新リース会計基準で車両・IT機器のリース期間は?購入オプションも解説

「不動産のリースは判断が難しいと聞くが、社用車やパソコンは契約期間をそのまま使えばよいのではないか」——動産のリースについて、こうした感覚をお持ちの経理・管理部門の方は少なくありません。解約不能期間の判断で悩む場面が不動産より少ないのは、事実です。

ところが動産には、不動産ではほとんど登場しない論点が集中しています。購入オプション、残価保証、再リースの3つです。本稿は連載第14回として、車両・IT機器・製造設備のリースで実際に判断を求められる箇所を、公認会計士・税理士が条項番号を示しながら整理します。想定読者は、IPO準備会社や上場企業の経理・管理部門で、リース契約の棚卸しと会計処理方針の策定を担当されている方です。

結論:動産では「期間」より「オプション」が主戦場になる

借手のリース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間と、行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を加えて決定します(基準31項)。動産では契約期間の中途で解約できない条項が置かれた契約が多く、この算式の後半2つが実質的にゼロになる案件が相当数あります。

そのかわり、判断の重心は次の3つに移ります。いずれも期間の見積りというより、契約書のオプション条項の読み込みと金額の見積りの問題です。

  • 購入オプション──行使が合理的に確実か(基準35項(4))
  • 残価保証──保証価額ではなく支払見込額はいくらか(基準35項(3))
  • 再リース──独立したリースとして処理するか(指針52項)
不動産と動産で、判断の重心はどこに移るか不動産(オフィス・店舗・工場)動産(車両・IT機器・製造設備)解約不能期間の起点をどこに置くか通知期間・法定更新の読み込みが中心購入オプションを行使するかリース料・償却方法・短期リース判定に波及大幅な賃借設備の改良の有無造作・専用設備の投資回収期間が軸残価保証の支払見込額はいくらか保証価額をそのまま使うことはできない企業の事業内容に照らした原資産の重要性戦略拠点か否かで結論が分かれる再リースを独立したリースとするか選択しない場合は延長オプション扱い

第11回から第13回で扱った不動産の論点と、本稿で扱う動産の論点の対比

動産で解約不能期間が論点になりにくい理由

延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの判定にあたっては、経済的インセンティブを生じさせる要因として、対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)、大幅な賃借設備の改良の有無、リースの解約に関連して生じるコスト、企業の事業内容に照らした原資産の重要性、行使条件の5つが例示されています(指針17項(1)〜(5))。不動産では(2)や(4)が結論を左右しましたが、造作や専用設備といった「借りた資産への上乗せ投資」が生じにくい動産では、契約書に書かれた条件そのもの、すなわち(1)と(5)が判断の中心になります。

あわせて確認したいのが解約権の所在です。借手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該権利は借手が利用可能なオプションとして考慮し、貸手のみが解約する権利を有している場合、当該期間は借手の解約不能期間に含まれます(基準31項)。貸手側にのみ解約事由が置かれていても、それによって借手のリース期間が短くなるわけではありません。

論点① 購入オプション──3つの経路で財務諸表に効く

借手のリース料は、借手の固定リース料、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料、残価保証に係る借手による支払見込額、借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額、リースの解約に対する違約金の借手による支払額で構成されます(基準35項(1)〜(5))。見落とされやすいのは、購入オプションの影響がリース料の金額だけにとどまらない点です。

購入オプションの行使が合理的に確実な場合、影響は3つに波及する購入オプションの行使が合理的に確実と判断①リース料に含める行使価額をリース料に含めて現在価値を計算します(基準35項(4))②償却方法が変わる所有権が移転すると認められるリースに該当します(指針43項(2)、基準37項)③短期リースにできない12か月以内であっても短期リースには該当しません(指針4項(2))

購入オプションの判断が測定・償却・簡便的取扱いの3方向に及ぶことを示した図

①リース料に含める。借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額は、借手のリース料に含まれます(基準35項(4))。IFRS第16号では購入オプションは実質的にリース期間を延長する最終的なオプションと考えられるとされており、本会計基準でも借手のリース期間の判断と整合的に、当該行使価額をリース負債に含めることとされています(基準BC45項)。

②償却方法が変わる。契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースには、契約期間終了後又は契約期間の中途で借手による購入オプションの行使が合理的に確実であるリースが含まれます(指針43項(2))。これに該当する場合、使用権資産の減価償却費は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定し、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額とします(基準37項)。該当しない場合は、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(基準38項)。つまり判断ひとつで償却年数も残存価額も変わります。

この判定の閾値は従前の実務から変更されています。従前は割安購入選択権が与えられその行使が確実に予想される場合とされていましたが、割安かどうかのみではなく他の要因も考慮して行使が合理的に確実な場合とする方が、借手への所有権移転の可能性を反映して減価償却費の算定が可能となるため、行使が合理的に確実である場合に変更されています(指針BC71項)。行使価額が名目的かどうかだけを見る従来の整理は、そのままでは使えません。

③短期リースにできない。短期リースとは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(指針4項(2))。定義に「購入オプションを含まない」という要件があるため、12か月以内の契約でも買取条項が付いていれば短期リースには該当しません。単年度更新のIT機器リースでは、監査対応でも実際に確認される箇所です。

論点② 残価保証──「保証価額」ではなく「支払見込額」

残価保証とは、リース終了時に原資産の価値が契約上取り決めた保証価額に満たない場合、その不足額について貸手と関連のない者が貸手に対して支払う義務を課せられる条件をいいます(基準22項)。借手のリース料には、残価保証に係る借手による支払見込額が含まれます(基準35項(3))。

企業会計基準適用指針第16号では所有権移転外ファイナンス・リース取引のリース料に残価保証額を含めていましたが、本会計基準では借手が支払うと見込む金額を含めることとし、見積りが困難な場合に残価保証額を用いる簡便的な取扱いは設けないこととされました(基準BC44項)。保証価額をそのまま算入する処理は認められません。

支払見込額は見積りですから、その後の変動への対応も必要です。原資産を購入するオプションの行使についての判定に変更がある場合と、残価保証に基づく支払見込額に変動がある場合は、借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある状況として挙げられています(指針47項(1)(2))。該当するときは、事象が生じた日にリース負債を当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、その修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(指針46項)。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

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論点③ 再リース──日本固有の商慣習に対する取扱い

IT機器や製造設備では、当初のリース期間終了後に低額の再リース料で使用を継続する実務が定着しています。我が国の再リースの一般的な特徴は、再リースに関する条項が当初の契約において明示されており、経済的耐用年数を考慮した解約不能期間経過後において、当初の月額リース料程度の年間リース料により行われる1年間のリースであることが挙げられています(基準BC27項)。

借手は、リース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができます(指針52項)。再リースは我が国固有の商慣習であり、当該取扱いを引き続き設けることで国際的な比較可能性を大きく損なわせずに作成者の追加的な負担を減らせると考えられたためです(指針BC81項)。

注意したいのは採用しない場合の帰結です。この取扱いを採用しない場合、借手においては再リース期間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられるとされています(指針BC81項)。なお、再リースに該当するかどうかは通常は明確であると考えられるものの、判断を要する場合もあると考えられるとされており(指針BC81項)、「延長」と称する条項が再リースに当たるのかは料率の水準を含めて確認が必要です。

論点 契約書のどこを見るか 会計上の帰結
購入オプション 行使価額、行使時期、行使条件 行使が合理的に確実ならリース料に行使価額を含め(基準35項(4))、所有権が移転すると認められるリースとして償却します(指針43項(2)、基準37項)
残価保証 保証価額、保証の対象(走行距離・稼働時間の超過条項)、精算方法 保証価額ではなく借手による支払見込額をリース料に含めます(基準35項(3)、基準BC44項)
再リース 再リース条項の有無、再リース料の水準 リース開始日にリース期間に含めていない場合、独立したリースとして処理できます(指針52項)。選択しない場合は延長オプションの対象期間に含まれると考えられます(指針BC81項)

自作の数値例:購入オプションの判断で償却費はここまで変わる

条項の効き方を数値で確認します。以下は本稿のために設定した仮設例です。貸手の計算利子率を知り得ないため、借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(指針37項(2))。金額は千円単位、リース料は毎月末払い、割引率は年4%としています。

ケースA 営業車両20台 1台あたり月額40千円(合計月額800千円)、契約期間5年、中途解約時は残存リース料相当額の違約金。満了時の見積時価相当額で購入できるオプションが付されているが、行使が合理的に確実とはいえないと判断。残価保証あり(保証価額6,000千円、支払見込額500千円)。

ケースB 製造設備1台 月額500千円、契約期間5年、中途解約不可。満了時に3,000千円で購入できるオプションがあり、満了時の見積時価12,000千円に照らして行使が合理的に確実と判断。経済的使用可能予測期間8年、残存価額の合理的な見積額1,200千円。

項目 ケースA(営業車両20台) ケースB(製造設備1台)
月額リース料の現在価値 43,439千円 27,150千円
加算するオプション等 残価保証の支払見込額500千円 → 現在価値410千円 購入オプション行使価額3,000千円 → 現在価値2,457千円
リース負債・使用権資産 43,849千円 29,607千円
償却の方法 リース期間5年・残存価額ゼロ 経済的使用可能予測期間8年・残存価額1,200千円
年間の減価償却費 8,770千円 3,551千円

ケースBで、仮に購入オプションの行使が合理的に確実とはいえないと判断した場合、リース負債・使用権資産は27,150千円、償却はリース期間5年・残存価額ゼロとなり、年間の減価償却費は5,430千円になります。オプションを含めると使用権資産は2,457千円大きくなるにもかかわらず、年間の償却費は1,879千円小さくなります。資産・負債は増えるのに費用の期間配分は緩やかになるという直感と逆の動きが起こる点は、社内説明の前に押さえておきたいところです。

簡便的取扱いで拾えるかは「適用単位」で決まる

動産は件数が多いため、簡便的な取扱いの範囲がそのまま作業量に直結します。短期リースについては、使用権資産及びリース負債を計上せず定額法により費用計上することができ、適用の有無は科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに選択できます(指針20項)。ここで動産固有の差が出るのが適用単位です。重要性が乏しい減価償却資産の基準額以下のリースについて、その基準額は通常取引される単位ごとに適用し、契約に複数の単位の原資産が含まれる場合は原資産の単位ごとに適用できます(指針22項(1))。新品時の原資産の価値が少額であるリースは、リース1件ごとに適用の有無を選択できます(指針22項(2)②)。一方、契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースについては、リース契約1件ごとに適用するか否かを選択することは想定していないとされています(指針BC43項)。車両やパソコンのように1つの契約に多数の同種資産が含まれる取引では、どの単位で判定するかによって結論が変わり得ます。

実務上、自社だけで進めると負担が大きい箇所

動産は1件あたりの金額が小さいかわりに件数が多く、判断そのものより、判断に必要な情報を集める工程に時間がかかります。着手すると次の作業が発生します。

  • 契約書・注文書・約款から購入オプション条項と残価保証条項を漏れなく抽出する(別紙や覚書に記載されている例が少なくありません)
  • 行使価額と満了時点の見積時価を比較できる資料を用意する(中古相場、過去の買取実績など)
  • 残価保証の支払見込額を見積るための走行距離・稼働時間の実績データを整備する
  • 再リースの履歴を洗い出し、独立したリースとして処理するかどうかの方針を決める
  • 所有権が移転すると認められるリースとそれ以外を振り分け、償却年数・残存価額を台帳に反映する
  • 短期リース・少額リースの適用単位と適用範囲を、科目ごと・グループごとに定義する

監査対応では、購入オプションを「行使は合理的に確実ではない」と判断した根拠、残価保証の支払見込額の見積根拠、再リースの処理方針の一貫性が問われやすい箇所です。IPO準備の局面ではこれらの判断が過年度にさかのぼって影響するため、契約の棚卸しは早く着手するほど後工程が楽になります。

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よくあるご質問

Q. 車両リースに整備・保険が含まれている場合、リース料の全額で判定してよいですか。

リースを含む契約は、原則としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行い(指針9項)、借手は契約における対価をそれぞれの独立価格の比率に基づいて配分します(指針11項)。整備・保険込みのメンテナンスリースでは、まずこの区分の検討が必要です。詳細はリース部分と非リース部分の区分の回で解説しています。

Q. 購入オプションが「合理的に確実」かどうかは、行使価額が割安かどうかだけで判断してよいですか。

割安かどうかのみではなく他の要因も考慮して行使が合理的に確実な場合とする方が、借手への所有権移転の可能性を反映して減価償却費の算定が可能となるため、行使が合理的に確実である場合に変更されています(指針BC71項)。行使条件や、企業の事業内容に照らした原資産の重要性もあわせて考慮することになります(指針17項(4)(5))。

Q. 残価保証の支払見込額が期中に変わった場合、どうすればよいですか。

残価保証に基づく支払見込額に変動がある場合は、リース期間に変更がなくリース料に変更がある状況として挙げられています(指針47項(2))。この場合、事象が生じた日にリース負債を修正し、修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(指針46項)。走行距離や稼働時間の実績が想定と乖離した時点で見積りを更新する運用が必要です。

Q. 毎年再リースを繰り返している設備は、リース期間を延ばして測定する必要がありますか。

リース開始日に再リース期間をリース期間に含めていない場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができます(指針52項)。この取扱いを採用しない場合には、再リース期間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられるとされています(指針BC81項)。どちらを採るか方針を決め、同種の資産で一貫させることが出発点になります。

まとめ

車両・IT機器・製造設備のリースは、解約不能期間の判断という意味では不動産より単純です。しかし購入オプション、残価保証、再リースという動産固有の3論点が、リース負債の金額だけでなく償却方法や簡便的取扱いの可否にまで波及します。行使価額と見積時価、保証価額と支払見込額を分けて把握することが判断の出発点です。

本連載の全体像は新リース会計基準 完全ガイドに、リース期間の枠組みはリース期間とは?解約不能期間と延長オプションの回にまとめています。次回は第15回「【事例研究⑤】期間の定めが曖昧な契約」として、契約期間が明示されていない取引や自動更新条項のある取引を取り上げます。

本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理の適否を判断するものではありません。最終的な会計処理及び投資判断にあたっては、監査人その他の専門家にご相談ください。

参考

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」22項、31項、35項、37項、38項、BC27項、BC44項、BC45項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」4項(2)、9項、11項、17項、20項、22項、37項、43項、46項、47項、52項、BC43項、BC71項、BC81項

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

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