新リース会計基準で期間の定めが曖昧な契約は?自動更新と解約通知

「契約期間は1年とし、双方から申出がないときは同一条件で更新する」。新リース会計基準の対応で契約を棚卸ししていると、こうした自動更新の契約や、期間の記載自体が曖昧な契約が必ず出てきます。何年で測ればよいのか、手が止まりやすいところです。

本記事は、IPO準備会社・上場企業の経理/管理部門で契約の棚卸しを担当されている方に向けて、期間の定めが曖昧な契約の借手のリース期間の決め方を、企業会計基準第34号および企業会計基準適用指針第33号の定めに沿って整理します。公認会計士・税理士として監査対応の現場で説明を求められる点を中心にしています。

結論:契約期間ではなく「解約できない期間」から積み上げる

期間の定めが曖昧でも、手順は他の契約と変わりません。借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間と、行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間の両方を加えて決定します(基準31項、基準15項)。

出発点は契約書の年数ではなく、「やめようと思ってもやめられない期間はどこまでか」です。ここを取り違えると、リース期間がゼロに近くなったり、逆に更新見込みだけで長期になったりします。

期間の定めが曖昧な契約でリース期間を決める3つの問いSTEP1 解約不能期間はどこまでか契約期間ではなく、借手が解約できない期間で測る借手のみの解約権はオプション、貸手のみの解約権は解約不能期間に含める(基準31項)STEP2 更新条項は延長オプションか自動更新や法定更新により契約期間を超えて使用できる立場にあるならその先の期間を延長オプションの対象期間として検討する(指針[設例8-1])STEP3 どこまでが「合理的に確実」か5つの要因を総合的に勘案し、蓋然性が相当程度高いといえる期間まで含める経営者の意図や見込みのみで年数を置かない(指針17項、指針BC29項、BC30項)借手のリース期間 = 解約不能期間 + 合理的に確実な延長・非解約の期間12か月以内なら短期リースの簡便的取扱いも検討する(指針4項(2)、20項)

図1 契約期間から出発せず、解約不能期間から積み上げる。

論点1 解約不能期間は「契約期間」ではない

誤解が多いのがここです。契約期間が1年であっても、借手が3か月前に解約の通知をすれば契約を解約できる場合、解約不能期間は3か月と判断することになります(指針[設例8-1])。逆に、契約期間の途中で一切解約できない契約であれば、その契約期間がそのまま解約不能期間になります。

解約権が誰に帰属するかも整理が必要です。借手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該権利は借手が利用可能なオプションとして、リース期間を決定するにあたってこれを考慮します。他方、貸手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該期間は借手の解約不能期間に含まれます(基準31項)。貸手に解約権があるからリース期間が短くなる、という整理にはなりません。

「解約可能と書いていないから解約不能」とは限らない

条項が曖昧な契約では、そもそも解約できるのかから確認します。この点、貸手におけるファイナンス・リースの判定に関する説明ではありますが、解約可能であることが明記されていなければ解約不能として取り扱われるわけではなく、事実上解約不能であるかどうかは、契約条項の内容、商慣習等を勘案し契約の実態に応じ判断されることになるとされています(指針BC99項)。借手側でも、文言だけでなく違約金条項や実際の運用まで確認する姿勢が求められると考えられます。

契約条項のパターン 解約不能期間の考え方 その先の扱い
契約期間1年・中途解約不可・自動更新条項あり 1年 更新できる期間を延長オプションの対象期間として検討する
契約期間1年・借手は3か月前通知で解約可 3か月 3か月を超える期間を延長・解約オプションとして検討する(指針[設例8-1])
契約期間1年・貸手のみが解約可 1年(貸手のみの解約権の対象期間は借手の解約不能期間に含まれる) 借手側のオプションとしては扱わない(基準31項)
双方がいつでも1か月前通知で解約可 1か月 1か月を超える期間はすべてオプションとして評価する
期間の記載が「別途協議」等で不明確 契約条項の内容や実際の運用を踏まえ、借手が解約できない期間を特定する 特定した期間を出発点に、同じ枠組みで評価する

論点2 自動更新条項は「延長オプション」として拾う

契約期間1年・自動更新の建物賃貸借について、適用指針は次の思考プロセスを示しています。契約期間は1年であるが、借地借家法により貸手は正当な事由があると認められる場合でなければ更新の拒絶の通知を行うことができず、貸手が更新を拒絶する正当な事由があるとは考えられないため、借地借家法を根拠として、契約期間である1年を超える期間について借手のリース期間を決定するための延長オプションを有すると判断する、というものです(指針[設例8-1])。

注意したいのは、この設例が法律論ではないという点です。設例における判断は借手のリース期間の決定に至る思考プロセスの例示であり、前提条件やビジネスモデルが異なる場合には結論も異なり得ること、各設例は借地借家法等の法的解釈を示すものではないことが明記されています(指針[設例8]、指針BC34項(1))。

実務上は「自動更新だから延長オプションあり」と機械的に結論づけず、借手が使い続けられる立場にあるかを契約条項に即して確認し、根拠を文書化しておくことが有用と考えられます。

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論点3 解約不能期間がごく短いとき、どこまで含めるか

解約不能期間が1か月や3か月しかない契約では、リース期間の大部分がオプション期間の評価で決まります。適用指針の審議過程でも、解約不能期間が比較的短期である場合の延長オプションの行使について、蓋然性を考慮して借手のリース期間を決定することに困難を伴う可能性があるという懸念が示されていました(指針BC28項(1)④)。

手掛かりは3つあります。第一に閾値で、「合理的に確実」は蓋然性が相当程度高いことを示しているとされています(指針BC29項)。第二に、代替資産の調達に要するコストを考慮すると、解約不能期間が短いほど延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性が高くなる場合があると考えられるとされています(指針BC31項)。解約不能期間が短いことは、リース期間が短いことを意味しません。

第三に歯止めです。借手のリース期間は、経営者の意図や見込みのみに基づく年数ではなく、経済的インセンティブを生じさせる要因に焦点を当てて決定されるとされています(指針BC30項)。また、過去の慣行及び経済的理由は有用な情報を提供する可能性があるものの、一概にそこへ重きを置いて判断することを要求するものではなく、将来の見積りに焦点を当てる必要があるとされています(指針BC33項)。「20年使ってきたから20年」という置き方は説明が難しくなります。

考慮する要因としては、対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)、大幅な賃借設備の改良の有無、解約に関連して生じるコスト、企業の事業内容に照らした原資産の重要性、行使条件が例示されています(指針17項(1)〜(5))。行使条件が借手にとって有利である場合には、経済的インセンティブが生じ得るとされています(指針BC32項)。

論点4 短期リースとの境界が実務の分岐点になる

この類型でとくに効いてくるのが、短期リースとの境界です。短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(指針4項(2))。判定の対象は契約期間でも解約不能期間でもなく、上記の手順で決定した借手のリース期間です。解約不能期間が1か月でも、延長期間を含めた結果リース期間が3年になれば該当しません。

該当する場合、借手は、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます。適用の可否は、科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに選択します(指針20項)。

短期リースとして処理していた契約の期間が延びたとき

自動更新の契約では、当初12か月以内と判断して簡便的な取扱いを適用していたものが、後から延びることがあります。この点、短期リースに関する簡便的な取扱いを適用していたリースについて借手のリース期間に変更がある場合で、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12か月以内であるときは、(1)変更後のリースについて短期リースとして取り扱う方法、(2)変更後のリースのうち、借手のリース期間の変更時点から変更後の終了時点までが12か月以内である場合のみ短期リースとして取り扱う方法、のいずれかを選択できるとされています(指針50項)。想定される場面として、当初の契約条件に含まれている延長オプションの対象期間をリース期間に含めないことを決定していた場合に、当該延長オプションを行使したとき等が挙げられています(指針BC80項)。

また、契約条件の変更がない場合でも、借手の統制下にあり、かつ、オプションの行使が合理的に確実であるかどうかの借手の決定に影響を与える重要な事象又は重要な状況が生じたときは、判断を見直してリース期間を変更し、リース負債の計上額の見直しを行います(基準41項、42項)。

自作の数値例:同じ「1年・自動更新」でも結論は分かれる

筆者が設定した2つのケースで比較します。いずれも契約期間1年・自動更新、リース料は月額・期末払い、借手の追加借入利子率は年3.5%とします。

同じ「1年・自動更新」でも解約不能期間とリース期間は大きく変わる濃い部分=解約不能期間 淡い部分=合理的に確実と判断した延長期間を含めたリース期間ケースA サテライトオフィス(造作なし・代替物件あり)リース期間12か月 → 短期リースの検討対象ケースB データセンターのラック(専用配線・移設困難)リース期間5年 → 使用権資産とリース負債を計上01224364860(月)解約不能期間を出発点に、行使が合理的に確実な延長期間を加えて決定する(基準31項)

図2 解約不能期間の長短だけではリース期間は決まらない。

ケースA:サテライトオフィス

月額リース料350千円。1か月前通知で解約でき、解約不能期間は1か月です。内装工事や専用設備の設置は行わず、同水準の物件は周辺に複数あり、行使条件も付されていません。指針17項(1)〜(5)の要因を当てはめると考慮すべきものが乏しく、長期の使用を合理的に確実とまでは判断しにくい状況です。ここではリース期間を12か月としました。購入オプションもないため短期リースに該当し(指針4項(2))、簡便的な取扱いを適用すれば年間4,200千円を定額で費用計上します(指針20項)。適用しない場合のリース負債は4,121千円です。

ケースB:データセンターのラック

月額リース料1,200千円。3か月前通知で解約できるため解約不能期間は3か月ですが、専用の電源・空調配線と相互接続設備を自社負担で敷設しており、移設には相応の期間と費用がかかります。基幹システムの稼働場所であり、原資産の重要性も高い状況です。更新サイクルを踏まえ、5年経過時点までは延長する可能性が合理的に確実といえる一方、その先は機器更改の判断次第で低下すると評価し、リース期間を5年としました。リース負債は65,964千円、リース期間を耐用年数として残存価額をゼロとする償却(基準38項)では年13,193千円の減価償却費が生じます。

解約不能期間である3か月だけで測ると3,579千円にとどまり、5年と判断した場合の65,964千円とは約18倍の差になります。契約書の文面が同じ「1年・自動更新」でも、要因の当てはめ次第で貸借対照表への影響はここまで変わります。

項目 ケースA サテライトオフィス ケースB データセンターのラック
月額リース料 350千円 1,200千円
解約不能期間 1か月 3か月
決め手となった要因 専用設備なし・代替物件あり・原資産の重要性は高くない 移設困難な専用設備あり・基幹システムの稼働場所
借手のリース期間 12か月 5年
リース負債(年3.5%で割引) 4,121千円 65,964千円
解約不能期間だけで測った場合 349千円 3,579千円
会計処理 短期リースに該当し簡便的な取扱いを選択可能 使用権資産・リース負債を計上(年償却13,193千円)

上記は本記事のために設定した数値例であり、実際の判断は契約条件と事実関係により異なります。

自社だけで進めると負担が大きくなるところ

この類型は件数が多い割に一件ずつの判断が必要で、対応工数が読みにくい領域です。監査対応では年数そのものよりも「なぜその年数なのか」の説明を求められます。次の作業は社内リソースだけで進めると時間がかかりやすい部分です。

  • 契約書の解約条項・更新条項・違約金条項を拾い直し、解約不能期間を一件ずつ特定する
  • 自動更新条項について、延長オプションと評価する根拠を契約条項に即して整理する
  • 指針17項(1)〜(5)の要因ごとに、確認資料と判断結果を記録する様式を用意する
  • 造作・専用設備の投資額、移設可否、原状回復見込額を経理以外の部署から収集する
  • リース期間が12か月以内となる契約を抽出し、短期リースの適用単位(科目・グループ)を決める
  • 短期リースとして処理した契約について、期間が延びた場合の取扱い(指針50項)を方針化する
  • リース期間を見直す契機となる事象・状況(基準41項)を、社内でどう検知するか手当てする
  • 同種契約で結論が割れていないか、判断の一貫性をレビューする

とくに最後の一貫性は監査法人から問われやすい点です。同じ契約書式なのに拠点ごとに2年・5年・10年と割れていると、当てはめが恣意的でないかの説明が必要になります。判断の枠組みを先に文書化し、それに沿って個別判断を積み上げるほうが結果的に近道です。

よくある質問

Q. 契約書に「期間の定めなし」と書かれている場合、リース期間はゼロになりますか。

そうはなりません。リース期間は解約不能期間に、行使が合理的に確実な延長オプションの対象期間等を加えて決定します(基準31項)。解約不能期間が短くても、要因により延長が合理的に確実と判断されればその期間まで含めます(指針BC31項)。

Q. 10年以上同じ物件を使い続けています。過去の実績どおり10年としてよいですか。

過去の慣行及び経済的理由は行使可能性の評価に有用な情報を提供する可能性がありますが、一概にそこへ重きを置いて判断することを要求するものではなく、将来の見積りに焦点を当てる必要があるとされています(指針BC33項)。実績は出発点にとどめ、現時点の要因で評価し直すことになります。

Q. 自動更新の契約を短期リースとして処理していましたが、更新して期間が延びました。どうなりますか。

変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の終了時点までが12か月以内であるときは、変更後のリースを短期リースとして取り扱う方法などを選択することができます(指針50項)。12か月を超えて延びる場合は、この選択肢によることはできません。

Q. 貸手側にも解約権がある契約は、リース期間が短くなりますか。

貸手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該期間は借手の解約不能期間に含まれます(基準31項)。貸手の解約権を理由にリース期間が短くなる整理にはなりません。借手のみが解約権を有する場合に、それを借手が利用可能なオプションとして考慮します。

まとめ

期間の定めが曖昧でも順序は変わりません。契約期間ではなく解約不能期間から出発し(基準31項)、自動更新等により使い続けられる立場にあるかを延長オプションの有無として整理し(指針[設例8-1])、5つの要因を総合的に勘案して蓋然性が相当程度高いといえる範囲まで積み上げます(指針17項、指針BC29項)。結果が12か月以内で購入オプションを含まなければ、短期リースの簡便的な取扱いを検討します(指針4項(2)、20項)。本会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する事業年度等の期首からの早期適用も認められています(基準58項)。

連載全体の見取り図は新リース会計基準 完全ガイド、リース期間の枠組みはリース期間の算定、動産の事例研究は前回の車両・IT機器・製造設備のリース期間をご覧ください。次回からは第4部として借手の会計処理に入ります。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理及び判断については、契約条件や事実関係を踏まえて公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください。

参考:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」15項、31項、32項(2)、38項、41項、42項、58項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」4項(2)、17項(1)〜(5)、20項、50項、BC28項(1)、BC29項、BC30項、BC31項、BC32項、BC33項、BC34項(1)、BC80項、BC99項、[設例8]、[設例8-1]

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

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