神社での神前結婚、寺院での仏前結婚。挙式料や初穂料に法人税がかかるのかは、結婚式を扱う宗教法人にとって毎年の論点です。
結論は通達に書かれています。挙式そのもので本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業に当たりません。ただし、披露宴の飲食、衣装の貸付け、記念写真、そのあっせん、会場の貸付けは収益事業になります。
この記事では、法人税基本通達15-1-72の線引きを整理し、料金表と契約の整え方まで説明します。
- 挙式そのものが収益事業に当たらない根拠
- 収益事業になる5つの行為とその業種
- あっせんが課税される理由
- 外部業者に委託していても自ら行っているとされる場合
- 料金表と契約で整えておくこと
この記事の見出し
📌 挙式そのものは収益事業に当たらない
神社での神前結婚、寺院での仏前結婚。この挙式を行って初穂料や挙式料を受け取ることについて、法人税基本通達15-1-72が正面から答えを示しています。
同通達は、宗教法人が神前結婚、仏前結婚等の挙式を行う行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業に該当しない、としています。挙式は宗教上の儀式であって、収益事業の34業種のどれにも当たらないという整理です。
条件は、本来の宗教活動の一部と認められるものであることです。宗教的な儀式として行われている限り、対価を受けていても収益事業にはなりません。
📌 問題は挙式のまわりにある
同じ通達は、続けて収益事業に該当するものを列挙しています。挙式後の披露宴における飲食物の提供、挙式のための衣装その他の物品の貸付け、記念写真の撮影、これらの行為のあっせん、そしてこれらの用に供するための不動産貸付けおよび席貸しの事業です。
つまり、儀式そのものは非課税でも、その前後で提供するサービスは収益事業になります。結婚式を一式で引き受ける形をとっている宗教法人ほど、課税される部分が広くなります。
受け取る金額を挙式料としてまとめてしまうと、どこまでが儀式の対価かが説明できなくなります。項目ごとに料金を分けて記録することが、実務の出発点です。
挙式そのものと、挙式のまわりの行為とで扱いが分かれます。
列挙された行為は、一般には次の業種として整理されます。
| 行為 | 当たると考えられる業種 |
|---|---|
| 披露宴における飲食物の提供 | 料理店業その他の飲食店業(16号) |
| 衣装その他の物品の貸付け | 物品貸付業(4号) |
| 記念写真の撮影 | 写真業(13号) |
| これらの行為のあっせん | 周旋業(17号) |
| これらの用に供する不動産の貸付け | 不動産貸付業(5号) |
| これらの用に供する席貸し | 席貸業(14号) |
📌 あっせんも収益事業になる
見落とされやすいのが、あっせんです。自分では料理も写真も扱わず、業者を紹介して手数料を受け取る形にしていても、通達はあっせんを収益事業として挙げています。
手数料の名目を紹介料にしても、実態が変わらなければ結論は同じです。紹介の対価として金銭を受け取っているのであれば、周旋業として整理することになります。
業者から金銭を受け取らず、単に業者の名前を伝えるだけであれば、対価がありませんので事業になりません。金銭が動いているかどうかが、まず確認すべき点です。
📌 外部に任せていても自ら行っているとされる場合
披露宴の会場運営を丸ごと外部の会社に任せている場合はどうでしょうか。ここは法人税基本通達15-1-2が答えを示しています。
同通達は、公益法人等が収益事業に該当する事業に係る業務の全部または一部を委託契約に基づいて他の者に行わせている場合には、その公益法人等が自ら収益事業を行っているものとして取り扱うことになるとしています。
また、収益事業を行うことを目的とする組合契約その他これに類する契約に基づいて費用および損失を負担し、またはその収益の分配を受けることとしているため、実質的に自ら事業を行っていると認められる場合も同様です。委託や共同事業の形にしても、収益事業から外れるわけではありません。
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📌 席貸業には除かれる場合がある
席貸業については、法人税法施行令5条1項14号が2つに分けています。イは、不特定または多数の者の娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸業。ロは、イ以外の席貸業で、いくつかの場合が除かれています。
ロの除外のうち、宗教法人に関係しうるのは(4)です。法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、その法人の会員その他これに準ずる者の用に供するためのもののうち、その利用の対価の額が実費の範囲を超えないものが除かれます。
この実費の範囲を超えないものに当たるかどうかは、既往の実績等に照らし、その事業年度における会員その他これに準ずる者に対する席貸しに係る収益の額と費用の額とがおおむね均衡すると認められるような利用料金が設定されているかどうかで判定します(法人税基本通達15-1-38の3)。ただし、披露宴のための席貸しは通達15-1-72が収益事業として明示していますので、この除外に乗せる余地は限られます。
📌 実務で整えておくこと
第1に、料金表を項目ごとに分けてください。挙式料、会場使用料、衣装代、写真代、飲食代。ひとまとめにしていると、非課税部分の説明ができません。
第2に、契約書と請求書の名目を実態にそろえてください。名目と実態がずれていると、税務調査で最初に指摘されます。
第3に、収益事業に当たる部分について、収益事業とそれ以外で経理を区分し(法人税法施行令6条)、開始した日以後2か月以内に届出書を提出してください(法人税法150条1項)。社殿や本堂と共用している建物の減価償却費は、合理的な基準で継続的に配賦します(法人税基本通達15-2-5)。
挙式と披露宴を項目ごとに分ければ、課税される範囲ははっきりします。料金表の組み方から届出と区分経理まで、実務の手順からご一緒できます。宗教法人の税務と会計に対応している公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. かかりません。法人税基本通達15-1-72は、宗教法人が神前結婚、仏前結婚等の挙式を行う行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業に該当しないとしています。
A. 課税されます。同通達は、挙式後の披露宴における飲食物の提供などの用に供するための不動産貸付けおよび席貸しの事業を収益事業として挙げています。
A. 業者を紹介して手数料を受け取っているのであれば、あっせんとして収益事業に当たります。金銭を受け取らず名前を伝えるだけであれば対価がありませんので事業になりません。
A. 違います。法人税基本通達15-1-2は、収益事業に該当する事業に係る業務の全部または一部を委託契約に基づいて他の者に行わせている場合には、その公益法人等が自ら収益事業を行っているものとして取り扱うとしています。
A. おすすめしません。ひとまとめにすると、どこまでが儀式の対価かを説明できなくなります。挙式料、会場使用料、衣装代、写真代、飲食代を項目ごとに分けて記録してください。
📄 まとめ
神前結婚や仏前結婚の挙式を行う行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは、収益事業に該当しません(法人税基本通達15-1-72)。
一方、挙式後の披露宴における飲食物の提供、衣装その他の物品の貸付け、記念写真の撮影、これらの行為のあっせん、これらの用に供するための不動産貸付けおよび席貸しの事業は、収益事業に該当します。
外部の業者に委託していても、自ら収益事業を行っているものとして取り扱われます(法人税基本通達15-1-2)。
料金表を項目ごとに分け、契約書と請求書の名目を実態にそろえてください。収益事業に当たる部分は区分経理と届出が必要です。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税基本通達15-1-72(神前結婚等の場合の収益事業の判定)
- 法人税基本通達15-1-2
- 法人税法施行令5条1項14号(席貸業)
- 法人税基本通達15-1-38の3(実費の範囲を超えないものの判定)
- 法人税法施行令5条1項4号(物品貸付業)、13号(写真業)、16号(料理店業その他の飲食店業)、17号(周旋業)、5号(不動産貸付業)
- 法人税法施行令6条(収益事業を行う法人の経理の区分)、法人税法150条1項(収益事業開始の届出)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
このテーマの全体像は宗教法人の税務|収益事業の判定と区分経理の実務にまとめています。