寄附金はいくらまで損金にできる?限度額の計算式と6つの区分を解説

取引先の周年行事への祝い金、地元の神社への寄贈金、業界団体への拠出金、災害義援金、そして100%子会社への資金援助。これらはどれも「支払った」ことに違いはありませんが、法人税の世界では、その全額が当たり前に損金になるわけではありません。

法人税法は、寄附金について「支出先の区分ごとに扱いを変える」という独特の建て付けを採っています。全額が損金になるもの、限度額までしか損金にならないもの、そして1円も損金にならないものが混在しており、しかもその判定は帳簿上の勘定科目名では決まりません。

この記事では、寄附金の損金不算入制度を、①どの区分に当てはまるかの判定、②一般の寄附金の損金算入限度額の計算、③いつ損金になるかという支出の時期、④申告書に添付する書類、という4つの角度から整理します。

寄附金の損金不算入とは何か

法人が支出した寄附金は、その全額が損金になるわけではなく、一定の限度額を超える部分の金額は損金の額に算入されません。これが寄附金の損金不算入制度です(法人税法第37条第1項)。

なぜ限度額という発想があるのか

寄附金は、事業との対価関係がはっきりしない支出です。事業に必要な費用として支出された部分と、利益処分に近い性格の支出とが混ざっており、その線引きを個別に行うことは実務上きわめて難しいという事情があります。

そこで法人税法は、個々の寄附金について「事業に必要かどうか」を判定するのではなく、法人の規模(資本金の額および資本準備金の額の合計額)と儲け(所得の金額)から機械的に限度額を計算し、その枠の中で損金算入を認めるという割り切った方法を採っています。一方で、公益性の高い支出については、その枠とは別に、あるいは枠を使わずに全額を損金にできる道が用意されています。

まず「支出先の区分」から入る

寄附金の検討は、金額の計算から入るとかえって遠回りになります。最初に確認すべきは「誰に対して支出したか」です。支出先の区分によって、そもそも限度額の計算に乗せるかどうかが変わるためです。

図1 寄附金の区分と損金算入の可否(法人税法第37条ほか)全額を損金にできる限度額まで損金にできる全額が損金にならない①国・地方公共団体に対する寄附金③特定公益増進法人・認定NPO法人等に対する寄附金(特別枠)⑤完全支配関係がある他の内国法人に対する寄附金②財務大臣が指定した指定寄附金④①〜③・⑤⑥以外の一般の寄附金(一般枠)⑥国外関連者に対する寄附金③は一般枠とは別枠で先に使い、使い切れなかった部分は④の一般枠の中で判定する。⑤は法人による完全支配関係がある場合に限られ、受け取った側では受贈益が益金不算入となる。

図1 法人税法上、寄附金は支出先によって扱いが分かれる。金額の計算より先に、どの区分かを確定させる。

税務上の「寄附金」は勘定科目名では決まらない

法人税法上の定義

法人税法は、寄附金の額を「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額」と定めています(法人税法第37条第7項)。

ここで押さえるべき点が3つあります。第一に、名義を問わないこと。総勘定元帳の科目が「支払手数料」でも「雑費」でも、実質が無償の供与であれば寄附金として扱われます。第二に、金銭に限られないこと。商品や固定資産を無償で渡した場合、無利息で資金を貸した場合も対象になります。第三に、金額は時価で測ること。帳簿価額ではなく、贈与・供与の時における価額で寄附金の額を計算します。

寄附金から除かれるもの

同じ第37条第7項は、括弧書きで「広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの」を寄附金から除いています。つまり、無償の供与であっても、これらの費用に該当するものは寄附金の土俵に乗りません。

国税庁も、事業に直接関係のない者に対する金銭の贈与は原則として寄附金になるとしたうえで、社会事業団体・政治団体に対する拠金や、神社の祭礼等の寄贈金を例に挙げています。逆に、得意先や仕入先など事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答のための支出は交際費等として扱われます。

実務では、「相手が事業に関係のある者かどうか」が交際費等と寄附金を分ける最初の分岐になります。取引関係のある会社の周年記念パーティーへの祝い金は交際費等、取引関係のない地域団体への協賛金は寄附金、というのが典型的な整理です。ただし協賛金でも、社名の掲出など広告としての効果が明らかであれば広告宣伝費になり得ます。名目ではなく、支出の相手方と支出の目的から実質で判定します。

低額譲渡・無利息貸付けも寄附金になる

資産の譲渡や経済的な利益の供与をした場合に、その対価の額が時価に比べて低いときは、時価との差額のうち実質的に贈与または無償の供与をしたと認められる金額が寄附金の額に含まれます(法人税法第37条第8項)。

この規定があるため、「無償ではなく有償で渡したから寄附金ではない」という説明は通りません。関係会社への不動産の安値売却、役員関係者への低利貸付け、グループ会社への無償の役務提供などは、いずれも差額部分が寄附金として認定される可能性があります。

個人が負担すべき支出は給与になる

法人が寄附金として支出したものであっても、その法人の役員等が個人として負担すべきものと認められる支出は、その者に対する給与として扱われ、寄附金からは除かれます。社長個人が発起人になっている団体への拠出金や、社長の個人的な信条にもとづく寄附を会社名義で支出しているようなケースが典型です。

この場合、単に損金にならないだけでなく、役員給与として源泉所得税の問題が生じ、かつ定期同額給与にも事前確定届出給与にも当たらないため損金不算入となります。役員給与の損金算入ルールについては、役員給与の税務 完全ガイド|定期同額・事前確定・退職金の全体像で全体像を整理しています。

支出の内容 法人税法上の扱い
社会事業団体・政治団体に対する拠金 事業に直接関係のない者への金銭の贈与として、原則として寄附金になる
神社の祭礼等に対する寄贈金 同じく、原則として寄附金になる
得意先・仕入先などへの接待、供応、慰安、贈答 交際費等に該当し、寄附金からは除かれる(別途、交際費等の損金不算入の対象)
広告宣伝の費用、見本品の費用 広告宣伝費等に該当し、寄附金からは除かれる
従業員のための福利厚生の支出 福利厚生費に該当し、寄附金からは除かれる
役員等が個人として負担すべき支出 その者に対する給与となり、寄附金からは除かれる
資産の低額譲渡、経済的利益の低廉な供与 時価との差額のうち、実質的に贈与と認められる金額が寄附金に含まれる
寄附金・交際費の区分でお困りではありませんか

支出の名目ではなく実質で判定される領域は、税務調査で論点になりやすい部分です。判定の考え方と社内ルールの整備をご支援します。

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一般の寄附金の損金算入限度額の計算

①国・地方公共団体への寄附金、②指定寄附金、③特定公益増進法人等への寄附金(特別枠の範囲内)、⑤完全支配関係がある法人への寄附金、⑥国外関連者への寄附金のいずれにも当たらないものが「一般の寄附金」です。この一般の寄附金について、損金算入限度額の計算が行われます。

計算式の構造

普通法人の場合、損金算入限度額は、資本を基準とする金額と所得を基準とする金額を足し、その合計額に4分の1を掛けて求めます(法人税法施行令第73条第1項第1号)。

図2 一般の寄附金の損金算入限度額の計算式(法人税法施行令第73条)資本を基準とする金額期末の資本金の額+資本準備金の額×当期の月数÷12×2.5/1,000+所得を基準とする金額寄附金を損金に算入する前の所得の額×2.5/100(2つの合計額)×1/4 = 損金算入限度額・資本又は出資を有しない法人などは「所得の金額×1.25/100」で計算する。・月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は切り捨てる(同条第5項)。・所得の金額は、支出した寄附金の全額を損金に算入しないものとして計算する(同条第3項)。

図2 資本の大きさと所得の大きさの両方から枠が決まる。所得が赤字でも資本部分の枠は残る。

「資本金の額及び資本準備金の額の合計額」を使う

計算の基礎になるのは、当該事業年度終了の時における資本金の額および資本準備金の額の合計額(または出資金の額)です。かつては「資本金等の額」が基礎とされていましたが、現行の規定では資本金と資本準備金の合計額を用います。

したがって、増資の際に払込金額の2分の1を資本準備金に組み入れていた場合でも、寄附金の限度額計算では資本金と資本準備金の両方が枠の計算に入ることになります。一方、その他資本剰余金は入りません。会社法上の計数の置き方が、そのまま限度額に効いてくる点に注意が必要です。

「所得の金額」は寄附金を引く前の金額

限度額の計算に使う所得の金額は、その事業年度において支出した寄附金の額の全額を損金の額に算入しないものとして計算した金額とされています(法人税法施行令第73条第3項)。

つまり、寄附金を費用計上した後の所得ではなく、寄附金を足し戻した後の所得を使います。申告書別表十四(二)で「所得金額仮計」に支出した寄附金の額を加算して計算するのはこのためです。この点を取り違えると限度額が過小になり、損金不算入額が実際より大きく出てしまいます。

なお、欠損金の繰越控除(法人税法第57条第1項)などの規定を適用しないで計算した所得の金額を用いる点も同条第2項に定められています。繰越欠損金を控除する前の所得で枠を計算するということです。欠損金の繰越控除そのものの要件については、欠損金の繰越控除とは?10年繰越の要件・控除限度額・繰戻し還付との使い分けを解説をご覧ください。

月数の端数は切り捨てる

資本を基準とする金額の計算に使う月数は、暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは切り捨てます(法人税法施行令第73条第5項)。設立初年度や決算期変更で事業年度が1年に満たない場合、この端数処理を誤ると枠がずれます。交際費等の定額控除限度額では端数を1か月とする(切り上げる)扱いなので、逆方向である点に注意してください。

全額を損金にできる2つの区分

国・地方公共団体に対する寄附金

国または地方公共団体(港湾法の規定による港務局を含みます)に対する寄附金の額は、一般の寄附金の合計額に算入されません(法人税法第37条第3項第1号)。限度額の枠を消費せず、全額が損金になるということです。

ただし括弧書きで、その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものは除かれています。自社専用の道路や引込線の整備費用を市に寄附するといったケースでは、この除外にあたらないかを確認する必要があります。

財務大臣が指定した指定寄附金

公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人・団体に対する寄附金のうち、「広く一般に募集されること」および「教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること」という要件を満たすものとして財務大臣が指定したものは、全額が損金になります(法人税法第37条第3項第2号)。

ここで重要なのは、法人が自分で「公益性が高い」と判断して適用するものではないという点です。財務大臣が個別に指定して告示したものに限られます。災害時の義援金のうち、特定の募集団体を経由するものが指定寄附金として告示される例が代表的です。指定の有無は財務省が公表している告示で確認します。

災害義援金については、最終的に国や地方公共団体に拠出されることが明らかな募金団体(新聞社・放送局など)に対して支出したものは、国等に対する寄附金として扱われる場合があります。募集の主体と資金の最終的な帰属先によって扱いが変わるため、領収証や募集要項で確認したうえで判定してください。

別枠が用意される特定公益増進法人への寄附金

特定公益増進法人とは

特定公益増進法人とは、公共法人、公益法人等(一般社団法人および一般財団法人を除きます)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものをいいます(法人税法第37条第4項)。

具体的には、独立行政法人、一定の地方独立行政法人、日本赤十字社、日本私立学校振興・共済事業団などのほか、公益社団法人・公益財団法人、一定の学校法人、社会福祉法人、更生保護法人が該当します。

名称が似ていても、一般社団法人・一般財団法人は特定公益増進法人には含まれません。公益認定を受けた「公益」社団法人・「公益」財団法人であるかどうかが分岐点です。認定NPO法人等に対する寄附金についても、租税特別措置法により特定公益増進法人に対する寄附金と同様の別枠が用意されています。

特別損金算入限度額の計算

普通法人が特定公益増進法人に対して、その法人の主たる目的である業務に関連する寄附金を支出した場合、一般の寄附金とは別枠の限度額(特別損金算入限度額)の範囲内で損金に算入されます。計算式は、資本を基準とする金額に1,000分の3.75、所得を基準とする金額に100分の6.25を用い、その合計額に2分の1を掛けるというものです。

図3 特定公益増進法人に対する寄附金の当てはめ順序STEP1特別損金算入限度額を計算するSTEP2寄附金の額と比べ、小さい方の金額を別枠で損金に算入STEP3超えた部分は一般の寄附金に加えて、一般枠で判定する特別損金算入限度額=〔(期末の資本金の額+資本準備金の額)×当期の月数÷12×3.75/1,000 +寄附金を損金に算入する前の所得の金額×6.25/100〕×1/2

図3 特別枠を使い切れなかった部分は捨てられるのではなく、一般枠での判定に回る。

項目 一般の寄附金(一般枠) 特定公益増進法人等(特別枠)
資本を基準とする率 1,000分の2.5 1,000分の3.75
所得を基準とする率 100分の2.5 100分の6.25
最後に掛ける割合 4分の1 2分の1
資本又は出資を有しない法人 所得の金額×1.25/100 所得の金額×6.25/100
限度額を超えた部分 損金不算入 一般枠の判定に回る
主な根拠 法人税法第37条第1項、同法施行令第73条 法人税法第37条第4項、同法施行令第77条の2

「主たる目的である業務に関連する」ことが必要

特別枠の対象になるのは、その特定公益増進法人の主たる目的である業務に関連する寄附金に限られます。出資に関する業務に充てられることが明らかなものは除かれます。相手方が特定公益増進法人であるというだけでは足りず、寄附金の使途がその法人の本来業務に向けられていることが要件です。

この点は書類で担保されます。特別枠の適用を受けるには、確定申告書に明細書を添付するとともに、その寄附金がその法人の主たる目的である業務に関連する寄附金である旨を、その特定公益増進法人が証する書類を保存しておく必要があります(法人税法第37条第9項)。寄附をした際に受領証だけを受け取り、この証明書を取り忘れるケースが実務では散見されます。

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全額が損金にならない2つの区分

完全支配関係がある内国法人に対する寄附金

内国法人が、その内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限ります)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、その全額が損金の額に算入されません(法人税法第37条第2項)。

ここで押さえるべきは3点です。第一に、限度額の計算に乗せる以前の話であること。一般枠がいくら余っていても、1円も損金になりません。第二に、「法人による完全支配関係」に限られること。個人株主が100%を保有する兄弟会社どうしのように、個人を頂点とする完全支配関係だけの場合はこの規定の対象外です。第三に、支払った側で損金不算入となる一方、受け取った側では受贈益の額が益金不算入とされます(法人税法第25条の2)。グループ全体で見れば所得が動かないように設計されています。

この規定があるため、100%子会社への無償の資金援助や債権放棄は、支援した親会社側で損金にならないのが原則です。子会社側でも受贈益が益金にならないため、いわゆる「寄附金と受贈益の両建て」でグループ内の所得を移転することはできません。あわせて、株主である法人の側で子会社株式の帳簿価額を調整する処理(寄附修正)も必要になります。

国外関連者に対する寄附金

法人が支出した寄附金のうち、その法人に係る国外関連者に対するものは、その全額が損金の額に算入されません(租税特別措置法第66条の4第3項)。海外子会社への無償の資金供与や債権放棄、無償の役務提供などが典型です。

移転価格税制では独立企業間価格との差額が問題になりますが、対価そのものがない贈与や債務免除については、この寄附金規定によって全額が否認される構造になっています。海外子会社の立ち上げ期に本社が費用を負担する場面では、負担の根拠となる契約と対価の設定を先に固めておくことが重要です。

いつ損金になるか——支出の時期

寄附金は、費用の見越計上が認められない支出です。法人税法施行令第78条は、寄附金の支出は、その支払がされるまでの間、なかったものとすると定めています。法人の経理がどうであれ、現実に支払が行われたときに初めて支出があったものと認識されるということです。

図4 寄附金はいつ「支出」したことになるか(法人税法施行令第78条)未払金に計上した寄附金支払が行われるまで支出はなかったものとされる。その事業年度の寄附金の額には含まれない。手形を振り出して支払った寄附金手形の振出しは現実の支払には当たらない。未決済のものはその事業年度の寄附金の額には含まれない。仮払金に計上した寄附金現実の支払は済んでいるため、支払った事業年度の寄附金の額に含めて損金算入限度額の判定を行う。決算日までに支払っていない寄附金は、原則としてその事業年度の損金にならない点に注意する。

図4 経理処理ではなく、現実の支払があったかどうかで支出の時期が決まる。

この帰結として、決算対策として期末に寄附を決議しても、実際の送金が翌期になれば当期の寄附金にはなりません。逆に、支払は済んでいるものの経理担当者が仮払金として処理していた場合には、支払った事業年度の寄附金として限度額の判定に含める必要があります。決算時には、仮払金勘定の内容を洗い、寄附金に該当するものが埋もれていないかを確認する作業が欠かせません。

子会社支援は寄附金になるのか

グループ会社への資金援助が寄附金にあたるかどうかは、実務で最も判断に迷う論点のひとつです。国税庁の法人税基本通達は、2つの場面について、相当な理由があると認められるときは寄附金に該当しないものとする取扱いを示しています。

整理する場合(法人税基本通達9-4-1)

法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い、子会社等のために債務の引受けその他の損失負担または債権放棄等をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等、相当な理由があると認められるときは、供与する経済的利益の額は寄附金の額に該当しないものとされています。

再建する場合(法人税基本通達9-4-2)

法人がその子会社等に対して無利息もしくは低利での貸付けまたは債権放棄等をした場合において、それが例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので、合理的な再建計画に基づくものである等、相当な理由があると認められるときも同様です。

同通達の注書きは、合理的な再建計画かどうかについて、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性および支援割合の合理性等を、個々の事例に応じて総合的に判断するとしています。そのうえで、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として合理的なものとして取り扱うとしています。

なお、ここでいう「子会社等」には、その法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連を有する者が含まれるとされています。持分がなくても対象になり得るということです。

この2つの通達は、あくまで「相当な理由」があることを前提とした取扱いです。再建計画の文書化、支援額の算定根拠、支援期間と出口の設定、取締役会での意思決定の記録といった証跡が残っていなければ、後から相当な理由を説明することは困難になります。支援を実行する前に書面を整えることが実務上の要点です。なお、法人による完全支配関係がある内国法人に対する寄附金は、この通達の適用の有無にかかわらず、寄附金に該当する限り全額が損金不算入となります。

数値で確認する

ここまでの内容を、簡単な数値例で確認します。前提は次のとおりです。事業年度は12か月、期末の資本金の額3,000万円、資本準備金の額1,000万円(合計4,000万円)、寄附金を損金に算入する前の所得の金額2,000万円。当期に支出した寄附金は、国に対する寄附金30万円、特定公益増進法人に対する寄附金50万円、一般の寄附金100万円とします。

計算項目 計算過程と金額
一般枠(損金算入限度額) (4,000万円×2.5/1,000+2,000万円×2.5/100)×1/4=(10万円+50万円)×1/4=15万円
特別枠(特別損金算入限度額) (4,000万円×3.75/1,000+2,000万円×6.25/100)×1/2=(15万円+125万円)×1/2=70万円
国に対する寄附金30万円 全額が損金算入。一般枠は消費しない
特定公益増進法人50万円 特別枠70万円の範囲内のため、50万円全額が別枠で損金算入。超過額なし
一般の寄附金100万円 一般枠15万円まで損金算入。差額85万円が損金不算入
損金不算入額の合計 85万円

もし特定公益増進法人への寄附金が100万円だった場合は、特別枠70万円までが別枠で損金算入され、超過した30万円が一般の寄附金100万円に加算されて合計130万円となり、一般枠15万円を超える115万円が損金不算入になります。特別枠を超えた部分が切り捨てられるわけではない、という点がこの制度の理解の要です。

上記は制度の理解のための簡略化した設例です。実際の申告では、別表四との連動、他の申告調整項目、地方税への影響などをあわせて検討する必要があります。

手続——別表の添付と書類の保存

国等に対する寄附金・指定寄附金(第3項)および特定公益増進法人に対する寄附金(第4項)の取扱いは、いずれも手続要件とセットになっています(法人税法第37条第9項)。

  • 確定申告書、修正申告書または更正請求書に、対象となる寄附金の額と明細を記載した書類(別表十四(二))を添付すること
  • 特定公益増進法人に対する寄附金については、あわせて、その寄附金が主たる目的である業務に関連する旨をその法人が証する書類を保存すること
  • これらの規定により一般の寄附金の額から除かれる金額は、書類に記載された金額を限度とすること

明細書の添付を失念した場合、国等への寄附金や指定寄附金であっても第3項の適用を受けられず、一般の寄附金として限度額の判定に回ることになります。全額損金のつもりでいた支出が、限度額超過部分だけ否認されるという結果になりかねません。

なお、特定公益増進法人に係る証明書類の保存がない場合については、税務署長がやむを得ない事情があると認めるときは第4項を適用できるという救済規定が置かれています(同条第10項)。ただしこれは書類の保存についての規定であり、申告書への明細書の添付そのものを免除するものではありません。

決算前に確認したい実務チェックポイント

  • 支出先ごとに、①国等 ②指定寄附金 ③特定公益増進法人・認定NPO法人等 ④一般 ⑤完全支配関係のある内国法人 ⑥国外関連者 のいずれに該当するかを整理したか
  • 「寄附金」以外の勘定科目(支払手数料、雑費、販売促進費、貸倒損失など)に寄附金に該当する支出が紛れていないか確認したか
  • 関係会社への低額譲渡、無利息貸付け、無償の役務提供がないか、取引一覧から洗い出したか
  • 役員個人が負担すべき性質の支出が会社名義で処理されていないか確認したか
  • 限度額計算の「所得の金額」を、寄附金を足し戻した後の金額で計算しているか
  • 期末に未払計上した寄附金、手形払で未決済の寄附金を当期の寄附金から除いたか
  • 仮払金に計上したまま残っている寄附金を当期の寄附金に含めたか
  • 指定寄附金にあたるかどうかを、財務省の告示で実際に確認したか
  • 特定公益増進法人からの証明書類を入手・保存しているか
  • 別表十四(二)を作成し、確定申告書に添付する手配ができているか

よくある質問

Q. 決算月に寄附を決議しましたが、送金は翌月になります。当期の損金にできますか。

できません。寄附金の支出は、支払がされるまでの間はなかったものとされます(法人税法施行令第78条)。未払金に計上しても当期の寄附金の額には含まれず、実際に支払った事業年度の寄附金として判定されます。

Q. 自社商品を無償で提供しました。寄附金の額はいくらになりますか。

金銭以外の資産を贈与した場合の寄附金の額は、その贈与の時における価額、すなわち時価によります(法人税法第37条第7項)。帳簿価額ではありません。時価と帳簿価額との差額は譲渡益として益金にも計上されることになります。

Q. 100%子会社への債権放棄は、通達の要件を満たせば寄附金になりませんか。

法人税基本通達9-4-1・9-4-2の要件を満たし、寄附金に該当しないと判断できるのであれば、そもそも寄附金の問題は生じません。ただし寄附金に該当すると判断される場合、法人による完全支配関係がある内国法人に対するものであれば、限度額計算に関係なく全額が損金不算入となります(法人税法第37条第2項)。相当な理由の有無を、支援の実行前に文書で固めておくことが重要です。

Q. 一般社団法人への寄附は特定公益増進法人の別枠を使えますか。

使えません。特定公益増進法人の範囲からは一般社団法人および一般財団法人が除かれています(法人税法第37条第4項)。公益認定を受けた公益社団法人・公益財団法人であれば対象になります。相手方の法人格を登記事項証明書等で確認してください。

Q. 別表十四(二)の添付を忘れた場合はどうなりますか。

国等に対する寄附金・指定寄附金については、明細を記載した書類の添付がある場合に限り一般の寄附金の額から除かれる取扱いとなっています(法人税法第37条第9項)。添付がなければ一般の寄附金として限度額の判定に回るため、限度額を超える部分は損金不算入になります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

まとめ

寄附金の損金不算入制度は、金額の計算より先に区分の判定を行うことが理解の入口です。国等への寄附金と指定寄附金は全額損金、特定公益増進法人等への寄附金は別枠、それ以外は一般枠、完全支配関係がある内国法人と国外関連者への寄附金は全額損金不算入という6つの区分を押さえれば、大半の場面は整理できます。

そのうえで実務上つまずきやすいのは、勘定科目名では判定されないこと、低額譲渡や無利息貸付けも対象になること、限度額計算の所得は寄附金を足し戻した後の金額であること、支払がなければ損金にならないこと、そして手続要件があることの5点です。決算前にこれらを確認する時間を確保しておけば、後から思わぬ否認を受ける場面を減らせます。

参考:国税庁タックスアンサー No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算/同 No.5283 特定公益増進法人に対する寄附金/同 No.5262 交際費等と寄附金との区分/国税庁 法人税基本通達 第4節第1款 寄附金の範囲等/財務省 税制関係の主な告示(法人税関係)/e-Gov法令検索(法人税法・法人税法施行令・租税特別措置法)。本記事は2026年9月時点で確認できる法令等にもとづく一般的な解説であり、個別の事案への適用を保証するものではありません。実際の判断にあたっては顧問税理士等にご確認ください。

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