招集手続の省略|株主全員の同意でどこまで縮められるか

株主が代表者と親族だけ。全員が同じ場所にいて、話は既についている。それでも招集通知を2週間前に出さなければならないのか。非上場の会社でよく出る疑問です。

会社法には省略の規定が3つあります。招集手続の省略、決議の省略、報告の省略です。ただし、省けるものと省けないものがはっきり分かれており、条件を満たさない省略は総会の瑕疵になります。この記事では、どこまで縮められるのかを条文で確かめます。

この記事でわかること

  • 招集手続を省略できる場合と、その例外(会社法300条)
  • 決議の省略が使える要件と、みなされる効果(319条1項)
  • 省略しても残る義務。議事録の作成と10年の備置き
  • 書面投票を定めると省略が使えなくなる理由

省略の規定は3つある

会社法は、株主総会について3つの省略を用意しています。300条の招集手続の省略、319条の決議の省略、320条の報告の省略です。それぞれ省けるものが違いますので、混同しないでください。

300条は、総会は開くけれども招集の手続を省くものです。319条は、総会そのものを開かず、書面のやり取りだけで決議があったものとみなすものです。320条は、報告事項について総会での報告を省くものです。

3つの省略で、何が省けて何が残るか招集手続の省略(300条)省けるのは招集通知。総会は開き、決議もする。取締役会の招集決定は残る書面投票または電磁的方法による議決権行使を定めた場合は使えない決議の省略(319条)総会そのものを開かない。議決権を行使できる株主全員の書面等による同意が要る議事録は作る。同意書面は10年間の備置き報告の省略(320条)報告事項について、全員に通知し、全員が書面等で同意すれば報告があったものとみなす

300条は総会を開きます。319条は開きません。ここが最大の違いです

招集手続の省略(300条)

会社法300条本文は、299条の規定にかかわらず、株主総会は株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができると定めています。

省けるのは299条の招集通知です。取締役会で招集を決める298条4項の決議は省けません。全員が集まっているからその場で総会にしよう、という運用をするにも、招集を決める取締役会の議事録は必要だということです。ここを落としている会社が多くあります。

全員の同意は、明示的なものである必要はないと解されています。全株主が出席し、異議なく議事に入れば同意があったと見ることができます。ただし、後から争いが起きたときのために、議事録に全株主が出席し招集手続の省略に同意した旨を記載しておくのが実務です。

そしてただし書です。298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない、とされています。書面による議決権行使や電磁的方法による議決権行使を定めた総会では、招集手続を省略できません。書面投票の仕組みは、出席しない株主のためにあるからです。

決議の省略(319条)

会社法319条1項は、取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、その提案につき株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすと定めています。かっこ書きにより、株主は当該事項について議決権を行使することができるものに限られます。

要件は3つです。提案があること、同意が書面または電磁的記録によること、そして議決権を行使することができる株主の全員が同意することです。300条の招集手続の省略と違い、口頭では足りません。

同条5項は、定時株主総会の目的である事項のすべてについて提案を可決する旨の決議があったものとみなされた場合には、その時に定時株主総会が終結したものとみなすとしています。計算書類の承認も定時株主総会の決議事項ですので、決議の省略で行うことができます。

注意したいのは備置きの起算点です。会社法442条1項1号のかっこ書きは、319条1項の場合には同項の提案があった日から、としています。総会の日という基準がありませんので、提案の日から5年間の備置きが始まります。決議の省略を使うときは、提案書の日付を記録に残してください。

報告の省略(320条)

会社法320条は、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、その事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その事項の株主総会への報告があったものとみなすと定めています。

事業報告の内容の報告(438条3項)や、会計監査人設置会社における計算書類の報告(439条)がこれに当たります。決議の省略とセットで使うことで、定時株主総会を完全に書面だけで終えることができます。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

省略しても議事録は要る

いずれの省略を使っても、議事録の作成義務は残ります。会社法318条1項が、株主総会の議事については法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないとしているからです。

決議の省略をした場合の議事録の記載事項は、通常のものと違います。会社法施行規則72条4項1号が、株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容、その事項の提案をした者の氏名または名称、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名の4つを定めています。開催日時や場所、議事の経過の要領は書きません。書けば、事実と違う書類になります。

報告の省略をした場合も同条4項2号に別の記載事項があります。書式を分けておくと迷いません。

備置きも残ります。会社法318条2項により議事録は本店に10年間、同条3項により支店に写しを5年間です。加えて319条2項が、決議があったものとみなされた日から10年間、同意の書面または電磁的記録を本店に備え置かなければならないとしています。同条3項により株主および債権者はその閲覧または謄写を請求でき、同条4項により親会社社員は裁判所の許可を得て請求できます。

省略の種類 同意の方法 使えない場合
招集手続(300条) 株主全員の同意。書面である必要はない 書面投票または電磁的方法による議決権行使を定めたとき
決議(319条1項) 議決権を行使できる株主全員の書面または電磁的記録による同意 1人でも同意しない株主がいるとき
報告(320条) 株主全員の書面または電磁的記録による同意 通知をしていないとき

どこまで縮められるのか

結論を整理します。株主全員が同意するなら、招集通知を出さずに総会を開くことができ、さらに進めば総会を開かずに決議したことにもできます。定時株主総会についても、決議の省略と報告の省略を組み合わせれば、書面のやり取りだけで終わらせられます。

ただし、次の3つは残ります。取締役会での招集の決定、議事録の作成、そして書類の備置きです。省略は手続を軽くするものであって、記録を作らなくてよいという話ではありません。

もうひとつ、実務上の注意があります。決議の省略は株主が1人でも同意しなければ成立しません。株主が増えるほど成立しにくくなり、相続で株式が分散した会社では、連絡が取れない株主が1人いるだけで使えなくなります。省略に頼った運営を続けていると、使えなくなった瞬間に総会の開き方が分からない、という事態になります。

将来の上場を考えている会社であれば、なおさらです。上場後は株主が入れ替わり、全員の同意を集めることは事実上できません。早い段階で、招集から議事録までを実地で回す運用に切り替えることを勧めます。

会社法の手続を上場準備の水準まで整えたい方へ

定款、株主総会、取締役会、株主名簿、増資。上場準備で必ず点検される書類と手続は決まっています。いまの運用のどこに抜けがあるかは、定款と直近の議事録を拝見すれば短時間で見立てが立ちます。上場準備の実務を経験した公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。支援の内容と進め方はIPO支援業務のページにまとめています。

お問い合わせはこちら料金の目安を見る

公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 全員が集まっていれば招集通知は要りませんか。

A. 会社法300条本文により、株主全員の同意があるときは招集の手続を経ることなく開催できます。ただし取締役会での招集の決定は省けませんし、書面投票を定めた総会では使えません。

Q. 決議の省略に口頭の同意で足りますか。

A. 足りません。会社法319条1項は書面または電磁的記録による同意を求めています。招集手続の省略(300条)とはこの点が違います。

Q. 決議の省略をした場合、議事録には何を書きますか。

A. 会社法施行規則72条4項1号により、決議があったものとみなされた事項の内容、提案をした者の氏名または名称、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名の4つです。開催日時や議事の経過は書きません。

📄 まとめ

会社法の省略は3つです。300条は招集通知を省くもの、319条は総会そのものを開かないもの、320条は報告を省くものです。300条の同意は書面でなくてもよい一方、319条と320条は書面または電磁的記録による同意が必要です。

省略しても、取締役会での招集の決定、議事録の作成、書類の備置きは残ります。決議の省略は株主が1人でも同意しなければ成立しませんので、株主が増えたときに備えて、実地で回す運用も用意しておいてください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法300条本文およびただし書(招集手続の省略と、書面投票等を定めた場合の例外)
  • 会社法319条1項(決議の省略)、同条2項から4項(同意書面の10年の備置きと閲覧請求)、同条5項(定時株主総会の終結のみなし)
  • 会社法320条(報告の省略)
  • 会社法318条1項から3項(議事録の作成と、本店10年、支店5年の備置き)
  • 会社法施行規則72条3項(通常の議事録の記載事項)、同条4項1号・2号(決議の省略および報告の省略をした場合の記載事項)
  • 会社法442条1項1号かっこ書き(319条1項の場合の備置きは提案があった日から起算)
  • 会社法298条1項3号・4号、299条

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は上場準備の会社法|定款・機関・株主総会・株式の手続にまとめています。

📚 参考(公的な一次情報)

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406