監査役に月5万円、会計参与に年1回まとめて。中小企業の役員報酬でよく見かける決め方ですが、この二つには、取締役の報酬とは違う制約と、取締役と同じ制約とが入り混じっています。
会社法では取締役とは別の条文で決めることになっており、税法では取締役と同じ第34条の網がかかります。どこが同じでどこが違うのかを取り違えると、決議のやり直しや、損金不算入という結果につながります。
この記事では、監査役と会計参与の報酬について、会社法と法人税法の両側から、条文で確認できる範囲を整理します。役員給与の全体像は役員給与の税務 完全ガイドに、毎月同額で支給する仕組みは定期同額給与とは?改定できる時期と3か月ルールにまとめています。
この記事の見出し
🧭 監査役も会計参与も、税務上は「役員」
まず出発点を押さえます。法人税法の役員の定義は、次のとおりです。
役員 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいう。(法人税法第2条第15号)
会計参与も監査役も、条文に名前が書かれています。したがって、役員給与の損金不算入を定める法人税法第34条の適用対象になります。同条第1項は、内国法人がその役員に対して支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入しないと定めており、ここに監査役や会計参与だけを外す文言はありません。
「監査役は経営に関与しないのだから、報酬の決め方は自由でよいはずだ」という理解は、税務では通りません。取締役と同じ土俵に乗ります。
会社法では三者それぞれ別の条文、税法では同じ第34条。この組み合わせが判断を難しくします。
🏛 会社法の枠は取締役とは別に決める
会社法は、取締役、監査役、会計参与のそれぞれについて別の条文を置いています。
監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。(会社法第387条第1項)
会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。(会社法第379条第1項)
取締役についての第361条第1項も、定款に定めていないときは株主総会の決議によって定めるという構造は同じです。違うのは、これらが別々の条文であるという点にあります。取締役の報酬総額の枠を決めた決議で、監査役や会計参与の報酬までまかなうことはできません。それぞれについて、定款の定めか株主総会の決議が必要になります。
各人ごとの額が決まっていないときの手当て
監査役が二人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、当該報酬等は第1項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定めるとされています(会社法第387条第2項)。会計参与が二人以上ある場合も同じ構造です(会社法第379条第2項)。総額の枠を株主総会で決め、各人への配分は当事者の協議で決める、という設計が条文上用意されています。
また、監査役は株主総会において監査役の報酬等について意見を述べることができ(会社法第387条第3項)、会計参与も同様に意見を述べることができます(会社法第379条第3項)。会計参与が監査法人または税理士法人である場合は、その職務を行うべき社員が意見を述べます。
| 比べる点 | 取締役 | 監査役 | 会計参与 |
|---|---|---|---|
| 報酬を決める条文 | 会社法第361条 | 会社法第387条 | 会社法第379条 |
| 決め方 | 定款に定めがなければ株主総会の決議 | 定款に額の定めがなければ株主総会の決議 | 定款に額の定めがなければ株主総会の決議 |
| 各人別が未定のとき | 取締役会や代表取締役への一任が実務上行われる | 枠の範囲内で監査役の協議によって定める | 枠の範囲内で会計参与の協議によって定める |
| 総会での意見陳述 | 議案を提出した取締役は相当とする理由を説明する | 報酬等について意見を述べることができる | 報酬等について意見を述べることができる |
取締役の報酬枠の決議に監査役の報酬を含めて処理していると、会社法上の根拠を欠いた支給になります。株主総会議事録を見返して、監査役分と会計参与分が独立して決議されているかを確認してください。
📐 定期同額給与の制約は同じようにかかる
税務では、監査役や会計参与に支給する報酬も、法人税法第34条第1項が掲げる三つの類型のどれかに当てはめる必要があります。もっとも使われるのは定期同額給与です。
その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(……「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(法人税法第34条第1項第1号)
改定できる時期も同じです。事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月を経過する日までにされた改定であること、または臨時改定事由や業績悪化改定事由による改定であることが求められます(法人税法施行令第69条第1項第1号のイからハ)。監査役だからといって、期の途中で自由に月額を変えられるわけではありません。
なお、支給額が同額かどうかは手取りで見ることもできます。施行令第69条第2項は、定期給与の各支給時期における支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合には、当該定期給与の当該各支給時期における支給額は同額であるものとみなすと定めています。
| 三つの類型 | 監査役・会計参与に使えるか |
|---|---|
| 定期同額給与(法第34条第1項第1号) | 使える。改定時期の制約も取締役と同じ |
| 事前確定届出給与(同項第2号) | 使える。所定の時期に確定した額を支給する旨の定めと、原則として所轄税務署長への届出が必要 |
| 業績連動給与(同項第3号) | 条文上、同族会社にあっては同族会社以外の法人との間にその法人による完全支配関係があるものに限られるため、通常の中小同族会社では使えない |
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🚫 使用人兼務役員にはなれない
取締役については、部長や課長を兼ねる使用人兼務役員という区分があり、使用人としての職務に対する部分は第34条第1項の対象から外れます。ところが監査役と会計参与は、この区分を使えません。
法第三十四条第六項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める役員は、次に掲げる役員とする。……四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事(法人税法施行令第71条第1項第4号)
国税庁のタックスアンサーNo.5205も、使用人兼務役員になれない役員として、代表取締役等、副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員、持分会社の業務執行社員、指名委員会等設置会社の取締役および監査等委員である取締役ならびに会計参与および監査役ならびに監事、同族会社の役員のうち所有割合の三要件をすべて満たす役員を挙げています。
会社法の側でも兼任は禁じられている
そもそも会社法が兼任を認めていません。監査役は、株式会社もしくはその子会社の取締役もしくは支配人その他の使用人、または当該子会社の会計参与もしくは執行役を兼ねることができないとされています(会社法第335条第2項)。会計参与についても、株式会社またはその子会社の取締役、監査役もしくは執行役または支配人その他の使用人は会計参与となることができないとされています(会社法第333条第3項第1号)。
したがって、監査役に「経理部長分の給与」を上乗せして支給するという設計は、会社法の側からも税法の側からも成り立ちません。支給した全額が役員給与として第34条の判定を受けます。
会計参与と監査役は、条文で名指しされて使用人兼務役員から外れています。
💰 不相当に高額かどうかの二つの関門
三つの類型のどれかに当てはまったとしても、もう一つ関門があります。法人税法第34条第2項は、内国法人がその役員に対して支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は損金の額に算入しないと定めています。政令が定める二つの基準は、監査役や会計参与にも同じようにかかります。
一つ目は実質基準です。施行令第70条第1項第1号イは、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益およびその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える部分を掲げます。
二つ目は形式基準です。同号ロは、定款の規定または株主総会等の決議により役員に対する給与として支給することができる限度額等を定めている内国法人が、その役員に対して支給した給与の額の合計額が限度額等を超える場合の超える部分を掲げます。ここで比べる相手は、その限度額等が定められた給与の支給の対象となる役員です。
監査役の職務は、業務監査に及ぶのか、会計に関するものに限定されているのかで大きく変わります。公開会社でない株式会社(監査役会設置会社および会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(会社法第389条第1項)。実質基準は職務の内容を見る基準ですから、この定款の定めの有無は、説明の出発点になります。
| 関門 | 条文 | 用意しておくもの |
|---|---|---|
| 実質基準 | 施行令第70条第1項第1号イ | 監査計画や監査報告、取締役会への出席記録など職務の内容が分かる資料 |
| 形式基準 | 施行令第70条第1項第1号ロ | 監査役分・会計参与分として独立に決議した限度額と、その範囲内であることが分かる集計 |
🗓 年1回まとめて払う形にしたいとき
監査役や非常勤の役員に、年1回や年2回にまとめて報酬を支給している会社があります。この形について、通達がはっきり書いています。
……「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいうのであるから、例えば、非常勤役員に対し年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されているものであっても、同号に規定する定期同額給与には該当しないことに留意する。(法人税基本通達9-2-12)
年俸を12で割った金額を基礎にしていても、定期同額給与にはならないということです。では損金にする道がないのかというと、同通達の注が続きを示しています。非常勤役員に対し所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定めに基づいて支給する年俸や期間俸等の給与のうち、同族会社に該当しない法人が支給する給与、および同族会社が支給する給与で施行令第69条第4項に定めるところに従って納税地の所轄税務署長に届出をしているものは、事前確定届出給与に該当するとされています。
中小企業の多くは同族会社ですから、後者の道になります。つまり、年1回まとめて払いたいのであれば、事前確定届出給与としての定めを置き、期限内に届出をする必要があります。届出を出さずに年1回払いを続けると、その全額が損金不算入という結果になりえます。
年1回払いを選ぶなら、届出が要る会社かどうかを最初に確かめます。
| 支給の形 | 税務上の位置づけ | 必要な手当て |
|---|---|---|
| 毎月同額を支給する | 定期同額給与に該当しうる | 株主総会の決議と、改定時期の制約を守ること |
| 年1回または年2回まとめて支給する | 定期同額給与には該当しない | 事前確定届出給与の定めを置き、同族会社は期限内に届出をする |
| 毎月同額に加えて期末に上乗せする | 上乗せ部分は定期同額給与には当たらない | 上乗せ部分について事前確定届出給与の要件を満たすかを確認する |
| 使用人分として別建てで支給する | 監査役・会計参与では使えない | 全額を役員給与として第34条の判定を受ける前提で組み直す |
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❓ よくある質問
監査役の報酬を、取締役の報酬枠の中から出しても問題ありませんか
会社法は、監査役の報酬等について第387条第1項という別の条文を置いています。定款に額の定めがなければ株主総会の決議によって定めることになりますので、取締役の枠の決議をもって監査役の報酬の根拠とすることはできません。監査役分として独立した決議が必要です。
監査役の報酬を期の途中で増額できますか
定期同額給与として扱うのであれば、改定できる時期の制約は取締役と同じです。会計期間開始の日から三月を経過する日までの改定か、臨時改定事由または業績悪化改定事由による改定であることが求められます(法人税法施行令第69条第1項第1号)。監査役であることを理由に、この制約が外れる定めは見当たりません。
会計参与が税理士法人のとき、支払う報酬はどう扱いますか
法人税法第2条第15号は会計参与を役員として掲げており、会社法第333条第1項は会計参与が公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人でなければならないと定めています。法人が会計参与に就任している場合の税務上の取扱いについて、条文や通達から一義に読み取れる定めは見当たりませんでした。実際の契約と支給の形に即して、事前に確認しておくことをおすすめします。
非常勤の監査役に、経理の実務も手伝ってもらっています。使用人分として払えますか
できません。会社法第335条第2項は、監査役が株式会社もしくはその子会社の取締役もしくは支配人その他の使用人を兼ねることができないとしています。税務でも、施行令第71条第1項第4号により監査役は使用人兼務役員から外れます。支給した全額が役員給与として判定されます。
監査役の任期と、報酬決議の見直しのタイミングは連動しますか
監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第336条第1項)。公開会社でない株式会社は、定款によって選任後十年以内に伸長することができます(同条第2項)。任期と報酬の決議は別のものですから、任期が続いていても、報酬額を見直すのであればその都度の手当てが必要です。
📄 まとめ
監査役と会計参与は、法人税法第2条第15号にはっきり名前が書かれた役員です。したがって、定期同額給与や事前確定届出給与といった第34条の枠組みも、不相当に高額な部分を否認する第2項も、取締役とまったく同じようにかかります。一方で会社法の側では、第387条と第379条という取締役とは別の条文が置かれており、報酬の枠はそれぞれ独立に決議しなければなりません。
使用人兼務役員になれないこと、年1回払いは定期同額給与にならないことの二つは、実務でとくに事故が起きやすいところです。株主総会議事録に監査役分と会計参与分が独立して記載されているか、支給の形が三つの類型のどれに当てはまるか。この二点を決算前に確認しておけば、大きな取り違えは避けられます。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
🔗 参考(公的な一次情報)
- 法人税法(e-Gov法令検索) 第2条第15号、第34条
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索) 第69条、第70条、第71条
- 会社法(e-Gov法令検索) 第333条、第335条、第336条、第361条、第379条、第387条、第389条
- 法人税基本通達 第9章第2節第3款(定期同額給与) 9-2-12
- 法人税基本通達 第9章第2節第1款(役員等の範囲)
- 国税庁タックスアンサー No.5205 役員のうち使用人兼務役員になれない人
- 国税庁タックスアンサー No.5200 役員の範囲
- 国税庁タックスアンサー No.5211 役員に対する給与
本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。
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