四半期報告書が廃止されてから2年半が過ぎました。第1四半期と第3四半期の開示は、取引所規則の四半期決算短信が担っています。
ここで毎期のように論点になるのが、監査人のレビューを受けるかどうかです。原則は任意ですが、一定の場合には義務づけられます。そして実際には、4社に3社がレビューを受けていません。
この記事では、任意と義務を分ける5つの要件、開示のタイミング、そして上場を目指す会社が押さえておく点を、東証と金融庁の公表資料にもとづいて整理します。
- 第1・第3四半期のレビューが原則として任意であること
- レビューが義務づけられる5つの場合と、その根拠条文
- 義務づけがいつ解除されるか
- 東証の集計で、実際にレビューを受けている会社の割合
- 有価証券届出書を提出する場合に必要になる手順と順序

四半期決算短信 期中レビュー 判定と日程のシート
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この記事の見出し
📌 四半期報告書はもうない
金融商品取引法等の一部を改正する法律は2023年11月20日に成立し、同年11月29日に公布されました。四半期報告書を廃止する部分は2024年4月1日に施行されています。東京証券取引所も2024年3月28日に有価証券上場規程等を改正し、同じ日から施行しました。
いま残っているのは、上半期の半期報告書と、取引所規則にもとづく四半期決算短信です。半期報告書には監査人のレビューがつきます。第1四半期と第3四半期は、四半期決算短信だけになりました。
図 四半期報告書がなくなり、上半期は半期報告書に、第1と第3四半期は四半期決算短信が担う形になりました。
図 1年のうち、監査人が必ず関与するのは上半期と期末です。第1と第3四半期は、原則として会社の判断になります。
📌 レビューは原則として任意
金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告は2022年12月27日に公表されています。そこでは、速報性の観点等から、四半期決算短信については監査人によるレビューを一律には義務付けないことが考えられる、と整理されました。あわせて、企業においてレビューを受けるかどうかは任意とするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる、とも書かれています。
同時に、例えば会計不正が起こった場合や企業の内部統制の不備が判明した場合、信頼性確保の観点から、取引所規則により一定期間、監査人によるレビューを義務付けることが考えられる、という一文が置かれました。この一文が、いまの東証規則の義務づけになっています。
| 何を | どこで |
|---|---|
| 四半期決算短信の開示義務 | 有価証券上場規程第404条第1項・第2項(外国会社は第416条第1項・第2項)、同施行規則第405条第1項 |
| 期中レビューの取扱い | 規程第404条第3項・第4項、第438条第2項、施行規則第405条第2項・第3項 |
| 義務づけの要件 | 施行規則第405条第2項 |
| レビューを行う者 | 規程第438条第2項 会計監査人を期中レビューを行う公認会計士等として選任することが求められる |
表 四半期決算短信と期中レビューに関する主な根拠条文。
図 施行規則の要件に当たるかどうかで、任意と義務が分かれます。任意の場合でも、レビューの有無は四半期決算短信で開示します。
📌 義務づけられるのは、この5つ
東証が2023年11月22日に公表した実務の方針では、義務づけの要件が5つ並んでいます。いずれも、直近の開示や内部統制に問題が出ている場合です。
図 5つのうち、いずれかに該当すると義務づけが始まります。対象は第1と第3四半期で、第2四半期は含まれません。
義務づけは、いったん始まると自動的には外れません。要件に該当したあとに提出される当期の有価証券報告書および内部統制報告書において、いずれの要件にも該当しない状態になった時点で解除されます。つまり、次の本決算をきれいに通すまで続きます。
図 義務づけの解除は、次の有価証券報告書と内部統制報告書を出すまで待つことになります。東証は該当会社の一覧を毎月公表しています。
📌 実際に受けている会社は4分の1に満たない
東証は、制度が始まってからの開示動向を集計して公表しています。2024年9月5日の公表では、2024年6月30日に終了する第1四半期または第3四半期について、四半期末後45日以内に決算発表を行った上場内国会社2,438社のうち、任意でレビューを受けたのが577社、全体の23.7パーセントでした。義務によるものが24社、1.0パーセント。レビューなしが1,837社、75.3パーセントです。
その次の集計は2025年3月12日の公表です。2024年12月31日に終了する第1四半期または第3四半期について、上場内国会社2,417社のうち、レビューなしが1,831社で75.8パーセント、任意が552社で22.8パーセント、義務が34社で1.4パーセントでした。
図 二つの集計で構成比はほとんど動いていません。任意でレビューを受ける会社は2割強にとどまっています。
| 集計 | 対象 | レビューなし | 任意 | 義務 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年9月5日公表 | 2024年6月30日終了の四半期 2,438社 | 1,837社 75.3% | 577社 23.7% | 24社 1.0% |
| 2025年3月12日公表 | 2024年12月31日終了の四半期 2,417社 | 1,831社 75.8% | 552社 22.8% | 34社 1.4% |
表 東京証券取引所が公表している四半期決算短信のレビューの状況。2025年3月12日公表分は、同年3月6日公表分の訂正版です。
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📌 開示のタイミングと二段階開示
義務づけられている場合は、レビューが完了次第、四半期決算短信を開示することが原則とされています。信頼性の確保のために義務づけている以上、レビューが終わる前に出すのでは意味がないという整理です。
任意の場合は、会社が決められます。レビューの完了を待って出すこともできますし、先に短信を開示しておいて、後日レビュー報告書を添付した短信を改めて開示することもできます。後者が二段階開示です。2024年の集計では、任意でレビューを受けた会社の10.7パーセントがこの形を選んでいました。
図 義務の場合はレビューの完了を待ち、任意の場合は二段階開示という選択肢もあります。
レビューを入れるかどうかの判断で、いちばん効いてくるのは日程です。四半期末後45日以内という目安のなかに、決算作業とレビューの両方を収める必要があります。2024年12月終了の四半期の集計では、レビュー報告書を添付した短信を45日以内に開示できなかった会社が8社、そもそも短信を45日以内に開示できなかった会社が10社ありました。
図 45日という枠のなかに、決算作業とレビューの両方を入れることになります。日程が組めるかどうかが実務上の分かれ目です。
📌 上場を目指す会社が押さえておくこと
新規上場会社について、上場初年度の四半期開示を免除したり猶予したりする特則は、東証の公表資料では見当たりません。上場した以上は第404条の開示義務がかかり、第1と第3四半期の決算短信を出すことになります。
そのうえで、上場前後に必ず出てくるのが有価証券届出書との関係です。届出書の提出を目的として四半期財務諸表に期中レビューを受ける場合は、レビュー報告書を添付した四半期決算短信を開示することが義務づけられます。先にレビュー未了の短信を開示していた場合でも、改めて報告書を添付した短信を出す必要があります。
このとき順序に注意が必要です。届出書と同日の開示が想定されますが、届出前の勧誘に当たらないよう、先に届出書を提出し、そのあとに決算短信を開示するよう留意する必要がある、と東証が説明しています。
図 レビュー、届出書の提出、短信の開示という順序になります。短信を先に出すと届出前勧誘の問題が生じます。
日程の組み方と、監査人との協議の進め方を支援しています。上場前後の届出書との順序についてもご相談いただけます。上場申請書類と内部統制の実務に携わっている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 上半期は半期報告書になり、監査人のレビューがつきます。義務づけの対象となる四半期決算短信は第1と第3四半期で、第2四半期は含まれません。
A. レビューの有無は四半期決算短信に開示することになっています。受けていないこと自体は多数派で、2025年3月12日公表の集計では75.8パーセントの会社がレビューなしでした。
A. 有価証券上場規程第438条第2項により、上場会社の会計監査人を、四半期財務諸表等に対して期中レビューを行う公認会計士等として選任することが求められています。会計監査人が交代した場合は後任が行うことになります。
A. 東証が、義務づけ要件に該当する上場会社の一覧を毎月第3営業日を目処に公表しています。自社が該当するかどうかは、直近の監査意見と内部統制報告書、提出期限の遵守状況から判断できます。
A. 上場審査でレビューの有無が評価されるという取扱いは、東証や金融庁の公表資料では確認できませんでした。一方、有価証券届出書の提出を目的としてレビューを受ける場合の手順は、東証が明示しています。
📄 まとめ
四半期報告書は2024年4月1日に廃止され、第1と第3四半期の開示は取引所規則の四半期決算短信が担っています。これに対する監査人の期中レビューは、原則として任意です。
ただし、直近の監査意見が無限定適正意見以外だった場合、内部統制に開示すべき重要な不備があった場合など、施行規則第405条第2項の5つの要件のいずれかに該当すると義務づけられます。義務づけは、次の有価証券報告書と内部統制報告書でいずれの要件にも該当しなくなるまで続きます。
東証の集計では、レビューを受けていない会社が4社に3社を占めています。任意で受けている会社は2割強で、その1割ほどが二段階開示を使っています。判断の分かれ目は、45日という開示期限のなかに決算作業とレビューを収められるかどうかです。
上場を目指す会社にとって直接効いてくるのは、有価証券届出書との関係です。届出書の提出を目的としてレビューを受ける場合は、報告書を添付した短信の開示が必要になり、しかも届出書を先に出すという順序を守る必要があります。
⚖ 本記事の根拠
- 金融商品取引法等の一部を改正する法律(令和5年法律第79号、2023年11月20日成立・11月29日公布、四半期報告書廃止部分は2024年4月1日施行)
- 東京証券取引所「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」(2024年3月28日)
- 東京証券取引所「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(2023年11月22日)
- 有価証券上場規程第404条・第416条・第438条第2項、同施行規則第405条
- 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(2022年12月27日)
- 東京証券取引所「四半期開示の見直し後の四半期決算短信の開示動向」(2024年9月5日)
- 東京証券取引所「第1・第3四半期決算短信におけるレビューの状況」(2025年3月12日)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の会計処理および税務上の判断は、監査人および顧問税理士にご確認ください。
📚 参考(公的な一次情報)
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