相続税申告の必要書類とは?戸籍・残高証明など一覧と集め方を解説

相続税の申告をしようと決めたものの、「いったい何を、どこで集めればいいのか」で手が止まってしまう方は少なくありません。役所に行っても、銀行に行っても、それぞれ違う書類を求められます。

相続税申告の必要書類は、実は「身分関係」「財産関係」「債務・葬式費用」「特例の追加書類」の4つのグループに整理できます。この記事では、それぞれ何が必要で、どこで・いくらで取れるのかを一覧にまとめました。

この記事でわかること

  • 相続税申告の必要書類は4グループに整理できること
  • 戸籍は「相続開始の日から10日を経過した日以後」に取ったものが必要なこと
  • 法定相続情報一覧図の写しを使えば戸籍の束を何度も出さずに済むこと
  • 各書類の取得先・手数料の目安と、集める順番

📄 相続税申告の必要書類は大きく4グループ

相続税の申告書に添付する書類は、国税庁の「相続税の申告のしかた」に一覧が示されています。細かく見ると数十種類ありますが、初めての方は次の4つのグループで捉えると迷いにくくなります。

相続税申告の必要書類は4グループで捉える 相続税の申告書に添付する書類 ① 身分関係 戸籍一式または 法定相続情報 一覧図の写し ② 財産関係 残高証明書 登記事項証明書 固定資産評価証明 ③ 債務・葬式費用 借入金の残高証明 未払の請求書 葬儀の領収書 ④ 特例の追加書類 遺産分割協議書 印鑑証明書 住民票の写し等 ①②③はほぼ全員、④は使う特例に応じて追加

相続税申告の必要書類は4つのグループに分けて考えると整理しやすくなります

①②③は、相続税の申告をするほとんどの方に共通します。④は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、税額を下げる規定を使うときにだけ追加で必要になるものです。順に見ていきます。

🗒️ ①身分関係の書類:戸籍一式か法定相続情報一覧図

まず、「誰が相続人なのか」を税務署に示す書類です。国税庁の案内では、次のいずれかを提出することとされています。

  • 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
  • 図形式の法定相続情報一覧図の写し(子の続柄が実子か養子かが分かるように記載されたものに限る)
  • 上記のいずれかをコピー機で複写したもの

相続税法施行規則16条3項、国税庁「相続税の申告のしかた」(相続税の申告の際に提出していただく主な書類)による。

「10日を経過した日以後」に注意

見落としやすいのが、この日付の条件です。亡くなった直後に取った戸籍は、まだ死亡の事実が反映されていない可能性があるため、相続開始の日(死亡日)から10日を経過した日以後に作成されたものである必要があります。葬儀の直後に慌てて取った戸籍が使えない、というケースが実際にあります。

戸籍一式は「出生から死亡まで」

被相続人の戸籍は、亡くなったときのものだけでは足りません。相続人を確定させるため、出生までさかのぼって、途切れなくつながる戸籍を集めます。転籍や婚姻、法改正による作り替え(改製)があるたびに戸籍は新しくなるため、5〜10通になることも珍しくありません。

令和6年3月1日からは「戸籍の広域交付」(戸籍法120条の2)が始まり、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)に限られ、窓口に本人が出向く必要があります。郵送・代理人による請求はできず、コンピュータ化されていない古い戸籍も対象外です。

法定相続情報一覧図を作っておくと後がラク

集めた戸籍一式を法務局に提出して申出をすると、相続関係を1枚の図にまとめた「法定相続情報一覧図の写し」を交付してもらえます。交付手数料は無料で、必要な通数を申し出ることができ、以後5年間は再交付も受けられます。

相続税の申告だけでなく、銀行の解約手続きや相続登記でも同じ1枚が使えるため、金融機関が複数ある場合は、戸籍の束を何度も回すより手間が減ります。ただし相続税の申告で使うには、子の続柄が「長男」「養子」のように実子・養子の別が分かるように記載されたものである必要があります(続柄を「子」と記載したタイプは不可)。被相続人に養子がいる場合は、その養子の戸籍の謄本または抄本も別途必要です。

マイナンバーの確認書類

申告書に記載したマイナンバーについて、税務署が本人確認を行うため、①番号確認書類(マイナンバーカードの裏面、マイナンバー記載の住民票の写しなど)と②身元確認書類(マイナンバーカードの表面、運転免許証、パスポートなど)の写しを添付します。マイナンバーカードを使う場合は表面・裏面の両方の写しが必要です。なお、e-Taxで申告する場合は、本人確認書類の提示・写しの提出は不要です。

🏠 ②財産関係の書類:どこで何を取るか

次に、財産の内容と金額を裏づける書類です。相続税は「亡くなった日時点の価額」で計算するため、証明書は相続開始日(死亡日)現在のものを請求するのが基本です。

書類 取得先 手数料・ポイント
預貯金の残高証明書 各金融機関の窓口 相続開始日現在で請求。定期預金がある場合は「既経過利息計算書」も一緒に依頼する
通帳・取引履歴 各金融機関 過去5〜10年分。生前の入出金を確認するため税務署も重視する
登記事項証明書
(登記簿謄本)
法務局(全国どこの窓口でも可) 書面請求は1通600円。オンライン請求は送付520円・窓口交付490円(令和7年4月1日〜)
固定資産評価証明書 23区内は都税事務所
(台東都税事務所など)
1件目400円、2件目以降1件100円。市町村の場合は市区町村役場
公図・地積測量図 法務局 土地の形状や間口を確認し、評価額の計算に使う
取引残高報告書 証券会社 相続開始日現在の残高。非上場株式は会社の決算書等が必要
生命保険金の
支払通知書
保険会社 受取金額と契約内容が分かるもの

手数料は法務省「登記手数料について」、東京都主税局「固定資産に関する証明書等の手数料について」による(2026年9月時点)。

台東区にお住まいだった方の自宅の評価証明書は、区役所ではなく都税事務所で取ります。東京23区では固定資産税を都が課税しているためで、23区内であればどの都税事務所でも申請できます。区役所に行って空振りする方が多いポイントです。

📍 どこで・⏰ いつまでに・🧾 何を持って

📍 どこで:戸籍は市区町村役場(広域交付なら最寄りの窓口)、不動産は法務局と都税事務所、預貯金・有価証券は各金融機関。

いつまでに:相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条1項)。書類集めは遅くとも6か月目までに終えたいところです。

🧾 何を持って:窓口では請求者の本人確認書類と、被相続人との関係が分かる戸籍(または法定相続情報一覧図の写し)を求められます。金融機関では所定の届出書も必要です。

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🧾 ③債務・葬式費用の書類

借入金や未払の税金・医療費などの債務、そして葬式費用は、相続財産から差し引くことができます(相続税法13条)。差し引けば税額が下がるため、証拠となる書類は忘れずに集めてください。

  • 借入金の残高証明書、金銭消費貸借契約書
  • 未払の医療費・公共料金・クレジットカード利用分の請求書や領収書
  • 固定資産税・住民税など、亡くなった時点で未納だった税金の納税通知書
  • 葬儀社への支払いの領収書、お寺へのお布施の記録(領収書が出ない場合はメモ)

お布施や心付けは領収書が出ないことが多いのですが、日付・相手・金額・内容をメモに残しておけば計上できます。逆に、香典返しの費用や初七日・四十九日などの法要の費用は、葬式費用として差し引くことはできません。

⚖️ ④特例を使うときの追加書類

配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)や小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)を使うと税額が大きく下がりますが、これらは申告書を提出することが適用の条件で、決められた書類の添付も必要です。書類が足りないと特例が使えず、税額がまったく変わってしまうため、ここは特に慎重に確認してください。

使う規定 ①〜③に加えて必要な書類
配偶者の税額軽減 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し/相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)/申告期限内に分割できない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」
小規模宅地等の特例
(自宅の土地)
上記に加えて、いわゆる「家なき子」に当たる人が使う場合は相続開始前3年以内の住所を明らかにする書類など。被相続人が老人ホームに入所していた場合は、戸籍の附票の写しと介護保険の被保険者証の写しなど
相続時精算課税を
使った人がいる場合
被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)

国税庁「相続税の申告のしかた」(相続税の申告の際に提出していただく主な書類)2(1)(2)(4)(5)による。適用を受ける特例の種類によって必要書類はさらに細かく分かれます。

なお、①〜③のグループでは、遺言書や遺産分割協議書の写しは「提出をお願いしている書類」という位置づけですが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う場合は、印鑑証明書とあわせて必ず必要になります。この違いは意外と知られていません。

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📅 いつまでに何を集めるか:10か月のスケジュール

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項・33条)。10か月は長く感じますが、書類の取得には郵送のやり取りを含めて1か月以上かかるものもあり、実際にはあまり余裕がありません。

書類集めのスケジュール(申告期限は10か月) 相続開始 〜3か月ごろ 〜6か月ごろ 10か月 死亡日から 10日経過を待つ 戸籍一式を集める 残高証明を請求 不動産の証明書 遺産分割協議 申告・納付の期限 (相法27条・33条) 戸籍と残高証明は早めに。印鑑証明書は分割協議がまとまってから取る

10か月の期限から逆算すると、書類集めは6か月目までに終えておきたいところです

順番のコツは、時間のかかるものから先に着手することです。戸籍一式の収集と金融機関への残高証明の請求は、どちらも相手方の作業待ちが発生します。一方、相続人全員の印鑑証明書は遺産分割協議書に押印する段階で必要になるため、協議がまとまってから取れば十分です。

財産の中身がまだ把握できていない段階の方は、第1回「親が亡くなったらやることは?相続手続きの流れと期限一覧」で全体の流れを先に確認しておくと、書類集めの位置づけが分かりやすくなります。

❓ よくある質問

Q. 戸籍謄本は原本を出さないといけませんか?

A. 国税庁の案内では、戸籍の謄本や法定相続情報一覧図の写しは「コピー機で複写したもの」でも差し支えないとされています。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で必要になる印鑑証明書については、遺産分割協議書に押印したものの原本を求められるのが一般的です。

Q. 財産が基礎控除以下で申告しない場合も、これらの書類は必要ですか?

A. 申告そのものが不要であれば、税務署に提出する必要はありません。ただし、金融機関の解約や相続登記には戸籍一式が必要ですし、「基礎控除以下かどうか」を判断するには結局、残高証明書や不動産の評価資料が要ります。判断の根拠として手元に残しておくとよいでしょう。

Q. 遺産分割がまとまらないまま10か月を迎えそうです。

A. 期限までに分割ができない場合でも、法定相続分で計算した申告書を期限内に提出します。その際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、後日分割がまとまった時点で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用し直すことができます。この見込書の添付を忘れると特例が使えなくなるため、注意が必要です。

📝 まとめ

  • 相続税申告の必要書類は「身分関係」「財産関係」「債務・葬式費用」「特例の追加書類」の4グループ
  • 被相続人の戸籍は、相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたものが必要
  • 法定相続情報一覧図の写し(実子・養子の別が分かるもの)は無料で交付され、他の手続きにも使い回せる
  • 23区内の固定資産評価証明書は区役所ではなく都税事務所で取得する
  • 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を使うなら、遺産分割協議書と印鑑証明書が必須
  • 戸籍と残高証明は時間がかかるため、申告期限10か月の前半で着手する

連載の他の回は相続税 完全ガイド(目次)からご覧いただけます。次回は「相続税の納め方:現金一括が原則。払えないときの延納・物納」を取り上げます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。相続税の申告と事業承継の支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

🔗 参考

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