外注費が給与と認定されたら|5つの判定要素と影響額

「この人への支払は外注費ではなく、給与ではないですか」。調査でこう言われたとき、手元にある業務委託契約書を示しても、話はそこで終わりません。区分を決めているのは契約書の表題ではなく、実際の働き方だからです。

やっかいなのは、給与と認定されたときに動くのが法人税ではないという点です。使用人に対する給与であれば損金になることに変わりはないので、所得の金額は原則として動きません。代わりに、源泉所得税と消費税が動きます。しかも源泉所得税は会社が納める立場になるため、本人からの回収という別の問題まで抱えることになります。

この記事では、国税庁が公表している通達が挙げる5つの判定要素を確認したうえで、給与と認定されたときにいくら動くのかを数字で示します。指摘項目の全体像は税務調査で指摘される項目 別冊にまとめています。

図1 区分は、契約の性質と働き方の実態で決まりますその支払は、請負契約にもとづく対価か、雇用契約にもとづく対価か契約の形からは決めきれないときは、5つの事項を総合勘案する事業所得とされる外注費のまま。消費税は課税仕入れ給与所得とされる源泉徴収と消費税の両方が動く

契約書の表題ではなく、契約の性質と働き方が判断の材料になります。

🧭 争点は契約書ではなく、働き方の実態です

所得税法第28条第1項は、給与所得とは俸給、給料、賃金、歳費および賞与ならびにこれらの性質を有する給与に係る所得をいうと定めています。ここには、どのような契約書があればよい、といった要件は書かれていません。実質的に雇用に近い働き方であれば、名前が外注費でも給与等に当たり得るという構造になっています。

このことは、会社にとって不利にだけ働くわけではありません。裏を返せば、働き方が請負として整っていれば、契約書の細かい文言に左右されないということでもあります。実務で大切なのは、契約書を厚くすることよりも、日々の運用を契約の内容に合わせておくことです。

調査でこの論点が持ち出されるとき、調査官が見ているのは契約書だけではありません。出勤簿やタイムカードに名前が載っていないか、朝礼に参加していないか、社員と同じ制服や名札を使っていないか、作業指示がどのように出されているか。会社の中で普通に作られている記録のほうが、契約書よりも実態をよく表しているとみられます。契約書では成果に対する報酬と書きながら、精算書は日数×日当で計算されている、という食い違いは、すぐに見つかります。

もうひとつ、この指摘は一人分では終わらないという特徴があります。同じ条件で働いている人が何人かいれば、まとめて同じ判断がされます。1人あたりの金額が小さくても、人数と年数を掛けると大きくなります。1件の指摘ではなく、支払の型に対する指摘だと考えて備えてください。

📌 国税庁の通達が挙げる5つの判定要素

国税庁は、平成21年12月17日付の法令解釈通達「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」(課個5-5ほか)を公表しています。この通達は、対象となる者が受ける報酬について、まず請負契約もしくはこれに準ずる契約にもとづく対価であれば事業所得、雇用契約もしくはこれに準ずる契約にもとづく対価であれば給与所得という原則を示したうえで、その区分が明らかでないときに総合勘案する事項として、次の5つを挙げています。

総合勘案する事項 何を見ているのか
他人による代替が認められるか その人が行けない日に、別の人を手配して同じ仕事を済ませてよいか。代替が許されるなら請負に近づきます
時間的な拘束を受けるか 作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど、時間で縛られていないか
具体的な内容や方法について指揮監督を受けるか やり方や手順まで指示されているか。結果だけを求められているか
引渡し前に滅失した場合に報酬を請求できるか まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力で滅失した場合等に、既に提供した役務について報酬を請求できるか
材料や用具等の供与を受けているか 道具や材料を会社から支給されていないか。軽微なものは除いて考えます

この通達は、大工、左官、とび職その他これらに類する者が受ける報酬を対象として示されたものです。ほかの業種にそのまま当てはまると通達が述べているわけではありませんが、判定の枠組みとしては広く参考にされています。

5つのうち、実務でとくに争いになりやすいのは2つ目と5つ目です。始業時刻を決めて日当で払っている、道具も材料も会社が用意している、という2点がそろうと、外注として説明するのはかなり難しくなります。反対に、代替が認められていて、成果に対して報酬が決まり、道具は本人が持ち込んでいるのであれば、説明の材料は十分にあります。

図2 5つの事項を、両側から見比べる外注に近い事実給与に近い事実代わりの職人を立ててよい本人が行くことが前提成果や出来高で報酬が決まる日当や時間単価で決まるやり方は本人に任せている手順まで細かく指示しているやり直しの費用は本人が負う滅失しても報酬は支払われる道具や材料は本人が用意する会社が道具や材料を支給するどれか1つで決まるのではなく、5つを総合勘案して判定します

実際には、両側の事実が混ざります。どちらが多いかで見ます。

🧾 消費税の通達は4つの事項を挙げています

消費税にも、同じ趣旨の定めがあります。消費税法基本通達1-1-1「個人事業者と給与所得者の区分」です。この通達は、雇用契約またはこれに準ずる契約にもとづく役務の提供は事業に該当しないとしたうえで、その区分が明らかでないときに総合勘案する事項として次の4つを挙げています。

消費税法基本通達1-1-1が挙げる事項 先の5つの事項との関係
役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか 1つ目と同じ観点です
役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか 3つ目と同じ観点です
引渡しを了しない完成品が滅失した場合等に報酬の請求ができるかどうか 4つ目と同じ観点です
役務の提供に係る材料または用具等を供与されているかどうか 5つ目と同じ観点です

2つの通達は、時間的な拘束を独立の事項として掲げているかどうかが違うだけで、見ているものはほとんど重なります。所得税で給与とされた支払が消費税では課税仕入れのまま、という結論は取りにくいと考えておくのが安全です。実際、消費税法第2条第1項第12号は課税仕入れの定義から、所得税法第28条第1項に規定する給与等を対価とする役務の提供を明文で除いています。

課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること……(消費税法第2条第1項第12号)

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🧮 給与と認定されたときに動く金額

年間1,320万円(税込)を外注費として払っていた個人について、給与と認定された場合を考えます。税率10パーセントの課税仕入れとして計上していたとすると、控除していた消費税額は1,320万円×10÷110=120万円です。

動くもの 内容
消費税 給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れに当たらないため、120万円の仕入税額控除ができなくなります
源泉所得税 給与等の支払者は支払の際に所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに納付しなければなりません(所得税法第183条第1項)。徴収していなかった分について納税の告知を受けます
不納付加算税 源泉徴収等による国税が法定納期限までに完納されなかった場合には、納税の告知に係る税額の100分の10(国税通則法第67条第1項)
法人税 使用人に対する給与であれば損金になることは変わらないため、所得の金額は原則として動きません。支払先が役員である場合は、法人税法第34条の制約を受けます

源泉徴収すべき税額は、扶養親族等の数や給与の額によって決まるため、ここでは金額を置いていません。消費税の120万円は、税込1,320万円×10÷110の計算によるものです。

ここで注意したいのは、法人税の行だけを見て安心しないことです。所得が動かないため、決算書の数字はほとんど変わりません。それでも会社から出ていくお金は増えます。所得が動かない指摘だからこそ、事前の点検で見つけにくいという面があります。売上や交際費のように利益に直結する項目と違って、社内で違和感が生まれにくいからです。

金額として確実に増えるのは、まず消費税の120万円です。そして源泉所得税は、本来なら本人の手取りから差し引くはずだったものを、会社がまとめて納めることになります。本人に「あとから返してほしい」と言えるかどうかは、税務とは別の話です。すでに退職している、連絡が取れない、という場面では、会社がそのまま負担することになりかねません。給与認定の重さは、この回収の問題にあります。

なお、不納付加算税については軽くなる道も用意されています。国税通則法第67条第2項は、納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付した場合で、その納付が調査があったことにより告知があるべきことを予知してされたものでないときは100分の5とし、同条第3項は、法定納期限までに納付する意思があったと認められる一定の場合で、法定納期限から1月を経過する日までに納付されたときは第1項を適用しないとしています。自分で気づいて動いたかどうかが、ここでも効きます。

図3 給与認定で動くのは、法人税ではありません外注費が給与と認定された消費税課税仕入れに当たらない仕入税額控除ができない源泉所得税徴収していない分の納付不納付加算税は100分の10法人税使用人分の給与であれば損金である点は変わらない

所得は動かないのに負担が増えるところが、この指摘の特徴です。

🗂️ 外注として扱うなら、そろえておく形

外注として扱うこと自体に問題はありません。問題になるのは、契約の形と日々の運用がずれているときです。5つの事項に対応させて、契約と運用の両方を整えておきます。

そろえておくもの 効いてくる場面
業務委託契約書 作業の範囲と成果、報酬の決め方、代替を認めるかどうか、道具や材料の負担をどちらが持つかを書く
報酬の決め方の記録 時間単価ではなく、出来高や成果を単位とした計算であることが分かる単価表や精算書
指示の出し方 手順まで指示した記録を残さない。依頼するのは成果と納期であるという運用に統一する
道具や材料の扱い 会社が支給したものがあるなら、有償か無償か、軽微なものかを整理しておく
請求と支払 本人からの請求にもとづいて振り込む。給与の支給日と同じ日にまとめて払わない

とくに見直したいのは、報酬の決め方です。日当や時間単価で払っている場合、5つの事項のうち2つ目に正面から当たります。同じ人に同じ金額を払うとしても、1日いくらではなく、この作業一式でいくらという決め方にできないかを検討するだけで、説明の強さが変わります。

逆に、実態としてどう見ても雇用に近いのであれば、外注のまま押し通すよりも、給与として処理する形に切り替えるほうが結果的に負担は軽くなります。過去の分をどうするかは別に検討するとしても、これからの支払を給与にしておけば、少なくとも指摘の対象期間はそこで止まります。この論点でいちばん重いのは、同じ扱いを何年も続けてしまうことです。判断に迷う支払があるなら、決算のタイミングで一度整理しておくことをおすすめします。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

本人が確定申告をしていれば、給与と認定されないのですか

本人が事業所得として申告しているかどうかと、支払った側に源泉徴収義務があるかどうかは、別のこととして判断されます。所得税法第183条第1項は、給与等の支払をする者はその支払の際に徴収すると定めており、受け取った側の申告内容を条件にしていません。本人の申告は、働き方の実態を示す材料のひとつにはなります。

建設業以外でも、この5つの事項で見られるのですか

先の通達は大工、左官、とび職等を対象として示されたものですから、ほかの業種にそのまま適用されると通達が述べているわけではありません。ただし、消費税法基本通達1-1-1は業種を限らずに4つの事項を挙げており、内容はほぼ重なります。業種にかかわらず、この観点で確かめておくのが現実的です。

外注費に源泉徴収は必要ですか

所得税法第204条第1項は、源泉徴収の対象となる報酬や料金を号を挙げて限定しています。原稿や講演の報酬、弁護士や税理士などの業務に関する報酬、外交員や集金人の業務に関する報酬などです。ここに掲げられていない役務であれば、報酬としての源泉徴収は生じません。ただし、その支払が給与等に当たるとされれば、第183条第1項の問題になります。

過去の分もさかのぼって納めることになりますか

源泉所得税は、徴収すべきであった各支払の時点で納期限が来ています。調査で認定されれば、その各期分について納税の告知を受けることになります。どこまでさかのぼるかは事実関係によりますので、指摘を受けた段階で対象期間を確認してください。あわせて、消費税の各課税期間についても同じ扱いになるかどうかを確かめておくと、負担の全体像がつかめます。年数が重なるほど、本人からの回収が難しくなる点にも注意してください。

消費税の仕入税額控除だけを守る方法はありますか

消費税法第2条第1項第12号が課税仕入れの定義から給与等を対価とする役務の提供を除いている以上、給与と判断されれば控除は残りません。所得税と消費税で別の結論を主張するのではなく、働き方そのものを外注として説明できる形にしておくことが先になります。終わり方の選択肢は税務調査 完全ガイドで整理しています。

📄 まとめ

外注費か給与かは、契約書の表題ではなく、請負契約にもとづく対価か雇用契約にもとづく対価かという契約の性質と、働き方の実態で決まります。国税庁の通達は、代替が認められるか、時間的な拘束を受けるか、指揮監督を受けるか、滅失した場合に報酬を請求できるか、材料や用具の供与を受けているかという5つの事項を総合勘案するとしています。消費税法基本通達1-1-1も、ほぼ同じ4つの事項を挙げています。

給与と認定されたときに動くのは、消費税の仕入税額控除と源泉所得税です。税込1,320万円の例では、消費税だけで120万円が動きます。源泉所得税は本人から回収できるとは限らないため、実質的な負担になりやすい部分です。法人税の所得が動かないぶん、見落とされやすく、気づいたときには数年分がまとまっているという指摘でもあります。

いま外注として扱っている支払があるなら、5つの事項に当てはめて、どちら寄りの事実が多いかを一度確かめてみてください。契約の書き方と、報酬の決め方を整えるだけで説明が通る場面は少なくありません。判断に迷う支払が複数あるようなら、支払の型ごとに分けて、どこまでが説明できてどこからが難しいのかを切り分けるところから始めるのが早道です。

🔗 参考(公的な一次情報)

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

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