みなし清算条項は、会社法の制度ではありません。会社法にこの語の定義はなく、投資契約または株主間契約上の合意です。
定義を示している公的資料があります。経済産業省ほかが令和4年3月に公表した我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項です。発行会社にM&Aが生じた場合に、発行会社を清算したものとみなして投資家に対して分配を行うことを内容とする定め、とされています。
手取りが変わるのは、売却価額が想定より小さいときです。高く売れる前提だけで見ていると、下振れしたときに創業者の取り分が消えます。
- みなし清算条項が会社法の制度ではないこと
- 公的資料に定義があること
- 会社法の残余財産の分配の条文
- 債務の弁済が先であること
- 優先分配の倍率と参加型の違い
- 売却価額が下振れしたときの効き方
📌 結論 契約の条項であって法律の制度ではない
定款の残余財産の分配に関する定めと、投資契約のみなし清算条項は別の文書にあります。片方だけを見ると手取りが読めません。
会社法を探しても、みなし清算という条文は見つかりません。あるのは残余財産の分配に関する規定です。
定義を示している公的資料は、経済産業省、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会、みずほ情報総研株式会社が令和4年3月に公表した資料です。投資契約等の構成のうち財産分配契約の箇所に記載があります。
したがって、この条項の効き方を知るには契約書を読むしかありません。定款だけを見ても分かりません。
🧭 会社法が定めているのは清算の手続
会社法が定めているのは実際に清算するときの手続です。M&Aは清算ではありませんから、この条文がそのまま適用されるわけではありません。
第502条は、清算株式会社は債務を弁済した後でなければ財産を株主に分配することができない、としています。ただし書で、存否または額について争いのある債権に係る債務の弁済に必要と認められる財産を留保した場合は分配できます。
第504条第1項が、清算人が残余財産の種類と割当てに関する事項を定めるとしています。第2項が、2以上の種類株式を発行しているときの取扱いです。割当てをしない種類を定めることも、種類ごとに異なる取扱いを定めることもできます。
そして第3項が、原則として株主の有する株式の数に応じて割り当てる内容でなければならないとしています。
第505条は、残余財産が金銭以外の財産である場合の金銭分配請求権を定めています。株式で受け取るか現金で受け取るかを選べる、という規定です。
投資契約と株主間契約の条項を読み解き、売却価額をいくつか置いて各株主の手取りを試算します。優先分配の倍率、参加型か非参加型か、ラウンド間の順位。この3つで結果が大きく変わります。次のラウンドの条件を決める前に、下振れしたときの数字を見ておいてください。契約書の作成そのものは弁護士と連携して進めます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🧾 どこで差が出るか
売却価額が想定より小さいときに差が出ます。高い価額で売れる前提だけで設計すると、下振れしたときに創業者の手取りがゼロに近づきます。
優先分配の倍率が1倍で非参加型なら、投資家は投資額を先に回収し、残りは普通株主に回ります。売却価額が十分に大きければ、投資家は普通株式に転換したほうが得になるため、条項は実質的に働きません。
倍率が高いと、売却価額が小さいほど創業者の取り分が薄くなります。参加型の定めがあると、投資家は優先分配を受けたうえで残りにも参加します。
ラウンドが重なると順位の問題が出ます。後のラウンドが先に取る設計であれば、初期の投資家と創業者の順位が下がります。
📅 上場するなら
上場すればM&Aは起きませんから、みなし清算条項は使われません。ただ、上場前に売却する選択肢を残すなら、数字を見ておく価値があります。
上場すればM&Aによる支配権の移転は起きませんから、この条項が発動する場面がなくなります。種類株式の整理とあわせて、条項の扱いを決めることになります。
ただし、上場と売却の両方を選択肢として残す段階では、数字を見ておく価値があります。売却価額の想定を変えて試算すると、条件交渉で何を優先すべきかが見えます。
種類株式そのものの整理は種類株式は上場前に普通株式へ戻すのかにまとめています。
❓ よくある質問
A. ありません。投資契約または株主間契約上の合意です。
A. 経済産業省ほかの資料に定義があります。令和4年3月公表です。
A. 種類株式としての定めは第108条第1項第2号、手続は第502条、第504条、第505条です。
A. できません。第502条が債務を弁済した後でなければ分配できないとしています。
A. 第504条第2項に定めがあります。割当てをしない種類を定めることもできます。
A. 優先分配を受けたうえで、残りの分配にも参加する定めです。契約書の文言で決まります。
A. 支配権の移転が起きないため、発動する場面がなくなります。種類株式の整理とあわせて扱いを決めます。
A. 公的な基準はありません。交渉で決まります。下振れ時の手取りを試算してから決めてください。
📄 まとめ
みなし清算条項は契約の条項です。会社法に定義はありません。
会社法が定めているのは清算のときの手続で、債務の弁済が先です(第502条)。
倍率、参加型かどうか、ラウンド間の順位。この3つで手取りが変わります。
高く売れる前提だけで条件を決めないでください。下振れしたときの数字を出してから交渉に臨んでください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項(経済産業省ほか・令和4年3月) みなし清算条項の定義
- 会社法(e-Gov法令検索) 第108条、第502条、第504条、第505条
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