連結の開始仕訳はなぜ毎年書くのか|利益剰余金の期首残高に置き換える理由

連結の作業を引き継いだ人が最初につまずくのが、開始仕訳です。なぜ前期と同じ仕訳をもう一度書くのか。

理由は1つです。連結財務諸表は、毎期、個別財務諸表を基礎として作成するからです。企業会計基準第22号の第10項がそう定めています。連結だけの帳簿が翌期に引き継がれる仕組みにはなっていません。

ですから前期に入れた連結修正は、翌期にもう一度入れ直すことになります。そのとき、前期の損益に効いた修正は当期の損益ではありませんから、利益剰余金の期首残高に置き換えます。

この記事でわかること

  • 開始仕訳が必要になる理由(第22号 第10項)
  • 開始仕訳という語が会計基準にないこと
  • 損益項目は利益剰余金の期首残高に置き換えること
  • 資産負債項目はそのまま入れ直すこと
  • 毎期の連結作業の順番
  • まちがえやすい4点

📌 結論 個別から毎期積み上げるから

図1 なぜ毎年やり直すのか前提そこから出てくること連結は個別財務諸表を基礎として作成する(企業会計基準第22号 第10項)連結だけの帳簿が翌期に引き継がれない翌期の個別財務諸表は、前期の連結修正を反映していない前期に切った連結修正を、翌期にもう一度入れ直すことになる前期の連結修正のうち損益に関するもの当期の損益ではないので、利益剰余金の期首残高に置き換える

開始仕訳という言葉は会計基準にも実務指針にも出てきません。第10項の考え方から、実務上そうせざるを得なくなるという性質のものです。

企業会計基準第22号の第10項は、連結財務諸表は企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならない、としています。

この一文が開始仕訳の出発点です。基礎になるのは個別財務諸表であって、前期の連結精算表ではありません。ですから前期の連結修正は、当期の個別財務諸表のどこにも反映されていません。

なお、開始仕訳という言葉そのものは会計基準にも実務指針の本文にも出てきません。基準が名前をつけて定めた処理ではなく、第10項の考え方から実務上そうせざるを得なくなる手続です。項番号を挙げて開始仕訳を説明している解説を見かけたら、その項番号を確かめてみてください。

🧭 毎期の手順

図2 毎期の手順個別財務諸表を合算する前期までの連結修正を入れ直す(開始仕訳)当期分の連結修正を入れる内部取引と債権債務を相殺消去する未実現損益を消去する

2番目が開始仕訳です。ここを飛ばすと、前期に消したはずのものが復活します。

合算のあとに開始仕訳を入れ、そのうえで当期分の連結修正を入れます。この順番が崩れると、二重に消したり消し忘れたりします。

開始仕訳を飛ばすとどうなるか。前期に消した未実現利益が復活し、前期に計上したのれんの償却費が消えます。連結上の利益剰余金が個別の合算値に戻ってしまうということです。

逆に、開始仕訳を入れたうえで当期分をもう一度入れてしまうと、二重に計上されます。どこまでが前期分でどこからが当期分かを、資料の上で分けておいてください。

連結の手順づくりをお引き受けします

連結パッケージの様式づくり、開始仕訳の一覧化、資本連結と成果連結の切り分け、そして監査法人に説明できる形の連結精算表まで通してお受けします。初めて連結を組む会社では、担当者への引き継ぎ資料の作成までご一緒します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。

お問い合わせはこちらのれんの償却年数の話を読む料金の目安を見る

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

🔀 損益と資産負債で分ける

図3 損益項目と資産負債項目で扱いが違う前期の連結修正当期の入れ直し方のれんの償却費利益剰余金の期首残高に振り替える未実現利益の消去(損益)利益剰余金の期首残高に振り替える評価差額の計上そのまま同じ勘定で入れ直す非支配株主持分への振替利益剰余金の期首残高と非支配株主持分で入れ直す

損益に効いたものは利益剰余金の期首残高に置き換わります。資産負債はそのままです。この切り分けができれば開始仕訳は組めます。

前期の連結修正のうち、損益に効いたものは利益剰余金の期首残高に置き換えます。のれんの償却費、未実現利益の消去による売上原価の増減などです。

資産負債に効いたものは、同じ勘定でそのまま入れ直します。子会社資産の評価差額、のれんの残高などです。

この切り分けができれば、開始仕訳は機械的に組めます。逆にここが曖昧なままだと、毎期どこかで数字が合わなくなります。

🚫 まちがえやすいところ

図4 まちがえやすいところよくある誤解実際開始仕訳は企業会計基準第22号に定めがある本文にも注解にも開始仕訳という語はありません。第10項の考え方から実務上必要になる手続です連結の帳簿を作って翌期に繰り越せばよい制度上そうした帳簿は前提とされていません。毎期、個別財務諸表から積み上げます前期の損益修正も同じ損益科目で入れ直す当期の損益ではないので、利益剰余金の期首残高に置き換えます少数株主持分現行の名称は非支配株主持分です

とくに1つめは解説記事でよく見かけます。項番号を挙げている記事があれば、その項番号を実際に確かめてみてください。

解説記事の中には、開始仕訳に条番号を付しているものがあります。会計基準の本文にも注解にもその語はありませんので、引用する前に原典で確かめてください。

用語の面では、少数株主持分は現在の名称ではありません。非支配株主持分です。古い教材をそのまま使っている社内資料は、この機会に直しておくとよいと思います。

のれんの償却についてはのれんの償却年数は何年にするかで扱っています。開始仕訳で毎期入れ直すのは、この償却の累計です。

❓ よくある質問

Q. 開始仕訳はなぜ必要ですか。

A. 連結財務諸表を毎期、個別財務諸表を基礎として作成するためです(企業会計基準第22号 第10項)。連結だけの帳簿が翌期に引き継がれる仕組みではありません。

Q. 開始仕訳の根拠条文はどこですか。

A. 開始仕訳という語を定めた条文はありません。第10項の考え方から実務上必要になる手続です。

Q. 前期の損益修正はどう入れ直しますか。

A. 当期の損益ではありませんので、利益剰余金の期首残高に置き換えます。

Q. 資産や負債の修正はどうしますか。

A. 同じ勘定でそのまま入れ直します。

Q. 開始仕訳を飛ばすとどうなりますか。

A. 前期に消した未実現利益が復活し、のれんの償却費が消えます。連結の利益剰余金が合算値に戻ります。

Q. 二重計上を防ぐには。

A. 前期分と当期分を資料の上で分けておくことです。開始仕訳の一覧を毎期更新してください。

Q. 少数株主持分と非支配株主持分は同じですか。

A. 現行の名称は非支配株主持分です。

Q. 連結の帳簿を作ってはいけませんか。

A. 社内で管理表を持つことは有用です。ただし制度上の作成は個別財務諸表から積み上げます。

📄 まとめ

開始仕訳が必要なのは、連結を毎期、個別財務諸表から積み上げるからです。根拠は企業会計基準第22号の第10項という考え方であって、開始仕訳という名前の条文ではありません。

前期の損益修正は利益剰余金の期首残高に置き換え、資産負債の修正はそのまま入れ直します。

手順は、合算、開始仕訳、当期分の修正、相殺消去、未実現損益の消去の順です。

いま社内に開始仕訳の一覧がないなら、まずそれを作ってください。担当者が変わったときに引き継げるかどうかは、その一覧があるかどうかで決まります。

📚 参考(公的な一次情報)

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406