飲食料品1%への引下げ|簡易課税の届出と経過措置の読み方

飲食料品の消費税率を1%に引き下げる大綱が、2026年9月15日に閣議決定されました。期間は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間です。

価格表示やレジの話は各所で出ていますが、ここで取り上げたいのは税額計算のほうです。簡易課税を続けるか戻すか、届出をいつまでに出せばよいか、どの取引が8%のまま残るのか。この三つは、期限が先に来ます。

とくに経過措置の判定は令和9年1月1日が起点です。法案の成立を待っていると間に合いません。

この記事でわかること

  • 2年間だけ税率が三つになること、対象の範囲
  • 簡易課税の選択不適用届出書の提出期限が課税期間の末日まで延びること
  • 簡易課税を続ける場合、飲食料品分の仕入控除税額が売上税額と同額になること
  • 8%のまま残る二つの取引類型と、その判定日
  • 中間申告の特例が引下げ時と引上げ時の両方にあること

📌 2年間だけ、税率が三つになる

引下げの対象は、いまの軽減税率が適用されている飲食料品です。範囲が広がるわけでも狭まるわけでもありません。いま8%で売っているものが1%になる、という理解で足ります。

2年間だけ、税率が三つになる令和9年4月1日から令和11年3月31日まで飲食料品1%国税0.78%と地方分0.22%新聞の定期購読8%週2回以上発行のものそれ以外10%変更なし対象は、いまの軽減税率が適用されている飲食料品と同じ範囲大綱はこの1%を特例税率と呼んでいる

図 1%の内訳は、国税分が0.78%、地方消費税分が0.22%相当です。週2回以上発行される新聞の定期購読は8%のまま据え置かれます。

新聞が据え置かれることで、2年間は1%、8%、10%の三つが並びます。売上げの区分も、仕入れの区分も、この三つで管理することになります。大綱は、引き下げられた1%のことを特例税率と呼んでいます。

あわせて、売上げに係る対価の返還や貸倒れ、仕入れに係る対価の返還についても、特例税率で計算する旨が示されています。返品や値引きが期をまたぐ場面では、どちらの税率で処理するかを決めておく必要があります。

❓ もう決まったことなのか

決まっていません。閣議決定されたのは大綱で、法案はまだ国会に提出されていません。

いまどこまで決まっているか大綱の閣議決定令和8年9月15日内容が示された1国税庁の資料リーフレットとQ&A成立した場合の案内2法案の提出本記事の時点で国会に提出されていない3成立と施行令和9年4月1日からの適用を予定4国税庁の資料にも、法案が成立した場合のものであると書かれている準備は進めつつ、確定として社外に案内しない

図 国税庁もリーフレットとQ&Aを公表していますが、いずれも法案が成立した場合のものである、と明記されています。

ですので、社内の準備は進めつつ、取引先や顧客に確定した情報として案内するのは避けるのが安全です。届出書についても、国税庁は法案が成立した場合に提出できるようになる予定である、という書き方をしています。

📌 簡易課税をどうするか

飲食料品を扱う事業者にとって、いちばん判断が難しいのがここです。売上げの税率が1%に下がるのに、家賃や水道光熱費、包装資材の仕入れは10%のままだからです。

本則課税なら、税額の出方が変わる売上げ仕入れと経費飲食料品の売上げは1%預かる税額が小さくなる家賃、水道光熱費、包装資材は10%支払う税額はそのまま差引きの税額が小さくなる、あるいはマイナスになる場面が増える前期の実績で決まる中間申告とのずれが、そのまま資金繰りに出るだから中間申告にも特例が置かれている

図 本則課税であれば、差引きの税額が小さくなり、場合によってはマイナスになる局面が増えます。簡易課税のままだと、その構造を計算に反映できません。

そこで、届出の期限に特例が置かれています。ふつう、簡易課税をやめるための届出書は、やめたい課税期間が始まる前の日までに出さなければなりません。ところが令和9年4月1日の属する課税期間については、その課税期間中に出せば、初日の前日に出したものとみなされます。

簡易課税をやめるなら、期限がゆるむ令和9年4月1日の属する課税期間について原則課税期間が始まる前の日までに選択不適用届出書を出す特例その課税期間の末日までに出せば初日の前日に出したものとみなす2年間の継続適用の縛りもこの課税期間には適用されない期が始まる前に決めておく必要がある1年分の数字を見てから、簡易課税を続けるかどうかを選べる課税事業者の選択届出書にも、同じような提出期限の特例がある

図 つまり、期の途中まで実際の数字を見てから、簡易課税を続けるかどうかを決められます。2年間の継続適用の縛りも、この課税期間には適用されません。

免税事業者が課税事業者を選ぶ場合の届出書にも、同じような提出期限の特例が置かれています。ただしこちらは、原則として2年間は課税事業者として申告が必要である、という説明がされています。

📌 簡易課税を続ける場合の計算

簡易課税を続ける道も、もちろんあります。その場合の計算の形が変わります。

簡易課税を続ける場合の計算飲食料品の譲渡について 仕入控除税額 = 売上げに係る消費税額業種区分にかかわらずみなし仕入率を使わないその部分については納める税額が出ない形になるみなし仕入率の75%ルールの判定と計算は飲食料品の譲渡に係る取引を除いて行う飲食料品を扱う簡易課税の事業者は、計算の形が変わるシステムの設定も、この形に合わせる必要がある

図 飲食料品の譲渡については、業種区分にかかわらず、仕入控除税額を売上げに係る消費税額と同額とする特例が置かれます。つまり、その部分については納める税額が出ない形になります。

みなし仕入率の75%ルールについても、判定と計算は飲食料品の譲渡に係る取引を除いて行う、という整理が示されています。二種類以上の事業を営んでいる場合は、ここの設定を確かめておく必要があります。

会計ソフトやレジの側が、この計算にいつ対応するかも確かめておきたいところです。法案の成立が前提ですので、ベンダーの対応時期も後ろ倒しになる可能性があります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

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📌 8%のまま残る取引

令和9年4月1日以後の譲渡でも、8%が適用されるものがあります。大綱が挙げているのは二つの類型です。

8%のままになる二つの取引定期供給契約通信販売令和9年1月1日前に契約を締結し令和9年4月1日前に対価を領収している同日以後に行われる飲食料品の譲渡令和9年1月1日前に販売条件を提示し令和9年4月1日前に申込みを受けた同日以後に行われる飲食料品の譲渡いずれも税率は8%のまま1%を前提とした契約や、契約の変更がある場合は1%この二つ以外の類型は、大綱では示されていない

図 定期供給契約は、令和9年1月1日前に契約を締結し、令和9年4月1日前に対価を領収しているもの。通信販売は、令和9年1月1日前に販売条件を提示し、令和9年4月1日前に申込みを受けたものです。

定期供給契約という言い方は耳慣れないかもしれませんが、国税庁は、週や月、年といった一定の周期でおおむね規則的に継続して供給するもの、という趣旨の説明をしています。食材の定期便や、定期購読に近い形の飲食料品の供給が当てはまります。

ただし、1%を前提とした契約である場合や、契約の変更がある場合は1%が適用されます。単に契約日が早いというだけでは、8%のままにはなりません。

動き出すのは4月ではなく1月令和9年1月1日経過措置の起点令和9年2月1日総額表示の特例が開始令和9年4月1日税率が1%になる令和11年3月31日2年間の最終日経過措置の判定は、令和9年1月1日前に契約したかどうかで決まるいま結ぶ契約が、そのまま判定の対象になる

図 判定の起点は令和9年1月1日です。税率が変わる4月1日ではありません。いま結んでいる契約が、そのまま判定の対象になります。

なお、税率が引き上げられるときに設けられてきた工事の請負や資産の貸付けといった他の類型については、大綱にも国税庁の資料にも記載を見つけられませんでした。二つの類型以外は原則どおりと考えておくのが無難です。

📌 中間申告の特例

中間申告の税額は、前の課税期間の実績で決まります。売上げの税率が下がれば、前年ベースの中間申告は過大になります。

中間申告の特例は、両方向にある引下げのとき戻すとき令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について1%が適用されたものとして計算できる令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について1%が適用されないものとして計算できる前年の実績のままだと、中間申告の税額が実態に合わなくなる使うかどうかは事業者が選ぶ

図 そこで、令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間については、1%が適用されたものとして計算した金額を記載できます。逆に令和11年4月1日以後については、1%が適用されないものとして計算できます。

引下げのときだけでなく、8%に戻るときにも特例が置かれているところがポイントです。戻ったあとの中間申告は、1%だった期間の実績で計算すると過少になります。そのずれを埋めるための特例です。

価格表示については、税率変更の前後それぞれ最大2か月間の特例が置かれています。この点は別の記事で整理していますので、あわせてご覧ください。飲食料品の消費税1%|総額表示と価格改定への準備

📌 いまから始めること

いちばん早い期限は、法案の成立でも、届出書の提出でもありません。令和9年1月1日前に契約を締結したかどうかです。

いまから始めること契約書を洗い出す定期供給と通信販売の契約日と領収の時期1計算方法を決める簡易課税を続けるか本則課税に戻すか2システムを確かめる1%の税率区分を登録できるか3資金繰りを見直す中間申告の特例を使うかどうか4いちばん早い期限は、令和9年1月1日前の契約かどうか法案の成立を待っていると、この判定には間に合わない

図 定期供給契約と通信販売について、契約日と対価の領収時期、販売条件を提示した時期を洗い出しておくことをおすすめします。

そのうえで、簡易課税を続けるか本則課税に戻すかの試算をしておくこと。届出の期限には特例がありますので、判断そのものは急ぎませんが、どちらが有利かの見当をつけておけば、期の途中で慌てずにすみます。

システム面では、1%という税率区分を登録できるかどうかを確かめておきます。軽減税率が導入されたときと同じように、対応が間に合わないところから混乱が起きます。

❓ よくある質問

Q. いつから1%になりますか

A. 大綱では令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間とされています。ただし本記事の時点で法案は国会に提出されていません。

Q. 対象になる飲食料品の範囲は変わりますか

A. 変わりません。国税庁のリーフレットは、令和9年3月31日以前において税率8%の対象である飲食料品の範囲と同様である、としています。外食やケータリングが対象外であることも同じです。

Q. 簡易課税をやめる届出はいつまでに出せばよいですか

A. 令和9年4月1日の属する課税期間については、その課税期間中に出せば、初日の前日に出したものとみなされる特例が置かれています。2年間の継続適用の縛りも、この課税期間には適用されません。

Q. 簡易課税のままでも不利になりませんか

A. 飲食料品の譲渡については、業種区分にかかわらず仕入控除税額を売上げに係る消費税額と同額とする特例が置かれます。そのため、その部分では納税額が出ない形になります。どちらが有利かは、飲食料品以外の売上げの構成と経費の内訳によります。

Q. 令和11年4月に8%へ戻るときの経過措置はありますか

A. 取引に係る経過措置については、大綱にも国税庁の資料にも記載を見つけられませんでした。置かれているのは、中間申告の特例と総額表示の特例です。

📄 まとめ

飲食料品の消費税率を1%とする大綱が、2026年9月15日に閣議決定されました。期間は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間で、1%の内訳は国税0.78%と地方消費税0.22%相当です。週2回以上発行される新聞の定期購読は8%のまま据え置かれ、2年間は三つの税率が並びます。

簡易課税については、選択不適用届出書の提出期限が課税期間の末日まで後ろ倒しされ、2年間の継続適用の縛りも適用されません。続ける場合は、飲食料品の譲渡に係る仕入控除税額が売上げに係る消費税額と同額になります。

8%のまま残るのは、定期供給契約と通信販売の二つです。いずれも令和9年1月1日前の契約や販売条件の提示が要件ですので、判定の起点は税率が変わる4月1日ではありません。

そして、法案はまだ国会に提出されていません。国税庁の資料も、法案が成立した場合のものであると断っています。準備は進めつつ、確定した情報としては扱わない。いまはその段階です。

⚖ 本記事の根拠

参照した資料

  • 「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日閣議決定)
  • 内閣官房「飲食料品に係る消費税率の引下げ及び給付付き税額控除について」(大綱および概要資料)
  • 国税庁「飲食料品に係る消費税率の引下げについて」リーフレット(令和8年9月)
  • 国税庁「飲食料品に係る消費税率の引下げに関するQ&A」(令和8年9月 軽減税率・インボイス制度対応室)
  • 消費税法および同施行令(軽減税率、簡易課税制度、中間申告に関する規定)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の会計処理および税務上の判断は、監査人および顧問税理士にご確認ください。

📚 参考(公的な一次情報)

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