと数字はどう変わるか

同じ前提で、指針40項の2つの方法を適用した場合の1年度の金額を比較します。

比較項目 原則(利息法) 定額配分(指針40項(2)) 利息を控除しない方法(指針40項(1))
使用権資産・リース負債の計上額 22,846 22,846 24,000
1年度の減価償却費 5,712 5,712 6,000
1年度の支払利息 457 288 計上しません
1年度の費用合計 6,169 6,000 6,000

費用合計が同じ6,000でも中身が違う点にご注目ください。利息を控除しない方法では支払利息が計上されないため、費用の全額が減価償却費となります(指針40項)。EBITDAや営業利益は、費用が償却費と支払利息のどちらに入るかで動きます。簡便法の選択は「計算が楽になるか」だけでなく、開示される利益指標への影響も見たうえで決めることが望ましいと考えられます。

また、仮にこの設備が特別仕様であり指針43項(3)に該当すると判断された場合、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額となります(基準37項)。経済的使用可能予測期間を8年、残存価額を600と見積ると年間の減価償却費は2,781となり、リース期間4年で償却する場合の5,712と比べて年2,931の差が生じます。判定の結論ひとつで償却費が半分以下になるため、この分岐は監査上も説明を求められやすい論点です。

表示──損益計算書のどこに出るか

リース負債は、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目及び金額を注記し、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債、1年を超えて到来するものは固定負債に属するものとします(基準50項)。利息費用については、損益計算書において区分して表示するか、含まれる科目及び金額を注記します(基準51項)。営業外費用の水準が変わるため、財務制限条項や社内の予算管理指標への影響も早めに確認しておくことをおすすめします。

自社だけで対応すると負担が大きくなりやすいところ

事後測定は「一度決めれば終わり」の論点ではなく毎期回る業務であり、監査法人からも初年度の計算そのものより翌期以降に同じ品質で回るかを問われることが多い領域です。負担が集中しやすいのは次の3点です。

第1に、指針43項の3類型に当たるかの判定は契約単位の作業であり、特に購入オプションと特別仕様の有無は法務・調達・現場部門への確認が必要で、経理部門だけでは完結しません。判断の根拠を残していないと、翌期の担当者が同じ結論を再現できません。第2に、利息法は未返済元本残高に利率を乗じる計算であり(指針39項)、契約が数十件を超えると表計算ソフトでの管理は破綻しやすくなります。第3に、10パーセント基準の判定(指針41項)には未経過リース料と固定資産の期末残高が必要で、判定から除く範囲や二重計上の調整(指針BC68項)も含め、計算過程を毎期同じ手順で再現できる状態にしておく必要があります。

事後測定の実務チェックリスト

  • 契約ごとに、指針43項(1)から(3)のいずれかに該当するかを判定し、根拠を文書化していますか
  • 該当する契約について、経済的使用可能予測期間と残存価額の見積根拠を残していますか(基準37項)
  • 該当しない契約について、借手のリース期間を耐用年数・残存価額ゼロとしていますか(基準38項)
  • 利息相当額を利息法で配分し、元本返済額と区分計算していますか(指針38項、指針39項)
  • 使用権資産総額に重要性が乏しいかの判定を、期末ごとに実施していますか(指針41項)
  • 簡便法を選ぶ場合、営業利益・EBITDAへの影響を確認したうえで方針を決めていますか
  • リース負債の1年内・1年超の区分が計算できる状態になっていますか(基準50項)
  • 利息費用の表示区分と注記の要否を、経理規程・勘定科目体系に反映していますか(基準51項)

よくあるご質問

Q. 使用権資産の償却方法は、定額法でなければならないのですか。

所有権が移転すると認められるリース以外については、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定するとされており、定額法に限定されてはいません(基準38項)。実務上は定額法を選ぶ例が多いと考えられますが、選択の理由は説明できるようにしておくとよいでしょう。

Q. リース期間より短い年数で償却してもよいのですか。

実態に応じて借手のリース期間より短い使用権資産の耐用年数により減価償却費を算定することを妨げるものではないとされています(基準BC47項)。短い年数を用いる場合は、その実態を裏づける事実を整理しておく必要があると考えられます。

Q. 支払利息は必ず計上されますか。

原則は利息相当額を区分計算して支払利息として処理します(指針38項)。ただし、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合に、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法を適用したときは、支払利息は計上せず減価償却費のみを計上します(指針40項)。

Q. 10パーセント基準は連結と個別のどちらで判定しますか。

連結財務諸表においては、この判定を連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができ、見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合は連結修正仕訳で修正を行います(指針42項)。

まとめ

借手の事後測定は、利息相当額を利息法で配分し(基準36項、指針39項)、使用権資産を所有権移転の有無に応じた期間・残存価額で償却する(基準37項、基準38項)という二本立てです。ここに、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の簡便的な取扱い(指針40項、指針41項)が加わります。どの取扱いを選ぶかで営業利益とEBITDAの見え方が変わるため、計算方法の決定は経理部門だけの論点ではありません。

本連載の全体像は新リース会計基準 完全ガイド|全30回で学ぶ実務対応の全体像にまとめています。前回は新リース会計基準の使用権資産の当初測定は?敷金・権利金の扱いも解説、その前の回は新リース会計基準の割引率とは?追加借入利子率の決め方を解説です。次回は「リースの条件変更と再評価」を取り上げます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

参考

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」33項、34項、36項、37項、38項、50項、51項、BC47項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」38項、39項、40項、41項、42項、43項、BC67項、BC68項、BC70項、BC71項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理の適否を判断するものではありません。最終的な会計処理及び投資判断にあたっては、監査人その他の専門家にご相談ください。

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