連結キャッシュ・フロー計算書の作り方
作り方は2つあります。各連結会社のキャッシュ・フロー計算書を合算して連結会社相互間のキャッシュ・フローを相殺消去する原則法と、連結損益計算書と連結貸借対照表の期首・期末の増減額の分析などから作る簡便法です(移管指針第6号 第19項・第47項)。簡便法でも、原則法と同様の情報が得られるよう留意します。
- 営業活動によるキャッシュ・フローは、直接法と間接法のどちらかで表示します(選択適用)
- 連結の範囲の変動を伴う子会社株式の取得は、支出額から子会社が持っていた現金及び現金同等物を差し引いた額を、投資活動に独立の項目で表示します
- 非支配株主への配当金の支払額は、財務活動に独立して表示します
2026年10月12日更新
連結キャッシュ・フロー計算書を、各社のキャッシュ・フロー計算書を合算して作るのか。それとも連結の財務諸表から作るのか。
両方あります。前者が原則法、後者が簡便法です。ただし、この呼び方が出てくるのは作成基準ではなく実務指針の結論の背景です。
移管指針第6号の第47項が、簡便的に連結損益計算書並びに連結貸借対照表の期首残高と期末残高の増減額の分析及びその他の情報から作成することも認められる、としています。
- 原則法と簡便法の違い
- 簡便法の根拠が移管指針第6号 第47項であること
- 直接法と間接法は選択適用であること
- 資金の範囲は現金及び現金同等物であること
- 3か月以内が定義ではなく例示であること
- どちらを選ぶかの考え方
📌 結論 原則法と簡便法
簡便法は認められていますが、原則法を採用した場合と同様のキャッシュ・フローに関する情報が得られるよう留意する、という条件付きです。
作成基準は、連結キャッシュ・フロー計算書の作成に当たっては連結会社相互間のキャッシュ・フローは相殺消去しなければならない、としています。各社のキャッシュ・フロー計算書を連結することが想定されているということです。
そのうえで移管指針第6号の第47項が、簡便的に連結損益計算書並びに連結貸借対照表の期首残高と期末残高の増減額の分析及びその他の情報から作成することも認められる、としています。
ただし条件があります。原則法を採用した場合と同様のキャッシュ・フローに関する情報が得られるよう留意する、という一文です。簡便法は情報の質を落としてよいという意味ではありません。
自社に当てはめるとどうなるか、個別にお答えします
会計アドバイザリー:会計方針の検討、監査対応、決算・開示の支援。初回のご相談は無料、オンラインにも対応しています。
会計アドバイザリーの内容を見る / 相談内容を送る
🔀 直接法と間接法
作成基準 第三 一は、次のいずれかの方法により表示しなければならない、としています。原則と例外の関係ではありません。
作成基準の第三 一は、営業活動によるキャッシュ・フローについて、次のいずれかの方法により表示しなければならない、としています。直接法と間接法です。
選択適用です。間接法が原則で直接法が例外、という関係ではありません。実務では間接法が多く使われていますが、それは選択の結果です。
直接法を選ぶと、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示することになります。営業収入や仕入支出を実額で拾える体制が要ります。
原則法と簡便法の選択、資金の範囲の決定、区分ごとの表示の整理、連結会社相互間の相殺消去、そして増減分析の様式づくりまで通してお受けします。初めて連結キャッシュ・フロー計算書を作る会社では、検算のやり方までご一緒します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
💰 資金の範囲
3か月以内という数字は定義ではなく注2の例示です。定義に組み込んで書くと誤りになります。
作成基準の第二 一は、対象とする資金の範囲を現金及び現金同等物とし、現金を手許現金及び要求払預金、現金同等物を容易に換金可能であり価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資と定義しています。
注2は、現金同等物には例えば取得日から満期日又は償還日までの期間が3か月以内の短期投資である定期預金などが含まれる、としています。
3か月以内という数字は例示です。定義そのものに書かれているわけではありません。定義に組み込んで説明すると、期間だけで機械的に判定することになってしまいます。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら / 会計アドバイザリーを見る
🧭 どちらを選ぶか
簡便法は手を抜く方法ではありません。得られる情報が同じであることを確かめる作業が要ります。
子会社が少なく、各社でキャッシュ・フロー計算書を作れるなら原則法が素直です。連結会社相互間のキャッシュ・フローを相殺消去します。
子会社が多く、各社の作成負担が重い場合は簡便法という選択肢があります。移管指針第6号には設例による解説も置かれています。
どちらを選んでも、検算はしてください。期末の現金及び現金同等物の残高が貸借対照表と合っているか。ここが合わないまま提出することはできません。
🛠 原則法と簡便法の手順
どちらの方法でも、最後にできあがる連結キャッシュ・フロー計算書は同じ形です。違うのは、どこから数字を集めるかです。
| 手順 | 原則法 | 簡便法 |
|---|---|---|
| 出発点 | 各連結会社のキャッシュ・フロー計算書(連結パッケージで集める) | 連結貸借対照表の期首残高と期末残高、連結損益計算書 |
| 連結会社相互間の取引 | 合算したうえで、相互間のキャッシュ・フロー(売上代金の受払い、貸付けと返済、配当金の受払いなど)を相殺消去する(移管指針第6号 第19項) | 連結後の数字から作るため、相互間の取引はすでに消えている |
| 増減分析で拾えない情報 | 各社のキャッシュ・フロー計算書に含まれている | 有形固定資産の取得と売却の総額、借入れと返済の総額などを、各社から別に集める |
| 子会社を新しく連結したとき | その子会社の連結開始時の現金及び現金同等物を差し引いた純額で表示する | 同じ。あわせて、受け入れた資産・負債を貸借対照表の増減から除いて分析する |
| 検算 | 期末の現金及び現金同等物の残高が、連結貸借対照表の現金及び預金などと整合するか | 同じ |
相殺消去の例(原則法)
架空の例です。親会社P社が80%子会社S社に商品を300で販売し、当期中に代金300を回収しました。直接法で作っていれば、P社の営業収入300とS社の仕入支出300を相殺します。間接法で作っている場合も、債権債務と売上・仕入を連結上消去した後の数字になるよう、各社の調整項目を消去します。
P社がS社に500を貸し付けたときは、P社の投資活動の「貸付けによる支出500」と、S社の財務活動の「借入れによる収入500」を相殺します。S社が配当金100を支払い、そのうち80をP社が受け取った場合は、P社の受取80とS社の支払80を相殺し、残りの20を「非支配株主への配当金の支払額」として財務活動に表示します(移管指針第6号 第22項)。
🧾 連結特有の表示区分
個別のキャッシュ・フロー計算書にはない、連結ならではの項目があります。どの区分に入れるかは作成基準と移管指針第6号で決まっています。
| 取引 | 表示区分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 連結の範囲の変動を伴う子会社株式の取得・売却 | 投資活動(独立の項目) | 作成基準 第二 二 4、移管指針第6号 第8-2項 |
| 連結の範囲の変動を伴わない子会社株式の取得・売却(非支配株主からの追加取得など) | 財務活動(非支配株主との取引として) | 移管指針第6号 第9-2項 |
| 非支配株主への配当金の支払額、非支配株主の増資引受による払込額 | 財務活動(それぞれ独立掲記) | 同 第22項 |
| 持分法適用会社からの配当金の受取額 | 営業活動または投資活動(利息及び配当金について選んだ区分の方法に従う) | 同 第23項 |
| 法人税等の支払額 | 営業活動 | 作成基準 第二 二 2 |
計算例:子会社株式の取得
架空の例です。P社がS社株式の100%を1,000で現金取得して連結子会社にし、支配獲得時にS社が現金及び現金同等物200を持っていたとします。投資活動には、支出1,000から200を差し引いた800を、子会社株式の取得による支出として独立の項目で表示します(作成基準 第二 二 4、移管指針第6号 第46項)。S社の現金200は連結の現金及び現金同等物に入ってきますので、1,000で表示すると期末残高との検算が合いません。
反対に、すでに連結している子会社の株式を非支配株主から追加で買った場合は、連結の範囲が変わりませんので、投資活動ではなく財務活動です。同じ「子会社株式の取得」でも区分が変わる点に注意してください。
❓ よくある質問
A. 簡便法も認められています。ただし原則法と同様の情報が得られるよう留意することとされています。
A. 作成基準本文ではなく、移管指針第6号 第47項(結論の背景)と設例による解説です。
A. 違います。作成基準 第三 一は、いずれかの方法により表示しなければならない、としています。選択適用です。
A. 現金及び現金同等物です。現金は手許現金及び要求払預金です。
A. 定義ではありません。注2の例示です。
A. 相殺消去しなければならないとされています。
A. 2024年7月にASBJへ移管され、移管指針第6号になりました。
A. 期末の現金及び現金同等物の残高が貸借対照表と整合しているかです。
A. 連結の範囲の変動を伴う取得なら、支出額から子会社が持っていた現金及び現金同等物を差し引いた額を、投資活動に独立の項目で表示します(作成基準 第二 二 4、移管指針第6号 第46項)。連結の範囲が変わらない追加取得は、財務活動です(同 第9-2項)。
A. 財務活動によるキャッシュ・フローに独立して表示します(移管指針第6号 第22項)。親会社が受け取った分は連結会社相互間のキャッシュ・フローとして相殺消去します。
📄 まとめ
連結キャッシュ・フロー計算書は、各社のキャッシュ・フロー計算書を連結する方法と、連結の財務諸表から作る方法があります。呼び方が出てくるのは実務指針の結論の背景です。
営業活動によるキャッシュ・フローの表示は直接法と間接法の選択適用です。原則と例外ではありません。
資金の範囲は現金及び現金同等物。3か月以内は定義ではなく例示です。
子会社に各社分を作らせるか、連結の数字から組むか。子会社の経理体制で決めることになりますが、どちらにしても検算の手順は先に決めておいてください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(企業会計審議会) 第二 一、第二 二 2・4、第三 一、注2
- 移管指針第6号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」(企業会計基準委員会) 第8-2項、第9-2項、第19項、第22項、第23項、第46項、第47項
あわせて読みたい