株主総会議事録に何を書くか|施行規則72条の記載事項

株主総会議事録は、登記の添付書面になり、法務のデューデリジェンスで通読され、株主や債権者から閲覧を求められる書類です。それでも、議案名と可決した旨しか書かれていない議事録をよく見かけます。

会社法318条1項は、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと定めています。その法務省令が会社法施行規則72条です。この記事では、同条3項の6つの記載事項を順に見ていきます。

この記事でわかること

  • 株主総会議事録に書くべき6つの事項(施行規則72条3項)
  • 議事の経過の要領をどこまで書くか
  • 署名や押印が会社法上は求められていないこと
  • 決議の省略をした場合の別の記載事項(同条4項)

根拠は318条1項と施行規則72条

会社法318条1項は、株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと定めています。作成は義務で、選択の余地はありません。

その法務省令が会社法施行規則72条です。同条2項により、議事録は書面または電磁的記録をもって作成します。そして同条3項が記載事項を6つ挙げています。

株主総会議事録の記載事項(施行規則72条3項)

  • 1号 開催された日時および場所(その場所にいない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人または株主が出席した場合における当該出席の方法を含む)
  • 2号 議事の経過の要領およびその結果
  • 3号 一定の規定により株主総会において述べられた意見または発言があるときは、その意見または発言の内容の概要
  • 4号 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
  • 5号 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
  • 6号 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

1号 その場にいない人が出席したとき

1号のかっこ書きが実務でよく漏れます。取締役や監査役、株主がその場所にいないまま出席した場合には、出席の方法を書かなければなりません。オンライン会議システムにより出席、電話会議システムにより出席、といった一文です。

取締役会議事録の記載事項を定める施行規則101条3項1号にも同じかっこ書きがありますが、株主総会のほうは株主も対象に含まれている点が違います。遠方の株主がオンラインで参加した場合も書きます。

2号 議事の経過の要領およびその結果

ここが中心です。要領としか書かれていませんので逐語録は不要ですが、結果だけでは足りません。

最低限、議案ごとに、誰が何を説明し、どのような質問と回答があり、どういう賛否で可決または否決されたのかが読み取れる必要があります。株主から質問が出たのであれば、その要旨と回答の要旨を書きます。反対の意思表示があったのなら、その旨を残します。

賛否の書き方は会社によります。全員異議なく承認可決した、という書き方でよい場合もあれば、議決権の数を書く場合もあります。少なくとも、可決要件を満たしたことが議事録から確認できるようにしてください。普通決議か特別決議か、定足数を満たしていたかが後から検証できる記載が望ましいです。

3号 述べられた意見または発言

3号は、条文がイからヨまでで具体的に指定しています。監査等委員である取締役の選任等についての意見(342条の2)、会計参与や監査役、会計監査人の選任や解任や辞任についての意見(345条)、監査等委員である取締役の報酬等についての意見(361条5項・6項)、会計参与の意見(377条1項、379条3項)、監査役による報告(384条)、監査役の報酬等についての意見(387条3項)、会計に限定された監査役の調査結果の報告(389条3項)、会計監査人の意見(398条1項・2項)、監査等委員会が選定した監査等委員の意見(399条の5)などです。

これらは、役員が株主総会で意見を述べる権利として会社法が個別に認めているものです。実際に述べられたのであれば、内容の概要を議事録に残さなければなりません。監査役が辞任した後の総会で理由を述べた場合や、監査役が報酬について意見を述べた場合が典型です。

4号から6号 出席者と議長と作成者

4号は出席した役員の氏名です。株主の氏名ではありません。株主については、出席した株主の数や議決権の数を書く会社が多いのですが、これは条文の要求ではなく実務の工夫です。

5号の議長が存するときは、という書き方は、議長を置かない総会もありうることを前提にしています。定款で社長が議長になると定めている会社がほとんどですので、通常は氏名を書きます。

6号の議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名は、忘れられやすい項目です。誰が作ったのかを明らかにする趣旨で、議事録の末尾に記載します。

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署名は会社法上は求められていない

取締役会議事録については、会社法369条3項が、出席した取締役および監査役が署名し、または記名押印しなければならないと定めています。ところが株主総会議事録には、これに相当する規定がありません。

つまり、会社法上は署名も押印も要件ではありません。実務では議長と出席取締役が記名押印するのが通例ですが、それは法律上の義務ではなく、真正であることを示すための運用です。

ただし、株主総会議事録が登記の添付書面になる場合には話が変わります。役員の選任や定款変更の登記では議事録を添付しますので、商業登記の手続の側で押印や印鑑証明書が求められることがあります。登記を伴う決議をしたときは、どのような形で押印するかを司法書士に確認してください。

項目 株主総会議事録 取締役会議事録
根拠 318条1項、施行規則72条 369条3項、施行規則101条
署名または記名押印 会社法上は不要 出席した取締役および監査役が行う
本店の備置き 株主総会の日から10年 取締役会の日から10年
支店の写し 5年(電磁的記録なら措置により不要) 定めなし
閲覧の請求 株主および債権者。裁判所の許可は不要 監査役設置会社では株主も裁判所の許可が必要

決議の省略をした場合は別の書き方

会社法319条1項の決議の省略を使った場合、議事録の記載事項は施行規則72条4項1号が別に定めています。決議があったものとみなされた事項の内容、その事項の提案をした者の氏名または名称、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名の4つです。

3項の6つとはまったく違います。開催された日時や場所、議事の経過の要領は書きません。総会を開いていないのですから、書けば事実と異なる書類になります。会社法320条の報告の省略をした場合も、同条4項2号に別の記載事項があります。

決議の省略を使う会社は、通常の議事録の書式と、省略の場合の書式を分けて用意しておいてください。同じ書式を流用して開催日時を書いてしまう例が実際にあります。

備置きと閲覧

会社法318条2項は、株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならないとしています。同条3項は支店について、株主総会の日から5年間、写しを備え置くこととしたうえで、ただし書で、議事録が電磁的記録で作成されている場合であって、支店における4項2号の請求に応じることを可能とする措置をとっているときは不要としています。

同条4項により、株主および債権者は営業時間内はいつでも閲覧または謄写を請求できます。取締役会議事録と違い、監査役設置会社であっても裁判所の許可は要りません。誰でも見られるとまでは言えませんが、株主と債権者に対しては開かれた書類です。

同条5項により、親会社社員はその権利を行使するため必要があるときに、裁判所の許可を得て請求できます。

この閲覧の仕組みがあるからこそ、2号の議事の経過の要領が意味を持ちます。読む人がいる前提で書いてください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 株主総会議事録に押印は必要ですか。

A. 会社法上は署名も押印も求められていません。取締役会議事録の369条3項に相当する規定がないためです。ただし登記の添付書面になる場合は、商業登記の手続の側で押印等が求められることがありますので、司法書士に確認してください。

Q. 出席した株主の氏名を書く必要はありますか。

A. 施行規則72条3項4号が求めているのは、出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名です。株主の氏名は条文上の要求ではありません。出席した株主の数や議決権の数を書くのは実務の工夫です。

Q. 決議の省略をした場合も同じ書式でよいですか。

A. 違います。施行規則72条4項1号が、決議があったものとみなされた事項の内容、提案をした者の氏名、みなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名の4つを定めています。開催日時や場所は書きません。

📄 まとめ

株主総会議事録の記載事項は会社法施行規則72条3項の6つです。開催された日時と場所、議事の経過の要領およびその結果、一定の意見または発言の概要、出席した役員の氏名、議長の氏名、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名です。

署名や押印は会社法上の要件ではありませんが、登記の添付書面になる場合は別に確認が要ります。決議の省略を使った場合は同条4項の別の記載事項になりますので、書式を分けて用意してください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法318条1項(議事録の作成義務)
  • 会社法施行規則72条2項(書面または電磁的記録)、同条3項1号から6号(記載事項)
  • 会社法施行規則72条4項1号・2号(決議の省略および報告の省略をした場合の記載事項)
  • 会社法318条2項・3項(本店10年、支店5年の備置きと、電磁的記録による場合の免除)
  • 会社法318条4項・5項(株主および債権者による閲覧謄写の請求と、親会社社員)
  • 会社法369条3項および施行規則101条(取締役会議事録との対比)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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