監査役会をいつ置くかという問いには、法律上の期限と、審査上の期限の2つがあります。法律上の期限は大会社になったときですが、上場準備で効いてくるのは審査上の期限のほうです。
審査では、機関が設置されているかどうかだけでなく、どう運用されてきたかが見られます。設置した翌月に申請しても、運用の実績がありません。逆算すると、置くべき時期は申請よりかなり前になります。
この記事では、監査役会の設置に会社法が求める要件を確認したうえで、人数の確保と任期の設計から逆算した日程の考え方を整理します。
- 会社法が監査役会の設置を義務づける場面
- 監査役3人以上でうち半数以上が社外という要件
- 常勤の監査役を選定しなければならないこと
- 社外監査役の要件にある10年という期間
- 運用実績から逆算した設置の時期
この記事の見出し
📌 法律が監査役会を義務づけるのは大会社になったとき
会社法328条1項は、大会社であって公開会社でないものなどを除き、大会社は監査役会および会計監査人を置かなければならないと定めています。大会社は会社法2条6号で、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の株式会社とされています。
上場準備の途中で大型の増資を行い、資本金が5億円を超えると、この義務が視野に入ります。判定は最終事業年度の貸借対照表によりますので、期中に超えてもその事業年度中にただちに大会社になるわけではありません。次の定時株主総会までに機関を整えることになります。
もっとも、大会社に当たらない会社でも上場準備では監査役会を置くのが通例です。有価証券上場規程が上場会社に一定の機関設計を求めているためで、監査役会設置会社か監査等委員会設置会社か指名委員会等設置会社のいずれかを選ぶことになります。
📌 3人以上、うち半数以上が社外、そして常勤者
会社法335条3項は、監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならないと定めています。過半数ではなく半数以上ですので、3人なら2人以上が社外である必要はなく、2人が社外であれば足ります。ただし1人では足りません。
なお、監査役会を置く会社は取締役会も置かなければなりません。会社法327条1項2号が監査役会設置会社を取締役会の設置義務の対象として掲げているためです。あわせて会社法390条3項は、監査役会は監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないとしています。常勤者を置かずに監査役会だけを設置することはできません。ここは選定義務の名宛人が監査役会であることも押さえておいてください。会社が決めるのではなく、監査役会が自ら選定します。
最小構成でも常勤1人と社外2人が要ります。人を探す時間が、そのまま設置時期を決めます。
📌 社外監査役の10年要件が人選を難しくする
会社法2条16号は社外監査役を定義しています。イは、就任の前10年間、その会社または子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがないこと。ロは、就任の前10年内のいずれかの時にその会社または子会社の監査役であった者については、その監査役への就任の前10年間、取締役等であったことがないことを求めています。
10年という期間が入っているため、社内の元役員や元従業員を社外監査役にすることは、ほぼできません。取引先や親会社等との関係を制限する定めもありますので、候補者は自然と社外から探すことになります。
会計や法務の専門家を招くとして、引き受けてもらえるまでの打診の時間、就任後に事業を理解してもらう時間を見込む必要があります。ここが設置時期を決める最大の要因です。
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📌 任期4年が逆算をややこしくする
会社法336条1項は、監査役の任期を選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとしています。取締役の2年と違って途中で短縮する定めがなく、原則として4年です。
そのため、増員した監査役の任期は、既存の監査役とずれます。全員の任期をそろえたい場合は、補欠の監査役として選任して前任者の任期の満了する時までとする方法が同条3項に用意されています。定款の定めが前提になりますので、機関設計の移行に合わせて定款も確認してください。
任期がずれたままでも法律上の問題はありません。ただ、毎年どこかの監査役が改選になるため、株主総会の議案と登記が毎年発生します。事務の負担を考えて設計してください。
📌 いつ置くかは、運用の実績から逆算する
上場審査では、機関が置かれているという事実だけでなく、取締役会と監査役会がどう運営されてきたかが見られます。議事録の記載、監査役の出席状況、監査計画と監査報告の実物が確認の対象になります。
したがって、申請の直前に設置しても実績がありません。実務では、直前々期のうちに監査役会を立ち上げ、直前期を通じて通常どおり運営した記録を残す組み方が一般的です。社外監査役の人選に半年から1年かかることを考えると、その1年前には動き出していることになります。
あわせて、会計監査人の選任、内部監査部門の設置とも歩調を合わせる必要があります。三様監査の連携を記録に残すには、三者がそろっている期間が必要だからです。
定款、株主総会、取締役会、株主名簿、増資。上場準備で必ず点検される書類と手続は決まっています。いまの運用のどこに抜けがあるかは、定款と直近の議事録を拝見すれば短時間で見立てが立ちます。上場準備の実務を経験した公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。支援の内容と進め方はIPO支援業務のページにまとめています。
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❓ よくある質問
A. 会社法335条3項は3人以上としていますので、3人で足ります。そのうち半数以上が社外監査役である必要がありますので、3人なら2人以上が社外です。半数以上という言い方ですが、1.5人は成り立ちませんので、実際には2人になります。
A. 会社法にそのような定めはありません。390条3項は監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないとするだけで、社内出身者でも社外監査役でも構いません。実務では、事業を把握している社内出身者を常勤とする例が多く見られます。
A. 会社法上は問題ありません。常勤者が1人選定されていれば要件を満たします。ただし審査では、監査役会が実際に機能しているかが見られますので、出席状況と議論の記録は残してください。
A. 会社法上の設置義務は大会社にかかります。ただし上場会社には有価証券上場規程が一定の機関設計を求めますので、上場を目指すなら監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社のいずれかを選ぶことになります。
A. 移ることはできますが、定款変更と役員の選び直しが必要です。会社法327条4項により監査等委員会設置会社は監査役を置いてはならないとされていますので、監査役は全員退任することになります。移行を考えているなら、監査役会を置く前に方針を決めておくほうが手戻りがありません。
📄 まとめ
会社法が監査役会の設置を義務づけるのは大会社になったときです。判定は最終事業年度の貸借対照表によります。
監査役は3人以上でうち半数以上が社外、さらに監査役会が常勤の監査役を選定しなければなりません。最小構成でも常勤1人と社外2人が要ります。
社外監査役には就任前10年という要件がありますので、社内出身者は使えません。人選にかかる時間が設置の時期を決めます。
審査では運用の実績が見られます。直前々期のうちに立ち上げ、直前期を通じて運営した記録を残す組み方が現実的です。
⚖ 本記事の根拠
- 会社法328条1項(大会社は監査役会および会計監査人を置かなければならない)、同2条6号(大会社の定義)
- 会社法335条3項(監査役会設置会社の監査役は3人以上、うち半数以上は社外監査役)
- 会社法390条2項2号・3項(常勤の監査役の選定および解職は監査役会の職務)
- 会社法2条16号(社外監査役の定義)
- 会社法336条1項・3項(監査役の任期は選任後4年)、同327条4項(監査等委員会設置会社は監査役を置いてはならない)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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