宗教法人は法人税法の別表第二に掲げる公益法人等にあたり、収益事業から生じた所得以外には法人税がかかりません。お布施や賽銭、寄附は課税の対象外です。
課税されるのは、法人税法施行令5条1項が定める34業種のいずれかに当たり、継続して、事業場を設けて行われる事業から生じた所得だけです。この3つの要件をすべて満たすかどうかが判定の分かれ目になります。
この記事では、34業種の一覧と宗教法人での具体例、条文が置いている除外規定、開始届出の期限、税率、そしてみなし寄附金の限度額を整理します。
- 宗教法人に法人税がかからないのはなぜかという条文上の根拠
- 収益事業の3要件と、34業種の一覧
- 墳墓地の貸付業が不動産貸付業から除かれていること
- 収益事業開始届出書の提出期限
- みなし寄附金の限度額が所得の20%であり、年200万円の下限がないこと
図 収益事業の判定(法人税法2条13号および同法施行令5条1項にもとづき作成)
この記事の見出し
📌 宗教法人は原則として法人税がかからない
宗教法人は、法人税法2条6号にいう公益法人等にあたります。同法の別表第二に、宗教法人法にもとづく宗教法人が掲げられているためです。
法人税法4条1項は、内国法人に法人税を納める義務があるとしたうえで、ただし書きで、公益法人等または人格のない社団等については収益事業を行う場合などに限ると定めています。さらに同法6条は、内国法人である公益法人等の各事業年度の所得のうち、収益事業から生じた所得以外の所得には法人税を課さないとしています。
つまり、お布施や賽銭、寄附といった宗教活動そのものに伴う収入には法人税がかかりません。課税されるのは、法律が定める収益事業から生じた所得だけです。
ここで問題になるのが、何が収益事業にあたるのかという線引きです。この判定を誤ると、申告が必要なのにしていない、あるいは不要な申告をしているという状態になります。
📌 収益事業の3つの要件
法人税法2条13号は、収益事業を、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものと定義しています。ここから3つの要件が導かれます。
ひとつめは、政令で定める事業にあたることです。政令とは法人税法施行令5条1項で、34の業種が列挙されています。この34業種のいずれにも当たらなければ、どれだけ収入があっても収益事業にはなりません。
ふたつめは、継続して行われることです。一時的、偶発的な行為は含まれません。ただし、毎年決まった時期に行われるものや、相当期間にわたって継続するものは、継続性があると判断されます。
みっつめは、事業場を設けて行われることです。常設の店舗や事務所がある場合はもちろん、必要に応じて随時設けられる場所であっても事業場にあたるとされています。境内に臨時の売店を設ける場合も、事業場を設けたことになります。
この3つをすべて満たしたときに、はじめて収益事業になります。
📌 34業種の一覧
法人税法施行令5条1項が定める34業種は次のとおりです。宗教法人が行う可能性のある事業に印を付けています。
表 34業種と宗教法人での例
📌 34業種に当たっても除かれるものがある
34業種に該当する事業であっても、条文が個別に除外しているものがあります。宗教法人にとって重要なのが、墳墓地の貸付業です。
法人税法施行令5条1項5号は不動産貸付業を収益事業としていますが、そのニで、宗教法人法4条2項に規定する宗教法人または公益社団法人もしくは公益財団法人が行う墳墓地の貸付業を除いています。したがって、墓地の永代使用料や区画の貸付けによる収入は、不動産貸付業としての収益事業にはあたりません。
ただし、墓地に関連する収入がすべて非課税になるわけではありません。管理料の性格や、石材の販売、納骨堂の運営の形態によっては、別の業種として収益事業に該当することがあります。個別の判断が必要です。
このほかの号にも、それぞれ除外の定めが置かれています。ある収入が34業種のどれかに当たると思ったときは、その号の除外規定まで読んでください。
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📌 収益事業を始めたら2か月以内に届出
収益事業を開始した場合には、届出が必要です。法人税法150条1項は、内国法人である公益法人等または人格のない社団等が新たに収益事業を開始した場合には、その開始した日以後2か月以内に、所定の事項を記載した届出書に、開始した時における収益事業に係る貸借対照表などを添付して、納税地の所轄税務署長に提出しなければならないとしています。
この届出を怠ったまま何年も経過し、税務調査で指摘されるというケースがあります。届出をしていなくても納税義務は生じますので、無申告加算税や延滞税の負担が加わります。
収益事業を始めるかどうかを検討する段階で、それが34業種に当たるかを確認し、当たるのであれば届出の準備を進めてください。
📌 税率は普通法人より低い
収益事業から生じた所得には法人税がかかりますが、税率は普通法人より低く設定されています。法人税法66条3項は、公益法人等に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額を、所得の金額に100分の19の税率を乗じて計算した金額とすると定めています。普通法人の23.2%と比べて低い水準です。
さらに、租税特別措置法42条の3の2により、年800万円以下の所得については15%に軽減されます。ただし、所得の金額が年10億円を超える事業年度については17%とされています。この特例は、令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。
なお、収益事業以外の事業から生じた所得には法人税がかかりませんので、収益事業の所得だけを区分して計算することになります。この区分経理が、宗教法人の経理でもっとも手間のかかる部分です。
表 法人税率(法人税法66条および租税特別措置法42条の3の2)
📌 みなし寄附金という仕組み
収益事業で得た資金を、本来の宗教活動のために使うことがあります。この場合、法人税法37条6項により、公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額は、収益事業に係る寄附金の額とみなされます。これがみなし寄附金です。
寄附金には損金算入限度額がありますので、支出した全額が損金になるわけではありません。宗教法人の場合、法人税法施行令73条1項3号ハにより、限度額は所得の金額の100分の20です。
ここで注意していただきたいのが、この限度額の水準です。同号ロは、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、社会医療法人について、所得の金額の100分の50、それが年200万円に満たない場合は年200万円としています。年200万円という下限は、これらの法人に限られたものであり、宗教法人には適用されません。書籍や解説記事でこの点が混同されていることがありますので、条文を確認してください。
また、37条6項のただし書きは、事実を隠蔽しまたは仮装して経理をすることにより支出した金額を除いています。区分経理を適切に行っていることが前提です。
図 判定の手順
駐車場、席貸し、物品販売、教室。どこまでが収益事業に当たるかは、条文の除外規定まで読まなければ判断できません。届出や申告の要否から整理します。上場準備会社の会計と税務の実務に携わっている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 宗教活動に伴う収入であり、法人税法施行令5条1項の34業種のいずれにも当たりませんので、収益事業にはあたりません。法人税法6条により、収益事業から生じた所得以外の所得には法人税が課されません。ただし、実質的に物品の販売や役務の提供の対価と認められるものがあれば、個別に検討が必要です。
A. 法人税法施行令5条1項31号の駐車場業に当たり得ます。参拝者のための一時的な駐車スペースの提供にとどまるのか、時間貸しや月極めで継続的に事業として行っているのかによって判断が分かれます。継続性と事業場の要件もあわせて確認してください。
A. 法人税法施行令5条1項5号ニは、宗教法人法4条2項に規定する宗教法人が行う墳墓地の貸付業を不動産貸付業から除いています。したがって墳墓地の貸付けによる収入は収益事業にあたりません。ただし、管理料の性格や納骨堂の運営形態によっては別の業種に該当することがあります。
A. 法人税法150条1項により、収益事業を開始した日以後2か月以内に、届出書に開始した時における収益事業に係る貸借対照表などを添付して、納税地の所轄税務署長に提出します。あわせて、収益事業とそれ以外の経理を区分する体制を整えてください。
A. 法人税法37条6項により、収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は寄附金の額とみなされますが、損金算入には限度額があります。宗教法人の限度額は、法人税法施行令73条1項3号ハにより所得の金額の100分の20です。全額が損金になるわけではありません。
📄 まとめ
宗教法人は法人税法2条6号の公益法人等にあたり、同法6条により収益事業から生じた所得以外には法人税がかかりません。課税の対象になるのは、法人税法施行令5条1項の34業種に当たり、継続して、事業場を設けて行われる事業だけです。
34業種に当たる場合でも、条文が置く除外規定を確認してください。宗教法人が行う墳墓地の貸付業は、同項5号ニにより不動産貸付業から除かれています。
収益事業を開始したら、法人税法150条1項により2か月以内の届出が必要です。税率は法人税法66条3項の19%を基本とし、租税特別措置法42条の3の2により年800万円以下は15%になります。みなし寄附金の損金算入限度額は所得の金額の100分の20であり、学校法人などに認められている年200万円の下限は宗教法人には適用されません。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税法2条6号(公益法人等は別表第二に掲げる法人)、同法別表第二(宗教法人法にもとづく宗教法人)
- 法人税法4条1項ただし書き(公益法人等は収益事業を行う場合などに限り納税義務を負う)
- 法人税法6条(内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税。収益事業から生じた所得以外の所得には法人税を課さない)
- 法人税法2条13号(収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう)
- 法人税法施行令5条1項(収益事業の範囲。34業種)、同項5号ニ(宗教法人法4条2項に規定する宗教法人が行う墳墓地の貸付業は不動産貸付業から除かれる)
- 法人税法150条1項(新たに収益事業を開始した場合には、その開始した日以後2か月以内に届出書を提出する)
- 法人税法66条3項(公益法人等に対する法人税の税率は100分の19)、租税特別措置法42条の3の2第1項3号(年800万円以下の所得は15%。所得の金額が年10億円を超える事業年度は17%。令和9年3月31日までに開始する各事業年度)
- 法人税法37条6項(みなし寄附金)、同法施行令73条1項3号ハ(イまたはロに掲げる法人以外の公益法人等の損金算入限度額は所得の金額の100分の20)
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。