株主提案権の8週間前ルール|受け取った会社がすること

相続で株式が親族に分散した。退任した役員が株主として残っている。非上場の会社でも、株主から議案を出したいと言われる場面はあります。

会社法の株主提案権は3つの条文に分かれており、それぞれ要件が違います。ひとつは期限のない権利、ふたつは8週間前までという期限のある権利です。この記事では、請求を受け取った会社が何を確認し、どう扱うのかを条文で整理します。

この記事でわかること

  • 株主提案権が3つに分かれていること(会社法303条・304条・305条)
  • 取締役会を置くかどうかで要件が変わること
  • 8週間前という期限と、1パーセントまたは300個という持株の要件
  • 議案の数が10までに制限されること(305条4項)

株主提案権は3つある

まず整理します。会社法303条は議題提案権、304条は議場での議案提案権、305条は議案の要領の通知請求権です。名前が似ていますが、求めているものが違います。

303条は、株主総会の目的とする事項そのものを追加してほしい、という請求です。取締役選任の件を議題に入れてほしい、というのがこれに当たります。304条は、すでに議題になっている事項について、総会の場で具体的な議案を出す権利です。取締役選任の件が議題にあるとき、その場で誰それを選任せよと提案するものです。305条は、自分が出す議案の要領を招集通知に載せてほしい、という請求です。

株主提案権の3つの類型議題提案権総会の目的である事項を追加する8週間前まで取締役会設置会社は持株の要件あり会社法303条議案提案権議題について議場で議案を出す期限なし持株の要件もなし当日その場で会社法304条議案の要領の通知招集通知に議案の要領を載せさせる8週間前まで議案は10個まで持株の要件あり会社法305条

304条だけは期限も持株の要件もありません。当日いきなり出てくることがあります

議題提案権(303条)

会社法303条1項は、株主は取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができると定めています。かっこ書きにより、その株主が議決権を行使することができる事項に限られます。この1項には、持株の要件も期限もありません。取締役会を置いていない会社では、株式を1株でも持っていれば、いつでも請求できるということです。

同条2項が取締役会設置会社の特則です。総株主の議決権の100分の1以上の議決権、または300個以上の議決権を、6か月前から引き続き有する株主に限られます。いずれも定款でこれを下回る割合や個数、期間を定めることができます。そして、その請求は株主総会の日の8週間前までにしなければなりません。8週間についても定款で短縮できます。

同条3項は、公開会社でない取締役会設置会社について、6か月という保有期間の要件を外しています。非上場の会社では、要件は持株だけということです。同条4項により、その事項について議決権を行使することができない株主の議決権は、総株主の議決権の数に算入しません。

議案提案権(304条)

会社法304条本文は、株主は株主総会において、株主総会の目的である事項につき議案を提出することができると定めています。持株の要件も期限もありません。総会の場で発言すれば足ります。

ただし書に2つの例外があります。ひとつは、当該議案が法令もしくは定款に違反する場合です。もうひとつは、実質的に同一の議案について、株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合です。同じ提案を毎年繰り返すことを防ぐ規定です。

この権利は当日いきなり行使されます。議長の議事運営として、議題の範囲内かどうか、ただし書に当たらないかを判断することになります。想定問答を用意しておく実益があるのはこの点です。

議案の要領の通知請求権(305条)

会社法305条1項は、株主は取締役に対し、株主総会の日の8週間前までに、株主総会の目的である事項につき提出しようとする議案の要領を株主に通知することを請求することができると定めています。招集通知を出す場合には、その通知に記載または記録することを求めるものです。

ただし書により、取締役会設置会社では、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上を6か月前から引き続き有する株主に限られます。同条2項により、公開会社でない取締役会設置会社では保有期間の要件が外れます。303条と同じ構造です。

同条4項が数の制限です。取締役会設置会社の株主が請求をする場合において、提出しようとする議案の数が10を超えるときは、10を超える数に相当する議案について1項から3項までの規定は適用されません。そして数え方の特則が4つ置かれています。役員等の選任に関する議案は数にかかわらず1、解任に関する議案も1、会計監査人を再任しないことに関する議案も1、定款の変更に関する2以上の議案は、異なる議決がされたとすれば内容が相互に矛盾する可能性がある場合には1と数えます。

同条5項により、10を超える分をどれにするかは取締役が定めます。ただし、請求をした株主が優先順位を定めていればそれに従います。

同条6項は304条ただし書と同じ拒否事由です。法令もしくは定款に違反する場合と、実質的に同一の議案について10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合には、1項から3項までの規定が適用されません。

項目 303条 304条 305条
求めるもの 議題の追加 議場での議案 議案の要領の通知
期限 8週間前まで なし 8週間前まで
持株の要件 1パーセントまたは300個 なし 1パーセントまたは300個
数の制限 なし なし 10個まで

期限と持株の要件は、いずれも取締役会設置会社の場合です。取締役会を置いていない会社では、303条1項と305条1項本文がそのまま働き、要件はありません。

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受け取った会社がすること

請求を受け取ったら、順に確認します。

受領後に確認する順序

  • 受領した日を記録する。8週間の起算に使います
  • どの条文に基づく請求かを特定する。303条か305条か、両方か
  • 株主名簿で持株を確認する。100分の1以上か、300個以上か
  • 公開会社であれば保有期間も確認する。非公開会社なら不要(303条3項、305条2項)
  • 議案の数を数える。10を超える場合は305条4項の数え方で計算する
  • 拒否事由に当たらないかを検討する。法令定款違反、3年以内の再提案(304条ただし書、305条6項)
  • 取締役会で対応方針を決議し、議事録に残す

そのうえで、招集通知に載せます。会社法施行規則93条は、議案が株主の提出に係るものである場合の株主総会参考書類の記載事項を定めています。株主の提出に係る旨、議案に対する取締役会の意見があるときはその内容、株主が提案の理由を通知したときはその理由などです。提案の理由については、明らかに虚偽である場合や、専ら人の名誉を侵害しもしくは侮辱する目的によるものと認められる場合は除かれます。

取締役会の意見を付けるかどうかは会社の判断ですが、反対する提案であれば意見を付けるのが通例です。付けるのであれば、取締役会で意見の内容まで決議してください。

非上場の会社で起きること

上場会社の株主提案は報道されますが、非上場の会社でも起きます。多いのは、相続によって株式が分散し、経営に関与していない親族が株主として残っている場合と、退任した役員が株主のまま残っている場合です。

非上場の会社で注意したいのは2点です。ひとつは、303条3項と305条2項により保有期間の要件がないことです。株式を取得したばかりの株主でも、持株が1パーセント以上あれば請求できます。相続で株式を取得した直後でも同じです。

もうひとつは、取締役会を置いていない会社では持株の要件すらないことです。1株の株主が議題を追加させることができます。取締役会の設置は機関設計の話ですが、こうした場面にも効いてきます。

予防の観点では、株主名簿を最新に保つこと、そして総会の日程を早めに固めることが実務的です。8週間前という期限は総会の日から逆算しますので、日程が決まっていなければ株主も請求のタイミングを計れませんし、会社も受付の締切を説明できません。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 株主提案を拒めるのはどんな場合ですか。

A. 会社法304条ただし書と305条6項により、議案が法令もしくは定款に違反する場合と、実質的に同一の議案について総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合です。

Q. 議案をいくつでも出せますか。

A. 会社法305条4項により、取締役会設置会社では10を超える議案について通知請求の規定が適用されません。役員等の選任や解任に関する議案は、数にかかわらず1と数えます。

Q. 非上場の会社でも6か月の保有期間が必要ですか。

A. 必要ありません。会社法303条3項と305条2項により、公開会社でない取締役会設置会社では保有期間の要件が外れます。持株の要件だけを確認してください。

📄 まとめ

株主提案権は3つに分かれます。議題を追加する303条、議場で議案を出す304条、議案の要領の通知を求める305条です。303条と305条には8週間前という期限と持株の要件がありますが、304条にはどちらもありません。

請求を受けたら、受領日、根拠条文、持株、議案の数、拒否事由の順に確認し、取締役会で対応方針を決議します。非上場の会社では保有期間の要件が外れますので、株式を取得したばかりの株主からの請求もありえます。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法303条1項(議題提案権)、同条2項、同条3項(非公開会社では保有期間の要件なし)、同条4項
  • 会社法304条本文およびただし書
  • 会社法305条1項(議案の要領の通知請求と8週間前という期限)、同条2項、同条3項
  • 会社法305条4項(議案の数は10まで)、同条5項、同条6項
  • 会社法施行規則93条(議案が株主の提出に係る場合の株主総会参考書類の記載事項)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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