新リース会計基準の短期リース・少額リースとは?要件と適用単位を解説

「契約書を全部洗い出して使用権資産を計上するなんて、うちの経理体制では回らない」——新リース会計基準の導入準備を始めたIPO準備会社や上場企業の経理・財務担当の方から、最も多く聞かれる悩みです。

この負担を現実的な水準に抑える鍵が、短期リースと少額リースの簡便的な取扱いです。ただし「12か月以内なら全部オフバランス」「300万円以下なら無条件でOK」という理解のまま進めると、監査対応の段階で作業のやり直しが発生します。本記事では、公認会計士・税理士が、基準・適用指針の原文に沿って要件と適用単位を整理します。

免除の取扱いを使えるか契約が免除の要件に当たるかを確かめるリース期間が12か月以内で購入オプションがないか短期リースとして費用処理できはいいいえ原資産の価値が少額か少額リースとして費用処理できはいいいえ適用する単位を決めているか資産の種類ごとなどの単位で継続適用はいいいえ免除を使わない場合は原則どおり計上する

図 短期リースと少額リースの判定

結論:オフバランスにできるが、「どの単位で選ぶか」で作業量が変わる

先に結論をまとめます。借手は、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上するのが原則です(基準33項)。これに対して、短期リースと少額リースについては、使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます(指針20項、指針22項)。

実務上の分かれ目は、要件そのものよりも「どの単位で適用の可否を選ぶか」です。短期リースは原資産の科目やグループごとに選ぶ一方(指針20項)、少額リースはルートによって契約単位で判定するもの(指針22項(2)①)と、リース1件ごとに選べるもの(指針22項(2)②)に分かれます。

図1 借手が簡便的な取扱いを使えるかの判定順序 契約からリースを識別し、借手のリース期間を確定する 借手のリース期間が12か月以内で、 かつ購入オプションを含まないか(指針4項(2)) 短期リース 指針20項 購入時に費用処理する基準額以下のリース料か (指針22項(1)) 少額リース 指針22項(1) 事業内容に照らして重要性が乏しく、契約1件 当たりの金額にも重要性が乏しいか(指針22項(2)①) 少額リース 指針22項(2)① 新品時の原資産の価値が少額であるリースか (指針22項(2)②) 少額リース 指針22項(2)② 原則処理:リース開始日に使用権資産とリース負債を計上する (基準33項)

図1 いずれの簡便的な取扱いも「適用することができる」定めであり、適用は強制ではありません。指針22項(2)の①と②は、いずれかを選択し、選択した方法を首尾一貫して適用します(指針22項)。

短期リース──12か月以内かつ購入オプションなし

短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(指針4項(2))。ポイントは2つあります。

①「契約期間」ではなく「借手のリース期間」で見る

判定の起点は契約に書かれた期間ではなく、延長・解約オプションの行使可能性を織り込んだ借手のリース期間です(指針4項(2))。契約書上は1年でも、延長が「合理的に確実」と判断されれば12か月を超え、短期リースには当たりません。1年更新の賃貸借契約を機械的に短期リースへ振り分けると、この点で監査上の指摘を受けやすくなります。

②購入オプションが1つでも入っていれば対象外

購入オプションを含むリースは、期間が12か月以内であっても短期リースに該当しません(指針4項(2))。金額の多寡や行使可能性の高低による例外は定められていません。契約書のオプション条項を読み切る作業が、実質的に避けられないということです。

短期リースについては、重要性が乏しい場合が多いことを理由に、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上しない取扱いが認められています(指針BC37項)。

少額リース──3つのルートがあり、選び方が違う

少額リースの簡便的な取扱いは、指針22項(1)と指針22項(2)の2つの柱からなり、(2)はさらに①と②に分かれます。(2)については①又は②のいずれかを選択でき、選択した方法を首尾一貫して適用します(指針22項)。

ルート 主な要件 判定・適用の単位
指針22項(1)
費用処理基準額以下
重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下であること(指針22項(1)) 基準額は通常取引される単位ごとに適用し、契約に複数の単位の原資産が含まれる場合、当該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができる(指針22項(1))
指針22項(2)①
契約1件当たりが少額
企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいこと(指針22項(2)①) リース契約1件ごとに適用するか否かを選択することは想定されていない(指針BC43項)。科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれるときは異なる科目ごとの合計金額で判定できる(指針22項(2)①)
指針22項(2)②
新品時の価値が少額
新品時の原資産の価値が少額であること(指針22項(2)②) リース1件ごとにこの方法を適用するか否かを選択できる(指針22項(2)②)

金額の目安はどこから来ているか

指針22項(2)①は、企業会計基準適用指針第16号において定められていた、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れられたものです(指針BC43項)。一方、指針22項(2)②は、IFRS第16号と同様の方法を認めることを目的とするもので、IFRS第16号の結論の根拠で示された、開発当時の2015年において新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産のリースが念頭に置かれています(指針BC45項)。

両者は適用単位の定め方・数値及び条件が異なるため、どちらの取扱いが広範であるかは一概にはいえないとされています(指針BC41項)。「②のほうが緩い」と一律に決めつけられる性質のものではなく、自社のリース資産の構成を見たうえで選ぶことになります。

対象期間と維持管理費用相当額

指針22項(2)①に該当するかを判定するとき、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として借手のリース期間とします(指針23項)。ただし、これに代えて契約に定められた期間(契約期間)とすることができ、また、維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができます(指針23項)。この取扱いは、延長オプション及び解約オプションの行使可能性を判断する実務上の負担が大きいとのコメントを踏まえ、対象期間の見積りに関するコストを軽減する趣旨で認められたものです(指針BC44項)。

図2 簡便的な取扱いを「選ぶ単位」の違い 短期リース(指針20項) 貸借対照表に表示するであろう 科目ごと、又は性質及び営業に おける用途が類似する原資産の グループごとに、適用するか否 かを選択できる(指針20項) 連結では個別で行った選択を 見直さないことができる(21項) 少額リース(指針22項(2)①) リース契約1件当たりの金額で 重要性を判定する 契約1件ごとに適用の可否を選ぶ ことは想定されていない (指針BC43項) 対象期間は原則リース期間、 契約期間も可(指針23項) 少額リース(指針22項(2)②) 新品時の原資産の価値が少額 であるかで判定する リース1件ごとに、この方法を 適用するか否かを選択できる (指針22項(2)②) IFRS第16号と同様の方法 (指針BC45項) 指針22項(2)の①と②はいずれかを選択し、選択した方法を首尾一貫して適用する(指針22項)

図2 同じ「簡便的な取扱い」でも、方針を決める単位が異なります。台帳の設計とシステム要件は、この単位に合わせて先に決めておく必要があります。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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数値例──同じ複合機でもルート次第で結論が変わる

前提 3月決算の製造業A社。事務機器のリースは、企業の事業内容に照らして重要性が乏しいと判断済みです。以下は指針22項(2)①(契約1件当たりの金額で判定。金額のしきい値は300万円としています)を採用した場合の判定例です。維持管理費用相当額の控除(指針23項)を行う方針とします。

ケース 契約内容 判定の基礎となる金額 結論
ケース1
複合機1台
リース期間5年、月額48千円(うち保守相当8千円)、延長オプションなし 48千円×60か月=2,880千円。保守相当を控除すると40千円×60か月=2,400千円 控除前でも300万円以下。少額リースに該当
ケース2
複合機3台を1契約
リース期間5年、月額144千円(3台合計。うち保守相当24千円) 契約1件当たりで判定するため、120千円×60か月=7,200千円 300万円超。1台ずつに分けて判定することはできず、原則処理
ケース3
サーバー
契約期間2年+2年の延長オプション付き。延長は合理的に確実と判断。月額120千円(保守相当なし) 借手のリース期間4年=5,760千円/契約期間2年=2,880千円 対象期間の選択(指針23項)により結論が逆転する

ケース2は、少額リースの判定が契約単位であることの帰結です。同じ複合機3台でも、3本の契約に分けて締結していれば1件当たり2,400千円となり結論が変わり得ます。契約の締結形態が会計処理を左右するため、購買部門との事前の目線合わせが要る論点です。ケース3は、指針23項の選択が実務に効く典型例といえます。

実務上の留意点──「オフバランスにできた」で終わらない

短期リースのリース期間が途中で変わったとき

短期リースに関する簡便的な取扱いを適用していたリースについて借手のリース期間に変更があり、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の終了時点までが12か月以内であるときは、①変更後のリースについて短期リースとして取り扱う方法、②変更後のリースのうち、変更時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12か月以内である場合のみ短期リースとして取り扱う方法、のいずれかを選択できます(指針50項)。当初は延長オプションの対象期間をリース期間に含めないと判断していたが、その後に行使した、といった場面が想定されています(指針BC80項)。

サブリースをすると分類が変わる

ヘッドリースについて短期リース又は少額リースに関する簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合、サブリースはオペレーティング・リースに分類します(指針91項)。簡便的な取扱いの選択が、貸手側の分類にまで及ぶ点は見落とされやすいところです。

オフバランスにしても注記は残る

損益計算書で区分表示していない場合、短期リースに係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額を注記します(指針100項(1))。ただし、この費用には借手のリース期間が1か月以下のリースに係る費用及び少額リースに係る費用を含めることを要しません(指針100項(1))。少額リースについては、簡便的な取扱いの対象となるかどうかについて短期リースのような判断が不要であり、金額的な重要性が乏しいリースを対象としていることから、費用の開示は求めないこととされています(指針BC146項)。また、短期リースかつ少額リースに該当するリースを短期リースに係る費用の発生額の注記に含めないことも認められています(指針BC147項)。

ここが監査対応で実際に問われるところです。オフバランスにした以上は集計不要と考えたくなりますが、短期リースに係る費用は注記のために別建てで拾う必要があります。判定の結果だけでなく、どの契約をどのルートでオフバランスにしたかを追跡できる状態にしておかないと、注記の金額を後から作れません。購入オプション条項を全契約で読み切る作業や、注記用の勘定科目・補助科目の設計は、自社だけで進めると負荷が集中しやすい箇所です。

判定チェックリスト

  • 借手のリース期間を、延長・解約オプションの評価を織り込んだうえで確定したか
  • 購入オプションの有無を契約書で確認したか(1つでもあれば短期リースの要件を満たさない:指針4項(2))
  • 短期リースの適用を、科目ごと又は原資産のグループごとに方針として決めたか(指針20項)
  • 連結における選択の見直しの要否を確認したか(指針21項)
  • 指針22項(2)の①と②のいずれを選択したか、首尾一貫して適用できる体制か(指針22項)
  • 指針22項(2)①の対象期間と維持管理費用相当額の控除方針は統一されているか(指針23項)
  • 短期リースに係る費用を注記用に集計できる勘定設計になっているか(指針100項(1))
  • サブリースを行う契約について、分類への影響を確認したか(指針91項)

よくある質問

Q. 1年ごとに自動更新される賃貸借契約は、すべて短期リースになりますか。

いいえ。判定は契約期間ではなく借手のリース期間で行います(指針4項(2))。更新後の期間を含めた借手のリース期間が12か月を超えると判断される場合、短期リースには該当しないことになります。

Q. 少額リースの基準は300万円と考えてよいですか。

指針22項(2)①は、企業会計基準適用指針第16号におけるリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れられたものです(指針BC43項)。もっとも、指針22項(2)①の文言自体は「リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しい」であり、自社の規模に照らした判断が伴うと考えられます。

Q. 短期リースの適用は、契約ごとに有利なほうを選べますか。

選択の単位は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごととされています(指針20項)。契約ごとの任意選択は想定されていないと読めます。

Q. 少額リースをオフバランスにすれば、注記の作業も不要になりますか。

少額リースに係る費用は、短期リースに係る費用の注記に含めることを要しないとされています(指針100項(1))。ただし短期リースに係る費用は注記の対象であり(指針100項(1))、リースに係るキャッシュ・アウトフローなど他の注記事項の検討は別途必要になります。オフバランス=作業ゼロではない、という整理になります。

まとめ

短期リースと少額リースの簡便的な取扱いは、新リース会計基準の実務負担を大きく左右します。要件そのものは条文を読めば整理できますが、実務で効くのは適用単位の設計注記用データの取り方です。方針を決めないまま契約の棚卸しを始めると、判定のやり直しが発生し、結果として二度手間になります。逆にいえば、方針を先に固めれば、洗い出す契約の範囲そのものを絞り込むことができます。

本連載の全体像は新リース会計基準の連載目次にまとめています。前回はリースの条件変更と再評価を、リース料の範囲についてはリース料に何を含めるかで解説しています。次回は「貸手の会計処理──維持された部分と変わる部分」を取り上げます。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理を保証するものではありません。最終的な会計処理の判断にあたっては、監査人その他の専門家にご相談ください。

参考

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」33項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」4項(2)、20項、21項、22項、23項、50項、91項、100項(1)、BC37項、BC41項、BC43項、BC44項、BC45項、BC80項、BC146項、BC147項

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