事業所の数え方|派遣で必要な資産額が変わる

労働者派遣事業の資産要件は、事業所の数を乗じた額です。事業所が1つ増えると、必要な基準資産額が2,000万円、現金・預金が1,500万円増えます。

合わせて3,500万円。数え方を1つ間違えるだけで、要件を満たすかどうかの結論が変わります。

この記事では、要領が示す事業所の意味と、許可が必要になる派遣元事業所の判断を整理します。

この記事でわかること

  • 事業所が1つ増えるといくら必要になるか
  • 要領が示す事業所の3つの観点
  • 登記簿上の本店と支店の扱い
  • 許可が必要な派遣元事業所の判断基準
  • 事業所の数が手数料にも影響すること

📌 事業所が1つ増えると3,500万円増える

労働者派遣事業の資産要件は、基準資産額が2,000万円に事業所の数を乗じた額、自己名義の現金・預金が1,500万円に事業所の数を乗じた額です。事業所が1つ増えると、必要な基準資産額が2,000万円、現金・預金が1,500万円増えます。

つまり、事業所の数え方を1つ間違えるだけで、必要な資産額が3,500万円変わります。要件を満たすかどうかの検討は、事業所の数を確定させてからでなければ意味がありません。

有料職業紹介事業でも、基準資産額は1事業所あたり500万円ずつ増えます。現金・預貯金は2事業所目から60万円ずつです。

📌 要領が示す事業所の意味

労働者派遣事業関係業務取扱要領は、事業所を次のように説明しています。事業所とは、労働者の勤務する場所または施設のうち、事業活動が行われる場所のことであり、相当の独立性を有するものである、と。

そのうえで、具体的には雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的には同一であるとし、次の要件に該当するか否かを勘案することによって判断する、としています。

1つ目は、場所的に他の主たる事業所から独立していること。2つ目は、経営または業務単位としてある程度の独立性を有すること。すなわち、人事、経理、経営または業務上の指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有することです。3つ目は、一定期間継続し、施設としての持続性を有することです。

事業所に当たるかを判断する3つの観点場所的な独立他の主たる事業所から場所的に独立している経営上の独立人事、経理、指導監督、労働の態様などの独立性継続性一定期間継続し施設としての持続性登記簿上の本店または支店は、もとより1つの事業所として扱われます3つすべてに該当しない場合でも、実態により事業所と認められることがあります

3つの観点を勘案して判断します。

📌 本店と支店はもとより事業所

要領は続けて、労働者の勤務する場所または施設が3つの要件のすべてに該当する場合、ならびに事業主が法人である場合であってその登記簿上の本店または支店に該当するときは、もとより、1つの事業所として取り扱うものである、としています。

登記されている支店は、それだけで事業所です。実態として小さな事務所であっても、登記がある以上は数に入ります。

さらに要領は、それ以外の場合であっても、他の社会保険の取扱い等によっては、1つの事業所と認められる場合があるから、実態を把握の上慎重に事業所か否かの判断を行うものである、としています。雇用保険や社会保険の適用事業所としてどう扱われているかは、判断の手がかりになります。

📌 許可が要るのは派遣元事業所

ここでもう1段の絞り込みがあります。事業主が許可を受け、および届け出る必要があるのは、事業所のうち労働者派遣事業を行う派遣元事業所です。

要領は、これについて、実質的に労働者派遣事業の内容となる業務処理の一部または全部を行っている事業所であること、としています。すなわち、派遣労働者に対し派遣就業の指示を行い労働に従事させていると評価できる事業所であって、具体的には、労働者派遣法34条の就業条件の明示、派遣労働者に係る労働契約の締結もしくは派遣労働者となろうとする者の登録、派遣労働者に係る雇用管理の実施等の事務の処理機能を有している、いわば派遣労働者が帰属する事業所である、と説明されています。

あわせて、場所的に他の主たる事業所から独立している事業所、特に異なった都道府県に所在する事業所については、このように判断される蓋然性が極めて高くなるので留意すること、とも書かれています。

つまり、営業だけを行っていて、就業条件の明示も労働契約の締結も雇用管理も本社で行っている拠点であれば、派遣元事業所に当たらないと整理できる余地があります。ただし判断は実態によりますので、労働局に確認したうえで決めてください。

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📌 数を減らせるか、を先に検討する

資産要件が足りないとき、増資を考える前に事業所の数を見直す価値があります。

実態として派遣事業を行っていない拠点が許可の対象に含まれているのであれば、その事業所を廃止することで、必要な基準資産額が2,000万円、現金・預金が1,500万円下がります。増資で3,500万円を用意するより、こちらのほうが早いことがあります。

逆に、新しい拠点を出す予定があるのなら、その時期が要件に影響します。開設のタイミングで必要額が引き上がりますので、申請の前に出すのか後に出すのかで見え方が変わります。

なお、事業所の数は手数料にも影響します。許可申請の手数料は12万円に、労働者派遣事業を行う事業所の数から1を減じた数に5万5千円を乗じた額を加えた額です。更新申請の手数料は5万5千円に事業所の数を乗じた額です。

📌 判断に迷いやすい場面

実務でよく相談を受けるのは次のような場面です。いずれも、要領の3つの観点と、派遣元事業所としての事務処理機能の有無で考えます。

第1に、営業担当者だけが常駐する小さな連絡事務所。就業条件の明示や労働契約の締結を行っていないのであれば、派遣元事業所に当たらないと整理する余地があります。

第2に、登記だけ残っている支店。登記簿上の支店に該当するときは、もとより1つの事業所として取り扱われるとされていますので、使っていないのであれば登記の整理を検討してください。

第3に、在宅勤務が中心で固定の拠点を持たない場合。場所的な独立性や施設としての持続性をどう見るかの問題になります。この点については要領に個別の定めがありませんので、事業主管轄労働局に確認してください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 事業所が1つ増えるといくら必要になりますか

A. 労働者派遣事業では、基準資産額が2,000万円、自己名義の現金・預金が1,500万円増えます。合わせて3,500万円です。有料職業紹介事業では基準資産額が500万円、現金・預貯金が60万円増えます。

Q. 使っていない支店も数に入りますか

A. 登記簿上の支店に該当するときは、もとより1つの事業所として取り扱うものとされています。使っていないのであれば、登記の整理を検討してください。

Q. 営業だけの拠点も許可が必要ですか

A. 許可が必要なのは派遣元事業所です。要領は、就業条件の明示、労働契約の締結や登録、雇用管理の実施等の事務の処理機能を有している事業所であるとしています。営業のみの拠点は当たらないと整理できる余地がありますが、実態により判断されます。

Q. 在宅勤務が中心で拠点がない場合はどうなりますか

A. 場所的な独立性や施設としての持続性をどう見るかの問題になります。要領に個別の定めがありませんので、事業主管轄労働局にご確認ください。

Q. 事業所の数は手数料にも影響しますか

A. します。許可申請の手数料は12万円に、事業所の数から1を減じた数に5万5千円を乗じた額を加えた額です。更新申請の手数料は5万5千円に事業所の数を乗じた額です。

📄 まとめ

資産要件は事業所の数を乗じた額です。労働者派遣事業では、1つ増えるごとに基準資産額2,000万円と現金・預金1,500万円が必要になります。

事業所は、場所的な独立性、経営または業務単位としての独立性、一定期間の継続と施設としての持続性の3つを勘案して判断されます。登記簿上の本店または支店は、もとより1つの事業所です。

許可が必要なのは派遣元事業所です。就業条件の明示、労働契約の締結や登録、雇用管理の実施等の事務の処理機能を有している事業所が該当します。

要件を試算する前に、事業所の数を確定させてください。数え方が変われば必要額も手数料も変わります。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3 用語の整理(事業所とは、労働者の勤務する場所または施設のうち、事業活動が行われる場所のことであり、相当の独立性を有するもの。雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的には同一)
  • 同要領 第3(場所的な独立性、経営または業務単位としての独立性、一定期間継続し施設としての持続性を有することの3つを勘案。登記簿上の本店または支店に該当するときは、もとより1つの事業所として取り扱う)
  • 同要領 第3 労働者派遣事業を行う派遣元事業所の判断(就業条件の明示、労働契約の締結もしくは登録、雇用管理の実施等の事務の処理機能を有している、派遣労働者が帰属する事業所)
  • 同要領 第3 手数料の納付手続き一覧表(許可申請は120,000円に事業所の数から1を減じた数に55,000円を乗じた額を加えた額。更新申請は55,000円に事業所の数を乗じた額)
  • 労働者派遣法7条1項4号(財産的基礎)、同法34条(就業条件の明示)
👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

📚 参考(公的な一次情報)

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