株主資本等変動計算書に関する注記の記載例|4つの条文と上場会社の開示事例

株主資本等変動計算書に関する注記は、上場準備会社が新しく作ることになる注記の代表格です。非上場のうちは株主資本等変動計算書そのものは作っていても、この注記までは求められていないためです。

条文は4つに分かれています。発行済株式が財務諸表等規則106条、自己株式が107条、新株予約権等が108条、配当が109条です。連結では順に77条から80条です。

この記事では、4つの条文を確かめたうえで、記載例と、上場会社の実際の開示事例を示します。

この記事でわかること

  • 株主資本等変動計算書に関する注記が4つの条文でできていること
  • 発行済株式と自己株式の表と、変動事由の書き方
  • ストック・オプションの新株予約権で省略できるもの
  • 期末配当を翌期の欄に書く理由
  • 上場会社の実際の開示事例と、その読み方

📌 結論 4つの条文で1組になっている

図1 株主資本等変動計算書に関する注記の4つの条文注記財規連結財規発行済株式に関する注記106条77条自己株式に関する注記107条78条新株予約権等に関する注記108条79条配当に関する注記109条80条

4つで1組です。連結財務諸表を作成している場合、財規側の4つは記載を要しません。

財務諸表等規則106条第1項は、発行済株式の種類及び総数については、次の各号に掲げる事項を注記しなければならない、としています。107条が自己株式、108条が新株予約権等、109条が配当です。

4つとも第2項または最終項に、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には記載することを要しない、という定めがあります。連結を作っている会社は、連結財務諸表規則77条から80条に基づいて連結側に書きます。

実務では4つをまとめて連結株主資本等変動計算書関係という見出しの下に並べます。1から4の番号を振り、発行済株式および自己株式、新株予約権、配当という順にするのが通例です。

🧭 発行済株式と自己株式

図2 発行済株式と自己株式で書くこと条文記載事項財規106条第1号発行済株式の種類ごとに、当事業年度期首及び当事業年度末の発行済株式総数並びに当事業年度に増加又は減少した発行済株式数財規106条第2号発行済株式の種類ごとの変動事由の概要財規107条第1号自己株式の種類ごとに、当事業年度期首及び当事業年度末の自己株式数並びに当事業年度に増加又は減少した自己株式数財規107条第2号自己株式の種類ごとの変動事由の概要

数の表と、変動事由の文章が対になっています。表だけ作って事由を書き忘れる例が多いところです。

106条と107条は同じ構造です。数の表と、変動事由の概要という文章の2つを求めています。

表は、期首の株式数、当期の増加株式数、当期の減少株式数、期末の株式数という4列で作ります。株式の種類ごとに行を立てます。普通株式だけの会社なら1行です。種類株式を発行している上場準備会社は、種類ごとに行を分けます。

変動事由の概要は、表の下に注書きとして添えます。株式分割による増加、新株予約権の行使による増加、公募増資による増加、自己株式の消却による減少、といった書き方です。

ここでよくある誤りが、表だけ作って事由を書き忘れることです。条文が第2号で明確に求めていますので、増減があるのに事由がない注記は不備になります。

📄 記載例

設例1 上場した期の発行済株式と自己株式

(連結株主資本等変動計算書関係)

当連結会計年度(自 2026年◯月◯日 至 2027年◯月◯日)

1 発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数に関する事項

発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数
株式の種類 期首株式数 増加株式数 減少株式数 期末株式数
発行済株式 普通株式(注)1 ◯◯株 ◯◯株 ◯◯株
発行済株式 A種優先株式(注)2 ◯◯株 ◯◯株
自己株式 普通株式

(注)1 普通株式の発行済株式総数の増加は、株式分割による増加◯◯株、A種優先株式の普通株式への転換による増加◯◯株、公募増資による増加◯◯株及び新株予約権の行使による増加◯◯株であります。

(注)2 A種優先株式の減少は、普通株式への転換による減少であります。

会社名と数値は架空です。上場の期は増加事由が複数重なります。事由ごとに株式数を分けて書くと、読み手が推移を追えます。

上場した期の注記は、この設例のように増加事由が並びます。株式分割、種類株式の普通株式への転換、公募増資、新株予約権の行使が同じ期に起きるためです。

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📊 新株予約権は書く欄が少ない

図3 新株予約権の注記で省略できるもの条文内容財規108条第2項新株予約権の目的となる株式の種類と株式の数は、新株予約権がストック・オプション又は自社株式オプションとして付与されている場合には記載を要しない財規108条第3項ただし書き権利行使されたと仮定した場合の増加株式数の、当事業年度末の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合に重要性が乏しい場合には注記を省略できる財規108条第4項第1項から第3項までの規定は、自己新株予約権について準用する

ストック・オプションは株式の種類と数を書きません。事業年度末残高だけが残ります。

108条第1項は、新株予約権について、目的となる株式の種類、目的となる株式の数、事業年度末残高の3つを求めています。しかし第2項で、新株予約権がストック・オプション又は自社株式オプションとして付与されている場合には、第1号及び第2号に掲げる事項は記載することを要しない、としています。

つまりストック・オプションについては、株式の種類も株式の数も書かず、事業年度末残高だけを書けばよいことになります。上場準備会社の新株予約権はほとんどがストック・オプションですから、この扱いになります。

第3項は、第1項第2号の株式の数について、種類ごとに期首と期末の数、当期に増加および減少する株式の数、変動事由の概要を書くことを求めています。ただし書きで、権利行使されたものと仮定した場合の増加株式数の、当事業年度末の発行済株式総数に対する割合に重要性が乏しい場合には注記を省略することができる、とされています。この割合を計算するときは、自己株式を保有していればその数を控除します。

第4項により、これらの規定は自己新株予約権について準用されます。実務では表の区分欄を提出会社と連結子会社に分け、内訳欄に第◯回ストックオプションのように並べます。

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🏷 配当は3つの号を漏らさない

図4 配当の注記で書く3つ配当財産が金銭のとき(第1号) 種類ごとの配当金の総額、1株当たり配当額、基準日、効力発生日配当財産が金銭以外のとき(第2号) 財産の種類と帳簿価額、1株当たり配当額、基準日、効力発生日基準日が当期で効力発生日が翌期のもの(第3号) 配当の原資と、上の2つに準ずる事

第3号を落とす例が目立ちます。期末配当は基準日が当期、効力発生日が翌期の株主総会後になるのが通例です。

109条第1項は3つの号を置いています。第1号が金銭の配当、第2号が金銭以外の配当、第3号が基準日が当事業年度に属する配当のうち効力発生日が翌事業年度となるものです。

実務で落としやすいのが第3号です。期末配当は、基準日が決算日で、効力発生日は翌期の定時株主総会の後になります。当期の注記に載せる必要があるのに、翌期の話だからと飛ばしてしまう例が出ます。

第3号は配当の原資も書きます。利益剰余金なのか資本剰余金なのかを明示します。第1号と第2号には原資の記載がありませんので、ここだけ項目が1つ多くなります。

設例2 配当に関する注記

3 配当に関する事項

(1)配当金支払額

配当金支払額
決議 株式の種類 配当金の総額 1株当たり配当額 基準日 効力発生日
2026年◯月◯日取締役会決議 普通株式 ◯◯百万円 ◯円 2026年◯月◯日 2026年◯月◯日

(2)基準日が当連結会計年度に属する配当のうち、配当の効力発生日が翌連結会計年度となるもの

基準日が当連結会計年度に属する配当のうち、効力発生日が翌連結会計年度となるもの
決議 株式の種類 配当金の総額 配当の原資 1株当たり配当額 基準日 効力発生日
2027年◯月◯日取締役会決議 普通株式 ◯◯百万円 利益剰余金 ◯円 2027年◯月◯日 2027年◯月◯日

会社名と数値は架空です。(2)にだけ配当の原資の欄があります。決議機関は取締役会か定時株主総会かを正確に書いてください。

📁 実際の開示事例

自己株式の取得と消却が同じ期に行われ、ストック・オプションが7回分ある例です。

実際の開示事例 フィードフォースグループ株式会社(証券コード7068)

(連結株主資本等変動計算書関係)

当連結会計年度(自 2025年6月1日 至 2026年5月31日)

1.発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数に関する事項

発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数
株式の種類 期首 増加 減少 期末
発行済株式 普通株式(注)1.2. 25,033,858株 247,900株 1,340,100株 23,941,658株
自己株式 普通株式(注)2.3. 1,340,100株 1,340,100株

(注)1.普通株式の発行済株式総数の増加は、株式交換及び新株予約権の行使による増加であります。

(注)2.普通株式の発行済株式総数及び自己株式数の減少は、自己株式の消却による減少であります。

(注)3.普通株式の自己株式数の増加は、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の取得による増加であります。

2.新株予約権及び自己新株予約権に関する事項

新株予約権及び自己新株予約権に関する事項(提出会社、単位:百万円)
内訳 当連結会計年度末残高
第2回ストックオプション
第4回 14
第6回 18
第7回 2
第8回 35
第9回(注) 17
第10回(注) 12
合計 101

(注)権利行使期間の初日が到来しておりません。

3.配当に関する事項

配当金支払額
決議 株式の種類 配当金の総額 1株当たり配当額 基準日 効力発生日
2025年6月26日取締役会 普通株式 125百万円 5円 2025年5月31日 2025年8月8日
2025年12月25日取締役会 普通株式 122百万円 5円 2025年11月30日 2026年1月30日

② 基準日が当連結会計年度に属する配当のうち、配当の効力発生日が翌連結会計年度となるもの

2026年6月25日取締役会 普通株式 配当金の総額239百万円 配当の原資 利益剰余金 1株当たり配当額10円 基準日2026年5月31日 効力発生日2026年8月7日

出典:フィードフォースグループ株式会社「有価証券報告書」(2026年5月期、2026年8月24日提出)連結財務諸表 注記事項(連結)(連結株主資本等変動計算書関係) ※内容の一部を抜粋しています

▶ 読み方 4つの点が参考になります。第1に、自己株式の増加と減少が同数で、期首も期末もゼロになっていること。取得したその期に消却したためで、変動事由の注3と注2がその筋道を説明しています。第2に、発行済株式の減少事由が自己株式の消却であることを注2で明示し、発行済株式と自己株式の両方から同じ注番号を引いていること。第3に、ストック・オプションについて株式の種類も数も書かず、事業年度末残高だけを並べていること。財規108条第2項による扱いです。第4に、配当が期中の2回に加えて、基準日が当期で効力発生日が翌期のものを②に分けて書き、そこにだけ配当の原資を記載していることです。

⚖️ 上場準備での論点

上場準備で最初に問題になるのは、株式数の推移が資本政策の記録と合わないことです。株式分割、種類株式の転換、新株予約権の行使が重なると、登記簿と株主名簿と会計帳簿のどれを見るかで数が変わることがあります。注記に載せる前に3つを突き合わせてください。

次に多いのが、種類株式を普通株式に転換した期の書き方です。優先株式の行を残したまま期末をゼロにするのか、行ごと消すのかで迷います。期首に残高がある以上、行は残して期末をハイフンにするのが読み手に親切です。

ストック・オプションについては、108条第2項により株式の種類と数を書きません。ただしストック・オプション以外の新株予約権、たとえば資金調達目的で発行した有償新株予約権がある場合は、原則どおり株式の種類と数を書きます。混在している会社は分けて考えてください。

配当については、上場前に配当を出していた会社が、上場を機に方針を変えることがあります。当期に配当がなくても、基準日が当期で効力発生日が翌期のものがあれば第3号の記載が要ります。取締役会の決議日と基準日を確認してください。

❓ よくある質問

Q. 株主資本等変動計算書に関する注記の条文はどれですか。

A. 財規106条から109条です。発行済株式、自己株式、新株予約権等、配当の4つです。連結は連結財規77条から80条です。

Q. 株式数の表だけでよいですか。

A. いいえ。種類ごとの変動事由の概要も条文が求めています。表の下に注書きとして添えます。

Q. ストック・オプションの新株予約権は何を書きますか。

A. 事業年度末残高だけです。目的となる株式の種類と数は、財規108条第2項により記載を要しません。

Q. 新株予約権の株式数の注記を省略できる場合はありますか。

A. あります。権利行使されたと仮定した場合の増加株式数の、期末の発行済株式総数に対する割合に重要性が乏しい場合です。自己株式があれば控除して計算します。

Q. 自己新株予約権も同じ扱いですか。

A. 同じです。財規108条第4項が第1項から第3項までを準用しています。

Q. 期末配当はどこに書きますか。

A. 基準日が当期で効力発生日が翌期になりますので、109条第1項第3号の欄に書きます。配当の原資も併せて記載します。

Q. 配当の原資はどの欄に書きますか。

A. 第3号の欄だけです。第1号と第2号には原資の記載を求める文言がありません。

Q. 連結と個別の両方に書きますか。

A. 連結財務諸表を作成している場合、個別では記載を要しません。4つの条文それぞれに同じ定めがあります。

📄 まとめ

株主資本等変動計算書に関する注記は、財規106条から109条の4つで1組です。発行済株式、自己株式、新株予約権等、配当を順に書きます。

発行済株式と自己株式は、数の表と変動事由の概要が対になります。表だけで終わらせないでください。

ストック・オプションの新株予約権は、株式の種類と数を書かず、事業年度末残高だけを書きます。

配当は3つの号があります。基準日が当期で効力発生日が翌期のものを忘れないでください。この欄にだけ配当の原資を書きます。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事に掲載した実際の開示事例は、各社が金融商品取引法にもとづき公衆縦覧に供している有価証券報告書からの引用です。設例として示した文例は、条文の記載事項を確認するために当事務所が作成したもので、会社名と数値は架空です。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の注記の作成にあたっては、監査法人にご確認ください。

📚 参考(公的な一次情報)

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