基準日の設定|2週間前の公告と3か月以内という制限

株主は日々入れ替わりうるものですから、どの日の株主に権利を与えるのかを決めておかないと、配当も議決権行使も処理できません。それを決めるのが基準日です。

定時株主総会と期末配当については、定款に定めを置いて公告を省いている会社がほとんどです。ところが、臨時株主総会を開くとき、中間配当をするとき、株式分割をするときには、その都度2週間前までの公告が必要になります。ここを忘れる会社が少なくありません。

この記事でわかること

  • 基準日を定めるときに決めなければならないこと(会社法124条2項)
  • 3か月以内という制限がどこから来るのか
  • 2週間前の公告と、定款の定めでそれを省く方法(同条3項)
  • 基準日の後に株式を取得した人に議決権を与えられる場合(同条4項)

基準日とは何を決めるものか

会社法124条1項は、株式会社は一定の日を定めて、その日において株主名簿に記載され、または記録されている株主を、その権利を行使することができる者と定めることができるとしています。この一定の日が基準日、その日の株主が基準日株主です。

できると書いてありますので、基準日を定めるかどうかは会社の選択です。定めなければ、権利を行使する時点の株主名簿によることになります。株主が数名で異動もない会社であれば、基準日を定めずに運用することもできます。

同条2項は、基準日を定める場合には、基準日株主が行使することができる権利の内容を定めなければならないとしています。議決権なのか、剰余金の配当を受ける権利なのか、あるいはその両方なのかを特定するということです。

3か月以内という制限

その124条2項のかっこ書きに、基準日から3か月以内に行使するものに限る、と書かれています。基準日を定めて権利者を固定できるのは3か月までだということです。

定時株主総会が決算日から3か月以内に開かれるのは、この制限が理由です。多くの会社は定款で、事業年度の末日を定時株主総会において議決権を行使することができる株主を定めるための基準日としています。すると決算日が基準日になり、そこから3か月以内に総会を開かなければ、基準日株主が議決権を行使できなくなります。

3か月を過ぎてしまう場合の選択肢は2つです。基準日を定め直して公告し、あらためて3か月の期間を取るか、基準日を使わずに総会当日の株主名簿で議決権を数えるかです。前者は公告に2週間かかりますので、さらに日程が後ろへ動きます。

基準日をめぐる2つの期間公告基準日この日の株主名簿で権利者を固定する権利行使の限度2週間以上(124条3項)3か月以内(124条2項)

前は2週間の公告、後ろは3か月の行使期限。どちらも動かせません

2週間前までの公告

会社法124条3項は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、基準日と2項で定めた事項を公告しなければならないと定めています。

公告の方法は定款で定めた方法によります。会社法939条1項は、官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告の3つを挙げています。定款に定めがない会社は官報になります。

官報公告には掲載までに日数がかかります。原稿の入稿から掲載日まで、余裕を見て2週間程度は見込んでください。基準日の2週間前という条文の期限に加えて、入稿から掲載までの期間が乗ることになります。

定款に定めれば公告はいらない

124条3項にはただし書があります。定款に当該基準日および当該事項について定めがあるときは、公告を要しません。

ほとんどの会社の定款に、当会社は毎年何月何日の最終の株主名簿に記載された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする、という趣旨の条項が入っています。この定めがあるから、毎年の定時株主総会について公告をしないで済んでいるわけです。

期末配当についても、同じ日を基準日とする定めを置いている会社が多くあります。中間配当をする会社は、その基準日についても定款に定めを置いておくと、毎回の公告が不要になります。

逆に言えば、定款に書いていない権利について基準日を使うときは、必ず公告が必要です。臨時株主総会の議決権、株式分割、株主優待の割当てなどがこれに当たります。定款を読み、どこまでが書いてあるのかを一度確認しておいてください。

場面 定款の定め 公告
定時株主総会の議決権 ほとんどの会社にある 不要
期末の剰余金の配当 置いている会社が多い 定めがあれば不要
中間配当 置いていない会社もある 定めがなければ2週間前まで
臨時株主総会の議決権 通常は置かない 2週間前までに必要
株式分割 通常は置かない 2週間前までに必要

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

基準日の後に株式を取得した人

会社法124条4項は、基準日株主が行使することができる権利が議決権である場合には、会社は基準日後に株式を取得した者の全部または一部を、その権利を行使することができる者と定めることができるとしています。ただし書により、基準日株主の権利を害することはできません。

実務では、基準日の後に増資を行い、新しい株主にも総会で議決権を行使してもらいたい場合に使います。基準日株主の権利を害することができないという制約がありますので、既存の株主から議決権を取り上げる形にはできません。追加で認める方向にだけ働く規定です。

この扱いをするかどうかは会社が決めますので、決定した内容を取締役会の議事録に残し、対象となる株主にも伝えてください。

公告を忘れたらどうなるか

124条3項の公告を欠いた場合、その基準日の定めは効力を持たないと考えるほかありません。すると、権利を行使する時点の株主名簿によることになります。

臨時株主総会であれば、総会当日の株主名簿に記載された株主が議決権を持つことになります。基準日の時点の株主構成を前提に議案を組んでいた場合、想定と違う結果になりえます。株式分割であれば、効力発生日に誰が株式を取得するのかが不確定になります。

気づいた時点で選べる道は2つです。日程を後ろへずらして公告からやり直すか、基準日を使わない前提で手続を組み直すかです。どちらも時間がかかりますので、臨時総会や分割の日程を引くときは、公告を最初の行に書いてください。

登録株式質権者への準用

会社法124条5項は、1項から3項までの規定を、149条1項に規定する登録株式質権者について準用しています。株式に質権が設定され、株主名簿に質権者の氏名等が記載されている場合、その質権者についても基準日の仕組みが働くということです。

非上場の会社では、金融機関からの借入れの担保として代表者の持株に質権が設定されている例があります。株主名簿に登録されているかどうかを確認しておいてください。

会社法の手続を上場準備の水準まで整えたい方へ

定款、株主総会、取締役会、株主名簿、増資。上場準備で必ず点検される書類と手続は決まっています。いまの運用のどこに抜けがあるかは、定款と直近の議事録を拝見すれば短時間で見立てが立ちます。上場準備の実務を経験した公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。支援の内容と進め方はIPO支援業務のページにまとめています。

お問い合わせはこちら料金の目安を見る

公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 定款に基準日の定めがあれば公告は要りませんか。

A. 会社法124条3項ただし書により、基準日と行使できる権利の内容の両方が定款に定められていれば公告は不要です。定時株主総会の議決権については、ほとんどの会社の定款に定めがあります。

Q. 臨時株主総会にも基準日が必要ですか。

A. 基準日を定めるかどうかは会社の選択です。定めない場合は総会当日の株主名簿によります。定める場合は、定款に定めがなければ2週間前までの公告が必要になります。

Q. 基準日から3か月を過ぎたらどうなりますか。

A. 会社法124条2項により、基準日株主が行使できる権利は基準日から3か月以内のものに限られます。過ぎてしまう場合は、基準日を定め直して公告するか、基準日を使わない整理をしてください。

📄 まとめ

基準日は、どの日の株主に権利を与えるかを固定する仕組みです。定めるときは行使できる権利の内容もあわせて決め、その権利は基準日から3か月以内に行使するものに限られます。

公告は基準日の2週間前までですが、定款に基準日と権利の内容の定めがあれば不要です。定時株主総会と期末配当は定款で手当てされていることが多い一方、臨時株主総会や株式分割はその都度の公告が必要になります。日程表の最初の行に公告を置いてください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法124条1項(基準日株主を権利行使者と定めることができること)
  • 会社法124条2項(行使できる権利の内容の決定と、基準日から3か月以内という制限)
  • 会社法124条3項(基準日の2週間前までの公告と、定款に定めがある場合の例外)
  • 会社法124条4項(基準日後に株式を取得した者に議決権を与えることができる場合)
  • 会社法124条5項(登録株式質権者への準用)
  • 会社法939条1項(官報、日刊新聞紙、電子公告という3つの公告方法)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は上場準備の会社法|定款・機関・株主総会・株式の手続にまとめています。

📚 参考(公的な一次情報)

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406