※本記事は2026年10月7日時点の公表資料に基づきます。
ギフティグループ株式会社(証券コード590A)は、2026年6月1日に東京証券取引所から上場承認を受け、2026年7月1日に東証プライム市場へ上場しました。ただし、この上場は公募や売出しを伴う通常のIPOではありません。すでにプライム市場に上場していた株式会社ギフティが、単独株式移転によって完全親会社となる持株会社を設立し、ギフティ株式の上場廃止と入れ替わる形で新会社の株式が上場する、いわゆる「テクニカル上場」です。本記事では、東京証券取引所に提出された「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」(2026年6月1日提出)を読み、持株会社化とテクニカル上場の実務を整理します。
結論からいえば、ギフティグループのⅠの部は「上場会社が持株会社体制へ移行するとき、何を決め、どの順番で手続を進め、株主・新株予約権者・役員報酬・ガバナンスをどう引き継ぐか」を学ぶのに適した事例です。株式移転比率1対1と第三者算定を行わない理由、12本の新株予約権を同数・同等の内容で引き継ぐ設計、旧会社の株主総会で新会社の報酬枠まで決めておく方法、そして持株会社化の目的として掲げられた「PMIを含むグループ経営管理の強化」や「グループガバナンスの向上」と、2名体制の内部監査との関係など、これから上場を目指す会社にとっても、上場後に持株会社化を検討する会社にとっても参考になる論点が並んでいます。
この記事の見出し
ギフティグループはどんな会社で、どのように上場したのか
まず基本情報です。ギフティグループ株式会社(英文名 giftee Group, Inc.)は、株式会社ギフティの単独株式移転により2026年7月1日に設立された持株会社です。本店は東京都品川区東五反田で、事業内容は「グループ会社の経営管理及びこれに付帯する業務」とされています。決算期は12月で、最初の事業年度は設立日から2026年12月31日までです。代表者は代表取締役の太田睦氏と鈴木達哉氏の2名です。
Ⅰの部の表紙には、本報告書の提出日(2026年6月1日)時点では当社はまだ設立されておらず、設立予定日である2026年7月1日現在の状況を説明する「事前提出書類」である旨が注記されています。上場申請会社はギフティグループ、報告書の提出会社は株式会社ギフティという、通常のⅠの部とは異なる構成です。ここがテクニカル上場のⅠの部を読むときの最初のポイントです。
| 項目 | 内容(Ⅰの部の記載) |
|---|---|
| 上場申請会社 | ギフティグループ株式会社(証券コード590A) |
| 提出会社 | 株式会社ギフティ(株式移転完全子会社) |
| 市場 | 東京証券取引所プライム市場 |
| 上場承認日 | 2026年6月1日 |
| 上場日 | 2026年7月1日(Ⅰの部では予定として記載) |
| 上場の形態 | 単独株式移転による持株会社設立に伴うテクニカル上場(公募・売出しなし) |
| 本店 | 東京都品川区東五反田 |
| 設立 | 2026年7月1日(設立登記日=株式移転の効力発生日) |
| 決算期 | 12月(最初の事業年度は2026年12月31日まで) |
| 資本金 | 20百万円(資本準備金5百万円) |
| 発行済株式数 | 普通株式29,777,502株(ギフティの2025年12月31日の発行済株式数に基づく) |
| 会計監査人 | EY新日本有限責任監査法人(設立時会計監査人) |
テクニカル上場とは、一般に、上場会社が株式移転や合併などの組織再編によって上場廃止となる場合に、その会社の実質的な存続会社と認められる新設会社などが、通常の新規上場より簡素な手続で速やかに上場できる仕組みを指します。ギフティグループの場合も、既上場会社のギフティがそのまま完全子会社となり、株主構成も変わらないため、ギフティ株式の上場廃止(2026年6月29日予定)と新会社株式の上場(2026年7月1日予定)が連続して行われる日程が組まれています。
図1 ギフティが単独株式移転で完全親会社ギフティグループを設立し、新会社の株式が上場する構造(Ⅰの部「組織再編成の目的等」をもとに作成)
図のとおり、株主から見ると、保有する株式が「ギフティ株式」から「ギフティグループ株式」に1対1で置き換わるだけで、持株数も議決権比率も変わりません。一方、会社の側から見ると、上場会社が事業会社から持株会社に変わり、ギフティとその子会社11社・関連会社3社が持株会社の傘下に入ります。プライム市場の会社ですから、上場後はコーポレートガバナンス・コードの全原則(プライム市場向けの原則を含む)が新会社に適用されることになります。
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なぜ持株会社に移行するのか:Ⅰの部に書かれた目的
Ⅰの部の「組織再編成の目的等」には、持株会社化の理由が具体的に書かれています。ギフティは「eギフトを軸として、人、企業、街の間に、さまざまな縁を育むサービスを提供する」というビジョンのもと、成長戦略として「eギフトプラットフォームの拡大」と「地理的な横展開」を掲げ、機動的なM&Aによって成長を加速させてきました。一方で、事業領域と地域の拡大に伴い、①投資判断や経営資源配分の高度化、②M&A後の統合(PMI)を含むグループ経営管理の強化、③リスク管理・内部統制等のグループガバナンス向上の必要性が増していると説明されています。
そのうえで、経営管理機能と事業執行機能を分離し、持株会社を中心としたグループ経営体制へ移行することが最適と判断した、という流れです。持株会社は、①事業ポートフォリオ戦略の策定とキャピタル・アロケーションの決定・運用、②M&A・新規事業等を含むグループ成長戦略の策定と投資・成長施策の推進、③グループ横断のリスク管理・コンプライアンス・内部統制の高度化を担い、各事業会社は事業特性や成長ステージに応じた自主責任経営を行うとされています。
図2 Ⅰの部「組織再編成の目的及び理由」に記載された役割を図示
上場準備会社にとっても、この「目的の書き方」は参考になります。組織再編は、株主総会の承認や開示書類で必ず目的を説明することになり、上場審査でも「なぜその組織形態なのか」は確認されやすい論点です。ギフティグループのように、現状の課題(PMI、資源配分、ガバナンス)と再編後の役割分担を対応させて説明できると、株主にも審査側にも伝わりやすくなります。
持株会社化は2段階で進められる
Ⅰの部では、持株会社体制への移行が2段階で説明されています。ステップ1は、2026年7月1日を効力発生日とする株式移転により持株会社を設立し、ギフティを完全子会社とする段階です。ステップ2は、株式移転の効力発生後に、ギフティの子会社を持株会社が直接保有する子会社として再編する段階で、その具体的な内容と時期は「決定次第お知らせいたします」とされています。
図3 ステップ2(子会社の直接保有化)の具体的な内容・時期はⅠの部提出時点で未定(決定次第公表)
株式移転だけでは、持株会社の下にギフティがあり、その下に各子会社がぶら下がる「孫会社」構造のままです。持株会社が各社を直接管理する体制にするには、株式移転の後に、子会社株式を持株会社へ移す追加の組織再編(たとえば会社分割や現物配当、株式の譲渡など)が必要になるのが一般的です。どの手法を使うかで、会計処理、税務(適格組織再編に当たるかどうか)、許認可や契約の承継の手間が変わるため、持株会社化を考える会社は、ステップ1とステップ2を一体で設計しておくことが重要です。
事業内容と収益モデル:eギフトで何を稼いでいるのか
持株会社そのものの事業はグループの経営管理ですが、グループの実態は完全子会社となるギフティの事業です。Ⅰの部によると、ギフティはギフティ、子会社11社及び関連会社3社で構成され、eギフトの生成・流通・販売を一気通貫で行う「eギフトプラットフォーム事業」の単一セグメントです。主なサービスは、①個人がオンラインでeギフトを購入して贈る『giftee』、②法人がキャンペーン等で利用するeギフトを購入する『giftee for Business』、③飲食店・小売店等がeギフトの生成・流通・販売・決済・実績管理を行うシステムをSaaSで提供する『eGift System』、④自治体向けに地域通貨の電子化ソリューションを提供する『地域通貨サービス』の4つです。
このほか、アラブ首長国連邦及びサウジアラビアを主な対象地域として同様のサービスを展開するYouGotaGift.com Ltd.、体験ギフトを提供するソウ・エクスペリエンス株式会社、カスタムアパレルのプラットフォームを運営する株式会社paintory、全国390社以上のクラフトビールのブルワリーと連携したサブスクリプションサービスを運営するBrewtope株式会社などがグループに含まれています。
図4 Ⅰの部「事業の内容」をもとに作成。eギフトプラットフォーム事業の単一セグメント
収益の受け取り方はサービスごとに異なります。『giftee』では、eギフトを個人に販売した場合に、そのeギフトの発行企業から販売手数料を受領します。『giftee for Business』では、利用企業から発行手数料を受領するとともに、発行企業から販売手数料を受領します。『eGift System』と地域通貨サービスでは、導入企業や地域通貨の発行主体からシステム利用料を受領します。同じ「eギフト」でも、誰から、どの対価を受け取るのかが異なる点は、後で触れる収益認識(本人か代理人か、手数料の認識時点)の検討にも直結します。
Ⅰの部に記載されたKPI
Ⅰの部には、サービスごとの指標がいくつか記載されています。『giftee』の累計会員数は2025年12月末時点で253万人に達し、2020年12月末の161万人から毎年増加しています。取扱商品は4,700種類以上です。『giftee for Business』の当連結会計年度の利用企業数は2,276社、『eGift System』の2025年12月末の利用企業数は302社で、当連結会計年度のeギフト流通額は1,047億円です。
図5 Ⅰの部「事業の内容」の累計会員数推移より。会員数は会員登録したユーザーの累計数
| 指標 | 数値(Ⅰの部の記載) |
|---|---|
| giftee 累計会員数 | 253万人(2025年12月末) |
| giftee 取扱商品数 | 4,700種類以上 |
| giftee for Business 利用企業数 | 2,276社(当連結会計年度) |
| eGift System 利用企業数 | 302社(2025年12月末) |
| eGift System eギフト流通額 | 1,047億円(当連結会計年度) |
| Brewtope 連携ブルワリー | 全国390社以上 |
上場準備会社がKPIを開示する場合、定義(累計か期中か、どの時点か)を明確にし、毎期同じ定義で継続して集計できる体制を作っておくことが大切です。ギフティのⅠの部でも、「会員数は会員登録したユーザーの累計数」といった定義が注記されています。KPIは経営管理の道具であると同時に、開示した以上は継続性と正確性が求められる情報でもあります。
組織再編の手続とスケジュール:何を、どの順番で決めたのか
テクニカル上場の実務で最も具体的に学べるのが、組織再編の手続と日程です。Ⅰの部の「組織再編成に関する手続」と「その他の参考情報」には、次のような日程が記載されています。2025年12月31日を定時株主総会の基準日とし、2026年2月13日のギフティ取締役会で株式移転計画を承認、3月11日に有価証券届出書(組織再編成・上場)を関東財務局長に提出、3月13日から会社法803条1項に基づく事前備置書類の備置を開始、3月30日のギフティ定時株主総会で株式移転計画を承認可決、という流れです。
その後、2026年4月1日と5月7日に訂正届出書を提出し、6月1日にⅠの部を提出(同日に上場承認)、6月29日にギフティ株式の上場廃止、7月1日に持株会社の設立登記(効力発生日)と新会社株式のプライム市場上場、という日程です。定時株主総会の議案として株式移転計画を付議しているため、臨時株主総会を別に開く必要がない設計になっている点も実務的です。
図6 Ⅰの部「組織再編成に関する手続」「その他の参考情報」をもとに作成。訂正届出書は2026年4月1日・5月7日に提出
事前備置書類として備え置かれたのは、①株式移転計画、②株式移転比率(会社法773条1項5号・6号の事項)の定めの相当性に関する事項、③新株予約権に係る定めの相当性に関する事項、④最終事業年度の末日後に生じた重要な財産の処分、重大な債務の負担その他会社財産の状況に重要な影響を与える事象の内容を記載した書面の4つです。株式移転計画には、新会社の商号、本店所在地、発行可能株式総数(80,000,000株)、設立時取締役・監査役・会計監査人、資本金及び準備金の額、上場予定の市場、株主名簿管理人、自己株式の消却などが定められています。
株式移転比率は1対1、第三者算定は行わない
株式移転比率は、ギフティの普通株式1株に対して新会社の普通株式1株を割り当てる1対1です。Ⅰの部は、本株式移転がギフティ単独の株式移転であり、株式移転時のギフティの株主構成と新会社の株主構成に変化がないことから、株主に不利益を与えないことを第一義として1対1とした、と説明しています。そのうえで「上記理由により、第三者機関による株式移転比率の算定は行っておりません」と明記されています。複数の会社が共同で株式移転を行う場合には比率の公正性が大きな論点になりますが、単独株式移転ではこのように整理されることが一般的です。
図7 Ⅰの部「組織再編成に係る割当ての内容及びその算定根拠」「組織再編成対象会社の発行する証券保有者の有する権利」をもとに作成
株主や新株予約権者の権利についても、Ⅰの部は丁寧に記載しています。株式移転に反対する株主は、定時株主総会に先立って反対の旨を通知し、総会で反対したうえで、所定の期間内に会社法806条の株式買取請求を行うことができます。一方、ギフティが発行している新株予約権については、株式移転計画の定めが新株予約権の発行時に定めた組織再編時の取扱いの条件(会社法236条1項8号)に合致するため、会社法808条1項の規定により新株予約権買取請求権は発生しないとされています。発行時の新株予約権の要項に、組織再編時に再編対象会社の新株予約権を交付する条件をあらかじめ定めておくことが、後の再編をスムーズにすることがわかります。
また、株式移転の効力発生時にギフティが保有している自己株式にも新会社の株式が割り当てられるため、ギフティは一時的に親会社株式を保有することになります。Ⅰの部では「法令の定めに従い速やかに処分いたします」とされ、株式移転計画には、効力発生日の前日までに開催する取締役会の決議により、実務上消却可能な範囲の自己株式(株式買取請求に応じて取得する自己株式を含む)を基準時までに消却する旨が定められています。会社法上、子会社は相当の時期に親会社株式を処分しなければならないとされているため(会社法135条3項)、自己株式は事前に消却しておくのが実務上の基本となります。
業績の推移:持株会社のⅠの部には何が載るのか
新設会社であるギフティグループには、Ⅰの部提出時点で財務情報がありません。そのためⅠの部の「主要な経営指標等の推移」は、「統合財務情報」として、完全子会社となるギフティの最近5連結会計年度(第12期〜第16期)の指標を掲載し、組織再編成の対象会社の連結経営指標が当社の連結経営指標に反映されるものと考えられる、と説明しています。「経理の状況」や「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」も、新設会社のため該当事項はなく、ギフティの有価証券報告書(2026年3月27日提出)を参照する形になっています。
| 項目(百万円) | 2021/12 | 2022/12 | 2023/12 | 2024/12 | 2025/12 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,725 | 4,723 | 7,226 | 9,554 | 14,149 |
| 経常利益 | 248 | 352 | 1,239 | 1,579 | 2,208 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 150 | 10 | 129 | △510 | 935 |
| 純資産額 | 7,787 | 8,094 | 8,305 | 8,282 | 9,272 |
| 総資産額 | 18,945 | 19,769 | 22,164 | 41,185 | 44,706 |
| 自己資本比率(%) | 40.3 | 39.5 | 36.0 | 18.5 | 18.9 |
| 営業活動によるCF | 313 | 424 | △3,734 | △3,593 | 11,089 |
| 投資活動によるCF | △3,520 | △1,374 | △1,046 | △1,531 | △1,685 |
| 財務活動によるCF | 10,965 | △64 | △102 | 10,997 | △3,439 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 11,029 | 9,983 | 5,099 | 10,977 | 16,933 |
| 従業員数(名) | 210 | 257 | 316 | 585 | 685 |
図8 Ⅰの部「統合財務情報」(ギフティ第12期〜第16期)より。持株会社は新設のため自社の財務情報はない
売上高は2021年12月期の3,725百万円から2025年12月期の14,149百万円まで毎期増加し、経常利益も248百万円から2,208百万円へと毎期増加しています。親会社株主に帰属する当期純利益は、2024年12月期に△510百万円の損失となった後、2025年12月期は935百万円の利益となっています。2024年12月期は経常利益1,579百万円を計上しながら純損失となっており、経常利益と当期純利益の間に大きな差があった期であることが読み取れます(その要因はⅠの部の統合財務情報には記載されていません)。
財政状態では、総資産が2023年12月期の22,164百万円から2024年12月期に41,185百万円へとほぼ倍増し、自己資本比率は36.0%から18.5%に低下しています。同じ期の財務活動によるキャッシュ・フローは10,997百万円の収入です。営業活動によるキャッシュ・フローは2023年12月期・2024年12月期にマイナスでしたが、2025年12月期は11,089百万円のプラスとなっています。業績を読むときは、損益の推移とキャッシュ・フローの推移を分けて確認し、両者の動きが異なる期についてはその理由を説明できるようにしておくことが、上場準備の段階から大切です(ギフティの各期の増減要因はⅠの部には記載がないため、本記事では立ち入りません)。
図9 当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。マイナスの値は橙色で表示。Ⅰの部「統合財務情報」より
テクニカル上場では、通常のIPOのように「上場申請会社の直前2期の財務諸表を監査済みで揃える」という形ではなく、既上場会社の開示実績をそのまま引き継ぐ形になります。それでもプライム市場の上場会社である以上、上場後の新会社には四半期・年度の決算開示、内部統制報告書の提出などが求められます。新会社の最初の事業年度は2026年7月1日から12月31日までの約6か月であり、新会社として初めての有価証券報告書や決算短信の作り方(比較情報の扱いなど)を、監査法人と早めにすり合わせておくことが実務上のポイントになります。通常のIPOにおける収益性の考え方はIPO審査の「企業の継続性及び収益性」も参考になります。
資本政策と株主構成:テクニカル上場で何が引き継がれるのか
テクニカル上場では公募・売出しが行われないため、上場前後で株主構成は変わりません。新会社の発行済株式数は普通株式29,777,502株で、ギフティの2025年12月31日時点の発行済株式総数に基づいて記載されています。単元株式数は100株で、新会社は種類株式発行会社ではありません。発行可能株式総数は80,000,000株です。
ギフティの2025年12月31日現在の株主数は10,659人で、所有株式数の割合は「個人その他」が56.77%、「金融機関」が17.09%、「外国法人等(個人以外)」が17.11%、「金融商品取引業者」が5.01%、「その他の法人」が3.80%、「外国法人等(個人)」が0.21%となっています。
図10 ギフティの2025年12月31日現在の株主データに基づきⅠの部に記載された予想。公募・売出しはないため、株式移転比率1:1でそのまま引き継がれる前提の数値
大株主は、代表取締役の太田睦氏が5,168,400株(17.36%)で筆頭、続いて信託銀行2口(8.95%、6.63%)、梅田裕真氏(5.74%)、柳瀬文孝氏(4.58%)、代表取締役の鈴木達哉氏(4.49%)、海外の機関投資家等2口、株式会社ジェーシービー(3.19%)、楽天証券株式会社共有口(1.73%)と続き、上位10名の合計は17,831,159株(59.88%)です。これは、ギフティの2025年12月31日現在の株主データに基づき、2026年7月1日時点で予想される状況として記載されたものです。親会社等はありません。
上場準備会社が通常のIPOを行う場合は、Ⅰの部の株主構成(上場申請時点)と、公募・売出し後の上場時点の株主構成が異なるため、両者を区別して読む必要があります。テクニカル上場では株式移転比率が1対1で公募・売出しもないため、基準日時点の株主構成がそのまま引き継がれる前提で記載されている点が異なります。流通株式の考え方は流通株式比率の計算式と調べ方で整理しています。
12本の新株予約権をどう引き継いだか
テクニカル上場の資本政策で特に参考になるのが、新株予約権(ストック・オプション)の承継です。ギフティが発行していた第8回〜第10回、第12回〜第20回の12本の新株予約権は、株式移転の効力発生日をもって消滅し、その新株予約権者に対して、同等の内容かつ同一の数の新会社の新株予約権(ギフティグループ第1回〜第12回新株予約権)が交付されます。株式移転計画書には、旧新株予約権の要項(別紙2-①-1など)と新新株予約権の要項(別紙2-①-2など)が対になって添付されており、Ⅰの部の約50ページがこの要項で占められています。
図11 Ⅰの部「株式移転計画の内容」第6条及び「新株予約権等の状況」をもとに作成。株式数は2026年5月7日現在の個数に基づく筆者集計
新旧の要項を比べると、行使価額や目的となる株式の数、行使の条件は同じで、行使期間の開始日が「2026年7月1日」に置き換えられ(元の行使期間の開始日が後の回は元の日のまま)、割当日が「2026年7月1日」とされている点が主な違いです。行使期間の末日は旧新株予約権と同じです。会社法上は、発行時の要項で組織再編時の交付条件を定めておき、株式移転計画でその条件どおりに交付することで、新株予約権買取請求権の発生を避けられます。
| 当社の回(旧ギフティの回) | 決議年月日 | 付与対象者 | 個数 | 目的となる株式数 | 行使価額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1回(第8回) | 2018年3月23日 | ギフティ従業員1名 | 19個 | 19,000株 | 210円 |
| 第2回(第9回) | 2018年7月18日 | ギフティ取締役2名 | 132個 | 132,000株 | 210円 |
| 第3回(第10回) | 2019年1月3日 | ギフティ従業員15名 | 51個 | 51,000株 | 275円 |
| 第4回(第12回) | 2019年5月17日 | ギフティ従業員10名 | 28個 | 28,000株 | 1,500円 |
| 第5回(第13回) | 2020年11月13日 | ギフティ従業員36名 | 124個 | 124,000株 | 3,215円 |
| 第6回(第14回) | 2021年3月12日 | ギフティ子会社従業員5名 | 263個 | 26,300株 | 3,898円 |
| 第7回(第15回) | 2021年11月12日 | ギフティ従業員37名 | 66個 | 66,000株 | 3,528円 |
| 第8回(第16回) | 2022年11月14日 | ギフティ従業員41名 | 62個 | 62,000株 | 2,291円 |
| 第9回(第17回) | 2023年11月14日 | ギフティ従業員66名 | 89個 | 89,000株 | 1,792円 |
| 第10回(第18回) | 2024年4月16日 | ギフティ取締役4名 | 4,000個 | 400,000株 | 1,253円 |
| 第11回(第19回) | 2024年11月14日 | ギフティ従業員61名 | 486個 | 48,600株 | 1,395円 |
| 第12回(第20回) | 2025年11月19日 | ギフティ従業員86名 | 641個 | 64,100株 | 1,188円 |
表の個数は、Ⅰの部に記載された2026年5月7日現在の旧新株予約権の個数で、行使等により変動する可能性があるとされています。目的となる株式数を合計すると1,110,000株で、発行済株式数29,777,502株に対して約3.7%です(筆者計算)。1個あたりの目的となる株式数は回によって異なり、第6回(旧第14回)と第10回〜第12回(旧第18回〜第20回)は100株、それ以外の回は1,000株とされているため、個数だけでなく株式数で比較することが必要です。
第10回(旧第18回)を除く各回は、払込金額を要しない新株予約権で、行使時にも当社または子会社の取締役、執行役員、従業員等の地位にあることが条件とされています。対象者が死亡した場合は相続人が行使できますが、その相続人が死亡した場合は行使できないという定めも共通です。ストック・オプションの開示例はストック・オプションの注記の記載例、税制適格の要件は税制適格ストックオプションで解説しています。
EBITDA基準の有償ストック・オプション
第10回(旧ギフティ第18回)新株予約権は、他の回と性格が大きく異なります。2024年5月1日にギフティの取締役4名に4,000個(目的となる株式400,000株)が割り当てられたもので、1個あたりの発行価額は10円です。この発行価額は、第三者評価機関である株式会社プルータス・コンサルティングが、株価情報等を考慮して一般的なオプション価格算定モデルであるモンテカルロ・シミュレーションによって算出した結果を参考に決定したもので、公正な価格であるため有利発行ではないとされています。行使価額は1株1,253円です。
行使条件は業績連動型で、2024年1月1日から2033年12月31日までのいずれかの事業年度において、EBITDA(営業利益+のれん償却額+減価償却費+株式報酬費用+利息費用)が一度でも50億円を超えた場合に20%、75億円を超えた場合に50%、100億円を超えた場合に100%を上限として行使できます。会計基準の変更や業績に多大な影響を及ぼす事象が発生した場合に、取締役会が合理的な範囲で判定に使用する実績数値を調整できる旨も定められています。また、行使時に当社または当社関係会社の取締役、監査役または従業員であることが求められ、相続人による行使は原則として認められません。
図12 旧ギフティ第18回新株予約権(2024年5月1日割当)。Ⅰの部 株式移転計画別紙2-⑩をもとに作成
なお、このような権利確定条件付きの有償新株予約権は、払込みがあるからといって費用計上が不要になるわけではありません。企業会計基準委員会の実務対応報告第36号により、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、ストック・オプションに準じて会計処理することとされています。上場準備会社が業績連動型の有償新株予約権を検討する場合は、評価方法、業績条件の定義(EBITDAの計算式など)、会計処理を、発行前に監査法人と確認しておくことが重要です。
譲渡制限付株式(RS)と報酬枠の引継ぎ
役員報酬の引継ぎも、テクニカル上場ならではの論点です。新会社は設立時点で株主総会を開いていないため、設立から最初の定時株主総会までの取締役・監査役の報酬枠を、株式移転計画に添付した定款の附則で定め、ギフティの定時株主総会(2026年3月30日)で承認を得ています。取締役に対する金銭報酬は年額150百万円以内(使用人兼務取締役の使用人分給与は含まず、うち社外取締役分は年額24百万円以内)、監査役の報酬は年額15百万円以内です。
これとは別枠で、社外取締役を除く取締役に対し、譲渡制限付株式(RS)を付与するための金銭報酬債権を年額2億円以内、発行または処分する普通株式の総数を年50,000株以内で支給できるとされています。譲渡制限期間は最大2年で、割当株式の2分の1は「割当日の属する事業年度末日から3か月を超える日」と「割当日から1年を経過する日」のいずれか遅い日まで、残りは割当日から2年を経過する日まで譲渡が制限されます。さらに定款附則では、ギフティの2023年3月28日の定時株主総会で承認された譲渡制限付株式報酬に基づく割当契約について、新会社が2026年7月1日以降、ギフティの契約上の地位及び権利義務を承継できる旨も定められています。
図13 株式移転計画別紙1(定款附則)をもとに作成。設立から最初の定時株主総会終結までの枠で、ギフティの定時株主総会(2026年3月30日)で承認
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コーポレート・ガバナンス:持株会社にどう引き継ぐか
Ⅰの部の「コーポレート・ガバナンスの状況等」の冒頭には、「当社は、いわゆるテクニカル上場により東京証券取引所プライム市場に上場する予定であり、本株式移転により当社の完全子会社となるギフティと同水準もしくはそれ以上のコーポレート・ガバナンスを構築していく予定」と書かれています。Ⅰの部提出時点では新会社は未設立のため、基本的な考え方や企業統治の体制は「未定」とされ、その代わりにギフティの体制が記載されている、という構成です。
新会社の定款では、取締役会、監査役及び監査役会、会計監査人を置くことが定められており、機関設計はギフティと同じ監査役会設置会社です。取締役は7名以内(任期1年)、監査役は3名以内(任期4年)とされています。ギフティは、事業に精通した取締役を中心とする取締役会が経営の基本方針や重要な業務執行を決定し、強い法的権限を有する監査役が独立した立場から職務執行を監査する体制が、経営の効率性と健全性の確保に有効だとして監査役会設置会社を採用している、と説明しています。機関設計の選び方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?も参考になります。
図14 監査役会設置会社。任意の指名・報酬委員会と内部監査の体制はⅠの部に記載されたギフティの体制。持株会社の体制はギフティと同水準以上を構築する予定とされている
新会社の設立時取締役は、代表取締役の太田睦氏・鈴木達哉氏、取締役の藤田良和氏、社外取締役の妹尾堅一郎氏・中島真氏・伊能美和子氏の6名で、設立時監査役は工木大造氏(常勤)、秋元芳央氏、植野和宏氏の3名で全員が社外監査役です。いずれもギフティの役員からの就任で、役員9名のうち女性は1名(11%)です。ギフティの取締役会は7名(うち社外3名)で構成されていましたが、取締役の柳瀬文孝氏は新会社の役員予定には含まれておらず、新会社の取締役会は6名中3名が社外取締役という構成になります。
図15 左はギフティの2025年12月31日時点、右は2026年7月1日就任予定の当社取締役。監査役は両社とも工木・秋元・植野の3氏(全員社外)
| 氏名 | 新会社での役職 | 主な経歴(Ⅰの部の略歴から) | 割り当てられる株式数 |
|---|---|---|---|
| 太田 睦 | 代表取締役 | 2010年8月ギフティ設立、代表取締役CEO | 5,168,400株 |
| 鈴木 達哉 | 代表取締役 | 2013年4月ギフティ取締役COO、2020年3月代表取締役COO | 1,338,400株 |
| 藤田 良和 | 取締役 | 野村證券、オリックスを経て2017年2月ギフティ取締役CFO | 485,800株 |
| 妹尾 堅一郎 | 社外取締役 | 大学教授、政府委員、上場会社の社外取締役等 | 7,500株 |
| 中島 真 | 社外取締役 | 事業会社の取締役、ギフティ社外監査役を経て社外取締役 | 1,700株 |
| 伊能 美和子 | 社外取締役 | NTTグループ等で新規事業・グループ会社経営、上場会社の社外取締役 | 5,300株 |
| 工木 大造 | 常勤監査役(社外) | インターネット企業の取締役等 | 1,800株 |
| 秋元 芳央 | 監査役(社外) | 弁護士 | 4,600株 |
| 植野 和宏 | 監査役(社外) | 公認会計士・税理士、監査法人勤務 | 200株 |
プライム市場では、コーポレートガバナンス・コード(2026年7月改訂後は原則4-10、改訂前は原則4-8)により、独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任することが求められています(コンプライ・オア・エクスプレイン)。社外取締役が取締役6名中3名という構成は、この水準を意識した人数といえます。ただしⅠの部では、社外取締役・社外監査役の独立性に関する基準や方針を明確に定めたものはなく、経歴や当社との関係を踏まえて、経営陣から独立した立場で職務を遂行できる十分な独立性が確保できることを前提に判断する予定と記載されています。プライム市場の上場会社として、独立性判断基準を明文化するかどうかは、設立後の検討事項の一つになるでしょう。社外取締役の人数の考え方は社外取締役は何人必要かで解説しています。
社外監査役の植野和宏氏については、会計監査人に選定予定のEY新日本有限責任監査法人に公認会計士として所属していたものの、2019年3月に同監査法人を退職していること、同監査法人が当社から多額の金銭を得ている会計専門家に当たらないことから、社外監査役としての独立性は十分に保たれている、という説明が付されています。会計監査人の出身者を監査役に選任する場合に、どのような観点で独立性を説明するかの参考例です。
取締役会・任意委員会の運営実績
ギフティの2025年12月期の取締役会は17回開催され、取締役7名と監査役3名の全員が17回すべてに出席しています。取締役会での具体的な検討事項として、法定審議事項のほか、経営戦略・M&A・投融資、経営計画・予算・決算・業績、役員報酬、ガバナンス・サステナビリティに関する事項が挙げられています。監査役会は同期に13回開催され、3名全員が13回すべてに出席しています。
また、ギフティは取締役の指名及び報酬等に関する手続の公平性・透明性・客観性を強化するため、取締役会の任意の諮問機関として指名委員会及び報酬委員会を設置しています。2025年12月期の指名・報酬委員会は1回開催され、委員長の妹尾堅一郎氏と委員の中島真氏・伊能美和子氏(いずれも社外取締役)が出席し、取締役の選任、報酬制度、報酬について検討しています。独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない会社には、独立した指名委員会・報酬委員会を設置して適切な関与・助言を得ることが求められているため(2026年7月改訂後のコードでは原則4-7、改訂前は補充原則4-10①。改訂前は、プライム市場上場会社には各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その独立性に関する考え方等を開示することも求められていました)、持株会社でも同様の委員会をどう設置・運営するかが論点になります。機関設計全般はIPO審査の「機関設計」とはをご覧ください。
グループの内部統制とリスク管理
ギフティは取締役会で「内部統制システムの構築に関する基本方針」を決議しており、Ⅰの部にはその内容が記載されています。職務権限規程・業務分掌規程・コンプライアンス規程の制定と内部監査担当によるギフティ及び子会社の内部監査、内部通報制度の導入、文書管理規程と情報システム管理規程による情報の保存・管理、リスク管理規程、原則毎月1回の定時取締役会、組織規程等による権限と責任の明確化、関係会社管理規程による子会社管理、監査役を補助する使用人の人事異動・評価・懲戒に対する監査役会の同意、財務報告に係る内部統制の整備・運用と定期的な評価、反社会的勢力との関係遮断などです。
リスク管理では、リスク管理規程を定め、コーポレート本部長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置して、サステナビリティに関するリスクを含めて対処すべきリスクを認識・特定し、対策を協議しています。弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整え、内部監査によってリスク管理体制全般の適切性・有効性を検証しているとされています。責任限定契約は社外取締役・社外監査役全員と締結しており、役員等賠償責任保険(D&O保険)はギフティ及び子会社の取締役・監査役・管理職従業員を被保険者とし、保険料は全額会社負担です。
持株会社化の目的の一つが「リスク管理・内部統制等のグループガバナンス向上」である以上、これらの規程や会議体を、持株会社と各事業会社のどちらに置き、どのように役割分担するかが、設立後の重要な実務になります。たとえば、関係会社管理規程の対象をギフティの子会社から持株会社の子会社全体に広げること、内部通報窓口をグループ共通にすること、J-SOXの評価範囲をグループ全体で設計し直すことなどが考えられます。内部統制報告制度の進め方はJ-SOXの進め方、内部通報体制は内部通報体制は上場審査でどこまで見られるかで解説しています。
内部監査と三様監査:2名体制をグループにどう広げるか
Ⅰの部の「監査の状況」によると、ギフティは独立した内部監査室を設置しておらず、合計2名の内部監査担当者が内部監査を実施しています。具体的には、コーポレート本部に所属する内部監査担当者1名が自己の属する本部を除く業務監査を実施し、代表取締役に監査結果を報告しています。コーポレート本部に対する監査は事業本部に所属する内部監査担当者1名が実施することで、監査の独立性を確保しているとされています。
内部監査担当者は、内部監査規程に基づいて内部監査計画を策定し、代表取締役の承認を得たうえで全部署に対して監査を実施し、結果を代表取締役及び監査役に報告します。重要な報告事項については、代表取締役及び監査役が取締役会及び監査役会へ直接報告することを指示するものとしています。内部監査の基本方針は、業務運営及び財産管理の実態を調査し、経営方針、法令、定款及び諸規程への準拠性を確かめ、会社財産の保全と業務運営の適正性の確保を図り、経営の合理化と効率向上に資することです。
図16 独立した内部監査室は置かず、所属の異なる2名が互いの部署を監査する体制。Ⅰの部「監査の状況」をもとに作成
兼務者による内部監査では、担当者が自分の所属部署を監査する「自己監査」を避けることが重要で、ギフティのように所属の異なる2名が相互に監査する体制は、上場準備会社でもよく採用される方法です。詳しくは内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)で解説しています。
一方で、持株会社体制に移行すると、内部監査の対象は国内外の子会社を含むグループ全体に広がります。ギフティの内部統制の基本方針でも「ギフティ内部監査担当者は、ギフティ及びその子会社に対して監査を実施します」とされていますが、持株会社の内部監査を誰が担い、どの会社に所属させ、どの範囲を何人で監査するのかは、新会社として改めて設計する必要があります。Ⅰの部では新会社の取締役がギフティ及びその子会社各社の取締役及び監査役を兼任する予定とされているため、持株会社と事業会社の兼務関係を前提に、監査の独立性をどう確保するかも論点になります。人員の考え方は内部監査の人数と体制も参考になります。
三様監査については、内部監査担当者、監査役及び会計監査人が三者間で定期的に会合を開催し、課題・改善事項等の情報共有を図っていると記載されています。また、社外取締役及び社外監査役は、内部監査計画並びに内部監査、内部統制の運用状況、監査役監査及び会計監査の結果について、取締役会で報告を受ける予定とされています。三様監査の連携の実務は監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査)で整理しています。
会計・開示の論点:持株会社化で何が変わるか
ギフティグループのⅠの部には、新会社の財務諸表も、重要な会計方針の注記もありません。「経理の状況」は「当社は新設会社であるため、該当事項はありません」とされ、ギフティの有価証券報告書を参照する形です。第四部の「上場申請会社の最近の財務諸表」も、決算期を迎えていないため該当事項はありません。会計監査人には、設立時会計監査人としてEY新日本有限責任監査法人が株式移転計画で定められており、監査報酬は新設会社のため記載がありません。新会社の定款では、会計監査人の報酬等は代表取締役が監査役会の同意を得て定めるとされています。
ここからは一般論になりますが、単独株式移転による持株会社の設立は、企業結合会計上は「共通支配下の取引」として扱われます。持株会社の個別財務諸表では、受け入れた子会社株式の取得原価を、原則として株式移転日の前日における子会社の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定します。連結財務諸表は、旧親会社(ギフティ)の連結財務諸表を実質的に引き継ぐ形となり、株式移転によって新たなのれんが生じることはありません。
図17 企業結合会計基準及び同適用指針における一般的な取扱いを筆者が整理したもの。持株会社の財務諸表はⅠの部提出時点では存在しない
株主資本の内訳について、株式移転計画では新会社の資本金を20百万円、資本準備金を5百万円、利益準備金を0円と定めています。株式移転では、資本金や準備金の額を計画で比較的自由に定めることができ、それ以外の部分は一般にその他資本剰余金となります。持株会社が子会社から受け取る配当を原資に株主還元を行う場合、持株会社の分配可能額がどうなるかは資本政策上の重要な検討事項です。ギフティグループの配当政策は、新設会社のため未定としつつ、安定的な利益還元と内部留保の充実を基本に業績と経営環境を勘案して決定する方針とする予定とされ、期末配当の基準日は12月31日、中間配当の基準日は6月30日です。
このほか、子会社となるギフティが保有する自己株式に新会社株式が割り当てられる場合の「子会社が保有する親会社株式」の会計処理、新株予約権の承継に伴う会計処理、持株会社と事業会社の間の経営指導料などのグループ内取引の設計(移転価格や消費税を含む)も、持株会社化の実務で確認すべき論点です。
収益に関係する記載:未使用のeギフトに係る手数料
Ⅰの部には収益認識の会計方針の記載はありませんが、事業等のリスクの「eギフト発行及び販売に係る手数料について」に、収益モデルに関わる重要な記載があります。ギフティ及びその子会社は、通常、eギフト発行企業及び利用企業から、eギフトの発行額に一定の手数料率を乗じて算出した販売手数料・発行手数料を受領していますが、特定の販売先及びeギフトコンテンツからは、eギフトの発行額のうちユーザーが使用せずに有効期限を迎えた発行額を手数料として受領しています。後者について、手数料の算出方法が前者の方法に変更された場合や、ユーザーの使用率が大幅に上昇して未使用の発行額が減少した場合には、業績に影響を与える可能性があるとされています。
このように、契約ごとに手数料の決まり方が異なるビジネスでは、どの時点で、どの金額を収益として認識するかを契約類型ごとに整理し、監査法人と合意しておくことが欠かせません。上場審査でも、収益認識の方針と実際の契約内容が整合しているかは確認されやすい論点です。詳しくは上場審査で問われる収益認識をご覧ください。
事業等のリスクと、持株会社化で意識すべき点
Ⅰの部の事業等のリスクは、新会社設立後はギフティの事業等のリスクがグループのリスクとなり得るという前提で、ギフティのリスクを踏まえて記載されています。「特に重要なリスク」と「重要なリスク」に分けて12項目が挙げられています。
| 区分 | 項目 | Ⅰの部の記載の要点 |
|---|---|---|
| 特に重要 | システム障害 | 人為的ミス、機器故障、アクセス集中、不正アクセス等によるサービス障害 |
| 特に重要 | 個人情報保護 | プライバシーマークを取得。漏洩時の損害賠償請求や信用低下 |
| 特に重要 | 人材の確保・定着及び育成 | 人材確保が計画通りに進まない場合の競争力低下 |
| 特に重要 | 市場動向等 | 新たなビジネスモデルの登場や新規参入による競争激化 |
| 重要 | 技術革新 | 新技術・新サービスへの対応の遅れや多大な支出 |
| 重要 | M&A、資本業務提携等 | 偶発債務や未認識債務の判明、のれん等の減損 |
| 重要 | 新規事業 | ポイントサービスや決済サービス等の検討、減損損失の可能性 |
| 重要 | 海外展開 | UAE、マレーシア、ベトナム、インドネシアの子会社。法規制・為替等 |
| 重要 | 不正行為 | なりすましや他人のクレジットカードによる不正な購入 |
| 重要 | 顧客の獲得・継続 | 法人顧客の販売促進活動の停滞 |
| 重要 | eギフト発行及び販売に係る手数料 | 未使用で有効期限を迎えた発行額を手数料とする取引の変化 |
| 重要 | 法的規制 | 事業に重要な影響を及ぼす固有の法規制はない |
持株会社化の目的と照らし合わせると、M&Aとのれんの減損、海外展開、新規事業といったリスクは、まさに持株会社が担う「投資判断・資源配分」と「PMIを含むグループ経営管理」に直結しています。Ⅰの部によると、ギフティの連結子会社には、UAEのYouGotaGift.com Ltd.(議決権所有割合90.77%)、Brewtope株式会社(46.84%)などが含まれ、YouGotaGift.com Ltd.他3社は売上高の連結売上高に占める割合が10%を超えています。のれんの減損リスクが上場審査や上場後の開示でどう見られるかはIPO審査でのれんの減損リスクはどう見られるかで解説しています。
上場準備会社・持株会社化を検討する会社が学べること
ギフティグループのⅠの部から、上場準備会社や、上場後に持株会社化を検討する会社が実務に生かせるポイントを整理します。
図18 本記事の論点を筆者が整理したもの
1.組織再編の目的を、現状の課題と再編後の役割分担に対応させて言語化する。ギフティグループは、投資判断・資源配分、PMIを含むグループ経営管理、グループガバナンスという3つの課題と、持株会社・事業会社それぞれの役割を対応させて説明しています。目的が明確であるほど、株主総会の説明、開示書類、審査対応の一貫性が保てます。
2.手続は効力発生日から逆算して組む。取締役会での計画承認、有価証券届出書の提出、事前備置、株主総会での承認、Ⅰの部の提出と上場承認、旧会社の上場廃止、新会社の設立と上場という流れを、定時株主総会に合わせて設計しています。上場スケジュールの考え方は上場スケジュールはどこで遅れるかも参考になります。
3.新株予約権の要項に、組織再編時の取扱いをあらかじめ定めておく。発行時の要項に再編対象会社の新株予約権を交付する条件を定めていたことで、12本の新株予約権を同数・同等の内容で承継し、新株予約権買取請求権の発生を避けることができています。上場前に発行する新株予約権でも、将来の組織再編を想定した条項を入れておくことが有効です。
4.役員報酬の枠や株式報酬の契約も「引継ぎ」が必要になる。新会社は設立時に株主総会を開いていないため、報酬枠を定款附則で定め、旧会社の株主総会で承認を得ています。RSの割当契約の承継も定款附則に定めています。報酬制度を持っている会社ほど、組織再編時の手当てが必要です。
5.持株会社化は内部監査・内部統制の再設計とセットで考える。2名体制の相互監査は単体の会社では合理的な体制ですが、グループ全体を対象とする持株会社では、監査範囲、人員、所属、兼務関係を改めて設計する必要があります。内部監査の始め方は内部監査の始め方で解説しています。
6.会計処理と分配可能額を事前に確認する。単独株式移転は共通支配下の取引として処理され、のれんは生じませんが、資本金・準備金の設定、子会社が保有する親会社株式の処分、持株会社の分配可能額などは事前に確認が必要です。
7.独立性の説明を丁寧に行う。会計監査人の出身者を社外監査役に選任する場合の説明や、独立性判断基準を明文化するかどうかなど、プライム市場の会社として求められる説明水準を意識することが大切です。
- 組織再編(持株会社化を含む)の目的を、現状の課題と再編後の役割分担に対応させて説明できるか
- 取締役会決議から効力発生日・上場日までの日程を、株主総会の時期と開示書類の提出時期から逆算して組んでいるか
- 発行済みの新株予約権の要項に、組織再編時に再編対象会社の新株予約権を交付する条件が定められているか
- 役員報酬の枠や株式報酬(RS等)の契約を、再編後の会社がどう引き継ぐかを決めているか
- 内部監査の担当者が自己の所属部署を監査しない体制になっており、グループ会社まで監査範囲を広げる計画があるか
- 株式移転などの会計処理、自己株式の処分、持株会社の分配可能額について、監査法人と事前に確認しているか
よくある質問
通常のIPOは、未上場会社が公募・売出しを行って新たに上場するものです。テクニカル上場は、上場会社が株式移転などの組織再編により上場廃止となる場合に、実質的な存続会社と認められる新設会社などが速やかに上場する仕組みで、公募・売出しは行われません。ギフティグループの場合は、ギフティ株式の上場廃止(2026年6月29日予定)と新会社株式の上場(2026年7月1日予定)が連続して行われ、株主は1対1の比率で新会社の株式を受け取ります。
ギフティグループのⅠの部では、ギフティ単独の株式移転であり、株式移転時のギフティの株主構成と新会社の株主構成に変化がないことから、株主に不利益を与えないことを第一義として1対1とし、第三者機関による算定は行っていないと説明されています。複数の会社が関与する共同株式移転や株式交換では、比率の公正性を確保するために第三者算定を行うのが一般的です。
ギフティグループの事例では、ギフティの新株予約権は効力発生日に消滅し、同等の内容かつ同一の数の新会社の新株予約権が交付されています。行使価額や行使の条件は変わらず、行使期間の開始日が効力発生日以降となるように定められています。発行時の要項に組織再編時の取扱いが定められていたため、新株予約権買取請求権は発生しないとされています。
Ⅰの部では、新会社の内部監査体制は新設会社のため記載がなく、ギフティの2名体制(所属の異なる2名による相互監査)が記載されています。一般に、持株会社体制では内部監査の対象がグループ全体に広がるため、持株会社に内部監査機能を置くか、事業会社の内部監査部門と分担するかなど、監査範囲と人員を改めて設計することになります。
最初の一歩は、組織再編の「前提条件リスト」を作ることから
持株会社化やテクニカル上場は、上場会社だけの話ではありません。上場準備の段階で、新株予約権の要項、株式報酬の契約、定款、関係会社管理規程、内部監査規程などに、将来の組織再編を想定した条項や手当てが入っているかどうかで、後の選択肢が大きく変わります。まずは、自社の株式・新株予約権・報酬制度・規程・内部監査体制を一覧にし、「組織再編をするとしたら、何を引き継ぎ、何を作り直す必要があるか」を整理するところから始めてみてください。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)、Ⅰの部の読み方はⅠの部とⅡの部は何が違うかも参考になります。
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ギフティグループの機関設計・内部監査・会計・資本政策の25論点を、自社の状況と並べて点検できます。申請期の期末日を入れると上場までの逆算表も作れます。
まとめ
ギフティグループ株式会社は、東証プライム市場に上場していた株式会社ギフティが単独株式移転によって設立した持株会社で、2026年6月1日に上場承認を受け、2026年7月1日にテクニカル上場しました。Ⅰの部からは、持株会社化の目的(投資判断・資源配分の高度化、PMIを含むグループ経営管理の強化、グループガバナンスの向上)、2026年2月の取締役会決議から7月の効力発生・上場までの手続と日程、株式移転比率1対1と第三者算定を行わない理由、12本の新株予約権の承継、EBITDA基準の有償ストック・オプション、旧会社の株主総会で承認した報酬枠とRSの承継、監査役会設置会社としてのガバナンス体制、2名体制の内部監査と三様監査の連携を具体的に読み取ることができます。
テクニカル上場のⅠの部は、新会社の財務情報や会計方針が載らない一方で、組織再編の手続と権利関係の引継ぎが詳しく書かれているのが特徴です。上場準備会社の方も、本記事のチェックリストを使って、将来の組織再編に耐えられる株式・報酬・管理体制になっているかを確認してみてください。
ショートレビュー、資本政策、機関設計、内部監査・内部統制、会計方針と開示、Ⅰの部の作成、審査対応まで、上場準備の実務を公認会計士が支援します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
本記事の根拠
- 東京証券取引所 新規上場会社情報「ギフティグループ株式会社 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」
- 企業会計基準委員会 実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」
- 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2026年7月21日版:原則4-7、原則4-10)
免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。
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