株主名簿の整備|名義書換と基準日と株主名簿管理人の設置

株主名簿は、上場準備でいちばん最初に手を付ける書類のひとつです。誰が何株持っているのかが確定していなければ、株主総会も資本政策も動きません。

それでいて、非上場のうちは実態と合っていない会社が少なくありません。設立時のまま更新されていない、相続で移った株式が反映されていない、名義株が残っている。こうした状態は上場審査で必ず問題になります。

この記事では、会社法が株主名簿に求めている内容を確認したうえで、名義書換、基準日、株主名簿管理人の設置という3つの論点を整理します。

この記事でわかること

  • 株主名簿に記載しなければならない事項
  • 名義書換をしないと会社に対抗できない仕組み
  • 基準日の公告に2週間、権利行使に3か月という制限
  • 株主名簿管理人を置くのに定款の定めが要ること
  • 上場準備で名簿を整えるときの順番

📌 株主名簿に書くこと

会社法121条は、株式会社は株主名簿を作成し、次に掲げる事項を記載し、または記録しなければならないとして4つの事項を掲げています。株主の氏名または名称および住所、その株主の有する株式の数、株主が株式を取得した日、株券発行会社である場合には株券の番号です。

見落とされやすいのが3号の取得した日です。誰が何株持っているかだけでなく、いつ取得したかまで記載が要ります。上場審査では、株式の異動の経緯が確認されますので、この欄が空白のままでは説明ができません。

種類株式発行会社では、2号について株式の種類および種類ごとの数を記載します。優先株式を発行している会社では、種類ごとに整理された名簿が必要です。

📌 名義書換をしないと会社に対抗できない

会社法130条1項は、株式の譲渡は、取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載し、または記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができないと定めています。

つまり、株式を買っても名義書換をしなければ、会社に対して株主だと主張できません。配当も議決権も、名簿に載っている人に対して行われます。名義株が生じる背景には、この仕組みへの理解不足があります。

名義書換の請求は会社法133条1項に定めがあり、株式を会社以外の者から取得した者は、会社に対し、株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、または記録することを請求することができるとされています。同条2項により、請求は原則として株式取得者と名簿上の株主が共同で行います。

過去の譲渡について名義書換が行われていない場合、当時の当事者に協力してもらう必要があります。時間がたつほど難しくなりますので、上場準備では早い段階で洗い出してください。

株主名簿の整備で見る3つの論点記載事項氏名・住所株式の数と種類取得した日会社法121条名義書換しないと対抗できない原則は共同請求過去分の洗い出し会社法130条・133条基準日と管理人2週間前に公告権利行使は3か月以内管理人は定款の定め会社法124条・123条

記載事項、名義書換、基準日と管理人。この3つがそろって初めて名簿が機能します。

📌 基準日には2つの期間制限がある

会社法124条1項は、株式会社は一定の日を基準日として定め、その日に株主名簿に記載されている株主を権利を行使することができる者と定めることができるとしています。定時株主総会のために決算日を基準日とするのが一般的です。

期間の制限が2つあります。ひとつは同条2項で、基準日株主が行使することができる権利は、基準日から3か月以内に行使するものに限るとされています。決算日を基準日にすると、定時株主総会は3か月以内に開かなければならない、という帰結になります。

会社法296条1項が定時株主総会について定めているのは、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないということだけです。3か月という期限は会社法に直接の条文がなく、基準日の制約から出てきます。ここは誤解されやすいところです。

もうひとつは同条3項で、基準日を定めた会社は、基準日の2週間前までに、基準日および基準日株主が行使することができる権利の内容を公告しなければならないとされています。ただし、定款に基準日および権利の内容について定めがあるときは公告が不要です。定時株主総会のために毎年公告している会社は多くありませんが、それは定款に定めを置いているためです。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

📌 株主名簿管理人は定款の定めと登記が要る

会社法123条は、株式会社は株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、当該事務を行うことを委託することができるとしています。株主名簿管理人とは、会社に代わって株主名簿の作成および備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者です。

置くには定款の定めが必要です。契約を結べば足りるわけではありませんので、株主総会の特別決議による定款変更を経ることになります。

あわせて、会社法911条3項11号により、株主名簿管理人を置いたときはその氏名または名称および住所ならびに営業所が登記事項とされています。定款変更、委託契約、登記の3つがそろって設置が完了します。

上場会社は株式事務代行機関を置くことが求められており、信託銀行等がこれを担います。株主名簿管理人の設置は、単元株式数の設定や株式取扱規程の整備と同時に進めることになりますので、委託先の選定は早めに動いてください。

📌 整備の順番

実務では、まず現在の名簿を洗い出すところから始めます。設立からの株式の異動を、株主総会議事録、譲渡承認の記録、贈与や相続の資料と突き合わせて、いま誰が何株持っているのかを確定させます。

次に、名義書換が漏れている譲渡について、当事者の協力を得て手続を行います。名義株が見つかった場合は、実質株主との間で名義を戻す合意を取り、その経緯を記録に残します。ここは税務の論点も生じますので、早い段階で整理してください。

そのうえで、基準日の定款の定めを確認し、株主名簿管理人を置く定款変更を行い、登記します。名簿が確定していない状態で管理人に引き継ぐことはできませんので、順番は動かせません。

会社法の手続を上場準備の水準まで整えたい方へ

定款、株主総会、取締役会、株主名簿、増資。上場準備で必ず点検される書類と手続は決まっています。いまの運用のどこに抜けがあるかは、定款と直近の議事録を拝見すれば短時間で見立てが立ちます。上場準備の実務を経験した公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。支援の内容と進め方はIPO支援業務のページにまとめています。

お問い合わせはこちら料金の目安を見る

公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 株主名簿はどのような形式で作りますか

A. 会社法121条は記載し、または記録しなければならないとしており、書面と電磁的記録のどちらでも構いません。表計算ソフトで作っている会社も多くありますが、上場準備では株主名簿管理人に引き継げる形に整えることになります。

Q. 取得した日が分からない株式はどうしますか

A. 株主総会議事録、譲渡承認の記録、払込みの記録などから復元することになります。どうしても特定できない場合は、経緯と復元の過程を記録に残してください。空欄のままにするより、根拠を示して推定する方が説明できます。

Q. 基準日の公告は毎年必要ですか

A. 会社法124条3項ただし書により、定款に基準日および基準日株主が行使することができる権利の内容について定めがあるときは公告が不要です。定時株主総会のための基準日を定款で定めている会社は、毎年の公告をしていません。

Q. 基準日から3か月を過ぎたらどうなりますか

A. 会社法124条2項は、基準日株主が行使することができる権利は基準日から3か月以内に行使するものに限るとしています。3か月を過ぎると、その基準日での株主としての権利行使はできません。総会が延期になる場合は、基準日を設定し直すことになります。

Q. 株主名簿管理人はいつ置きますか

A. 上場申請までに置くことになりますが、名簿が確定していないと引き継げません。実務では、名簿の洗い出しと名義書換の整理を終えてから、定款変更と委託契約と登記を進めます。委託先の選定と審査に時間がかかりますので、逆算して動いてください。

📄 まとめ

株主名簿には、氏名または名称と住所、株式の数、取得した日、株券発行会社では株券の番号を記載します。取得した日の欄が空白のままでは上場審査で説明ができません。

名義書換をしなければ会社に対抗できません。過去の譲渡で漏れているものは、当事者の協力が得られるうちに整理してください。

基準日には、権利行使が3か月以内という制限と、2週間前までの公告という制限があります。定款に定めがあるときは公告が不要です。

株主名簿管理人を置くには、定款の定め、委託契約、登記の3つが必要です。名簿が確定してから進めることになります。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は上場準備の会社法|定款・機関・株主総会・株式の手続にまとめています。

📚 参考(公的な一次情報)

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406