上場に伴う費用とは?東証の上場審査料・新規上場料・年間上場料を3市場で比較

IPO準備の予算を組むとき、監査報酬や証券会社への手数料、印刷費といった支出はよく話題になります。一方で、東京証券取引所そのものに支払う料金は、金額が制度で決まっているにもかかわらず、意外と後回しにされがちです。しかし上場審査料は上場申請日の翌月末に支払期日が来ますし、上場後は毎年、年間上場料が発生し続けます。いつ、いくら、どの市場区分で必要になるのかは、資金計画を立てる段階で押さえておきたいところです。

この記事では、東証に支払う上場関連の料金を、上場審査料・新規上場料・年間上場料・上場後の随時発生する料金・市場区分の変更に伴う費用という5つの局面に分けて、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3市場を比較しながら整理します。金額はいずれも東証の公表資料に基づくもので、消費税額および地方消費税額は別途加算されます。

この記事の要点

  • 上場審査料はプライム400万円、スタンダード300万円、グロース200万円。支払期日は上場申請日が属する月の翌月末日である。
  • 新規上場料はプライム1,500万円、スタンダード800万円、グロース100万円。これに公募・売出しに係る料金が加算される。
  • 公募は公募価格ベースで1万分の9、売出しは売出価格ベースで1万分の1。グロース市場のみ新規上場料と合わせて2,000万円が上限となる。
  • 年間上場料は上場時価総額に応じた6区分で、TDnet利用料12万円を加算し、3月末日と9月末日に半額ずつ支払う。
  • グロース市場の上場会社は、上場後3年間を経過するまで年間上場料が表の額の半額となる。
  • 市場区分を変更する場合は、変更審査料に加えて、上位市場へ移る場合には差額としての市場区分変更料が必要になる。

1.東証に支払う費用は5つの局面に分かれる

まず全体像から確認します。東証に支払う料金は、支払うタイミングによって次の5つに整理できます。IPO準備の資金計画では、この順番でキャッシュアウトが発生すると考えておけば大きく外れません。

局面 料金の名称 支払期日
上場申請時 上場審査料 上場申請日が属する月の翌月末日まで
上場時 新規上場料、公募又は売出しに係る料金 上場日が属する月の翌月末日まで
上場後(毎年) 年間上場料(+TDnet利用料) 3月末日および9月末日まで(半額ずつ)
上場後(随時) 新株券等の発行等に係る料金、新株の上場に係る料金、合併等に係る料金 行為があった日が属する月の翌月末日まで(一部例外あり)
市場区分の変更時 市場区分の変更審査料、市場区分変更料 変更申請日、変更日が属する月の翌月末日まで

実務ポイント:東証に支払う費用はIPOコストの一部にすぎない

この記事で扱うのは、あくまで東証に支払う料金です。IPOで実際に発生する費用はこれだけではなく、監査法人への監査報酬、主幹事証券会社への引受手数料、株式事務代行機関への手数料、Ⅰの部・目論見書の印刷費用、弁護士やコンサルタントへの報酬、上場準備要員の人件費などが加わります。東証に支払う料金は金額が制度で明示されているぶん見積りやすく、まずここを固定費として押さえたうえで、他の費用を積み上げていくと予算の全体像が組みやすくなります。

2.上場審査料-申請した時点で発生する

上場申請を行うと、その時点で上場審査料が発生します。審査に通ったかどうかとは関係なく、申請したことに対する料金である点がポイントです。金額は申請する市場区分によって次のように異なります。

市場区分 上場審査料 支払期日
プライム市場 400万円 上場申請日が属する月の翌月末日まで
スタンダード市場 300万円
グロース市場 200万円

この上場審査料には、いくつか押さえておきたい減額規定と加算規定があります。

再申請なら半額になる

申請会社が以前に上場申請または予備申請を行ったことがあり、かつ直近の上場申請日または予備申請日から起算して3年以内に上場申請を行う場合、上場審査料は半額になります。一度審査を受けたものの上場に至らず、体制を整えて再挑戦するというケースを想定した規定です。

また、同一の基準事業年度で複数の市場区分に対して上場審査を申請する重複申請の場合にも減額があります。過去3年以内に上場申請等の実績がない会社が重複申請を行う場合は、安いほうの上場審査料が半額となります。過去3年以内に上場申請等の実績がある場合には、重複申請のすべてについて上場審査料が半額となります。

予備申請には予備審査料が必要

予備申請を行う場合には、上場審査料と同額の予備審査料が必要です。ただし予備申請を行った場合で、かつ予備申請から起算して1年以内に新規上場申請を行ったときは、あらためて上場審査料を支払う必要はありません。つまり1年以内に本申請まで進めば、実質的な負担は1回分ということになります。

遠方の実地調査には別途実費が発生する

欧州・米国等、特に遠方において行う実地調査や面談等に係る渡航費用、その他東証が上場審査のために特に必要と認める調査に係る費用については、上場審査料とは別に実費相当額が調査費用として請求されます。海外に主要な生産拠点や子会社を持つ会社が上場を目指す場合には、この点も見込んでおく必要があります。

3.新規上場料と公募・売出しに係る料金

上場審査を通過して上場が実現すると、新規上場料と、公募または売出しに係る料金が必要になります。新規上場料は市場区分によって大きく差があり、プライム市場とグロース市場では15倍の開きがあります。

市場区分 新規上場料 支払期日
プライム市場 1,500万円 上場日が属する月の翌月末日まで
スタンダード市場 800万円
グロース市場 100万円

これに加えて、上場申請に係る株券等の公募・売出しを行った場合には、次の算式による料金が上場日が属する月の翌月末日までに必要となります。この算式は3市場共通です。

  • 公募:公募株式数 × 公募価格 × 1万分の9
  • 売出し:売出株式数 × 売出価格 × 1万分の1

対象となるのは、上場承認の日以後、上場日までに行う新規上場申請に係る株券の公募または売出しです。売出株式数にはオーバーアロットメントによる売出株式数を含みます。なお、上場後にグリーンシューオプションに係る第三者割当増資が行われた場合には、その割当株式数に応じて後述の「新株の上場に係る料金」が別途必要になります。料金の算定において生じた100円未満の金額は切り捨てられます。

3市場の負担額を同一条件で比較する

東証のガイドブックは、公募10万株、引受人の買取引受による売出し5万株、オーバーアロットメントによる売出し2万株、公募・売出価格2,560円という共通の前提で計算例を示しています。同じ条件で3市場を並べると、負担の差が明確になります。

市場区分 新規上場料 公募・売出しに係る料金 合計
プライム市場 15,000,000円 248,300円 15,248,300円
スタンダード市場 8,000,000円 248,300円 8,248,300円
グロース市場 1,000,000円 248,300円 1,248,300円

公募・売出しに係る料金の内訳は、公募分が10万株×2,560円×10,000分の9=230,400円、売出し分が(5万株+2万株)×2,560円×10,000分の1=17,900円(100円未満切捨て)です。公募・売出しの規模がこの程度であれば、負担額のほとんどは新規上場料で決まることがわかります。

実務ポイント:グロース市場には2,000万円の上限がある

グロース市場については、新規上場料と上場申請に係る公募・売出しに係る料金を加算した額の上限が2,000万円と定められています。新規上場料が100万円ですので、公募・売出しに係る料金部分の上限は1,900万円ということになります。大型の公募を伴うグロース市場への上場であっても、東証に支払う上場時の料金は2,000万円で頭打ちになるという設計です。プライム市場・スタンダード市場にはこの上限はありません。

4.年間上場料-上場後に毎年発生する固定費

上場後は、年間上場料として上場時価総額に応じた金額に、TDnet利用料として12万円を加算した金額を支払うことになります。支払期日は3月末日および9月末日で、それぞれ加算後の金額の半額ずつを納めます。市場区分と上場時価総額の組み合わせは次のとおりです。

上場時価総額 プライム市場 スタンダード市場 グロース市場
50億円以下 96万円 72万円 48万円
50億円超250億円以下 168万円 144万円 120万円
250億円超500億円以下 240万円 216万円 192万円
500億円超2,500億円以下 312万円 288万円 264万円
2,500億円超5,000億円以下 384万円 360万円 336万円
5,000億円超 456万円 432万円 408万円

ここでいう上場時価総額は、毎年12月の売買立会の最終日における最終価格(その日に売買が成立していない場合は、売買が成立した直近の日の最終価格)と、毎年12月末日の上場株式数を用いて計算します。期中の株価変動ではなく、年末時点の一時点で判定されるという点は覚えておくとよいでしょう。

実務ポイント:グロース市場は上場後3年間が半額

グロース市場の上場会社については、上場後3年間を経過するまでの年間上場料が、表に定める額の半額にTDnet利用料12万円を加算した金額となります。たとえば上場時価総額50億円以下であれば、48万円の半額である24万円に12万円を加えた36万円が年額です。ただしこの取扱いから、有価証券上場規程第220条(テクニカル上場)の規定の適用を受けてグロース市場の上場会社となったものは除かれます。新規上場したばかりの会社の負担を抑えるための措置という位置づけです。

上場初年度は月割りで按分される

新規上場した年の年間上場料は、新規上場日の属する月に応じて按分されます。この按分の考え方は3市場で共通です。3月末日を支払期日とする分と、9月末日を支払期日とする分に分けて、それぞれ次のように定められています。

新規上場日の属する月 3月末日を支払期日とする年間上場料
前年の8月 年間上場料の12分の1の額に、年間上場料の半額を加えた額
前年の9月 年間上場料の半額
前年の10月 年間上場料の12分の5の額
前年の11月 年間上場料の12分の4の額
前年の12月 年間上場料の12分の3の額
1月 上場日における上場時価総額による年間上場料の12分の2の額
2月 支払いを要しない
新規上場日の属する月 9月末日を支払期日とする年間上場料
2月 上場日における上場時価総額による年間上場料の12分の7の額
3月 上場日における上場時価総額による年間上場料の半額
4月 同12分の5の額
5月 同12分の4の額
6月 同12分の3の額
7月 同12分の2の額
8月 支払いを要しない

5.上場後に随時発生する料金

年間上場料のほかに、上場会社が一定の行為を行った場合には、その都度料金が発生します。IPO直後の会社にとっては、ストックオプションの発行や公募増資、M&Aを行うタイミングで関係してくる項目です。

料金 金額
上場株券等を発行または処分する場合 1株当たりの発行価格 × 発行または処分する株券等の数 × 1万分の1
新たな新株予約権を発行する場合 (新株予約権の発行価格 × 新株予約権の総数 + 行使に係る払込金額 × 目的となる株式の数)× 1万分の1
上場株券等の売出しをする場合 売出株式数 × 売出価格 × 1万分の1
新株の上場に係る料金 1株当たりの発行価格 × 新たに発行する株券等の数 × 1万分の8(有価証券上場規程第303条の適用を受けて上場する新株を除く)
合併等に係る料金 (発行する株券等の数 + 交付する自己株式の株券等の数)× 効力発生日の売買立会における最終価格 × 1万分の2(上限1,000万円)

合併等に係る料金の対象となるのは、吸収合併、吸収分割、株式交換および株式交付です。支払期日は、新株券等の発行等に係る料金がその行為を行った日の属する月の翌月末日まで、新株の上場に係る料金がその新株の上場日が属する月の翌月末日まで、合併等に係る料金が効力発生日の属する月の翌月末日までとなっています。ただし、他の種類の株式への転換や新株予約権の権利行使により発行された新株を上場する場合など、支払期日が別に定められているケースもあります。

6.市場区分の変更に伴う費用

上場後に市場区分を変更する場合には、市場区分の変更審査料と市場区分変更料の2つが問題になります。変更審査料は変更申請先の市場区分に応じた金額で、新規上場の際の上場審査料と同額です。

変更申請先の市場区分 市場区分の変更審査料 市場区分変更料(控除前)
プライム市場 400万円 1,500万円
スタンダード市場 300万円 800万円
グロース市場 200万円 100万円

市場区分変更料は、上の表の金額をそのまま支払うわけではありません。ここから、上場時に支払った上場手数料と、過去に市場区分の変更をしていた場合の市場区分変更料を控除した額が実際の負担となります。要するに、変更先の市場に最初から上場していた場合との差額を追加で支払うという考え方です。

  • スタンダード市場からプライム市場へ:1,500万円 - 800万円 = 700万円(+変更審査料400万円)
  • グロース市場からプライム市場へ:1,500万円 - 100万円 = 1,400万円(+変更審査料400万円)
  • グロース市場からスタンダード市場へ:800万円 - 100万円 = 700万円(+変更審査料300万円)
  • プライム市場からスタンダード市場へ:市場区分変更料は不要(変更審査料300万円のみ)
  • グロース市場への変更:市場区分変更料は不要(変更審査料200万円のみ)

上位市場へ移る場合には差額の負担が生じ、下位市場へ移る場合には変更料が発生しない、という整理です。なお、2022年4月3日時点で上場していた会社については経過的な取扱いがあり、控除する金額は、市場第一部が1,500万円、市場第二部が1,200万円、JASDAQが600万円、マザーズが100万円とされています。2022年4月4日以後に支払った市場区分変更料があれば、これに加算して控除します。

市場区分の変更審査は新規上場審査に準じて行われる

費用面だけを見ると、スタンダード市場からプライム市場への変更は変更審査料と変更料で合計1,100万円ということになります。しかし実際の負担は金額だけではありません。プライム市場への市場区分の変更についても、上場会社から申請を行い、あらためて審査を受ける必要があります。この変更審査はプライム市場の新規上場審査に準じて行われますので、審査対応の工数は新規上場に近いものになると考えておくべきです。予備申請を行う場合には変更審査料と同額の予備審査料が必要となる点も、新規上場と同じ構造です。

よくある質問(FAQ)

Q1.記載されている金額に消費税は含まれていますか。

含まれていません。東証の新規上場ガイドブックおよびJPXの上場料金ページに示されている金額は、いずれも消費税額および地方消費税額を含まない金額です。実際の支払いにあたっては、これらを加算した金額が必要になります。

Q2.上場審査に通らなかった場合、上場審査料は返還されますか。

上場審査料は上場申請日が属する月の翌月末日までに支払うものとされており、審査の結果にかかわらず必要となります。ただし、直近の上場申請日または予備申請日から3年以内に再度上場申請を行う場合には、上場審査料が半額となる規定が設けられています。

Q3.複数の市場区分に同時に申請すると、審査料は2倍になりますか。

単純な2倍にはなりません。同一の基準事業年度で複数市場に対する上場審査を申請する重複申請の場合、過去3年以内に上場申請等の実績がない会社であれば安いほうの上場審査料が半額となります。過去3年以内に実績がある場合には、重複申請のすべてについて半額となります。

Q4.年間上場料は上場した年から満額かかりますか。

かかりません。新規上場日の属する月に応じて按分されます。たとえば2月または8月に上場した場合には、直後に到来する支払期日分の年間上場料は不要とされています。またグロース市場に新規上場した会社は、上場後3年間を経過するまで表の額の半額で済みます。

Q5.TDnet利用料の12万円は年間上場料とは別ですか。

年間上場料に加算する形で支払います。上場時価総額に応じた年間上場料の額にTDnet利用料12万円を加算した金額を、3月末日と9月末日に半額ずつ納めるという構造です。市場区分にかかわらず12万円で共通です。

Q6.ストックオプションを発行すると東証に支払う料金が生じますか。

上場会社が新株予約権を新たに発行する場合には、新株券等の発行等に係る料金が必要です。金額は、新株予約権の発行価格に総数を乗じた額と、行使に係る払込金額に目的となる株式の数を乗じた額との合計に、1万分の1を乗じて計算します。さらに権利行使により新株が発行され上場する際には、別途「新株の上場に係る料金」(1万分の8)が生じます。

まとめ

東証に支払う上場関連の料金は、上場審査料、新規上場料と公募・売出しに係る料金、年間上場料、上場後に随時発生する料金、市場区分の変更に伴う費用という5つの局面に整理できます。金額はいずれも制度で明示されており、市場区分によって差が設けられています。とくにグロース市場は、新規上場料が100万円と低く抑えられ、上場時の合計にも2,000万円の上限があり、さらに上場後3年間は年間上場料が半額になるなど、新興企業の負担を軽減する設計になっています。

一方で、これらはIPOで発生する費用のごく一部にすぎません。監査報酬や引受手数料、印刷費用、上場準備要員の人件費といった支出のほうがはるかに大きくなるのが通常です。それでも、東証に支払う料金は金額と支払期日が明確に決まっているため、資金計画の出発点として押さえておく価値があります。上場審査料は申請の翌月末、新規上場料は上場の翌月末という支払期日を、上場スケジュールと重ねて確認しておくとよいでしょう。

市場区分の選択を費用だけで判断することはありませんが、上位市場への変更にあたっては差額としての市場区分変更料が生じ、しかも新規上場審査に準じた審査を受け直すことになります。当初どの市場区分を目指すかという判断には、こうした将来のコストと工数も含めて検討しておくことをおすすめします。

(本記事の主な参照資料:東証「新規上場ガイドブック」(プライム市場編・スタンダード市場編・グロース市場編、2026年7月21日版)「Ⅹ(グロース市場編はⅪ)上場に伴う費用」、日本取引所グループ「上場料金」(新規上場に係る料金、上場後の料金、市場区分の変更に係る料金)。有価証券上場規程第220条、第303条。本記事は2026年7月時点の公表情報に基づいています。料金体系は改定される可能性がありますので、実際の適用にあたっては最新の公表資料および主幹事証券会社へのご確認をお願いいたします。)

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