※本記事は2026年10月12日時点の公表資料に基づきます。
吸収合併とは
吸収合併とは、ある会社(存続会社)が別の会社(消滅会社)の権利義務をすべて引き継ぎ、消滅会社が清算をせずに消える合併です(会社法2条27号・750条)。手続は合併契約の締結、株主総会の特別決議、債権者保護手続を経て効力発生日を迎え、2週間以内に登記をします。
- 手続:合併契約→事前開示→株主総会→債権者保護(1か月以上)→効力発生→登記
- 会計:外部の会社との合併は「取得」で時価、グループ内の合併は「共通支配下の取引」で帳簿価額
- 税務:適格合併なら帳簿価額で引継ぎ課税なし、非適格なら時価で譲渡したものとして課税
2026年10月12日更新
「グループ会社を1つにまとめたい」「買収した会社を本体に取り込みたい」。こうした場面で最もよく使われるのが吸収合併です。ただ、吸収合併は会社法の手続、会計処理、法人税の取扱いの3つが同時に動くため、どれか1つの確認が漏れると、日程が組み直しになったり、想定していない税金がかかったりします。
結論からいえば、吸収合併は「効力発生日から逆算した日程」「取得か共通支配下の取引かという会計の区分」「適格合併に当たるかという税務の判定」の3つを、合併契約を結ぶ前にそろえておくことが大切です。この記事では、会社法・企業結合に関する会計基準・法人税法の条文に沿って、吸収合併の全体像を整理します。
※本記事の計算例・日程・事例は、説明のために作成した架空のものです。
この記事の見出し
吸収合併とは|新設合併との違いと合併の効果
吸収合併は、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後に存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2条27号)。残る会社を「吸収合併存続会社(存続会社)」、消える会社を「吸収合併消滅会社(消滅会社)」と呼びます。
図1 吸収合併の前後での会社と株主の関係(A社が存続会社、B社が消滅会社の場合)
存続会社は、合併契約で定めた効力発生日に、消滅会社の権利義務をまとめて引き継ぎます(会社法750条1項)。資産や負債、契約上の地位を1つずつ移す手続をとらずに、まとめて移るのが合併の特徴です。これを「包括承継」といいます。消滅会社の株主は、効力発生日に合併契約の定めに従って存続会社の株主などになり(同条3項)、消滅会社が発行していた新株予約権は効力発生日に消滅します(同条4項)。
なお、消滅会社が合併で解散したことは、合併の登記をした後でなければ第三者に対抗できません(会社法750条2項)。効力は効力発生日に生じますが、登記を後回しにしてよいわけではありません。
新設合併との違い
合併にはもう1つ、新設合併があります。新設合併は、合併する会社がすべて消滅し、新しく設立する会社がそれらの権利義務を引き継ぐ方法です(会社法2条28号)。既存の会社が残る吸収合併に比べ、新設合併は新しい会社をつくるため、許認可や契約の扱いを一から確認し直す場面が増えます。実務で多いのは吸収合併です。
図2 既存の会社が残るのが吸収合併、新しい会社をつくるのが新設合併
| 項目 | 吸収合併 | 新設合併 |
|---|---|---|
| 残る会社 | 既存の存続会社 | 新たに設立する会社 |
| 消える会社 | 消滅会社のみ | 合併するすべての会社 |
| 効力が生じる時 | 合併契約で定めた効力発生日 | 新設会社の成立の日(設立の登記) |
| 実務での使われ方 | グループ内の整理や買収後の統合で多い | 対等な立場を示したい場合などに限られる |
合併と似た方法に、事業譲渡や会社分割があります。事業の一部だけを移したい場合や、労働契約の移り方を変えたい場合はそちらが向くこともあります。比較は事業譲渡と会社分割はどちらを選ぶか|労働契約と消費税で整理しています。
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吸収合併の手続の流れ(会社法)
ここからは、存続会社・消滅会社がともに株式会社である場合を前提に、会社法の手続を順に見ていきます。全体の流れは次のとおりです。株主総会、株主への通知と株式買取請求、債権者保護手続は、どれも効力発生日の前日までに終わらせる必要があり、実務では並行して進めます。
図3 吸収合併の主な手続(株主総会・買取請求・債権者保護は並行して進める)
1. 合併契約を結ぶ
合併をする会社は、合併契約を結ばなければなりません(会社法748条)。存続会社が株式会社の場合、合併契約には、両社の商号と住所、消滅会社の株主に交付する対価(存続会社の株式や金銭など)の内容とその割当て、消滅会社の新株予約権の扱い、効力発生日などを定めます(会社法749条1項)。対価を存続会社の株式とする場合は、その数(または算定方法)と、存続会社の資本金・準備金の額に関する事項も契約で定めます(同項2号イ)。
2. 事前開示(本店への備置き)
消滅会社と存続会社は、合併契約の内容などを記載した書面(または電磁的記録)を本店に備え置き、株主や債権者が閲覧できるようにします(会社法782条・794条)。備置きを始める日は、株主総会の2週間前の日、株主への通知の日、債権者への公告・催告の日などのうち、いずれか早い日です(会社法782条2項)。消滅会社は効力発生日まで、存続会社は効力発生日後6か月を経過する日まで備え置きます。
3. 株主総会の特別決議
消滅会社と存続会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議で合併契約の承認を受けます(会社法783条1項・795条1項)。この決議は特別決議で、議決権の過半数(定款で3分の1以上まで下げられます)を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条2項12号)。普通決議との違いは普通決議と特別決議の切り分け|定時総会で決められることの一覧もご覧ください。
存続会社が引き継ぐ債務の額が資産の額を超える場合など、いわゆる合併差損が生じるときは、取締役が株主総会でその旨を説明しなければなりません(会社法795条2項)。
4. 株主への通知と株式買取請求
合併に反対する株主は、会社に対して自分の株式を「公正な価格」で買い取るよう請求できます(会社法785条1項・797条1項)。そのため会社は、効力発生日の20日前までに、株主に合併をする旨などを通知(または公告)します(会社法785条3項・4項)。買取請求ができるのは、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までです(同条5項)。
5. 債権者保護手続
合併は債権者にとって、債務者の財産の状態が変わる出来事です。そのため消滅会社・存続会社のどちらの債権者も合併に異議を述べることができ(会社法789条1項1号・799条1項1号)、会社は合併をする旨や計算書類に関する事項などを官報に公告し、知れている債権者には個別に催告します(会社法789条2項・799条2項)。異議を述べられる期間は1か月を下回ることができません。
図4 消滅会社・存続会社の双方で行う債権者保護手続
期間内に異議を述べなかった債権者は、合併を承認したものとみなされます(会社法789条4項)。異議を述べた債権者には、弁済、相当の担保の提供、または相当の財産の信託をしますが、合併をしてもその債権者を害するおそれがないときは不要です(同条5項)。官報に加えて、定款で定めた日刊新聞紙への掲載または電子公告でも公告をすれば、個別の催告は省略できます(同条3項)。
債権者保護手続が終わっていないと、効力発生日が来ても合併の効力は生じません(会社法750条6項)。公告の掲載には申込みから日数がかかるため、日程の中で最も早く着手する手続です。
6. 効力発生日・登記・事後開示
効力発生日に消滅会社の権利義務が存続会社に移ります。その日から2週間以内に、本店の所在地で、消滅会社は解散の登記、存続会社は変更の登記をします(会社法921条)。存続会社は、効力発生日後遅滞なく、承継した権利義務などを記載した書面を作り、効力発生日から6か月間本店に備え置きます(会社法801条1項・3項)。
合併の手続に重大な問題があった場合、合併の無効は、効力発生日から6か月以内に訴えによってのみ主張できます(会社法828条1項7号)。
| 手続 | 主な内容 | 期限・期間 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 合併契約 | 対価・割当て・効力発生日などを定める | ― | 748条・749条 |
| 事前開示 | 契約内容などを本店に備え置く | 総会の2週間前の日などから | 782条・794条 |
| 株主総会 | 合併契約の承認(特別決議) | 効力発生日の前日まで | 783条・795条・309条2項12号 |
| 株主への通知 | 合併をする旨などを通知・公告 | 効力発生日の20日前まで | 785条・797条 |
| 債権者保護 | 官報公告と個別催告 | 異議期間は1か月以上 | 789条・799条 |
| 登記 | 解散の登記・変更の登記 | 効力発生日から2週間以内 | 921条 |
| 事後開示 | 承継した権利義務などを備え置く | 効力発生日から6か月間 | 801条 |
株主総会を省略できる場合と日程の組み方
簡易合併と略式合併
株主総会の特別決議には原則として招集の手間と日数がかかりますが、一定の場合は総会を省略できます。1つは「簡易合併」です。存続会社が消滅会社の株主に交付する対価の額が、存続会社の純資産額の5分の1(定款でこれより小さい割合を定めた場合はその割合)を超えない場合、存続会社の株主総会は原則として不要です(会社法796条2項)。存続会社から見て影響の小さい合併であれば、株主の判断を求めなくてよいという考え方です。
もう1つは「略式合併」です。一方の会社が他方の会社の総株主の議決権の10分の9以上を持っている場合(この会社を特別支配会社といいます。会社法468条1項)、支配される側の会社の株主総会は原則として不要です(会社法784条1項・796条1項)。決議の結果が見えているためです。
図5 簡易合併・略式合併の判定(合併差損が出る場合や譲渡制限株式を交付する場合などの例外あり)
ただし、どちらにも例外があります。簡易合併は、合併差損が生じる場合や、非公開会社である存続会社が譲渡制限株式を対価として交付する場合には使えません(会社法796条2項ただし書・1項ただし書)。また、簡易合併であっても、法務省令で定める数以上の議決権を持つ株主が、通知・公告の日から2週間以内に反対の意思を通知したときは、株主総会の承認が必要になります(同条3項)。簡易合併を前提に日程を組む場合は、この2週間を見込んでおきます。
効力発生日から逆算した日程の例
吸収合併の日程は、効力発生日を先に決めて、そこから逆算して組みます。たとえば、効力発生日を8月1日とする架空の例では、次のようになります。株主への通知は効力発生日の20日前までに行い、債権者の異議期間は1か月以上を確保し、株主総会の2週間前までに事前開示書類の備置きを始めます。
図6 効力発生日から逆算した架空の日程(期間の数え方は個別に確認が必要)
日程表を作るときに見落としやすいのは、官報公告の掲載日です。公告の申込みから掲載までに日数がかかるため、異議期間の起算が想定より遅れることがあります。また、債権者保護手続の公告には計算書類に関する事項を載せるため(会社法799条2項3号)、決算公告の状況も事前に確かめておく必要があります。期間の数え方(初日を算入するかどうか)は、司法書士とも確認しながら、余裕をもった日程にしてください。
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吸収合併の会計処理(企業結合に関する会計基準)
吸収合併の会計処理は、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」に従います。最初に判断するのは、その合併が「取得」「共同支配企業の形成」「共通支配下の取引」のどれに当たるかです。共同支配企業の形成と共通支配下の取引以外の企業結合は、取得になります(同基準17項)。
図7 企業結合に関する会計基準による区分の判定
共通支配下の取引とは、合併するすべての会社が、合併の前後で同じ株主に最終的に支配され、その支配が一時的ではない場合の企業結合です(同基準16項)。親会社と子会社の合併や、同じ親会社を持つ子会社同士の合併がこれに当たります。共同支配企業の形成は、複数の独立した企業が契約により共同で支配する企業をつくる場合で、吸収合併の場面では多くありません。
| 区分 | 典型的な場面 | 資産・負債の受入価額 | のれん |
|---|---|---|---|
| 取得 | 独立した外部の会社を吸収合併する | 企業結合日の時価を基礎に配分 | 生じる(20年以内で償却) |
| 共通支配下の取引 | 親子会社の合併、子会社同士の合併 | 移転直前の適正な帳簿価額 | 生じない |
| 共同支配企業の形成 | 独立した企業が共同支配の会社をつくる | 移転直前の適正な帳簿価額 | 生じない |
取得の場合:パーチェス法
取得に当たる場合は、どちらが取得企業かを決めたうえで(同基準18項〜22項)、パーチェス法で処理します。消滅会社の取得原価は、原則として、交付した対価(存続会社の株式など)の企業結合日における時価で算定します(同基準23項)。取得原価は、受け入れた資産・負債のうち識別できるものに、企業結合日時点の時価を基礎として配分します(同基準28項)。取得原価が配分した純額を上回る部分がのれんです。
架空の例で確かめます。A社が独立した会社であるB社を吸収合併し、B社の株主に時価500のA社株式を交付したとします。B社の識別可能な資産の時価は900、負債の時価は520で、純額は380です。この場合、取得原価500と純額380の差額120がのれんになります。
図8 架空の数値例:取得原価500と識別可能純資産380の差額がのれん120になる
図9 存続会社A社が合併時に行う仕訳のイメージ(資本金と準備金への配分は合併契約で定める)
のれんは資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します(同基準32項)。上の例で10年の定額法とすると、毎年12ずつ費用になります。逆に、取得原価が純額を下回る場合は負ののれんとなり、資産・負債の把握と配分を見直したうえで、生じた事業年度の利益として処理します(同基準33項)。なお、仲介手数料などの取得関連費用は、発生した事業年度の費用として処理します(同基準26項)。
図10 架空の数値例:のれん120を10年で定額償却すると毎年12ずつ減る
共通支配下の取引の場合:帳簿価額で引き継ぐ
グループ内の合併は共通支配下の取引として、移転する資産・負債を、移転直前に付されていた適正な帳簿価額で計上します(同基準41項)。時価に評価替えはせず、のれんも生じません。グループの内側で資産が動いただけで、外部との取引ではないためです。
注意したいのは、どの会社が存続会社になるかで損益が変わる点です。親会社が100%子会社を吸収合併する場合、親会社の個別財務諸表では、受け入れた子会社の純資産(株主資本の額)と、親会社が持っていた子会社株式(抱合せ株式)の帳簿価額との差額が、抱合せ株式消滅差損益として特別損益に計上されます(企業結合・事業分離等適用指針206項)。連結財務諸表の作成上、子会社の資産・負債の帳簿価額を修正している場合は、修正後の金額で受け入れる点にも注意が必要です。これに対して子会社同士の合併では、抱合せ株式があっても払込資本などの株主資本の調整として処理し、損益は生じません(同適用指針247項)。
図11 架空の数値例:親会社の個別財務諸表では抱合せ株式消滅差損益が特別損益に出る
子会社同士の合併で対価を交付しない「無対価合併」の資本の引継ぎ方は、子会社同士の吸収合併|無対価合併の会計処理と適格要件で詳しく説明しています。
吸収合併の税務|適格合併と非適格合併
法人税では、吸収合併が「適格合併」に当たるかどうかで課税が大きく変わります。原則として、合併で資産・負債を移した消滅会社(被合併法人)は、合併の時の価額(時価)で譲渡したものとして所得を計算します(法人税法62条1項)。含み益があれば、その分に法人税がかかります。
これに対して適格合併の場合は、消滅会社の資産・負債は最後事業年度終了の時の帳簿価額で引き継いだものとして所得を計算します(法人税法62条の2第1項)。譲渡損益は生じず、課税が将来に繰り延べられます。
適格合併の要件
適格合併の要件は法人税法2条12号の8に定められています。まず、消滅会社の株主に、存続会社(または合併親法人)の株式以外の資産が交付されないことが必要です(対価要件)。ただし、剰余金の配当として交付する金銭、反対株主の買取請求に基づく対価、合併の直前に存続会社が消滅会社の発行済株式等の3分の2以上を持っている場合に他の株主に交付する金銭などは、この判定から除かれます。
そのうえで、次のイ・ロ・ハのいずれかに当たることが必要です。イは完全支配関係(100%の関係)にある会社間の合併、ロは支配関係(50%超の関係)にあり、消滅会社の従業者のおおむね80%以上が存続会社の業務に従事する見込みで、主要な事業も引き続き行われる見込みの合併、ハは共同で事業を行うための合併です。ハは法人税法施行令4条の3第4項で、事業の関連性、規模または特定役員、従業者の引継ぎ、事業の継続、対価株式の継続保有の要件が定められています。
図12 法人税法2条12号の8による適格合併の判定の骨格
イ・ロの関係にも、合併後にその関係が続く見込みであることなど、施行令で細かい条件が付いています。たとえば同じ株主に支配されている子会社同士の無対価合併では、株主ごとの両社の持株割合が等しいことが条件になります(法人税法施行令4条の3第2項)。要件ごとにどこで外れやすいかは、適格合併の要件はどこで落ちるか|完全支配・支配・共同事業の3類型で整理しています。
繰越欠損金の引継ぎと株主の課税
適格合併であれば、消滅会社の未処理の欠損金額を存続会社が引き継ぐことができます(法人税法57条2項)。ただし、両社の支配関係が、合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日などから続いていない場合は、共同事業の要件を満たす場合などを除いて、引き継げる欠損金が制限されます(同条3項)。存続会社自身の欠損金にも同様の制限があります(同条4項)。欠損金の引継ぎを目的にした合併は、この制限をまず確認してください。詳しくは繰越欠損金は組織再編でどこまで使えるか|引継ぎと2つの制限をご覧ください。
消滅会社の株主の側では、非適格合併で存続会社の株式や金銭などの交付を受け、その額が株式に対応する資本金等の額を超えると、超えた部分がみなし配当になります(法人税法24条1項1号)。
図13 適格・非適格で被合併法人・合併法人・株主の課税が変わる
吸収合併を進めるときの実務のポイント
ここまでのとおり、吸収合併は会社法・会計・税務の判断が連動しています。たとえば、無対価にするか株式を交付するかで、会社法の手続、資本金の扱い、適格要件の判定がいっせいに変わります。どれか1つを先に決めてしまうと、あとで他の論点と合わなくなることがあります。
図14 実務で吸収合併を進めるときの順番
進める順番としては、まず合併の目的と存続会社を決め、会計処理(取得か共通支配下の取引か)と税務(適格か非適格か、欠損金が使えるか)の影響を試算します。そのうえで効力発生日から逆算した日程表を作り、契約書、株主総会の資料、債権者保護の公告を準備します。効力発生後は、登記と事後開示に加え、消滅会社の最後の事業年度の申告も必要です。
許認可を持つ事業や、相手方の承諾が必要な条項(合併を解除事由とする条項など)がある契約は、包括承継であっても個別の確認が必要になることがあります。主要な契約と許認可は、日程表を作る段階で洗い出しておきます。
上場準備中の会社では、申請の前後に予定している合併が審査に影響することがあります。合併等の実施の見込みとは?IPOで上場申請が受理されない組織再編の2類型を解説もあわせて確認してください。
- 合併の目的と、どちらを存続会社にするかを決めた
- 取得か共通支配下の取引か、会計の区分を確認した
- 適格合併の要件(対価要件とイ・ロ・ハ)を確認した
- 繰越欠損金の引継ぎ制限(5年の支配関係など)を確認した
- 効力発生日から逆算した日程表で、20日前の通知と1か月以上の異議期間を確保した
- 主要な契約・許認可の承継と、登記・事後開示の担当を決めた
よくある質問
必要ありません。合併で解散した会社は清算の手続をとらず、権利義務はすべて存続会社に引き継がれます(会社法475条1号・750条1項)。
簡易合併(対価の額が存続会社の純資産額の5分の1以下)や略式合併(議決権の10分の9以上を持つ関係)に当たれば、該当する会社の株主総会を省略できます。ただし合併差損が出る場合などの例外があり、債権者保護手続は省略できません。
吸収合併は、合併契約で定めた効力発生日に効力が生じます(会社法749条1項6号・750条1項)。登記は効力発生日から2週間以内に行いますが、消滅会社の解散は登記の後でなければ第三者に対抗できません。
なりません。完全支配関係があっても、対価に金銭を交付した場合や、合併後に関係が続く見込みがない場合などは要件を満たさないことがあります。子会社同士の無対価合併では、株主ごとの持株割合が等しいことも条件です。
最初の一歩は、存続会社と対価の形を決めて、会計と税務の影響を試算することです
吸収合併の検討は、日程表から始めがちです。しかし先に「どちらを残すか」「株式を交付するか、無対価にするか」を決め、のれんや抱合せ株式消滅差損益の金額、適格かどうか、欠損金が使えるかを試算しておくと、手続の選び方が自然に決まります。まずは両社の株主名簿と直近の貸借対照表を並べてみてください。
まとめ
吸収合併とは、存続会社が消滅会社の権利義務をすべて引き継ぎ、消滅会社が清算をせずに消える合併です。手続は、合併契約、事前開示、株主総会の特別決議、株主への通知と買取請求、1か月以上の異議期間を置く債権者保護手続を経て、効力発生日を迎え、2週間以内に登記をします。
会計では、外部の会社との合併は取得としてパーチェス法で時価により処理し、のれんを20年以内で償却します。グループ内の合併は共通支配下の取引として帳簿価額で引き継ぎます。税務では、適格合併なら帳簿価額で引き継いで課税が繰り延べられ、非適格なら時価で譲渡したものとして課税されます。3つの判断を合併契約の前にそろえることが、手戻りを防ぐ近道です。
存続会社の選び方、無対価にするかどうか、適格合併の判定と繰越欠損金の引継ぎ制限まで、会計と税務の両面から事前に試算します。組織再編の税務支援の内容は法人税・組織再編の税務支援のページをご覧ください。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
本記事の根拠
- 会社法(e-Gov法令検索) 2条27号・28号、309条2項12号、468条1項、748条〜750条、782条〜785条、789条、794条〜797条、799条、801条、828条、921条
- 法人税法(e-Gov法令検索) 2条12号の8、24条1項1号、57条2項〜4項、62条1項、62条の2第1項
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索) 4条の3
- 企業会計基準委員会 改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等 16項〜22項、23項、26項、28項、32項、33項、41項
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」 206項、247項
免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。