新リース会計基準の連結消去はどうする?親子間リースの注意点

グループ会社どうしで本社ビルのフロアを貸し借りしている、親会社が借りた車両を子会社に又貸ししている——こうした社内リースは多くの企業グループに存在します。新リース会計基準では賃貸借契約も借手側で使用権資産とリース負債を計上するため、社内リースが個別財務諸表に一斉に現れます。

そこで直面するのが「連結ではどう消すのか」という論点です。この記事では、IPO準備会社・上場企業の連結決算担当者および経理部門の方に向けて、公認会計士・税理士が、親子間リースの連結消去で押さえるべき条項と実務上の落とし穴を解説します。

連結でどこを消去するか連結会社の間のリースを洗い出す連結会社どうしの賃貸借か連結上は取引を消去するはいいいえ借手で使用権資産を計上しているか貸手側の処理と相殺するはいいいえ未実現の損益が生じるか消去の要否を確かめるはいいいえ連結の手続に消去の手順を組み込む

図 親子間リースの連結消去の判定

結論:リース基準ではなく連結会計基準の一般原則で消す

先に結論を述べます。連結会社相互間のリースについて、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および企業会計基準適用指針第33号には、消去の方法を直接定めた規定は置かれていません。消去は企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の一般原則に従って行うことになります。

連結貸借対照表は、個別貸借対照表の金額を基礎とし、連結会社相互間の投資と資本及び債権と債務の相殺消去等の処理を行って作成します(連結基準18項)。連結会社相互間の債権と債務とは、相殺消去します(連結基準31項)。損益計算書側も、連結会社相互間の取引高の相殺消去及び未実現損益の消去等の処理を行って作成し(連結基準34項)、連結会社相互間における商品の売買その他の取引に係る項目は、相殺消去します(連結基準35項)。

つまり、借手が計上した使用権資産・リース負債と、貸手が計上したリース債権等または受取賃貸料は、いずれも連結上は残らないのが原則的な帰結です。連結ベースで見れば、グループが外部から取得した原資産を自ら使っているだけだからです。

ポイント 新リース会計基準は個別財務諸表の認識・測定を定めるもので、連結手続は連結会計基準の領域です。条文に消去仕訳は書かれていないため、自社で消去ロジックを設計する必要があります。

親子間リースを連結で消去するまでの5ステップ STEP1 グループ内で締結されているリース契約を洗い出す 親子間・子会社間の賃貸借、社内又貸し、フロア分割使用などを契約単位で把握する STEP2 借手側・貸手側それぞれの個別上の計上額を突き合わせる 借手=使用権資産・リース負債・減価償却費・利息費用/貸手=リース債権等又は賃貸収益 STEP3 債権債務と取引高を相殺消去する(連結基準31項、35項) 借手と貸手で金額・区分が一致しないことが多く、差額の性質を確かめてから消去する STEP4 未実現損益があれば全額を消去する(連結基準36項) グループ内のセール・アンド・リースバックや販売益を伴う取引で生じやすい STEP5 連結固有の選択・判定の見直しと注記への反映を確認する

連結会計基準の一般原則に沿った消去手順の全体像

消去の対象になるものを整理する

借手側・貸手側で計上されるもの

借手は、リース開始日にリース負債を計上するとともに、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(基準33項)。一方、貸手は所有権移転ファイナンス・リースはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースはリース投資資産として計上し(基準46項)、オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行います(基準48項)。

注意したいのは、借手と貸手で計上される金額が一致するとは限らない点です。借手は自らの追加借入利子率等で現在価値を算定する一方、貸手はオペレーティング・リースであれば資産を計上せず賃貸収益を認識するだけです。単純な「同額の債権と債務」ではないため、機械的な相殺では貸借が合いません。

なお、会社相互間取引が連結会社以外の企業を通じて行われている場合であっても、その取引が実質的に連結会社間の取引であることが明確であるときは、連結会社間の取引とみなして処理します(連結基準注12)。外部のリース会社から借りた資産を子会社に転貸するスキームでは、外部契約部分と社内転貸部分を分けて考える必要があると考えられます。

数値例:親会社が本社ビルの一部を子会社に賃貸するケース

実際の金額の動きを確認します。以下は解説のために設計した設例で、金額は千円単位です。

  • P社(親会社)は本社ビルを所有し、帳簿価額600,000、残存耐用年数25年、定額法で年24,000を償却
  • P社は100%子会社のS社に本社ビルの一部フロアを賃貸(P社側はオペレーティング・リースに分類)
  • 借手のリース期間5年、リース料は年額12,000(各年度末に年1回払)
  • S社の追加借入利子率は年3.0%、購入オプション・残価保証はなく、所有権は移転しない

個別財務諸表での計上額

S社は、年額12,000を年3.0%・5年で割り引いた現在価値54,956をリース負債および使用権資産として計上します(基準33項、34項)。減価償却費は5年定額で年10,991(最終年度のみ10,992)となり(基準38項)、初年度の利息費用は54,956×3.0%=1,649です(基準36項)。P社側は受取賃貸料12,000を収益として計上します(基準48項)。

初年度末のS社の使用権資産は54,956-10,991=43,965、リース負債は54,956+1,649-12,000=44,605です。

単純合算と連結の対比

項目 個別単純合算 連結修正 連結
建物(原資産) 600,000 - 600,000
使用権資産 43,965 △43,965 -
リース負債 44,605 △44,605 -
受取賃貸料 12,000 △12,000 -
減価償却費(使用権資産) 10,991 △10,991 -
支払利息 1,649 △1,649 -
当期損益への影響 △640 +640 0

消去しなければ、連結貸借対照表に本来存在しないはずの資産43,965と負債44,605が両建てで残ります。損益でも640の費用超過が残りますが、これは使用権資産の定額償却と利息費用の合計が、貸手側の定額の賃貸収益を上回ることから生じる差額です。

初年度末の貸借対照表:単純合算と連結の違い(単位:千円) 個別単純合算 建物        600,000 使用権資産      43,965 リース負債      44,605 資産・負債が両建てで残る 総資産は643,965 消去 連結(消去後) 建物        600,000 使用権資産       - リース負債       - 原資産と自己の減価償却のみ 総資産は600,000 消去漏れの影響:総資産+43,965/負債+44,605/当期損益△640 自己資本比率・D/Eレシオ・ROAのいずれも実態と異なる数値になる

グループ内リースを消去しないまま連結した場合の影響(本文の設例の数値)

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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連結固有の見直し規定を取りこぼさない

消去そのものの定めはない一方で、連結財務諸表を作成する場合の選択や判定に関する規定は置かれています。見落とされやすいので、まとめて確認しておくことをおすすめします。

論点 連結財務諸表における取扱い 根拠
リースを構成する部分と構成しない部分を分けない選択 個別財務諸表において科目ごと又は類似する原資産のグループごとに行った選択を見直さないことができる 基準30項
短期リースの簡便的取扱いの選択 個別財務諸表において行った選択を見直さないことができる 指針21項
使用権資産総額の重要性が乏しいかの判定 連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができ、個別の結果を修正する場合は連結修正仕訳で行う 指針42項
貸手の現在価値基準の判定 必要に応じて親会社と連結子会社の貸手のリース料を合算した金額に基づき判定する 指針67項

とくに指針42項は要注意です。使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(指針41項)。個別では10パーセント未満でもグループ全体では超えることがあり、その逆もあるため、連結ベースでの再判定を手順に組み込んでおく必要があると考えられます。

また、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一します(連結基準17項)。割引率の算定方法や短期リース・少額リースの適用範囲がグループ内でばらついていると、連結上の統一手続が必要になります。

実務上の留意点:自社対応が重くなるところ

契約の棚卸しが個別決算より広くなる

消去の前提として、グループ内リースを漏れなく把握する必要があります。社内の賃貸借は契約書が簡素だったり、書面がないまま費用付替えで処理されていることも少なくありません。監査法人からはグループ内の不動産・車両・什器の使用状況と契約の対応関係を示す資料を求められることが多く、契約書ローラーを全社に広げる作業が発生します。

借手と貸手で金額が一致しない

前掲の設例のとおり、借手側の費用配分と貸手側の収益認識は同じにはなりません。ファイナンス・リースでも、借手の割引率と貸手の計算利子率が異なれば残高は一致しません。差額が単なる測定差なのか、未実現損益として全額消去すべきものなのか、会計方針の不統一によるものなのかを、契約ごとに切り分ける判断が求められます。

未実現損益と非支配株主

連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現損益は、その全額を消去します(連結基準36項)。未実現損益の金額に重要性が乏しい場合には、これを消去しないことができ(連結基準37項)、売手側の子会社に非支配株主が存在する場合には、未実現損益は、親会社と非支配株主の持分比率に応じて、親会社の持分と非支配株主持分に配分します(連結基準38項)。グループ内で資産を売却して同じ資産を借り戻す取引では、この規定が正面から効いてきます。

注記との整合

連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、会計基準第55項に掲げる事項のうち「リース特有の取引に関する情報」「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」を注記しないことができます(指針110項)。また、会計方針に関する情報を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照することができます(指針111項)。個別と連結で注記の粒度が変わるため、集計単位を最初に設計しておかないと決算直前に手戻りが生じます。

IFRSを適用しているグループの経過措置

IFRSを連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が個別財務諸表に会計基準を適用する場合、適用初年度においてIFRS第16号の経過措置またはIFRS第1号の免除規定の定めを適用できます(指針134項)。この場合でも、連結会社相互間におけるリースとして相殺消去されたリースには、指針118項から133項の定めを適用することができます(指針135項、BC172項)。

チェックリスト:連結消去の準備状況

  • グループ内リース契約の一覧を、貸手側・借手側の双方から作成しているか
  • 書面のない社内使用(フロアの一部使用、車両の共用など)の実態を把握しているか
  • 外部リース会社を介した転貸が実質的な連結会社間取引に該当するかを検討しているか
  • 借手と貸手の計上額の差額について、発生原因を契約ごとに説明できるか
  • グループ内の資産売却や借戻しで未実現損益が生じていないかを確認しているか
  • 割引率・短期リース・少額リース・表示方法の会計方針がグループで統一されているか
  • 使用権資産総額の重要性判定を連結ベースで再計算する手順を決めているか
  • 連結精算表に消去仕訳を組み込み、翌期以降も継続して転記できる仕組みになっているか
グループ内リースの洗い出しから消去設計まで

連結消去は、基準に仕訳例が示されていない領域です。契約の棚卸し、借手・貸手の計上額の突合、消去ロジックの設計と文書化まで、監査対応を見据えた進め方をご提案します。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

よくある質問

Q. 親子間リースは、そもそも個別財務諸表で計上しなくてよいのではないですか。

連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければなりません(連結基準10項)。個別では相手が親会社か外部かにかかわらず基準どおりに計上し、連結手続で消去するのが原則的な順序と考えられます。

Q. 金額が小さい社内リースまで、すべて消去する必要がありますか。

連結財務諸表を作成するにあたっては、利害関係者の判断を誤らせない限り、連結のための個別財務諸表の修正、未実現損益の消去、連結財務諸表の表示など複数の場面に関して重要性の原則が適用されます(連結基準注1)。ただし判断には件数の集積や指標への影響も含まれるため、まず全件を把握してから判断する順序が安全です。

Q. 決算日が異なる子会社との社内リースはどう扱いますか。

子会社の決算日と連結決算日の差異が3か月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができますが、この場合には、連結会社間の取引に係る会計記録の重要な不一致について、必要な整理を行うものとされています(連結基準注4)。リース料の授受の期ずれは典型的な不一致にあたります。

Q. 適用時期はいつからですか。

2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができます(基準58項)。

まとめ

借手の使用権資産・リース負債、貸手のリース債権等および取引高は、連結会計基準18項、31項、34項、35項の一般原則に従って相殺消去します。新リース会計基準側には消去方法の定めがなく、代わりに基準30項、指針21項、42項、67項といった連結固有の見直し規定が置かれている、という構造を押さえておくと整理しやすくなります。

実務上の負担は、消去仕訳そのものよりも、前提となる契約の棚卸しと、借手・貸手の計上額の差額を説明できる状態にすることにあります。消去漏れは総資産と有利子負債の両方を膨らませるため、監査でも早い段階で確認される論点です。

本連載の他の回は、新リース会計基準の連載目次からご覧いただけます。前回は新リース会計基準と税務の差異を、短期リース・少額リースの簡便的取扱いもあわせて解説しています。次回は「【開示注記①】借手の注記を作る」を取り上げます。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する会計上・税務上の助言ではありません。最終的な会計処理および判断にあたっては、監査人または顧問の専門家にご相談ください。

参考

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」30項、33項、34項、36項、38項、46項、48項、55項、58項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」21項、41項、42項、67項、110項、111項、118項、133項、134項、135項、BC172項/企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」10項、17項、18項、31項、34項、35項、36項、37項、38項、注1、注4、注12

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