短期リースの12か月はどこから数えるか|新リース会計基準

新リース会計基準では、短期リースに該当すれば使用権資産とリース負債を計上せずに費用処理できます。この短期リースの12か月は、リース開始日を起点に数えます。残りの期間ではありません。

ところが適用初年度には、これとは別に、適用日の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースを費用処理できる経過的取扱いがあります。同じ12か月でも、起点も、前提も、選択の単位も違います。

この記事では、2つの12か月の違いを整理したうえで、契約を更新したときに何が起きるのか、実務で起きやすい誤りは何かを説明します。

この記事でわかること

  • 短期リースの12か月をリース開始日から数える理由
  • 適用初年度の経過的取扱いによる費用処理と、その前提となる選択
  • リース1件ごとに選べるものと、科目またはグループごとにしか選べないもの
  • 契約更新のときに使用権資産の計上が必要になる場面
  • 普通建物賃貸借と定期建物賃貸借で更新時の扱いが変わること
使用権資産を計上せず費用処理できるかの判定借手が使用権資産とリース負債を計上せずに費用処理したいそのリースのリース開始日が適用日より後にある短期リースかどうかで判定はいいいえ適用初年度に原則どおり遡及適用する経過的取扱いは使えないはいいいえ適用日の期首から12か月を超えて借手のリース期間が残る使用権資産を計上するはいいいえ適用初年度の経過的取扱いにより費用処理できる

図 費用処理の可否の判定(リースに関する会計基準の適用指針にもとづき作成)

📌 短期リースはリース開始日で判定する

リースに関する会計基準の適用指針第4項(2)は、短期リースを、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースと定義しています。

ここで数える12か月の起点は、リース開始日です。決算日でも、基準の適用日でも、残りの期間でもありません。3年契約の建物賃貸借であれば、たとえ残りが8か月であっても、リース開始日における借手のリース期間は3年ですので短期リースには該当しません。

また、借手のリース期間は契約期間そのものではありません。会計基準第31項に従い、解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間と、借手が行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を加えて決定します。契約書に書かれた期間をそのまま当てはめると誤ります。

短期リースに該当する場合、適用指針第20項により、使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます。

📌 適用初年度にはもうひとつの12か月がある

ここで混乱が生まれます。適用初年度には、短期リースとは別に、12か月という数字が出てくる経過的取扱いがあるためです。

適用指針第118項は、本基準の適用を会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用するとしたうえで、ただし書きで、適用初年度の期首より前に遡及適用した場合の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとしています。実務では、この方法を選ぶ会社が多くなると見込まれます。

このただし書きの方法を選ぶ場合、従前オペレーティング・リース取引に分類していたリースについて、適用指針第123項が測定方法を定めています。リース負債は適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を、同時点の借手の追加借入利子率で割り引いた現在価値により算定します。使用権資産は、リース開始日から新基準を適用していたと仮定した帳簿価額とする方法と、当該リース負債と同額とする方法があり、リース1件ごとに選択できます。

そして適用指針第124項(2)が、適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて、第20項の方法によることができるとしています。この12か月は、適用日時点の残存期間で数えます。

つまり、リース開始日で数える12か月と、適用日の期首から数える12か月という、まったく別の判定がふたつ並んでいるということです。

2つの12か月の違い観点適用日時点で存在する契約適用日以後にリースを開始する契約根拠となる定め適用初年度の経過的取扱い(適用指針第123項および第124項(2))短期リースに関する簡便的な取扱い(適用指針第20項)前提となる選択適用初年度に適用指針第118項ただし書きの方法を選択していることとくになし費用処理できる要適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了することリース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないこと12か月を数える起点適用初年度の期首(適用日)における残存期リース開始日を起点とする借手のリース期間適用の単位リース1件ごと(適用指針第124項)原資産の科目ごと、または性質および企業の営業における用途が類似する原資産のグループごと契約ごとの取捨選できるできない

表 2つの12か月の違い

📌 適用の単位が違う

見落とされやすいのが、選択の単位です。

適用指針第124項の柱書は、同項に定める取扱いをリース1件ごとに適用することができるとしています。したがって、適用日時点で残存期間が12か月以内のリースについては、この契約は費用処理する、あの契約は使用権資産を計上する、という選び方ができます。

これに対し、短期リースに関する簡便的な取扱いは、適用指針第20項により、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、または、性質および企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに選択します。契約単位での取捨選択はできません。

建物の賃貸借について短期リースの簡便的な取扱いを適用すると決めたのであれば、その科目またはグループに属する短期リースはすべて費用処理することになります。一部だけ使用権資産を計上するという運用はできません。この違いは、方針を文書化する段階で明示しておく必要があります。

📌 契約を更新したときにどうなるか

費用処理していたリースが期間満了を迎え、契約が更新されるとどうなるか。ここが実務の分岐点になります。

まず、短期リースの簡便的な取扱いを適用していたリースについては、適用指針第50項に救済が置かれています。借手のリース期間に変更がある場合において、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12か月以内であるときは、引き続き短期リースとして取り扱う方法などが認められています。1年契約を1年更新するようなケースは、この救済に乗ります。

一方、更新の単位が2年や3年であれば、変更前の期間の終了時点から変更後の期間の終了時点までが12か月を超えますので、この救済の要件を満たしません。更新の時点で使用権資産とリース負債を計上することになります。

そして注意したいのが、適用初年度の経過的取扱いによって費用処理していたリースです。第50項の救済は、短期リースに関する簡便的な取扱いを適用していたリースを対象としています。適用日時点の残存期間が12か月以内であることを理由に費用処理していたリースは、リース開始日における借手のリース期間が12か月を超えていれば短期リースには該当しませんので、第50項を適用する余地がありません。更新後の借手のリース期間にもとづいて使用権資産とリース負債を計上することになります。

ただし、適用日の直前にリースを開始した契約であれば、リース開始日における借手のリース期間も12か月以内であり、短期リースにも該当し得ます。経過的取扱いで費用処理したリースが一律に短期リースでない、と決めつけることはできません。契約ごとにリース開始日を確認してください。

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📌 更新はリース期間の変更か、別個のリースか

更新後の会計処理を考えるには、その更新が借手のリース期間の変更なのか、それとも新たなリースの開始なのかを整理する必要があります。不動産の賃貸借では、契約の類型によって結論が変わります。

普通建物賃貸借契約は、当事者が更新を拒絶しない限り契約が継続します。この場合、更新は借手の解約不能期間に変更が生じたものとして、借手のリース期間の変更として扱うのが素直です。会計基準第40項は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、借手のリース期間に変更がある場合またはリース料に変更がある場合には、リース負債の計上額の見直しを行うとしています。第41項が借手の統制下にある重要な事象または状況の変化によるオプションの行使可能性の再評価、第42項が延長オプションの行使等により解約不能期間に変更が生じた場合の見直しを定めており、適用指針第46項が具体的な処理を定めています。

定期建物賃貸借契約は、借地借家法により更新がなく、期間の満了によって確定的に終了します。その後に締結する契約は、新たなリース開始日を有する別個のリースとして扱うのが自然です。したがって、新たなリース開始日における借手のリース期間により短期リースに該当するかを判定します。

なお、更新に際して賃料その他の契約条件の変更を伴う場合には、リースの契約条件の変更として扱います。会計基準第39項、適用指針第44項および第45項により、独立したリースとして会計処理する要件を満たすかどうかを検討したうえで処理します。

契約類型ごとの更新時の取扱い契約の類型更新の位置づけ会計上の取扱い普通建物賃貸借契約自動更新により契約が継続し、解約不能期間に変更が生じる借手のリース期間の変更として、更新後の期間にもとづきリース負債を再測定する定期建物賃貸借契約期間の満了により確定的に終了し、その後の契約は別個のリース新たなリース開始日における借手のリース期間により短期リース該当性を判定する更新時に賃料等の条件変更を伴う場合リースの契約条件の変更変更後の条件を反映してリース負債を修正し、使用権資産に加減する

表 更新時の取扱いの整理

📌 実務で起きやすい4つの誤り

ここまでの内容を踏まえて、実務で起きやすい誤りを整理します。

ひとつめは、残存期間で短期リースを判定してしまうことです。適用日時点で残り10か月だから短期リースだ、という判断は誤りです。短期リースはリース開始日で判定します。残存期間で判定してよいのは、適用初年度の経過的取扱いの局面だけです。

ふたつめは、経過的取扱いを使う前提を確認していないことです。適用指針第123項および第124項は、第118項ただし書きの方法を選択する場合の取扱いです。原則どおり遡及適用する方針であれば、この経過措置は使えません。

みっつめは、適用の単位を取り違えることです。経過的取扱いはリース1件ごとに選べますが、短期リースの簡便的な取扱いは科目ごとまたはグループごとの選択です。契約ごとに有利なほうを選ぶ、という運用はできません。

よっつめは、更新時に第50項の救済が使えると考えてしまうことです。第50項は短期リースの簡便的な取扱いを適用していたリースを対象としています。経過的取扱いで費用処理していたリースについては、リース開始日における借手のリース期間を確認したうえで、短期リースに該当するかを個別に判断する必要があります。

適用初年度に整理しておく手順適用初年度に第118項ただし書きの方法を選択するかどうかを決定す契約ごとにリース開始日と借手のリース期間を一覧化する適用日の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了する契約を抽出する第124項(2)により費用処理する契約をリース1件ごとに選定する短期リースの簡便的な取扱いを適用する科目またはグループを決定し方針化する契約類型ごとに更新時の取扱いを整理し、再測定の要否を運用に組み込

図 適用初年度に整理しておく手順

📌 方針として文書に残しておく

この論点は、判定の起点、適用の前提、選択の単位という3つが絡み合うため、担当者が交代すると運用が揺れます。監査人からも、どの定めにもとづいてオフバランスとしたのかを説明できるかを問われます。

契約類型ごとの判定方法、費用処理の根拠となる定め、選択の単位、更新時の取扱いを、あらかじめ文書にまとめておくことをおすすめします。適用初年度が終わった後も、新規契約や更新のたびにこの整理を参照することになります。

とくに賃借物件が多い会社では、契約の母集団を把握する作業そのものに時間がかかります。適用日の前の期から着手しておくと、初年度の決算に余裕が生まれます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 適用日時点で残り8か月の3年契約は短期リースですか。

A. 短期リースには該当しません。短期リースはリース開始日において借手のリース期間が12か月以内であるものをいいますので、リース開始日で3年であれば残存期間が短くても短期リースではありません。ただし、適用初年度に適用指針第118項ただし書きの方法を選択していれば、第124項(2)により費用処理することができます。根拠となる定めが異なる点に注意してください。

Q. 経過的取扱いで費用処理したリースは、更新時にどうなりますか。

A. 短期リースに該当しない限り、適用指針第50項の救済は使えません。更新後の借手のリース期間にもとづいて使用権資産とリース負債を計上することになります。ただし、適用日の直前にリースを開始した契約であれば、リース開始日における借手のリース期間も12か月以内で短期リースに該当し得ますので、契約ごとにリース開始日を確認してください。

Q. 短期リースの簡便的な取扱いを、契約ごとに選ぶことはできますか。

A. できません。適用指針第20項は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、または、性質および企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに選択するとしています。これに対し、適用初年度の経過的取扱いはリース1件ごとに適用できます。

Q. 1年契約を1年ごとに更新している場合はどうなりますか。

A. 短期リースの簡便的な取扱いを適用していたのであれば、適用指針第50項により、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12か月以内であるときは、引き続き短期リースとして取り扱う方法などが認められています。ただし、更新を繰り返すことが常態化している場合は、そもそも借手のリース期間の決定において延長を織り込むべきかどうかを検討する必要があります。

Q. 定期建物賃貸借を再契約したときはどう扱いますか。

A. 定期建物賃貸借契約は期間の満了により確定的に終了しますので、その後に締結する契約は新たなリース開始日を有する別個のリースとして扱うのが自然です。ただし、同一物件について再契約を反復している実績がある場合には、実質的に延長オプションを有する状態と異ならないかを個別に検討することになります。

📄 まとめ

短期リースの12か月はリース開始日を起点に数えます。適用日時点の残存期間で判定してはいけません。短期リースに該当すれば、適用指針第20項により費用処理できますが、その選択は科目ごとまたは原資産のグループごとに行います。

適用初年度には、適用指針第118項ただし書きの方法を選択した場合に限り、第124項(2)により、適用日の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースを費用処理できます。こちらはリース1件ごとに選べます。同じ12か月でも、起点も前提も選択の単位も異なります。

契約を更新したときは、適用指針第50項の救済が使えるのは短期リースの簡便的な取扱いを適用していたリースに限られます。更新単位が2年や3年であれば要件を満たしませんので、更新の時点で使用権資産とリース負債を計上します。契約類型ごとの判定方法と更新時の取扱いを、あらかじめ文書にまとめておいてください。

⚖ 本記事の根拠となる会計基準

記載内容の根拠

  • 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第4項(2)(短期リースの定義。リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリース)
  • 同適用指針第20項(短期リースに関する簡便的な取扱い。借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上する。科目ごとまたは原資産のグループごとの選択)
  • 同適用指針第44項および第45項(リースの契約条件の変更があった場合の借手の会計処理)、第46項(契約条件の変更が生じていない場合のリース負債の見直し)
  • 同適用指針第50項(短期リースについて借手のリース期間に変更がある場合の取扱い)
  • 同適用指針第118項ただし書き(適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができる)
  • 同適用指針第123項(従前オペレーティング・リース取引に分類していたリースに係るリース負債および使用権資産の測定)
  • 同適用指針第124項柱書および(2)(適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて第20項の方法によることができる。リース1件ごとに適用可能)
  • 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第31項(借手のリース期間の決定)、第39項(リースの契約条件の変更)、第40項から第42項(借手のリース期間の見直し)
  • 同会計基準第58項(2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用。2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用可能)
👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

📚 参考(公的な一次情報)

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