境内で写経会や座禅会を開き、参加費を受け取る寺院は増えています。この収入に法人税がかかるのか、迷う場面は少なくありません。
判定の軸は、技芸教授業に当たるかどうかです。法人税法施行令は技芸を22に限定して列挙しており、写経も座禅もそこに入っていません。
この記事では、技芸教授業の範囲を条文にそって整理し、書道教室や茶道教室との違い、参加費以外の収入まで説明します。
- 技芸教授業の対象が22の技芸に限られていること
- 写経会や座禅会の参加費が課税されない理由
- 書道や茶道の教授になると扱いが変わること
- 免許や段位の付与も技芸の教授に含まれること
- 教材の販売や宿泊など周辺の収入の扱い
この記事の見出し
📌 技芸教授業は22の技芸に限られている
境内で写経会や座禅会を開き、参加費を受け取る。この収入に法人税がかかるかは、技芸教授業に当たるかどうかで決まります。
技芸教授業を定めるのは法人税法施行令5条1項30号です。ここでいう技芸は、洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン、自動車操縦、小型船舶の操縦の22です。
この列挙は限定列挙です。ここに挙がっていない技芸を教えても、技芸教授業には当たりません。なお、同号は技芸の教授のほかに、学校の入学者を選抜するための学力試験に備えるための学力の教授、学校教育の補習のための学力の教授、公開模擬学力試験も対象にしています。
📌 写経も座禅も列挙にない
写経は書に関わる行為ですが、書道の教授として行われているわけではありません。座禅や瞑想の指導、法話や説教も、22の技芸のどれにも当たりません。
したがって、写経会や座禅会の参加費は、技芸教授業としては課税されません。宗教活動の一環として行われている限り、他の33業種にも当てはまるものがありませんので、収益事業になりません。
ここで確認しておきたいのは、非課税になる理由が宗教活動だからではない、という点です。法人税基本通達15-1-1は、本来の目的たる事業であっても34業種に該当すれば法人税が課されるとしています。写経会が課税されないのは、34業種のどれにも当たらないからです。
22の技芸に含まれるかどうかが判定の分かれ目になります。
📌 書道教室として行えば話が変わる
同じ場所で同じ人が指導していても、内容が書道の教授であれば技芸教授業に当たります。文字を整えて書く技術を教え、上達を目的とするのであれば、それは書道の教授です。
茶道と生花も22の技芸に含まれています。境内の一室で茶道教室や華道教室を開き、月謝を受け取っているのであれば、技芸教授業として収益事業に当たります。
絵画、写真、音楽、料理も列挙されています。寺子屋的な講座を開くときは、その内容が22の技芸に当たらないかを一度確認してください。
📌 免許や段位の付与も技芸の教授に含まれる
法人税基本通達15-1-66は、技芸の教授には、自らは技芸の習得に関する教授を行わないで免許の付与等のみを行う行為が含まれる、としています。ただし、30号に規定する技芸以外の技芸に関する免許の付与等はこれに該当しません。
同通達の注1は、免許の付与その他これに類する行為には、卒業資格、段位、級、師範、名取り等の一定の資格、称号等を付与する行為が含まれるとしています。教えていなくても、資格や称号を出して手数料を受け取るのであれば技芸教授業になりうる、ということです。
注2も重要です。技芸の教授もしくは免許の付与等の一環として、またはこれらに付随して行われる講習会等は、たとえ一般教養の講習をその内容とするものであっても、技芸の教授に該当するとしています。書道教室に付随して行う講習会は、内容が一般教養であっても技芸教授業の一部です。
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📌 参加費以外の収入に注意する
写経会そのものが課税されなくても、まわりの収入が課税されることがあります。
まず、道具や教材の販売です。写経用紙や筆や墨を仕入れて売るのであれば、物品販売業の判定になります。一般の店でも買える品物を、一般の販売業者とおおむね同様の価格で売っているのであれば物品販売業に該当します(法人税基本通達15-1-10(1)ただし書き)。
次に、宿泊です。写経会や座禅会にあわせて宿泊させて宿泊料を受けるのであれば、旅館業の判定になります(法人税基本通達15-1-39)。
なお、技芸教授業を行っている場合には、その技芸の教授に係る教科書その他これに類する教材の販売およびバザーの開催が付随行為とされています(法人税基本通達15-1-6(2))。技芸教授業に当たる講座を開いているときは、教材の販売もその収益事業の中に取り込まれます。
📌 迷ったときの整理の順序
第1に、その催しで金銭を受け取っているかを確認します。志納として任意に納められるもので、金額も定めていないのであれば、対価ではありません。
第2に、内容が22の技芸のどれかの教授に当たるかを確認します。名称ではなく、実際に何を教えているかで判断してください。
第3に、参加費以外の収入がないかを確認します。教材、飲食、宿泊、写真。催しに付随して動く金銭を洗い出せば、課税される部分は見えてきます。
収益事業に当たるものが見つかった場合は、収益事業とそれ以外で経理を区分し(法人税法施行令6条)、開始した日以後2か月以内に届出書を提出してください(法人税法150条1項)。
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❓ よくある質問
A. 技芸教授業の対象となる22の技芸に写経は含まれていません。他の33業種にも当たるものがありませんので、通常は収益事業になりません。
A. 座禅や瞑想の指導も22の技芸に含まれていません。ただし、宿泊させて宿泊料を受けるのであれば旅館業の判定になりますので、参加費以外の収入を分けて確認してください。
A. 書道は22の技芸に含まれています。技芸教授業として収益事業に当たりますので、届出と区分経理が必要です。
A. 法人税基本通達15-1-66は、自らは教授を行わないで免許の付与等のみを行う行為も技芸の教授に含まれるとしています。その技芸が22に含まれるものであれば、技芸教授業に当たります。
A. 物品販売業の判定になります。一般の店でも買える品物を、一般の販売業者とおおむね同様の価格で販売しているのであれば物品販売業に該当します(法人税基本通達15-1-10(1)ただし書き)。
📄 まとめ
技芸教授業の対象となる技芸は、法人税法施行令5条1項30号に22が限定列挙されています。洋裁から小型船舶の操縦までで、写経や座禅は含まれていません。
写経会や座禅会の参加費は、34業種のどれにも当たらないため収益事業になりません。宗教活動だから非課税なのではなく、業種に当たらないから非課税です。
書道、茶道、生花、絵画、写真、料理などは22に含まれます。境内で教室を開いて月謝を受け取れば技芸教授業に当たります。
免許や段位の付与のみを行う行為も技芸の教授に含まれます(法人税基本通達15-1-66)。教材の販売や宿泊など、参加費以外の収入もあわせて確認してください。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税法施行令5条1項30号(技芸教授業)
- 法人税基本通達15-1-66(技芸教授業の範囲)
- 法人税基本通達15-1-1
- 法人税基本通達15-1-6(2)
- 法人税基本通達15-1-10(1)ただし書き
- 法人税基本通達15-1-39(宿泊料を受けて宿泊させる行為は旅館業に該当する)
- 法人税法施行令6条(収益事業を行う法人の経理の区分)、法人税法150条1項(収益事業開始の届出)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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